スプラウトの17万キロ超を記念して
所有者であるキアロ氏に
17文字で世界を表現する俳句を詠んでもらった。
そのいくつかを選評とともに紹介する。
『タイベルを 換えて見上げる 雨月空』
【選評】
平成4年式のカプチーノのタイミングベルトを交換した際の
心の機微を詠んだ句である。走行距離は17万キロ程度。
おそらく、前回は8万キロ弱で交換しているので二度目といったところか。
車歴としても作者の人生も、秋雨降る初秋にさしかかったことが伺える。
『障りある 窓の向こうに 露時雨』
【選評】
カプチーノのパワーウィンドウが故障した寂莫とした感じが
よく出ている句である。
運転席側が故障し、下りたまま上がらなくなった。
無理やりガラス窓を上げて、養生して何とか持ちこたえる日々なのだろう。
修理費用が貯まるまで、辛抱の日が続く。
秋の雨のように作者の心も時雨れている。
『春に耳 鳴りて尿道 痔アレルギー』
【選評】
春に軽度の突発性難聴を患い、積年の尿道の痛みの原因が
製造不良にあることが夏前にわかり、更に盛夏には痔を患った。
そして果物アレルギーを発症。リンゴ・梨・イチゴが食べられない体になった、
その悲劇を自嘲的に詠んでいる。
いずれも軽症ではあるが、消耗パーツがヘタる年齢なのだろうと
自身に言い聞かせている句である。
『眼鏡を 彼岸に失せし 送り盆』
【選評】
お盆の時期に痛飲し、終電で愛用の眼鏡を紛失してしまった。
その失望感を詠んだ句である。
こないだ買ったばかりなのに。
限定品で出に入らないのに。
ああ、なんで。
眼鏡は、お盆に彼岸に帰ってゆく死者が持って行ってしまったのだろうか。
失ったものを思い続ける切なさが滲む。
「お母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね」という
西條八十の詩に通じるものがある。
『不釣り合い 浴衣夏空 丸眼鏡』
【選評】
眼鏡をなくしたので、不似合を承知で
以前より気になっていた丸眼鏡を購入した。
これが家人に大不評。
しかし眼鏡持ちならだれもが一度は、丸眼鏡を試し掛けしたことがあるはずだろう。
外観の印象など、しばらくかけていれば慣れてくるものだ。
この丸眼鏡、鼻あてがなく、モダンが長くシンプルで
クラシカルなしつらえが良いのだ、という作者の思いがストレートに表現されている。
『ベルトかえ エンジンかろく 虫しぐれ』
【選評】
タイミングベルトを換えたら、殊の外エンジンが軽やかに回る。
そんな効果があるのかないのか、気の迷いなのか。
さらに以前は、エアコンをつけるととても重かったエンジンフィーリングも
とても軽くなった気がする、ということを初秋に軽やかかに鳴く
コオロギの声に準えている句である。
『齢重ね 老いゆく若菜 秋時雨』
【選評】
スプラウトという名を冠していても、齢を重ねれば老いてゆく。
老いてなを若いという名前の矛盾はらみつつ、秋の雨にぬれる。
ああ、錆が心配であることだなあ。
ーという作者の心の叫びが聞こえてくる。
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♪ At Seventten ジャニス・イアン
Posted at 2015/09/06 17:49:47 | |
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カプチーノ | 日記