イロコイの始まりなんてものは、たいがい一緒で
なんとなく、あの子がいいなあって思って
そのなんとなくが募ったりして、そのうち
手が付けられなくなるのが常。
そんな気持ちの揺れの、記憶に残るいっとう最初を
覚えておられますか。
初恋とかいって、古くはカルピスの味と言われておりました。
甘酸っぱくて、乳臭い味。
で、そんな初恋の人とバッタリ再会したり、チラと見かけたり
そんな思い出もおありでしょう。
街中で、電車の中で、あるいは路上で。
甘酸っぱいばかりか、ほろ苦かったりして
なかには涙の塩っ気が混じったりして
カルピスだか珈琲だか塩水なんだかわかんない状態。
そしてそれは、何もヒトに限ったことではございません。
カプチーノがちょっといいかも、って思って
それがべた惚れにかわる、きっかけの一台がありました。
いわば初恋の一台です。
会社の近くの、毎日降りるバス停脇に駐車場があって
そこに停まっていたのが、その一台。
黄色のカプチーノです。
実はこのバス停は特異点で
黄色のカプチーノは停まっているし
バスから降りるタイミングで
黄色のビートは走り抜けるし
黄色のコペンは、つい先の路地を曲がるしっていう
世にも珍しいスポットでもありました。
ともかく、そのうちの一台、黄色のカプチーノに
私はやられた訳です。
毎朝、バス停から降りて、ちょっと拝見。
いいフォルムだなあ、とつくづく。
黄色というのはオールペンしたのか、とふむふむ。
不審者にならないようにさりげなく、でも
はたから見ればバレバレですよ。
晴れだろうが雨だろうが眺めてりゃ。
それから数か月。
わがスプラウトが納車されて、それで会社に行くようになって
めっきりあの子に会わなくなった。
どうしてるかな、と気になることはあるけど
わざわざ足を向けることもない。
ごくまれに近くを通っても
お出かけ中なのか駐車場に姿はない。
好きな子の家の近くを自転車で通る小学生みたい。
大人になっても、対象が変わっても、その辺はかわらない。
ある晩のこと。
いつもの帰り道を走っていたら
隣の車線からすっと追い抜く一台がありました。
黄色のカプチーノ。
あ、あの子だ。あのナンバー、忘れもしない。
信号で、数台先に停まる。
感動の再会。
あなたのおかげでこうして今
カプチーノに乗ってるんだってこと伝えたい。
乗ってみたら、やっぱりいい車だったよって。
でもまあ、そんなことイキナリ言われても
頭のおかしい人みたいなので、やめておく。
ほんのちょっとの時間だったけれど
甘酸っぱい、カルピスの味。
それから数日後のある晩。
いつもの帰り道を走って
あの黄色のカプチーノに会った場所の近くで
ふと一台の車が目に留まりました。
あ、あの子だ。
でもなぜ、こんなところに。
ずらりと並ぶ数台の車輌の奥に
ひっそりと佇む黄色のカプチーノ。
そこは、中古車屋さんの敷地でした。
まだナンバーはついてる。
修理?メンテナンス?いや、でも。
翌晩も、そのまた翌晩も停まっておりました。
そしてその次の晩から、あの子の姿を見ることはなくなったのです。
ほろ苦い、珈琲の味。
いっそのことホイップでも加えて
少し苦味をおさえて
カプチーノの味と洒落たい気分でございます。
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♪ 初恋 村下孝蔵
Posted at 2013/04/03 22:11:32 | |
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