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しるくな日々
1 若きアニメーターは安彦良和の仕事を見よ
藤井ファール  [2013/08/01]

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当代有数のアニメ監督、『エヴァンゲリオン』の庵野秀明氏のルーツが『機動戦士ガンダム』にあることを、どれくらいの人がご存じだろうか。7月26日に東京・台場の「ガンダムフロント東京」にて行われた「機動戦士ガンダムの誕生とアニメーター安彦良和展」のスペシャルイベント、庵野秀明×氷川竜介トークショーで、庵野氏がアニメーション制作の世界に入ることになった経緯が、『ガンダム』の原画にあったことが語られた。

氷川竜介氏(左)と庵野秀明氏
アニメは画の面白さである! 庵野氏かく語りき

庵野氏:アニメファンの庵野秀明です。

氷川氏と共に登壇した庵野氏は、まず脇に設置されている1/1オブジェの「コアファイター」をじっと見る。「どうですか?」と氷川氏が問うと、「ディテールが……アレですね」と不満顔。詳しくは語らなかったが、コアファイターのディテールで30分語り続けそうな気配だ。

最初は、庵野氏が編集した「安彦良和アニメーション原画集 機動戦士ガンダム」について。元は居酒屋トークで氷川氏が安彦原画集を出したい、と話した時に庵野氏がその場で「ちゃんとやりましょう」と言い出したことが始まりだという。そして、サンライズの社長に話をもっていき、「安彦氏がいい」と言えば出せるということに。その時から4年が過ぎ、その内訳は準備が1年半で、角川さんの手にわたってから2年半。いろいろな苦労があったようだ。

氷川氏:難しいことだけど庵野さんとしては、アニメや特撮を残したいと?

庵野氏:残したい。こういうものは、僕の手元に残しても意味がない。世の中に残さないと。広く残すには出版という形がいいんです。それと保存にはバックアップが残せるデジタルが便利だけど、やっぱり紙がいいですね。紙にはかなわない。だから文化事業という形でちゃんとやるのは大事なことなんです。

氷川氏:アニメーションの原画に対する想いというのは、原画集のあとがきにあるこれですね。

以下、庵野氏が書いた言葉をそのまま紹介する。(「安彦良和アニメーション原画集 機動戦士ガンダム」より)

映像の持つ魅力の一つに『画』というものがある。
それは、作り手の純粋なイメージを具象化し、映像として定着できる
アニメーションにおいては、特に顕著ではないかと思う。
その『画』の設計図となるものが『画コンテ』と呼ばれるものであり。
アニメーションではそれを基に実際の画面の基となる
『レイアウト原画』と『原画』が描かれる。
これらに時間軸のガイドラインとなる『タイムシート』が揃うことにより、
初めてアニメは形になることが出来る。
現行のシステムでは、始めに『レイアウト・原画・タイムシート』ありきなのだ。
それらを一手に担うのが、アニメーターと呼ばれる人々である。
アニメーターは絵描きであり、役者であり、カメラマンでもある。
勿論。映像は『画』に『時間軸』と『音』が加わったものが最終形態、
つまり『作品』として成立するものだが、その彼らの純粋で原初で繊細な
手書き鉛筆による生の仕事も見て欲しいと思う。

この一文をふまえて、今回の庵野氏のトークを読み進めていただきたい。

庵野氏:今はCGとかもありますが、やっぱり手で描いたものの面白さというのは大きい。アニメーターの仕事が一番形になっているものは原画で、その先にセル、今はデジタルで色を塗るのでセルとはいいませんけど。色がついた状態のものになりますが、原画が一番、見ていて……いいんですよね。原画マンの線がそのままでている。原画を動画マンがトレースすると、デジタルの場合は1ドットでも線が抜けていると色がはみだすので、きれいにつながっていないといけない。

庵野氏:するとデジタルでは線を細くする必要がある。昔はトレスマシンといって、(原画を透明な)セルに転写するやり方でやっていたので、6B(原画を描く際のえんぴつの芯のことだと思われる)で描いてもよかったんです。それができなくなっちゃって、そこがまたつまらないですね。

氷川氏:デジタルだと影は裏から塗るようになって、なおのことつまらないですよね。

庵野氏:つまらないですね。

庵野氏:安彦さんではないんですけど、80年代に金田さん(金田伊功氏、伝説のアニメーター。金田パースと呼ばれる大胆なパース取りや、生き物のように動くメカやビームなど、非常に個性的な画を作る)という、ものすごく面白い画を描いて、ものすごく面白いアニメーションをやる人がいて……金田さんて分かる人います? (場内、2~3割ぐらい挙手)

庵野氏:『ザンボット3』(『機動戦士ガンダム』の2つ前のサンライズ作品。富野監督、安彦氏はキャラクターデザインで参加)で、すごくいい金田さんのカットがあって、なんでこんなにいいんだろう? と思っていたんです。それは金田さんが(原画だけでなく)動画までやっていたからで、アニメーターの原画の線がそのまま動画に出るのがこんなにいいことなんだなと知りました。ザンボットバスター(庵野氏はカッターと言っていたがバスターのことだと思われる)を投げて、それがパカっと割れるところがすごくいいんです。

氷川氏:振りかぶって、次の瞬間にはもう飛んでるんですよね。

庵野氏:あとザンボットバスターを投げるとこで、中を繋いでる画がなくて(構えてから、投げる動作がほぼ省略されて、投げたバスターが飛んでいる画になる。同様にザンボットブローを投げる場面でも投擲動作が省略されている)、よくこんなタイミングで描けるなと思って本人に聞いたら、「描くのがめんどくさかった」って(笑)。中抜いちゃったっんだけど、それがすごくかっこいい。こういう繋がっていないようで繋がってる動きというのが面白いんです。

氷川氏:キレがありますよね。

庵野氏:そんな省略、省エネ作画の時代に、安彦さんの持っているスピードとパワーと、的確さというのがすごいんです。それが特に『ガンダム』の、劇場版のIIIあたりで開花している。

トークの冒頭で1/1オブジェの「コアファイター」をじっと見つめる氷川竜介氏と庵野秀明氏

このあたりは多少補足が必要だろう。先日のトークイベントで安彦氏が語っていた「日本のアニメは省略と誇張が基本であり、アバウトさが持ち味」というものを、庵野氏は実例を挙げて語っている。時間やコストなどの事情により「武器を投げる」動作を省略しなければならないが、その省略を「カッコよくみせる」アイディアと工夫があるわけだ。そういった工夫のひとつひとつが優れた発明品なのだが、資料の形で残されていない。アニメーター個々人が知識、技法として受け継いでいるのみだと、デジタル化が進んでいくにつれて、使われない技術はどんどん消滅していってしまう。だからこそ形として残すこと、庵野氏が言う「文化事業」が必要なのである。

ちなみに金田氏を例に挙げて、安彦氏を「スピードとパワーと的確さがすごい」としか語っていないのは、安彦氏の原画に込められている省略と誇張の細かい技法はひとつひとつ解説するのが困難だからだと筆者は推察する。庵野氏の師匠である板野サーカスの板野一郎氏が「安彦先生はホワイトベースにおけるガンダム」と例え、富野由悠季監督が「自分の中には安彦君ほどの才能がなかった」というのだから、解析してどうにかなる次元のものではないのだろう。

庵野氏は安彦氏の原画を見ながら、話を続ける。
Re:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 01:54:37
庵野氏:安彦さんの描いたガンダムの顔がいいんですよね。

氷川氏:美形ですよね。

庵野氏:美形です。ハンサムがうまいんですよ安彦さんは。

彩色したら原画の線のよさが出なかったり、塗りミスがあったりということは起こり得る。そういう意味でも原画のガンダムが一番安彦氏のイメージ通りのガンダムなのだ。

庵野氏:ガンダムの目元の黒いカゲの部分は黒マジックで塗ってるんですよ。これがカッコいい。当時ロボットアニメではこのカゲをマッキーで塗るのが相当流行ってたと思いますよ。僕も『マクロス』やってた時にカゲは黒マジックで塗ってました。

原画は鉛筆で描くので、普通はマジックペンは使わない。しかしながら、仕上げられたセル画より、鉛筆描きの原画で、目元が黒マジックで塗られたガンダムの方がカッコいいという感覚は、なかなか言葉で伝えるのが難しい。そしてさらに、ガンダムというデザインの難しさを物語るエピソードが次に語られる。

氷川氏:ガンダムはプラモデルなんかもたくさん出ていますけど、なかなかこの安彦さんのガンダムらしくならないんですよね。

庵野氏:ならないです。プラモじゃなくて「可動戦士ガンダム」の顔が一番安彦さんのイメージに近くてよかったですね。

見比べると分かるのだが、プラモのガンダムはどんどん小顔化が進んでいて、各パーツの比率がアニメからだいぶ変わってきている。特に顕著なのはカメラアイの大きさと目元のフチドリの広さなのだが、それによって一番違って見えるのが下からアオリの角度で見た時だ。「可動戦士ガンダム」はこれが実にアニメのガンダムらしい絵になってくれる。アニメとプラモと可動戦士を持っている人は見比べてみよう。あと可動戦士は横顔が男前である。プラモデルは真正面や上方から見下ろす角度の時にカッコよく見えるようになっていると思われるが、それはアニメのガンダムは人が下から見上げるもの、プラモは人が上から見下ろすものだからだろうか。
困った時は、盾を使え!?

