
恋するクルマの魅力は人、それぞれ。
端正なフロントマスクを恋慕する人もいれば、
キュートなテールエンドに執心する人もいる。
もちろん僕も顔を愛で、尻を慈しむ一人だけど、
それにも増して気になるのが、
シャーシーのプロポーションなのである。
具体的には、
全長に占めるホィールベースの割合とその余白
つまりは、
車軸とオーバーハングの位置関係に注目してしまうのだ。
前輪軸から前端部までの長さ、或いは、後輪軸から後端部までの長さ。
このあたりのバランスが悪いと、魅惑的な顔、扇情的な尻であっても、個人的には好まない。
もちろん、ホィールベースはそのクルマの成りを性格付ける重要な値だから、
単に長い短いだけの問題では語れない。
前後の車軸間が長ければ長いほど居住性は増し、直進安定性にも優れるけれど、反面、
回頭性は、自動車の持つ根源的な曲がるという楽しさは、失われてしまう。
もっともこれは、トレッドとも密接に関係する運動性能だから、
長いホィールベース = 曲がらない、わけではないところにクルマの面白さがあったりする。
ホィールベースが先か、ボディ全長が先か?
ゼロからクルマを起こす時、どちらが先に決まるのかを僕は知らないけれど。
定められた全長に対し、機能上の理由から求められたホィールベースを組み合わせる時、
余るオーバーハングを前後のどちら側へ持っていくか?が、これまた、興味深い。
オーバーハングはただの余白ではない、からだ。
オーバーハングの領域、ホィールベースの外側は、キャビンに収められないモノ、
エンジンや補機類、又は、燃料タンクやバゲッジルーム等を詰め込む空間であり同時に、
慣性の法則に従う振り子のようなもの、でもある。
前側にオーバーハングを取り、そこに質量を込めると、クルマは曲がることを嫌い出す。
アンダーステアを強調したければフロントアクスル前方を重くすれば良い。
反対に、リヤアクスル後方へ重心を移せばステア特性はオーバー側へと振れる。
地平線の彼方へと駆け抜ける
陸の巡洋艦、ビッグ・シトローエン。
サーキットの申し子、ポルシェ911。
長大なるフロントオーバーハングを持つクルマと壮大なるリアオーバーハングを持つクルマ。
動力源と駆動系のパックを前に持つか後ろに持つかで異なる、持って生まれた性格。
一瞥しただけでそれを予感させる両車のスタイリングも、実に。素晴らしい。
他方で、動力源と駆動系が分離された、FR。
機能的な制約が薄れる分、オーバーハングの取り方にも自由度がありそうだ。
だからこそ余計に、
そのクルマが何を目指しているのか?、を読み取れるような気もする。
BMWサルーンに代表される、
フロントオーバーハングを切り詰め、後輪軸後方に余白を持たせたプロポーションは、
回頭性の良さを体現すると共に、可能な限りドライバーをホィールベースの中央、
ドライバビリティとコンフォータヴルの特等席へ座らせようとしているのでは、ないかと。
そう考えるわけである。
で。そんな気にさせる均整美を持ったクルマが、僕は好きなのであるが。
MINI のように前後にオーバーハングを持たないクルマはどうなのか? というと。
限られた全長の中で
最大限のキャビンスペースを創り出すために四隅へ追いやられた車輪の結果が、
皆無に等しいオーバーハングなのであり、それはアレック・イシゴニスの産み出した
ミニの文化であるから、大いに納得するのである。
mini から MINI へ、受け継がれたものは多々あれど。
クルマの骨格を成す、全長に占めるホィールベースの割合までもが引き継がれていたあたり、
BMW のクルマ作りは
ウマイなぁ~と思うのである。
mini = 3075mm : 2035mm 66.17%
MINI = 3650mm : 2465mm 67.53%
ねっ

Posted at 2007/11/16 16:44:15 | |
トラックバック(0) |
new mini | クルマ