かめい堂のブログ一覧

首都高川口線の終わりを告げる
東北自動車道の始まりを示す
料金所を抜けた MINI は、
コンプレッサーの轟音と共に
一気に加速する。
速い！

病み付きになりそうなこの感覚こそ、
MINI の楽しさのひとつである。
初日の目的地を杜の都、盛岡とした僕らはこの先、500kmの行程を1時間交代とし、
駆け抜ける歓びを分かち合うこととした。
でも...
ステアリングを握った者に1時間は、短いのである。

そろそろ、1時間だけど...
次のパーキングに入れば？

ん～、サービスエリアの方がいいなぁ

って、それは。
まだまだ30Km以上はあるではないか！
高速デビューしたての鬼嫁運転では、優に20分は要す。
まぁそれも良いか
急ぐ旅でもあるまいし。

結局、1時間では済まぬ鬼嫁運転により、僕に分かち与えられた歓びは限りなく降下するのだけど。
北に向かうほどに澄んでくる青空に、この旅が楽しいものになりそうな予感がするのだった。

5月17日、午前8時

これから始まる6日間の旅を前に僕らは
まだ出発することができなかった。
荷物が定まらないのである。
行く先には、山もあれば海もある。
田舎もあれば都会もある。
寒いかもしれない。
暑いかもしれない。
雨が降ったらどうする？
風が強かったらどうする？
トレッキングコースがぬかるんでいたらどうする？
万が一、高級旅館に泊まることになったらどうする？
そう、僕らは。
旅慣れていなかった

それでも鉄道の旅なら必死にパッキングを考えたであろうが、今回は。
クルマの旅、1,000Km以上を走破するグランドツーリングだ。
トレーナーも、セーターも、雨合羽も、ドレッシーな靴も、なんでもかんでも積んで行けるではないか。
そう考えたら、ボストンバッグだけでは荷物が収まらなくなってしまったのだ。
僕の頭の中にはフランス人の、2ヶ月近い長期バカンスにも耐えうるシトローエンの、
押入れのように広大なトランクがイメージされていたのかもしれない。

しまった、MINI だった
大きくなったとはいえ、MINI だった。
トランクスペースなんて無に等しいコンパクトカーだったのだ。

パッキングし直し、C2環状線四つ木ICから入線した時は既に、午前9時を回っていたのである。

　1800Km
　これが、僕らの移動した距離。
　嫁友のいる、そして、実は。
　僕もちょっとばかり関係のある岩手を中心に、
　青森、宮城にわたる東北三県の旅。
　嫁友の家と
　叔父の別荘と
　三つの旅館と
　四つの温泉地と
　七つの源泉を巡る
　五泊六日のグランドツーリングは、うたかたの夢。

行き先の決まっていない旅は、線路が敷かれていないクルマならではのこと。
立ち寄る場所が決まっていない旅は、駅のないクルマならではのこと。
帰る時間の決まっていない旅は、時刻表がないクルマならではのこと。
あぁ、だから。
クルマの旅は嬉しいのだ。

フロントウィンドウに迫り来る山々、
サンルーフから覗くどこまでも突き抜ける青空、
開け放したサイドウィンドウから飛び込む渓流のせせらぎ。
初夏の東北の、あまりに豊かな自然の表現力に、アクセルを踏む右足の力は自ずと緩む。
長く厳しい冬を耐え抜いた森に溢れる生命の息吹に、ブレーキを踏む左足に気持ちが入る。
歩くような速度で走る MINI の中で僕らは思うのである。
人生もこんな贅沢な過ごし方ができるのだろうか、と。


そんなわけで、無事に帰ってきました。
1GBのメモリーカードを使い切った、MINI の初めてのグランドツーリング。
しばらくは、この旅の記録が僕のブログになりそうです