氷川氏:プラモはガンダムを機械的に描いているのに対し、アニメではガンダムをキャラクター的に描いているというのがひとつ大きく違うところですよね。

庵野氏:ガンダムはキャラクターなんです。(アニメでは)人間の動きをするんです。腰の動きとか、プラモデルではとてもできない。ビームサーベルだって手で抜けないですからね。そんなの関係なしにアニメでは描いてしまってるところがいいんです。

氷川氏:ファーストガンダムのいいところですよね。いい加減さというか。

庵野氏:勢いです。それから、困った時は盾を使うんです。盾で線を減らす。これは発明でしたね。盾を持つと左手側のディテールを全部省略して、盾を描くだけでいいんですよ。で、盾のディテールがまたいい加減でいい。なんで十字のマークなんだとか(笑)。

氷川氏:連邦軍だから、とはいえ適当ですよねこれ。

庵野氏:でもごまかしだけじゃなくて、盾を使った戦闘シーンのカッコよさというのもある。

氷川氏:ランバ・ラルとのグフ戦で、グフが盾を斬ったらそこにいなかった、とか?

庵野氏:それもですけど、その前のガンダムが盾を構えて走ってるところ。盾の後ろにちょっと顔だけ見えてるっていうだけ、というカッコよさですね。しかも描くのは楽で。

氷川氏:その体勢で走っても盾と顔の上下運動だけですむと。

庵野氏:でもそれが盾を印象づける前フリになっていて、そのあとグフがガンダムの盾を斬ったらそこにガンダムがいないっていうシーンにつながってるんです。あそこは板野さんが描いたんだと思いますけど。

氷川氏:確かに板野さんは19話からだと言ってました。

庵野氏:盾がなくなってからガンダムのモニターに変な文字が出るんです。ああいう描き込みを板野さんは当時好んでやってたんですよね。劇場版のガルマ専用ドップのマーキングとか。

氷川氏:安彦さんの原画にはマーキングが入ってないので、板野さんが描き足したみたいです。

庵野氏:あれが、ガンダムが現用兵器に近づいた瞬間だったかもしれないですね。

氷川氏:今のアニメはモニタグラフィックスに凝るなんてのは当たり前になりましたが。

庵野氏:いろんな事を『ガンダム』が初めにやっている。エポックメイキングな作品ですね。

今では剣と盾を持って戦うというのはごく普通のことだと認知されているが、盾を持つというのは、実は日本の殺陣文化には皆無に等しく、ガンダムの盾を使った戦闘描写というのは極めて斬新なものだった。『ウィザードリィ』や『ドラゴンクエスト』などによるRPGブームよりも前のことである。

『ガンダム』と同じ1979年のアニメ作品『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』では、騎士ものでありながら盾がほとんど使われない、というのが『ガンダム』の戦闘描写が革命的であったことの証明となるだろう(そのかわり『燃えろアーサー』は馬上戦闘という難しいアクションをよくアニメで表現している)。また、ビームサーベルという『スター・ウォーズ』のライトセーバーと似た武器を扱いながら、『スター・ウォーズ』とはまったく違った格闘戦を演じていることも評価しておかねばならないだろう。……続きを読む
Re2:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 01:56:00
ガンダム』のルーツ的作品と安彦良和

氷川氏:一番好きなエピソードは何話ですか?

庵野氏:一話ですね。これは「ロボットアニメ」が進化した瞬間です。ロボットプロレスなんていわれてたものが、一歩どころか飛躍的に前に進んだ。その前の『ダイターン3』の最終話と全然違いますよね(笑)。

氷川氏:『ガンダム』より前の安彦さんの関わったアニメはご覧になっていますか?

庵野氏:だいたいは。『ロボっ子ビートン』……なかなかソフト化されないですねえ(笑)

氷川氏:やっぱり『コンバトラーV』ですか。

庵野氏:『コンV』ですねえ。出渕さん(出渕裕氏・νガンダムやパトレイバーなどのメカデザインで知られる。『ラーゼフォン』で監督デビュー)は、『ライディーン』からなんですけど、僕は住んでた地域の関係で『ライディーン』を見たのは『コンV』よりあとでした。

氷川氏:じゃあ『ライディーン』のマリを見たのは南原ちづるのあとなんですね。

庵野氏:ちづるはいいです(断言)。安彦キャラのひとつの究極じゃないかと。

ここも多少補足が必要だろうか。『コンバトラーV』のヒロイン、南原ちづるは安彦氏が描いたヒロインキャラの中でも特に人気が高い。品がありつつも活発で、優しく、乙女で、それなのに色気がある。サービスシーンも多い。何というか、アニメの女の子に本気でのめり込んでしまう、というのが本格的に始まった、その草分けともいうべき存在であるかもしれない。

庵野氏:『コンバトラーV』の処理もいいですよね。おもちゃ的なデザインをちゃんとキャラクターとして立たせていて。安彦さんが関わってなかったらこの作品の成功はなかったですよ。

氷川氏:『ボルテスV』はほとんどいじらせてもらえなかったらしいですね。

庵野氏:あれはあれでいいんです。成立していて。『コンバトラーV』も『ガンダム』と同じで、『ゲッターロボ』から一気に進化したんですよ。ちゃんと合体変形してカッコいいという。

氷川氏:合体バンクも安彦さんなんですよね。

庵野氏:当時、なんで毎週見てたかというと、オープニングと合体バンクを見るためだったんです。ビデオは家になかったですから、毎週合体バンクを見たくて、がんばって見てたという。合体バンクが終わったあとは、その週の作画の状態によって見るかどうか決めてました(笑)。

氷川氏:合体バンクいいですよね。

庵野氏:これは宮武さん(宮武一貴氏・スタジオぬえのメカデザイナーで、『ダンバイン』や『マクロス』など多数のメカデザインで知られる)の最高傑作のひとつだと思います。1号機(バトルジェット)と2号機(バトルクラッシャー)が合体する時のギザギザがロックするところ! あれですよ! それまでそういうのはなかったんです。あ、磁石ではなく物理的にロックするんだ、というすばらしさ!

氷川氏:磁力で4号機(バトルタンク)が吸い上げられるのもいいですよね。ふわっと浮き上がるのが。

庵野氏:1号機が超電磁発生機となっていて、そこからどんどん連鎖していくのがすばらしい。

氷川氏:惜しいのは、胸のところに一枚描き忘れがあるんですよね。リテイクされないまま最終回まで変わらなかった。

庵野氏:お金かかりますからね。

氷川氏:当時、8ミリのビデオが出ていて、合体バンクはすり切れるほど見たんですけど、最後の構えるところの腕を回す動きが、1カットだけ1コマ打ちになってるんです。通常3コマなんですけど。

庵野氏:そうなんです。タメが入るんですよ。腕がこうきてこうきて、ここのところがこうなって、こうくるタイミングがすばらしい。あと2号機の腕がこうのびるところがすばらしい。

「機動戦士ガンダムの誕生とアニメーター安彦良和展」より

ディズニーアニメや劇場版アニメなどは1秒間に24コマのフィルムが流れ、これを「フルアニメーション」と呼ぶ。これに対し日本のTVアニメは、原則として1秒間に8コマと、フルの1/3の枚数で作る「リミテッドアニメ」で、24コマの1/3であることから3コマ打ちと呼ばれている。だが、動きのなめらかさや重厚感を出したいカットなどには12コマ使う2コマ打ち、フル24コマを使う1コマ打ちを使うケースがある。コストも労力もかかるので、ここぞの場面で使われる。

素人には分かりにくいことだが、このように動作にタメやキレをつけることがアニメーションという芸術の極意のひとつなので、難解だが読み飛ばさずに理解を深めてほしい。

氷川氏:そういった「ロボットアニメ」のいろいろなものが積み重なって、『ガンダム』になるんです。長浜さん(長浜忠夫氏・『コンバトラーV』、『ボルテスV』などの監督)の作品がなかったら、『ガンダム』はなかったんじゃないですか。

庵野氏:だと思いますよ。長浜さん的成分も相当入ってます。シャアとか(ストーリーにからんでくる美形の敵は『ライディーン』のシャーキンが草分け的存在で、『コンバトラーV』のガルーダ、『ボルテスV』のハイネルなどを経てシャアに至る。ライディーンは富野監督と長浜監督両者が携わっている)。……続きを読む
Re3:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 01:56:55
氷川氏:当時の『アニメージュ』で、安彦さんの原画が載った号があって。見ました?

