You Wanted The Best !? You Got The Best ! The Hottest Band In The World, KISS ! 開演を告げるアナウンスも高らかにスパイダーから降り立つ地獄の使者
オープニングは PSYCHO CIRCUS だァァァーーー
KISS のデビューは遡ること40年前の、1973年。
2年後に発売されたライブアルバム 地獄の狂獣 で
中学3年の僕は、彼らの存在を知る。 なごり雪も降る時を知り、恋人よ僕は旅立つ、1975年 あいつは あいつは かわいい 年下の男の子 だった
僕は驚いた。音ではなく、顔に。 なんだ、これはっ!
水上はる子時代のミュージックライフ、誌面に踊る
白塗りの4人衆、その名は KISS
David Bowie もひっくり返りそうなビジュアルが
一人歩きしていたキッスだけれど。
騙されたと思って買った2枚組のライブアルバムには
文字通り音を楽しむ 音楽 が詰まっていたんである。
ストレイトなロックンロール I wanna rock'n roll all nite and party every day
... だよなぁ、と。
その感動が今、ここチバに、ある。
ホールを埋め尽くす1万5千人の熱気と共に →
当時、ハードロックへの冒涜とも言われたI Was Made For Lovin' You コレを聴くと歌舞伎町を想い出す自分は Saturday Night Fever 世代。
だが、しかし。21世紀のラヴィン・ユー・ベイビーはロックだったぜぃ~
Paul Stanley は宙を舞い
Gene Simmons は火を吹き
Tommy Thayer はギターで花火を打ち上げ
Eric Singer はバズーカを放つ
エンターティメントに徹した彼らのステージは
その場にいる者を魅了する。
超絶テクニックでオーディエンスを唸らせる
例えば Jeff Beck や Eddie Van Halen とは
質の異なる、単純明快な豪快さが彼らの信条だ。
だからといって。
テクニックがないわけではない(と、思う)
正直、バンドのフロントメンバーを務めるジーンシモンズとポールスタンレーはそれぞれ
64歳と61歳の還暦組である。 他の二人にしてもドラム担当のエリック・シンガー 55歳、リードギター担当の
トミー・セイヤー 52歳と、仮面の下の年齢は案外高い
音を外しても、リズムを取り違えても、口パクだって許せちゃう彼らが
シャウトし、弦を叩き、所狭しと走り回る。これがロックっつうもんだゼ、とばかりに。
黄金期のハイトーンは失われたかもしれない
全盛期のキレはもうないのかもしれない
ピータークリスのしゃがれ声も
エースフレイリーの独特なギターワークも
今は昔の KISS だけれど、それがどうした?
突っ走る17曲、立ちっぱなしの2時間に不満は
何もなかった。
往復 1,080円も取るに足らぬ東京公演
Loves You CHIBA なんだねぇ~、今宵は♪
12A型水冷2ローターエンジンを積んだサバンナ RX-7 が華々しくデビューし、
元祖デートカーのプレリュードが街を滑走し始め、
エントリーモデルではあっても高嶺の花の Mercedes Benz W123 が路上に君臨していた、1978年。
Van Halen はデビューしたんである。 You Really Got Me
The Kinks の歴史に残る名曲をメタルな音で焼き直したヴァンヘイレンのデビュー曲は衝撃的
であったけれど。アルバムタイトルがいけてなかった。なんたって ... 炎の導火線 ですよぉ 続く、2nd、3rd にしても、伝説の爆撃機、暗黒の掟だもの。 "Close to the Edge / 危機"
"Brain Salad Surgery / 恐怖の頭脳改革" "Atom Heart Mother / 原子心母" と訳した
プログレ界の語学センスがメタル陣営には宿っていなかった、とはいえ。
時代は、丘サーファーにハマトラである。公園通り、スペイン坂、ファイヤー通りには
グリズリーの旗が掲げられた西海岸風のカフェやセレクトショップが建ち並び、
Boz Scaggs や Bobby Caldwell や Steely Dan の、甘く切なく渋い音が流れる、そろそろ
大人の恋を彷徨ってみようじゃないか的トーキョーに、導火線や爆撃機は重装備であり過ぎた。 ギターヒーローは Jimmy Page で卒業よ ... な、はずだったんだけど。
オープニングを飾った Unchained からして総立ちの
アリーナ席(と、1F スタンド席)
意外や意外
'80年代は男気に溢れていたのかもしれない。 Disco Sound や Adult Oriented Rock はウンザリだ
メタルこそ俺たちの心の拠り所なのさ
夢と希望に満ちた渋カジ時代をヴァンヘイレンと
共に過ごした僕らに 衰え の二文字は似合わない。 行くぜ、野郎ども!
ステージ上の4人。
ベースの Wolfgang Van Halen(エディの息子!)を除き、Edward Van Halen、Alex Van Halen、
David Lee Roth の3人は、還暦間近の50代後半。そんな彼らの疲れを知らぬプレイに
同年代の俺らが座って見てては 失礼極まりない と考える日本人だから。
'80年代を知る者達のライブは、若者のそれとはビミョ~に異なる空気感のもとに進む。 老眼の始まった目はステージを確認できず、難聴気味の耳はビートを捉えきれず、
ヘルニアを患う腰はリズムを作れず、つまりは。ただ、立っているだけ ...
炸裂する Eddie 爆裂する David 破裂する Alex
まさに。導火線、爆撃機、暗黒の、Van Halen!
それにしても。この音圧はどうだ!
音響的にサイテーの東京ドームで、(過去に記憶がないほど)バランスが悪い PA システムを
ものともしない、ヴァンヘイレンが持つ、内なるパワー。
やはり、このバンド。ライブで楽しむのが正解だったんである。 ドラムやヴォーカルのバランスが多少悪くとも熱気で押し切ってしまうところが
この手のバンドの醍醐味であり、レコードの類いでは再現仕切れないメタル魂である
エディの、宙を舞うライトハンド奏法に痺れた、東京ドームの夜
既成概念へのカウンターカルチャーとしての存在を失いつつあった、'80年代のロックに
東西冷戦やベトナム戦争の頃と同じようなメッセージ性は求めるべくもなく、だから
Van Halen の楽曲に6分を超えるフォーマットは少ない。
4 ~ 5分に収まるコンパクトさが MTV 世代のロッカーたる所以であり、そのあたりに
Jimmy Page とは世代の異なるギターヒーローを見るんである。 例えば。
3ヶ月前に涙した '60年代の大御所 Santana に比べるとフレーズはポップでキャッチー
同じチョーキングにしても、御大 Carlos Santana ならアマゾンの熱帯雨林だけど
Eddie RIGHT HAND PLAYING Van Halen だとアリゾナの砂漠 ... 、って感じ。
奇跡のこの瞬間に立ち会えたのだから。
卒倒しても文句はないけれど、でも。
無事に帰ってこられて良かった、さいたまスーパーアリーナでの、一夜。
スライ & ザ・ファミリーストーンの、Want To Take You Higher で締めくくられた
Eric Clapton and Jeff Beck は我が生涯、最高のロックコンサートだったのであります。