仕事を辞めた妻が、会社に残してきた荷物を取りに行った時
のことだから、半月ちょっと前の、話である。
そこは都内でも有数の、ファッショナブルで
セレヴリティで、エモーショナルな、ストリート。
片道3車線の左側は全て路上駐車レーンであり、
蟻一匹も這い出る隙間がないほど、ビッタリと
埋め尽くされたクルマの隊列に、街の勢いを感じる。
それでも、路地裏へと抜ける小さな交差点沿いに4m弱の
余白を見つけた僕は、全長3.65mほどのコンパクトカーを
見事に滑り込ませる。とりあえず。
停車位置は確保したぞ、と。
ただしそこは、妻が勤めていた会社とは少々、離れていたが。
じゃぁ、荷物を取ってくるから。待ってて
お洒落で、優雅で、感情的な、山の手の街で、荷物を取りに行った妻を待つ間、
僕は自分の乗ってきたクルマをカメラで撮ってみようと考えた。
手に入れたばかりの
デジタル一眼レフを持ち、クルマの前にかがみ、構図を考えていたら。
すみませーん、これって。燃費はどれくらいですか?
ファインダーから目を外し、声の方向に視線を向ければ、そこに立っていたのは。
白い歯が素敵なジャニーズと、綺麗な足が魅力的なハロプロであった。
これは、事件か?
そうだ、事件だ。
なんたって、クルマ絡みで僕に話しかけてくるのは、泉谷しげるか泉ピン子のような輩であり、
カメナシくんやアヤヤが声をかけてくるはずは、なかったからである。
さすが、山の手。
下町とは、こういうところが違うんだよなぁ ...
そうですねぇ、5Km/L ってところでしょうか
えっ ...
しまった。
せっかく MINI に興味を持ってくれた若人にそんなネガティヴな話をして、どうする?
もっと前向きなことを話すべきではないのか、人生の先輩として。
いや、それは都内での話で。高速に乗れば、12Km/Lくらいは伸びますよ~
そうなんですか、安心しました
まだ学生であろうか?
それとも、駆け出しの社会人か?
なんにせよ、そんなにはお金が自由になる環境ではなさそうだ。
いや、クルマにお使えるお金は限られている、ということかもしれない。
いいなぁ、MINI 。でも、高いんですよねぇ ...
高い?
そうかもしてない。
でも、カメナシくん。
隣で微笑むアヤヤのためにも、このクルマを試してみる価値はあるぞ。
クルマで人生は変わらないかもしれないけれど、クルマで愛は変わるかもしれない。
この小さなクルマで、二人の想い出に彩りを添えてみては、どうだい?
世界No.2の自動車企業がシナリオする db やイストでは味わえぬ感動が、
このクルマにはあるのだから ...
高いかもしれないけれど、お金では手に入らぬものもありますから
なんですか、それ?
つまり、こういうことだ。
帝国ホテルの駐車場でロールスロイスの隣に停められる、(数少ない)コンパクトカー。
昭和の長屋が朽ちかける下町でも、平成のデザイナーズビルが建ち並ぶ山の手でも、
違和感のない存在、そのもの。
時速20kmでも、時速200km(試したことはないが)でも、変わらぬドライバビリティ。
所有する喜び、愛でる悦び、駆け抜ける歓び。
MINI の持つ多様な世界観が、井戸の中の蛙の眼を開く、ってわけで。
しかし、そんな抽象的な話をしても始まらない。
楽しさ、でしょうか。
なるほど。ますます、乗ってみたくなりました
爽やかな笑顔を残して立ち去っていったカメナシくんとアヤヤを見送りながら、僕は思った。
MINI に乗るあの二人、絵になるよ、きっと。
まだまだ、あるの。入るよねっ
余韻に酔う僕を現実に引き戻したのは、両手に大荷物を抱えた妻である。
その荷物、入る、であろうか。
後席を倒せば ...
そうだ、MINI は。
合理的なヨーロッパが産んだ、道理にかなったハッチバックなんだから

Posted at 2007/08/18 16:37:48 | |
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