庵野氏:買ってました。原画って下書きじゃないんだってことを知ったのはこれが初めてで、原画がカッコいいって思ったのも初めてでした。田舎にいるとそういうものに一切触れることがなかったので。

氷川氏:このえんぴつ描きで絵を整えるところとか。

庵野氏:雑誌の表紙(安彦氏の描いたセイラさんが表紙になっていた)になって、初めてこういう風に描いてるんだと知って、衝撃でした。

氷川氏:どれくらいの速さで描いてるとか、どれくらい寝かせてるかとか、分かりますよね。

庵野氏:わかります。

当時、地方在住者にはアニメがどうやって作られているのかを知る手段はほとんどなかったと庵野氏は語る。玄光社の『アニメの作り方』やほぼ同人誌のようなものなどごく少数の書籍があるのみだったそうだ。

氷川氏:じゃあタイムシートなんかも?

庵野氏:存在を知らなかったですね。学生の時に板野さんの手伝いで『マクロス』やった時に現場で初めてタイムシートを見つけまして、よくわかんなかったですね。

氷川氏:それまで(庵野氏は自主製作アニメをやっていた)はどうしていたんですか?

庵野氏:全部描き送りで。当時は8ミリカメラで1コマずつ撮ってたんですけど、その時にこの画は1コマかな2コマかな3コマかな? ってやってて。

氷川氏:自分でシャッター押す時に(コマ数を決めていた)? リテイクの時どうするんですか? 再現できないじゃないですか。

庵野氏:再現できないです。リテイクも基本なしで。

氷川氏:じゃあ中割りとかは?

庵野氏:ないです。全部描き送りだったんで。

※描き送りとは、1コマ1コマ順番に描いていくこと。アニメでは原画と原画の間を繋ぐ中割りを後から動画マンが描いていくため、順番に描いていくという作成手順には普通ならない。

庵野氏:板野さんの手伝いをやった時に、原画っていうのは始まりと終わりを抑えておけばいいんだということを知りました。

氷川氏:原画はどことどこを描くのか、というのは感覚的に?

庵野氏:そうですね。感覚です。それからA1(の原画)からA2(の原画)まで、中割りを前に詰めるのか、後ろに詰めるのか、均等に割るのかというのも感覚です。

氷川氏:詰めるというのは?

庵野氏:板野さんの原画に、ここは前に詰める、ここは後ろに詰めるとか指示の目盛りが書いてあって、そんなの初めて見ました。板野さんの原画はそれがすごく多いんですけど。

これは先ほどの『コンバトラーV』の動作と同じで、動きにメリハリを出すためのものだ。中割りの枚数密度を増やすことで動きにタメが、密度を減らすことでスピード感が生まれるわけだ。それをやらないと動作速度が一定で、メリハリがつかなくなる。原画は絵がきれいなだけではダメで、動かした場合の動きの速度や力感もイメージできていなければならない。庵野氏が安彦氏の原画を「スピードとパワーと的確さがすごい」と評した意味がわかるだろうか? 安彦原画は絵がきれいなだけではなく、動きのスピード感、パワーの表現があり、かつそれが的確だと庵野氏は言っているのである。

「機動戦士ガンダムの誕生とアニメーター安彦良和展」より

庵野氏:板野さんの『劇場版ガンダム III』のジムがドムを斬るところなんて、さすがにそれはやりすぎだろうと。でもそういうのをやらないと、動画の人はうまくならない。難しいからヘタな人が板野さんの原画(の動画)をやるのは無理かな? と思うんですけど、大丈夫なんです。

氷川氏:板野さんはそれだけ(原画と中割り指示で)タイミングで抑えちゃってると?

庵野氏:そうなんです。どんなひどい動画の人でも、板野さんの原画は大丈夫ですね。『マクロス』でもそうでした。あっ、タイミングでアニメって保つんだなって知りました。

氷川氏:タイミングのうまい原画さんて、印象に残るんですか?

庵野氏:それはありますね。板野さんは空間把握能力が高いので、画に奥行きを出す時のタイミング指示がうまいです。奥に向かう時に、どれだけの距離感を出すかとなると、物体は奥に向かって進むと小さくなっていくわけですが、その小さくなり方がうまいんです。他にも爆発の、爆発球の広がり方がすごくいい。中1か中3か中5か中7しかないんですけど、その使い分けと、爆発が火球になるタイミングがすばらしい。

この中1~中7というのは、原画と原画の間に動画マンが中割りを描く枚数の指示。4パターンだけだが、使い分けによってスピード感が大きく変化する。また、始点となる原画と終点となる原画の間隔によっても速度感は変えられるので、板野氏は動画マンにはシンプルな4パターンの指示を出し、微調整は原画の間隔でやっていたと思われる。だからこそ原画は感性、センス、そして経験に左右され、原画のうまさは単純な絵を描くうまさだけでは決まらないのだ
Re4:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 01:58:13
庵野氏:僕は学生時代に板野さんの仕事の手伝いをして、その時に板野さんが安彦さんの『ガンダム』の原画と修正原画を見せてくれたんです。それと、アニメ原画のタイミング指示の存在を知って、こういうものを自分もやってみたいと思った。当時大学生でしたけど、これは今すぐやらねばならない、学びたいと。その気持ちを『ガンダム』の原画がすごく後押ししてくれました。板野さんとの出会いがなかったら、今の僕はなかったです。で、最初に板野さんに出会って、次が宮さん(宮崎駿氏・説明不要)。この組み合わせは世界中で僕しかいないですね(笑)。

氷川氏:そういうすごい人たちに導かれてきた庵野さんが「アニメの魅力は原画にある」と言ってくれることはすごく心強いです。

庵野氏:アニメの面白さってやっぱり画にあると思います。画以外にもいろいろありますけど、画による部分というのは大きい。『ガンダム』の1話が安彦さんの原画でなかったら、『ガンダム』のここまでの成功はなかったでしょう。

氷川氏:今見ても完璧、というと言い過ぎかもしれませんが、やりたいことが一通りアニメとしての画になってるというか。

庵野氏:富野さんの絵コンテを安彦さんが原画、修正まで含めてやっているというのが、『ガンダム』の1話のすごくラッキーなことです。他の人がやっていたらあれだけのものにはならなかったでしょうね。富野さんのコンテはよかったけど、残念だったね、で終わっていた可能性が高いです。それくらい安彦さんの功績は大きいです。

庵野氏がそこまで言うのは、こんな前例があるからだ。

氷川氏:『ザンボット3』は作監がいませんでしたからね。

庵野氏:『ザンボット』はひどかったですねー!(場内爆笑)

庵野氏:『ザンボット』はあまりに作画がひどくて途中で見るのやめましたからね~。金田さんの回が待ちきれなくて(4回に1回ぐらいだった)。人間爆弾の話になって、話が面白くなって見るようになりましたけど。キング・ビアルの合体なんて残念すぎます! あれ作画がもっとよかったらって……当時高校生でしたけど僕が直したいって思ってましたもん。

氷川氏:修正いれたいと(笑)。

庵野氏:それだけ厳しかったです。オープニングとエンディングは安彦さんの修正が入ってるんでいいんですけど。

氷川氏:『ザンボット3』の合体バンクは富野さんが描いたらしいですね。

庵野氏:あまりに原画がひどかったんで自分で直したらしいです。『イデオン』もひどい時はひどいですけど。

氷川氏:それを言ったらテレビ版の『ガンダム』だって。

庵野氏:『ガンダム』はギリギリセーフです。『イデオン』はひどすぎてやっぱり途中で見るのやめました。アバデデ様が死ぬところでもう一度引き戻されましたけど。

氷川氏:湖川さんも自分の担当回以外でもあちこち直してたみたいですね。

庵野氏:ええ、ところどころいいカットがある。……そういうどうしても何とかしたいっていう場合は、やってしまうんです。僕も『ナディア』の時にやりました。缶コーヒー持っていって「これ1枚直して」って。お金は出せないんで、あとは気持ちで。作監がいるので、作監が直した以上の直しはタブーだったんです。当然ギャラは発生しないので、僕のポケットマネーで。それはアニメの製作上、仕方がない。

氷川氏:安彦さんはコンテを見て、急所になりそうなところは全部チェックして手を入れてたそうです。ミハルの回とか。

庵野氏:あの回はかなり手が入ってますね。アニメはやはり画の力が大きい。絵コンテを見て監督さんのイメージを画にしなければいけないわけですから。宮さんなんか自分のイメージに合わない場合は全部自分で描き直していた。若い頃なんてほとんど自分で描いてました。僕が『ナウシカ』をやらせてもらった時は、ほとんど描き直されました。宮さんはほぼ一日中描いてた。他の人の描いた原画を下に置いて、上から自分で描いてたんです。ほとんど全部(笑)。

