「運慶展」を見に行った。
上野駅を出て、大きな公園を抜ける。
傘が必要かどうか迷うくらいの雨が降ってる。
そんな天気のせいもあって、紅葉も見頃を過ぎて、あたりは晩秋の趣ですよ。
ぽつぽつ歩いていると、つきあたりに会場の国立博物館が見えてくる。
混雑は予想していたけれど、入場まで小一時間待つという盛況ぶり。
まるで何とかランドみたいだけれど、大きく違うのは
並んでいる人たちの年齢です。
見渡す限りの、爺そして婆。
爺婆にまぎれて鑑賞した作品は、けど、どれも素晴らしかった。
1時間待つ価値は、十分あった。
私は、浅学なので的外れかもだけれど
運慶の凄さは、彫物師としての技量じゃない気がする。
彼が非凡なところは、そのキャラデザ力でしょう。
八大童子立像なんて、まあ凄い。
爺の兄弟坊主の無著・世親も、ちょう凄い。
あんなキャラ、デザインできませんよ。
全盛期の大友克洋並みです(卑近な喩え)。
ただ、会場には盛りだくさんの仏像があるのに
誰も拝んでないんですね。
爺婆に仏像という絶好の取り合わせなのに、ここには信仰がない。
私は信心深くはないけれど、どうにもたなごころの座りが悪くて
大きな阿弥陀如来像を前に、そっと手を合わせてしまった。
運慶のような超一流の仏師が彫った像であっても
然るべきところに納めてないと、一介の美術品になっちゃうんですかね。
運慶の心境たるや、いかばかりか。
ただ、会場には参った。
爺婆がギチギチに詰めまれているもんだから
加齢臭の、ノネナールの放出量たるや、そらもう凄いもんです。
皆様、背が低いこともあって
彼らの頭がちょうど私の鼻下辺りに来る。強烈。くらくらする。
ほんとは、展示をぐるりもうひと回りしたかったけど
あんまりの匂いにやられて断念したのでした。
さて、アメ横の中華屋で、サラリーマンにまぎれて
昼間っからビールを飲んで、ちょっといい心持ち。
その足で向かったのは、東京大学。ここはいちど行ってみたかった。
晩秋の雨あがりの夕方なので、校内はちょぼちょぼと薄暗い。
人気もあまりない。
でも、大学の中は、開放されているからか、ご近所のお年寄りとか
子供連れのお母さんとか、まるで公園のように散策してる。
建物はいずれもゴシック様式で、年代物で、とても立派。
建物の中をそっと覗く。
古い漆喰の壁が、ひんやりとして見える。
明かりは茫と灯る。
しんとしていて、たまに遠くから足音が響く。
ああ、昔の大学って、こんなイメージだったな。
有名な銀杏並木とか、安田講堂だとか、三四郎池だとかを
うろついては、写真を撮る。パチリ。
天気がよければ、もう少し気の利いた写真が撮れただろうにと
ちょっと残念。
帰り道、降りたことのない沿線の駅で、横丁にある小さなモツ焼き屋で呑んだ。
東京の下町の、知らない商店街の、見たこともない脇道を入ったところ。
でも、なんだか記憶の底にある飲み屋の風情。
常連の爺どもにまぎれて、ひとり呑む。
最初は、異邦人然として落ち着かない。
酒が進むと、そのへんが痺れてどうでも良くなる。
その感じがとてもいい。
この日は、なぜか、TheBirthdayの「夢とバッハとカフェインと」って曲が
頭の中でリフレインしていた。
ここがどんな場所だろうと
お前がどんな奴だろうと
息をしてるだけましだろ
その曲を脳内で聴きながら、コップ酒を傾けながら
私の「酒と仏師とゴシック」な日は終わるのでした。
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夢とバッハとカフェインと ♪The Birthday
Posted at 2017/11/19 10:00:00 | |
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