氷川氏:手が早いですよね。安彦さんも速いですけど。

庵野氏:宮さんも速いですよ。今のアニメの現場でも、本当にスピードとクオリティを持ってる人が何人かいますけど。『ヱヴァ:Q』で総作監やってもらった本田くん(本田雄氏、『ガンダム』的には0080と0083に原画で参加)や、作監補で入ってもらった井上さん(井上俊之氏・原画にこだわるアニメーターのひとり。『魔女の宅急便』『AKIRA』『スチームボーイ』『イノセンス』『おおかみこどもの雨と雪』など名だたる劇場アニメに多数参加)、このふたりはものすごいスピードでクオリティ高いものをあげてくる。ただ、『ガンダム』の頃とは画の線の量が違いますから、ガンダムを描くのとνガンダムを描くのでは、同じ速さというわけにはいかない。

単純な月産枚数で過去と現在を比較することはできない。しかしアニメーターは作業のスピードを求められるのも事実で、それは今も昔も変わってはいない。月に7~900枚やればうまくなる、と言われてもろくに絵を描けない筆者にしてみれば気の遠くなるような数字だ。それくらい絵を描くことがしんどいと思わない者だけがアニメーターとして育っていく、というのはいやはや、とんでもない世界である。
Re5:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 01:59:18
氷川氏:だからといってCGで、というわけでもないんですね。

庵野氏:CGはCGのいいところがあります。手描きは手描きのいいところがあって、そこは使い分けで。『ヱヴァ:Q』に出てきた空中戦艦なんかは手描きで動かすのは無理ですよ。CGでないとできないことはCGでやった方がいい。僕はメカはおいおい全部CGでいいと思ってるんです。メカ以外は手描きで……でもうまいアニメーターというのは今、相対的に減っている。70年代の勢いと80年代のすごい進化、そのあとの90年代以降はやはり停滞している感じがあります。20年近く。アニメーションの表現自体はレベルアップしましたけど。

氷川氏:そんな中で庵野さんの編集で安彦さんの原画集が出たわけですが。

庵野氏:30年近くさかのぼって、原点を見るというのはいいですね。原点に近いものを。これは現役の人、これからアニメーターになりたい人に見てほしい、持っててほしいという想いがあります。

氷川氏:安彦さんはイラストや漫画も描かれていますけど、安彦さんの描いた本当のガンダムというのは、原画にしかないんじゃないかと思うんです。

庵野氏:安彦さんの原画は本当にカッコいい。こんなにカッコいいのかと。『劇場版ガンダムIII』でのガンダムの動きは重量感と重力がすばらしくて、これは他の『ガンダム』ではなかなかないんです。歩きのタイミングとか、ゲルググと戦うところのスローから通常に戻るタイミングとか、気持ちいいんですよ。斬り払うところとか、突きの……本当はギャンなんですけど(笑)。

氷川氏:(劇場版では)ゲルググに描き直されて(笑)。

庵野氏:突きをよけてよけて、耳のところにかする時のハイライトの入り方とか、本当にすばらしい。安彦さんは人間としての動きをちゃんとモビルスーツにトレースしている。モビルスーツが人間の動きをするのがいいんです。

氷川氏:乗ってる人の性格が、甲冑のように表れているんですよね。

モビルスーツが人の動きをする、というと「メカなのにそれはおかしい」と感じる人もいるだろう。現在のプラモのようにより機械的なデザイン、メカらしい動きが好きだという人も少なくはないはずだ。だが、だがあえて言いたい。「ロボットアニメ」がこうもアニメ業界のメインストリームから外れてしまった原因のひとつは、キャラクター性の喪失にあるのではないかと。いわゆるラストシューティングの場面で、アムロはガンダムに乗っていなかった。それでもあのシーンに我々が特別な感情を持つのは、兵器として描かれたロボットであるガンダムが、同時にかけがえのないキャラクターだった証拠なのではないだろうか。
「目線」と「ずれ」と「CG」

氷川氏:キャラクターの目線の話をしたいんですけども、シャアとアムロが最終話でチャンバラしてる時のシャアの目線とか、どうですか?

庵野氏:やっぱり目が命ですから、キャラクターは。人物だけじゃなく安彦さんの描くガンダムの目がいいですよね。ザクも目がいい。一つ目の目線が。目線がすごく意識して描かれている。安彦さんの描くキャラは、どこを見ているか分かるんです。シャアも仮面をしてるけどどこを見ているか分かる。ガンダムも目は動きませんが、このひさしがあることで目線ができる。

氷川氏:(ガンダムの原画を見ながら)これ、目がちょっとずれてますよね。

庵野氏:ええ、ずらして描いてますね。それで目線ができるんです。CGだとこういうずれ方、目線はなかなか難しい。

氷川氏:これって、何なんですかね?

庵野氏:やっぱり微妙にずれてるからです。手のくせで。CGだと微妙にずれてくれないので、無理矢理微妙にずらすということもやってますけど。

氷川氏:CGでこの構図にして安彦さんの原画と重ねると、ずれますか?

庵野氏:そのずれがいいんです。CGではなかなかできないです。

氷川氏:CGだと正確なものになってしまうんですね。

庵野氏:某宇宙戦艦とか。手描きの方がよかったなあ……(場内笑)。

CGという新しい技術の台頭によって、手描きの需要も減っているのは事実としてある。しかし手描きなくしてアニメが続くとも思えない。「技術を残す」ということをやっていかないと、いつか行き詰まってしまうのではないか? そんな危惧も庵野氏のトークからうかがい知ることができる。我々のような見ている側は気楽なものだが、現場は切実なのではないだろうか。

庵野氏:安彦さんの原画集は本当に見てください。サイズは原寸大にはできなかったんですけど、オールカラーは実現できました。色も含めて原画はいいものなので。

氷川氏:「ガンダムフロント東京」の展示も見てください。原寸大原画もありますし、原画だけでも動いてみえる映像も展示してありますから。

庵野氏:動撮が見せられればなあ……動撮というのは、アニメと違って色が乗ってない動画があるんですよ。特に板野さんのはそうなんですけど、これがすばらしいんです。色をつけると迫力が半減するんですよ。動きとタイミングだけ、という必要な情報しかそこにないのが気持ちいいんですね。線だけで構成されているものが気持ちいいとは、普通は分かりませんよね。

ここでトークはひとまず終了となり、『機動戦士ガンダム』のBlu-rayボックスの紹介。付属している冊子化された絵コンテ(まだ制作中でサンプル)を見て「中身がない!」と憤慨したり、氷川氏がぜひ買ってくださいと言うと「もう予約済みです」と答えるなど、さすがオタクの中のオタクだった庵野氏。さらに簡単な〆のあいさつのあと、またコアファイターを注視する。クリエイターとして気になって気になって仕方がない様子だった。

今回のトークはぜひ、前回の安彦氏&板野一郎氏トークショーの記事と併せて読んでほしい。前回は『ガンダム』製作当事者の、今回は当時熱烈な『ガンダム』ファンで、現在第一線で活躍しているアニメーターの「ガンダム評」となっているので、対比してみると大変興味深い。個人的には前回の記事のまとめで描いた、安彦先生原画の「ガンダムの顔」と「目」について庵野氏もトークで触れてくれたところで、心の中でガッツポーズでした。もっとも、原画を見れば誰でも気付くことではあるのですが。あともし質問コーナーがあったとしたら、『ザンボット3』と『ガンダム』の殺陣の違いとそれぞれの魅力、なんていうものも語ってほしかった、などなど。

並のイベントでは味わえない濃さのトークが聴ける「ガンダムフロント東京」のスペシャルナイト。今後も要チェックである。

(C)創通・サンライズ
Re6:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 02:02:08
今年4月19日で一周年を迎えた東京・台場のダイバーシティ東京プラザ「ガンダムフロント東京」では、現在一周年記念としてさまざまなテーマで「企画展リレー」が行われている。現在開催されている企画展は『機動戦士ガンダム』放映当時より、キャラクターデザインおよび作画ディレクターを務めている、安彦良和氏をフォーカスした「アニメーター安彦良和展」。この一環として12日に「安彦良和×板野一郎×氷川竜介」トークショーが行われた。

左から氷川竜介氏、安彦良和氏、板野一郎氏

監督と並んで過酷な製作現場の屋台骨を支えてきた安彦氏が、今だから言えるぶっちゃけトーク満載で当時を語る! 本記事ではその内容をできるだけお伝えしたい。
製作現場がホワイトベースだとするならば、安彦良和はガンダムだった

壇上に現れた3人。進行役でもあるアニメ評論家の氷川氏、主役である安彦氏、そして『ガンダム』の制作現場に動画マン(途中で原画へ)として参加し、安彦氏を師と仰ぐ板野氏が並び、トークが始まる。会場の客席には安彦氏が1980年頃に描いたサンライズ第一スタジオ(通称1スタ)の『ガンダム』制作当時の現場イラストが配布され、その様子を見ながら安彦氏と板野氏が語り始めた。

氷川氏:これを描かれた時はイデオン(『伝説巨神イデオン』)のスタッフに変わってたんですよね。

安彦氏:記憶で描いたものだけど、あってるでしょ?

板野氏:ええ。こんなにみんなちゃんと座ってなかったですけど(笑)

『イデオン』や『マクロス』のイメージが強い板野氏だが、彼は当初、外で動画をやっていたが、5話ぐらいの頃に1スタの机がひとつ空くと言われ、10数話ぐらいで1スタにやってきたという。新人の板野氏について安彦氏は「いつ来たか分からないんですよ。いつの間にかいた」と、当時の多忙さゆえか印象が薄い模様。板野氏から見た安彦氏は、安彦氏が原画の修正作業中に原画紙をクシャクシャやって「あーっ!」っと叫ぶたびに、「あ、自分の(描いた部分)が使えなかったかな……」と戦々恐々としていたという。そして安彦氏が帰ったあと、安彦氏が修正したものを見て「ああ……安彦さんの絵、うまいな、すごいな」と憧れたそうだ。

安彦氏:しかし(1スタは)狭い部屋ですよこれ。狭くて暗くて半地下で。

板野氏:光も当たらなくて昼だか朝だか夜だか分からない、奈落みたいなところ。しかも床が小学校みたいにタールが塗ってあって、床で眠れない。安彦さんと富野さんは仕事が速くて、家庭もあるから電車のある時間に帰られるんですが、僕たちは遅いから帰れない。安彦さんたちは「すまないね~先帰るね~家庭があるから」って気を遣って先に帰られましたが、僕たちはいくら描いても全然終わらなかった。

安彦氏と富野氏は電車で帰る、とサラリと言っているが、これがどれだけすごいことなのか、アニメの製作現場を少しでも知っている人なら分かるはずだ。仕事量は他のスタッフの倍どころではないふたりがどんなスピードでどんなクオリティの仕事をしていたのか。やはり常人ではない。さらに板野氏からちょっとイイ話が。

板野氏:当時で印象に残ってるのは、ミハルの回で富野さんが絵コンテを切り終わって、安彦さんに見せたんです。それでふたりで男泣きしながらいい回だね、この回がんばろうね、みたいな話をしていた。それでおふたりが帰られた後でそのコンテを見たら、やっぱ泣けてくるんです。これまでの子ども向けのものじゃなく、新しいもの、ちゃんとした戦争をとり上げて、その中で弱い民間人が戦わされて死んでいくというものをちゃんと描こうとされていた。

こういったエピソードは、まず富野監督からは出てこない貴重なエピソードだろう。

板野氏:僕は人物の動きが苦手で、安彦さんのキャラは自然体でやわらかいのに自分のはボディビルダーみたいな絵で、下手で役に立たない。ロボットとかフラミンゴとか(有名なジャブローのフラミンゴ)、そういうことしか役に立てない。

安彦氏:フラミンゴってのは、240の紙(原画紙)だったんだよね。一番大きいやつ。普通のは100。それをやっていたので、かわいそうにと(笑)。あれは余計に(ギャラ)もらえたの? って聞いたら、いや同じですと(笑)

板野氏:ここのお金はいいかなって。下積みで修行させていただいたので。

あのとんでもない数が飛んでいる31話、ジャブローのフラミンゴの時点で日本を代表するアニメーターとなる片鱗がここですでに見えていたというべきだろう。しかし板野氏は、安彦氏が自分の作画監督回ではない回もすべて見ていた、と圧倒的な働きぶりを語る。

安彦氏:ミハルの回やテム・レイと再会する回とか、作画監督の担当回ではなくても気になるシーンや大事なとこは僕に回させてやっていた。それはアニメーションディレクターの特権。本当はもっと口出そうと思ってたんだけど忙しかったので、気になるところだけですね。アムロとララァの出会う回とか……で、あのあたりでダウンしたと。

『ガンダム』で安彦氏が担当したのは、アニメーションディレクターという作画に関する全統括者としての仕事、それにキャラクターデザインと各話数のうちのいくつかの作画監督(もっとありそうだが)。が、アニメーションディレクターとしてほぼすべてにおいて、可能な限りよいものを仕上げようと、何でもやっていたということである。それであまりの激務で体を壊し、入院(34話の作業中とされている)。最終話まで現場に戻ることはできなかった。劇場版では、終盤も多数の新作カットを追加している。

安彦氏:コンテを見るとやりたくて仕方ないんですよ。いろいろ手をつけたいんだけど、自分の能力(の限界)があるから。

板野氏:安彦さんは倒れるまで、肝心なところはすべて抑えていらっしゃって、すごいな! いつの間に? と。ランバ・ラルの戦死する回なんかも全部(手が)入ってますね。

安彦氏:この(トークを聞きに来ているお客さんの)中にもマニアの方がいらっしゃるだろうけど、何話の作監は誰で、原画は誰でなんて調べて、この回は安彦作監じゃねえよ! なんていう人もいるけど、そんな単純なものじゃないよ(笑)

エンディングにクレジットされてる情報がすべてじゃないということ、肝に銘じたいものだ。そこから「やはり当時は毎週大変でしたか?」との氷川氏の質問から、メカ作監の話に。
Re7:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 02:06:37
安彦氏:こうだったらよかったなと思うのは、当時はメカ作監がいなかったんだよね。メカ作監っていつからできたのかね?

板野氏:『マクロス』からですね。私なんですけど。

安彦氏:あなたがメカ作監第一号なの?

板野氏:そうです(笑)(会場笑)

欲しがっていたメカ作監第一号が、まさか自分が教えた若手だったとは……安彦氏はその事実に驚くも、さらに『マクロス』でのメカ作監料は1本5万円で、キャラ作監の美樹本晴彦氏の1/4だったという。

安彦氏:美樹本晴彦はキャラ作監で20万もらってたの?(会場笑)

板野氏:そうなんです。メカ作監というのはなかったので、1本5万。え? 動検より安いの? って。そして(『マクロス』の)10話で倒れるんですよ(笑)。人は無理したら倒れるんです。

安彦氏:当時は作監のなり手がなくてね。原画の方がいいと。

板野氏:そうですね。僕も『マクロス』の時に1本まるまる(メカ作監として原画を)直したんですけど、メカ作監の5万円だけでした。もし原画をまるまる1本描いていれば100万円以上になったのに、ひどいもんですよ。

安彦氏:それは深刻な問題だよ。

板野氏:倒れたあとに、7万円になりましたけど。動検と同じになりました。(場内爆笑)

悲しいかな、今も昔も変わらぬアニメ業界の労働環境。しかしそれに追い打ちをかけるような悲劇が1スタを直撃する。

板野氏:安彦さんが倒れたあと、レイアウトを描いてくれる人がいなくなり、安彦さんの前の話の修正画を見て、作監修正紙を見て……そこからザクやガンダム描いていました。前島さんはキャラ描いて、担当を分け、死にものぐるいで……。その頃はもう打ち切りが決まり、ガンダム(のように働いていた)安彦さんがいなくなり、富野さんブライト(監督=艦長)はスポンサーから「打ち切りだ、本は売れねえ、オモチャは売れねえ、お前がマスターベーションこいてるからだ」と言われて大ダメージを受けちゃいまして。

『ガンダム』を作っていた人たちが安彦氏をガンダムに例える――それがどれほどのことか。1機のモビルスーツで戦局を変えられるものではない、とウッディ大尉は言ったが、1スタというホワイトベースは星一号作戦あたりからガンダム抜きで終戦まで戦ったと考えると、その恐ろしさも分かるというものだ。

「アニメーター安彦良和展」より
ガンダムの味方はファン、敵は……ザ・ウルトラマン!?

そんな満身創痍の1スタを支えたのは、ファンだったという。

板野氏:最後の砦がファンレターだったんですよ。当時の大学生が、普通だったらムック本買いますよね? でもスポンサーがバカだから子ども向けの絵本ばっかり出す。強いぞガンダム、がんばれガンダム、僕らのガンダムみたいなの(笑)。でも大学生が買ってくれるんですよ。

氷川氏:遊園地をザクが襲うやつとか(笑)

板野氏:超合金のガンダムとかね。富野さんが大嫌いなオタクが、ゼネプロ(ゼネラルプロダクツ)やガイナックスの連中で、あいつらが支えてくれた。だからあいつらのこと嫌いだなんて言っちゃいけませんよって、富野さんのイベントで言ったぐらいですからね。

そして『ガンダム』の同人活動によって発掘された新たな才能も。

氷川氏:当時サンライズに届いたファンジン(当時の同人誌の呼称)の中に、河森さん(河森正治氏)や美樹本さんのもあったんですよ。

安彦氏:(美樹本氏の絵を)初めて見た時、俺がいつ描いたの? って思ったもん。素人なのに。

板野氏:(美樹本氏が描いた)『マクロス』のキャラ表の一稿が、あまりに安彦さんの絵にそっくりすぎてこれじゃダメでしょう! ってボツになりました。そこまでそっくりでしたから。

安彦氏:なぜ(美樹本氏が)現場にいなくて、同人誌にいるんだっていうね。不条理だよ(笑)

安彦氏:それで『クラッシャー・ジョウ』を手伝ってもらおうと思ったら、もう『マクロス』が動いてたっていう。

板野氏:この82年頃は密度がすごくて『ザブングル』があり、(『ガンダム』の)『めぐりあい宇宙』があり、『イデオン発動編』、『マクロス』、『クラッシャー・ジョウ』って、おかしいでしょ。

氷川氏:板野さんの出現率高いですよね。

板野氏:全部参加させていただいてますね。

この時代を小学生として過ごさせてもらった身としては、ただ感謝しかありません。しかし、次に語られたことより、当時の現場には知られざる敵がいたことが明らかになる。
Re8:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 02:08:24
板野氏:『ザ・ウルトラマン』(1980年4月から放映されたアニメのウルトラマン。サンライズ製作)が始まって、肩身が狭くなっていきましたよね。

安彦氏:(『ガンダム』の)番組担当の渋江プロデューサーが現場にいないんですよ。『ザ・ウルトラマン』が始まって。あっちはTBSでゴールデン、円谷プロの関係もあって……こっちは名古屋テレビ。どう考えてもあっちが本線だよな(笑)。たまに(1スタに)来てもウルトラのことしか考えてないの(会場笑)。

板野氏:自分も(『ガンダム』終盤、安彦氏が倒れて大変な時に)ウルトラの動画やらされましたからね! ウルトラのイベントがあるんで出てくれって言われましたけど、断りました。

安彦氏:それで神田君というアシスタントプロデューサーが(『ガンダム』を)全部やってくれてたんだよね。功労者ですよ。でも彼、『ガンダム』のテレビシリーズが終わったらこんな会社にいられねえって、出て行っちゃった。今何してるんだろう? 神田君をはじめ、制作進行はみんな出て行った。何も報われてない。かわいそうなことですよ。いたたまれない。
日本のアニメ史を左右した(かもしれない)出来事

『ガンダム』放映終盤、安彦氏が倒れ、そこに『ザ・ウルトラマン』が追い打ちをかけ、スタッフが身も心もボロボロになり果てたところに、ある人物が現れる。

板野氏:安彦さんが倒れられたあと、安彦さんの席に『イデオン』のキャラ表が遅れてる(『イデオン』は1980年5月より放映)というので、湖川さん(湖川友謙氏:『宇宙戦艦ヤマト』『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』などの作画監督、キャラクターデザイナー)が来たんですよ。それで3日カンヅメになってその時にご縁ができたんです。

安彦氏:僕の席でやってたって、30年以上経ってから知ったよ。

板野氏:安彦さんが入院されてから、もうアニメはやめて漫画やイラストをやるんだと聞きました。次の師匠を探さないと……という時に湖川さんに声をかけていただいたんです。『イデオン』の2話を手伝ったあとに、オープニングが遅れていると聞き、助っ人としてオープニングのイデオンが地面からガーッっと出てくる原画を描いたら「板野君、こんなの誰も動画できないから動画やって」と言われました(会場爆笑)。それからビーボォーでお世話になることに。

氷川氏:それで"板野サーカス"が生まれた(板野氏が得意とする誘導ミサイルの変態的な軌道や機動メカの高速運動などを「板野サーカス」と呼ぶ。『イデオン』以後有名となる)んですね。

板野氏:感性と安彦さんの柔らかい芝居とか職人芸、天才肌のものとか、全然足下にも及ばないですけど、それと湖川さんの方程式的な、三点統一的な投射図法というか、自分が設計図面をやっていたから(学びやすかった?)……それとキャラクターの石膏デッサンくさいというかあおりの角度の、顔変になるけどリアルという、安彦さんとはちょっと方向が違いますが、相対するおふたりの良さを自分の中で消化しながら、できることはないかなと。

安彦氏:湖川君は僕の高校の2年後輩なんだけど、業界では先輩で、僕が業界に入る前からタツノコで三羽烏と呼ばれるくらいだった。

氷川氏:湖川さんは『ガンダム』もやっておられましたね。6話のガルマの回で。

安彦氏:え?(完全に初めて知った模様)

氷川氏:安彦さんの作画監督の回です。

安彦氏:……やってんの?(原画集を確認)

氷川氏:名前は出てないです。

安彦氏:そう……それはモグリなんだよ。平野君はダメなんだ(平野俊弘氏 現・平野俊貴氏:『マクロス』の作画監督、『破邪大星ダンガイオー』『冥王計画ゼオライマー』などの監督を務めた)。作打ち(作画打ち合わせ)に来ない人に仕事を回しちゃうから。今回みたいなうれしい行き違いなんかも起こるけど基本的にはダメなんだよ。いないから言うけど(笑)。何のために半日もかけて作打ちをやるんだってね。

板野氏:最初はやる気なんですよ。でも時間がなくなって、回しちゃう。

安彦氏:じゃあ作打ちやんなくてもいいじゃない。やる人は作打ちにこないと。……でも(湖川君のことは)初めて知った。今日初めて知ることがいっぱいあるな(笑)。
Re9:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 02:09:11
氷川氏:安彦さんが原画をひとりで描かれるようになったきっかけって何でしょう? 19話の「ランバ・ラル特攻!」からひとりで描くようになったんですよね。

安彦氏:作打ちをやる、原画さんに配る、上がってきたものを作画監督が修正する――そういうやり方の中で、そのシステムに違和感を感じた。作監というのは修正屋だから、原画より(ギャラが)安い。ところがそれは作監の良心に任せるわけだから、フリーパスでもいいわけ。「チェックしました」と言って何もしなくてもお金がもらえる。でもこだわりを持ってる人はとことん直したり、手を入れる。すると原画がほとんど使い物にならなくて、ほとんど作監が描き直しても作監料は変わらない。で、原画料はちゃんと払われる。NGだから原画料を払いませんというのはこの業界にはないんです。

安彦氏:作監も原画も手抜きをしようと思えばいくらでもできてしまう。逆にこだわりを持ってやる人はとことんやる。が、やる人ほど儲からない仕組みになっているわけ。そこでレイアウトやラフ原画、今でいう第一原画(通称:一原)を描いて、若手に渡す。そうすることで一から原画マンが描くより修正の手間が減るのではないか――というシステムを考え、やってみたのが『ガンダム』19話「ランバ・ラル特攻!」だった。

安彦氏:それでやってみたら、まず人の仕事を褒めない富野由悠季(当時は喜幸)がですね、ありがとうって言ってくれたんです。いい仕事をしてくれたと。びっくりしちゃってね。聞き間違いじゃないかって(場内爆笑)。

このやり方はいけると思い、劇場版『ガンダム』と『クラッシャー・ジョウ』でも採用された。しかし若い人を使い、レベルアップを促すにはいいものの、キャリアのある人を使うには気を遣うので難しかったという。

安彦氏:劇場版の『ガンダム』で板野くんなんかとやる時には、アイコンタクトで意思疎通ができるけど。(板野氏の)原画一枚見て、甘いな~って(笑)

板野氏:そうですね(笑)

安彦氏:それで構図一枚(描いて)やって、できればいいわけです。だけど(原画マンに)預ける余地が少ないんで、つまんないだろうと。やっていてつまらないのは、つらいから、やりがいを感じてほしい。それは(さじ加減が)難しい。

氷川氏:板野さんはどうでした?

板野氏:いやー、それは一枚でも多く安彦さんのレイアウトが入っていた方が、ありがとうございます、勉強になりますってなるんですけど、劇場版『ガンダム』のザンジバルの逃げるとこの透過光とか、遊べるとこは遊ばせてくれるんですね。基本的にはレイアウト通りちゃんとやるんですけども、途中で自分なりの遊びを入れて、認められようとがんばるんです。

氷川氏:板野さん、いろいろ安彦さんのレイアウトに描き足してますよね?

板野氏:ガンキャノンの投げる手榴弾にバーニアをつけたりとか、そういうやつ。あと、連邦軍にはジムとボールしかいないのに、鉄人を描いたり(ア・バオア・クーの戦闘で連邦軍の機動部隊にこっそり描き込まれている)。そしたら、色指定の人から「鉄人は何色ですか」と電話がきて「白黒なんで分かりません、青だと思うんですけど」と答えました(笑)

氷川氏:描き込みを増やすというのは(安彦氏的には)どうなんでしょうか?

安彦氏:ディテールをはぶくっていうのは、アニメの至上命題だったんです。ロボットもののデザインやキャラシートを作って見せると、線が多いね、色が多いねって動画マンや色指定の人に言われる。じゃあ影減らそうとか。

氷川氏:『ガンダム』を見ると、青い部分は影があるんですけど、赤の部分は影がなかったり。

安彦氏:あれは妥協です。そうやってなんとかやりくりしているのに、言ってもいないのに描き込みを増やしやがる奴がいるんです。誰とは言わないですが(場内爆笑)。

板野氏:すみません(笑)

安彦氏:こんなに描いて、終わらないよと。そういう奴が出てきて、そうしたところに大友みたいなの(大友克洋氏 『AKIRA』や『スチームボーイ』など)が面白がって介入してくるとまたとんでもないことになる。

それこそがまさにアニメが進歩、発展してきた歴史であることも事実なのだが、安彦氏はディテールの追求は、省略と誇張の技術であった従来のアニメとは逆の方向性であると語り、その是非に一石を投じる。

安彦氏:アニメーターはだんだんオールマイティというのが要求されなくなってきて、メカはメカ屋が、と専門化、分業化してきている。今は下着デザインとか、モンスターデザインとか?

氷川氏:今は弁当デザインもあります。弁当の作監がいるんですよ。弁当アニメの(笑)。

安彦氏:そのようにどんどんスペシャリスト化していく。それが果たして幸せなのか。オールマイティだったというかアバウトだった時代って、いい時代だったんじゃないかな?

板野氏:そうですねえ。

安彦氏:あなたがある意味戦犯なんだけど(笑)。

板野氏:いや、僕はずーっとミサイルや爆発やメカを描かされてきて、拷問みたいなもんですよ。もちろん好きなんですけど、好きだからって毎日カレー食わされたら、ああ……天丼食いてえなってなりますよ。それなのにもっと10倍辛いカレー、100倍辛いカレーって求められてきて、ええー! って。

安彦氏:なかなか(得意分野を)越境できなくなるでしょ?

板野氏:はい。しんどいですね。描き込みといえば、ビッグ・トレーって迷彩じゃないですか。あれは当時、富野さんが(迷彩だけど)引きだからいいよね? いいよね? って(笑)。

氷川氏:そういう(描き込みが敬遠される)時代だったんですね。

板野氏:仕上げの人は恐いですから。当時、スタジオディーンの長谷川さんという社長に、何かの宴会で後ろから殴られました。「板野ぉ! お前の動画は描き込みたくさん、色もたくさんで、仕上げが生活できねえって何人辞めていったと思ってんだ! ふざけんな!」ってケンカになったり。

安彦氏:でもディーンの長谷川君て、押井守のめんどくさいのやってんだよね(場内爆笑)。

板野氏:押井さんは偉いけど、こっちは下っ端だから後ろから殴ってくるっていう(笑) 動画殺しとか仕上げ殺しとか呼ばれましたけど(笑)。

いやはや、アニメの世界というのはかくも難しきものであり。
Re10:「安彦良和の原画にガンダムの成功があった」- 庵野秀明が語る『機動戦士ガンダム』の魅力と原画の重要性 [ しるく♂ ] 2014/07/26 02:09:56
トークも終盤となり、最後に板野氏は、アニメ史における安彦氏の仕事の重要性を語る。少々長くなるが、ここからの言葉は記録として残すことに意義があると思うので、ほぼそのまま掲載したいと思う。現役アニメーター、あるいはクリエイターを目指す人はぜひご一読願いたい。

板野氏:氷川さんや庵野君に感謝です。今もう二歳以下の子どもを除けばほぼ『ガンダム』というネームバリューは通じると思う。それはアニメを安彦さんと富野さんが支えた証拠、歴史じゃないですか。それは大事なものです。安彦さんの原画集も、後輩に全員買わせました。自分のところにサインを入れて(笑)。安彦さんの絵のところはダメだよ! と言って。

安彦氏:原画集のオファーが来た時、それはちょっとダメでしょって断ったの。そしたら庵野君が来て、えっ? あの庵野君が? と。実際に会ってみると、板野君が"板野さん"て呼ばれていて、庵野君が「板野さんは師匠なんです」と言うわけだ。僕は、君が"板野さん"て呼ばれる顔が思い浮かばなくて久しぶりに会ったら、あ、マゲになったんだ! と(笑)。若い人にとって30年ぶりというのは気が遠くなるような話だと思うんですよ。そういう人たちに言っておきたい。あっという間だよ30年なんて(場内爆笑)。

安彦氏:それとこの原画集はさっきも言ったアバウトだった時代の記録にもなると思うんですよ。アバウトって、日本のアニメにとって大事な要素だと思うんだよね。今アニメは非常にスペシャルな仕事の集積になって、業界的に"クオリティ"と呼ばれているらしいけど、日本のアニメーションは元々クオリティで勝負していないっていうのが持論なんです。

安彦氏:それがいつの間にかクオリティが高いということを、事情も何も知らない世間の人がおだてるようになって、業界もおだてに乗ってクオリティを維持しなければ……そうして、どんどん仕事を細分化している。それはおそらく間違っていると思う。そうやって自分の首を締めてるだけじゃないか、そういう勝負をしたら世界に勝てないんじゃないか、という気がする。それを板野君なんかにも聞いておきたい……が、今日は時間がない(笑)。基本はアバウトなんですよ。そこの中にマインドを込めてやっていたわけ。ある時はゲリラ的に。それが原点だということを、こういう乏しい資料をもとに現役の人たちに知ってもらいたい。

板野氏:本当にネットでの評判を見ても、業界の方がものすごく(安彦氏の原画集を)買われている。この原画集はバイブルになっています。安彦さんのレイアウトとか(キャラの)目力とか、"アバウト"とおっしゃられましたが、感性の豊かさ、人間らしさ、キャラクター性、猫背だったり、力みだったり、全部入っている。それを今育てている「グラフィニカ」っていう会社の新人アニメーターに教えています。

安彦氏:今アニメの仕事はやっていませんが、自分なりにこだわりを感じる仕事をやっております。当てようとか、儲けようとか……そういう仕事はたぶんしていない。日本のクリエーターは、自分のこだわり、やりたいことを作品にしたい、形にしたい、見てもらいたい、ということでやっている。それが共通したスタンスだろうと考えている。その中で、たまたま当たって、長く愛されることがまれにあるわけ。そのまれにあることを果たしうるというのは非常に幸せなこと。その幸せが自分に巡ってくるとは、当時もまったく思っていなかった。今日、いろいろ秘話が出たと思うんですが、もうひとつ秘話を紹介します。

と言って安彦氏は、富野氏と一対一で話した過去を振り返った。

安彦氏:『ガンダム』が当たった時、富野さんと一対一で話をしたことがある。富野さんは「ねえ、安彦くん、俺はね『ガンダム』で10年食いたいんだよ」と非常に生臭い話ですけども、そう言った。僕はその時富野さんに「富野さん安心していいよ、たぶん10年は大丈夫だよ」と言った(笑)。食うというのは下世話なことだけど、我々にとってこれは大事なことです。そのことに関して富野さんはリアルにものを考える人だった。僕は冗談まじりに10年は大丈夫だって言ったら、まさか30年経ってまだこんな状態だとは夢にも思わなかった。でも当時、僕も富野さんもサンライズも(これほどの成功を)望んでなかった、思っていなかった。

安彦氏:この幸せについては十分に感謝しているつもりです。しかし、夢よ、もう一度、なんてことはまったく考えていない。おそらく富野由悠季もそうだと思います。そういうスタンスでクリエイターたちは仕事をしているということを、覚えておいていただきたい。もちろん個人差はあります。ですが、そのスタンスというのは、日本のクリエイターたちの、一種の"男気"で、それがおそらく生命線だと思われる。さっきディテールの話で過ぎた話をしましたけど、もうひとつ過ぎた話をしますと、日本のクリエイターたちは、女であってもね、"男気"で仕事をしている。それが原点、それが世界で通用している原点だと思います。ひとりの男として、板野君にも無理矢理賛同を求めたいが……ねえそうじゃないかい?

安彦良和氏

板野氏:はい、その通りだと思います。葉隠れとか武士道とか、日本に伝わる、金とか名誉とか立場ではなく、自分の信念で動く――という。それは安彦さんや富野さんの背中を見て、石原軍団じゃないですけども、本当にいい作品に携わり、育てていただいた感謝の気持ちがあります。それを後輩たちにも伝えていきたい。ありがとうございました。

最後に板野氏が「今日は久しぶりに先生にお会いできて、僕は裏でサインもいただいて、それだけでも幸せです。本当にありがとうございました!」と心からうれしそうにしていたのが印象深い。『ヱヴァンゲリヲン』の庵野秀明氏が師匠と仰ぐ板野一郎氏がサインをもらって喜ぶ先生、それが安彦良和という伝説のアニメーターなのである。

若い人はこの記事を読んでもどれだけ凄い人なのか、ピンとこないかもしれない。ならば5月31日に発売された『庵野秀明責任編集 安彦良和アニメーション原画集 「機動戦士ガンダム」』を手に取るか、7月31日までお台場・「ガンダムフロント東京」で開催中の『アニメーター安彦良和展』を見に来られるといい。筆者も絵の技術には疎いのだが、展示されている安彦氏の原画と、実際のアニメのカットが並べてあるものを見て驚いた。原画の方がきれいなのだから! ミライさんの目なんか、原画の方が全然美しいのだ。キャラ絵だけなら分からなくもないが、ガンダムまで原画の方がカッコイイのはどういうことなのか?

安彦氏が描いた原画のガンダムの、カメラアイやブレードアンテナ、バルカン発射口にあご、頬などの配置バランスやサイズの比率があまりに完璧すぎて、仕上がったセル画の方が乱れているのだ。作業にかけている時間を考えるととても信じられないのだが、これが先生と呼ばれる人物の仕事なのである。板野氏は、武士道に例えたがまさにそれで、武術の達人の技に等しいといえるだろう。絵を描く人であれば筆者より遥に凄さが理解できるのではないだろうか。

なお、板野氏が現・A-1picturesの社長とトイレに隠れて原画泥棒を待ち伏せした話や某プロでの悲惨な話など、掲載しきれなかったエピソードも多い。「ガンダムフロント東京」でのトークイベントはぜひ生で見ることをおすすめしたい。7月26日には「ガンダムフロント東京」にて、今度は庵野秀明氏と氷川竜介氏のトークショーが行われる。『ガンダム』を当時ファンとして体験し、今や当代きってのアニメ監督となった庵野氏が語る安彦氏の仕事とは? こちらも必聴間違いなしである。

(C)創通・サンライズ
- ユニメモ [ しるく♂ ] 2013/10/17 03:24:58
http://qrsl.com/sp/unimemo/change/change_check.php?token=KBR6Hts3KOHjHV
Re:サンワダイレクト パソコンラック スリム W750 [ しるく♂ ] 2014/01/19 00:31:59
サンワダイレクト パソコンラック スリム W750
Re:ユニメモホール音響 [ しるく♂ ] 2014/02/16 00:33:45
ホール音響
- サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2011/06/23 01:00:18
[商品合計] 48,500円
[送料] 送料無料
[合計金額] 48,500円

◆ アンケート
問1[備考]



[お届け商品] (全て税込価格)
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[品番]sammy58
[品名]パチスロ装甲騎兵ボトムズ
税込単価:35,000円 数量:1 小計:35,000円
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[品番]option8
[品名]◆データカウンター【差枚数カウンター機能付き】デー太郎ランプ5
税込単価:8,500円 数量:1 小計:8,500円
----------------------------------------------------------------
[品番]option1
[品名]コイン不要機/サミー ボトムズ
税込単価:5,000円 数量:1 小計:5,000円
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■お支払い方法 -----------------------------------------------------

[銀行振込]
ジャパンネット銀行 本店営業部
普通 3064741
カ)ジエツトスクエアーエースロツト

Re:ミリオンゴッド [ しるく♂ ] 2011/09/16 23:27:42
※ 商品名 : ミリオンゴッド
※ 小計 : 47,660円 X 1個 = 47,660円 (税込)
※ オプション : [コイン不要機] コイン不要機B(+6380円), [スロット専用カウンター] ゲーム数カウンター(+1480円)


※ 配送方法 : 佐川急便
※ 送料 : 1,800円

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商品合計(税込) : 47,660 円
送料計 : 1,800 円
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請求総額 : 49,460 円





〇 伝達メッセージ :
〇 配送希望時間 : 午前中


【決済情報】
■ 奈良信用金庫 (お振込み先 : 奈良信用金庫 大宮支店 普通 0135488 スロットエース セキ コウジ)
振込手数料は、お客様ご負担となりますのでご了承ください。
Re2:ミリオンゴッド [ しるく♂ ] 2012/03/04 21:58:46
こんばんは。
早々にご連絡を有り難う御座います。
ご連絡を頂きました内容に関しましては承知致しました。m(__)m

早速ですが下記にお取り引き内容を記載させて頂きます。
∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝

【お支払い合計】
落札価格+送料+データカウンターにて\147300となります。
お支払い方法につきましてご連絡を頂けますと幸いです。
【お振込先】
ジャパンネット銀行
すずめ支店
普通 1215732
名義 ユ)エナジー

399-8302
長野県安曇野市穂高北穂高2827-28
(有)エナジー
電話番号 0263-31-3904
担当 平林
携帯電話 090-3142-5360
Re3:ミリオンゴッド [ しるく♂ ] 2012/03/07 02:38:08
これで7セット獲得?!
※手順1※
クレジット0から開始
手入れ15枚→『レバー下に叩く→順押し消化(一つのボタンにつき3秒間押す)』
上記『』内を3回行い、手入れ6枚→2ゲーム間ハサミ打ち消化→残り全てのクレジットを
順押し消化で消化
※手順中にリプレイを引いたらNG
-----
※手順2※
液晶に合わせて次ゲームの打ち方を変える。
左右が偶数orそれ以外(例:252、458、412、245など)
◆順押し
左右が奇数(例:143、337、525など)
◆ハサミ打ち
上記を15枚役が2回成立(内部成立は×)するまで行う。
リプレイが二連してからARTに突入する。
※液晶に『224、442』が連続で出現した場合はNG
※手順中NG,失敗した際はクレジット0にし手順1からやり直して下さい。
これの手順1終了後、次ゲームで遅れ発生
どうせガセだろうと思って左手止めたらちゅうだんGODの液晶7
通常モード以上のハズレか思いながら期待して中リール止めたらGODテンパイ!!
Re4:ミリオンゴッド [ しるく♂ ] 2012/07/25 23:53:41
http://www.ath-j.com/cbbs2/cbbs.cgi?mode=al2&namber=4550&rev=&no=10&KLOG=24
Re:サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2012/12/29 01:33:28
Re2:サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2012/12/30 03:17:22
https://www.777town.net/app/FreeMemberEntryControl.jsp?TYPE=ENTRY&PARAM=20121230icly8sh58pWyo02Riv9084G4mnSLB7Rg1D6EJ1sUV5RbL08D2JS6mm4t

Re:サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2013/01/22 22:59:16
http://androidlover.net/tablet/amazon-kindle-fire-hd/install-google-play-store.html


Re2:サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2013/01/22 23:28:14
http://androidlover.net/tablet/amazon-kindle-fire-hd/install-google-play-store.html
Re3:サミー ボトムズ [ しるく♂ ] 2013/02/18 22:00:00
オプションにて
コイン不要機 5670円
以上1点のご追加承りました。

合計金額は 92170円です。
銀行名
三菱東京UFJ銀行
支店名
高松支店
銀行名(カナ)
ミツビシトウキョウユーエフジェイ 支店名(カナ)
タカマツ
銀行コード 支店コード
口座種別 普通
口座番号 1044961
口座名義人 ユ)エクスフォーセス
- Xbox [ しるく♂ ] 2011/03/19 23:41:03
このたびは Xbox カスタマーサポートへお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。

また、ご希望の自動更新の停止がすぐに行うことができなかったとのことで、
ご不便をおかけし誠に申し訳ございませんでした。

オンラインから解約ができなかったというのは、
下記手順でエラーが発生したという状況になりますでしょうか。

【自動更新停止の手順】
1 - Xbox.com にサインインをしていただきます。
2 - [マイXbox]の[アカウント情報]をクリックします。
3 - [メンバーシップ オプション]の[メンバーシップのアップグレード/管理]をクリックします。
4 - 左側に[自動更新:オン] と表示されますので、「オン」の緑色のリンクをクリックします。
5 - [次へ]をクリックします。
   ※何度か同じ画面が表示されることがございますので、切り替わるまで[次へ]をクリックしてください。
6 - 次の画面が表示されましたら[自動更新 オフ]にチェックを入れていただくことで、
次回の自動更新を停止することが可能でございます。

上記手順でお手続きが行えなかった場合には、お電話にてアカウント情報を確認させていただき、
お手続きを行わせていただきます。

なお、誠に恐縮ではございますが、お客様情報のお取り扱いをしていないメールサポートからは
ご案内差し上げられない内容となりますので、以下の項目をお手元にご用意のうえ
Xbox カスタマーサポートまでお電話にてご連絡くださいますようお願いいたします。

【ご確認項目】
・ゲーマータグ
・ゲーマータグに結び付けられた Windows Live ID
・クレジットカードでお支払いの場合には、カード番号の下 4 桁
・Windows Live ID 作成時に登録した、秘密の質問に対する答え
・氏名
・住所
・電話番号
・連絡先のメールアドレス

<Xbox カスタマーサポート>
0120-220-340 (携帯電話などからは 03-5767-4551)
受付時間 10:00 ~ 18:00 (日、祝日を除く)

お電話の際は、お問い合わせ番号「1151022860」をオペレーターへお伝えいただきますと、
本メールの内容を確認のうえ、続きから対応させていただくことができます。

末文ではございますが、今後とも弊社製品にご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

Xbox カスタマーサポート
- CR牙狼~RED REQUIEM~ [ しるく♂ ] 2011/01/10 22:28:00
CR牙狼~RED REQUIEM~
Re:CR牙狼~RED REQUIEM~ [ しるく♂ ] 2011/01/10 22:28:37
002
Re2:CR牙狼~RED REQUIEM~ [ しるく♂ ] 2011/01/12 23:54:41
http://rie.bambina.jp/yanekobai/
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