ジョージアや
午後の紅茶で済まされることの多い我が家ではあるけれど、たまには、本格的な喫茶を楽しみに行くことだってあるのです。
スターバックスやタリーズの美味しさと気楽さでも十分ではあるのですが、もう少し。
上質で、贅沢な時間を過ごしたい時は、
マリアージュフレール銀座、が宜しいかと。
ただし、紅茶を嗜む場所であるところが、珈琲党としてはちょっとばかり残念、なのです。
でも。
本格的なティーサロンで味わう、正式な紅茶というものは
趣旨替えしたくなるほどに、美味いもの。
そう、マリアージュの、17世紀から続く茶法は、通を唸らせると共に、門外漢にも優しいのです。
パリ4区、ゲイの街マレに本店を構えるマリアージュフレールが、銀座はすずらん通りに
この直営店をオープンさせたのは、たしか、90年代半ば頃だったと記憶するのですが、当時。
おフランスなシトローエンに乗っていた僕は、
おフランスなルノーサンク(それも、バカラ!)のオーナーであった女友達と一緒に、
おフランス人気取りで、銀座の新しいティーサロンのドアを開けたのでした。
東インド会社もこんな感じであったのだろうか?
そんな異国情緒が漂う植民地風の店内に、清潔なリネンの制服を着た店員さんの規律正しさは、
ヨーロッパ人のアジア観を知らしめるジオラマ空間。
かつての宗主国を面影に持つサイゴンはドンコイ通りにでも迷い込んだような、
アールデコな色調のメゾン・ド・テはだけれども、文明開化以降、ジョージアン様式の煉瓦造りで
ロンドンの街並みを模倣してきた銀座にとって、
重厚なるヴィクトリア調のティーサロンが相応しかった街にとっては、
異国の中の異国、とでも言うべき存在だったのではないか。
そもそも紅茶、英国でないの?
ビートルズを愛唱し、
ツェッペリンを愛執し、
シャーロックホームズを愛読し、
mini を愛欲する自分は、
トワイニングや、
ジャクソンや、
ハロッズや、
フォートナム&メイソンが紅茶なのであって、フォションなどと。
名前からしておフランスな紅茶は飲むに値しない、と本気で考えていたけれど。
その頃の僕は、
シトローエンなのである。
セーヌ左岸で産まれし奇妙なクルマは、オックスフォードが育てたミニマムなクルマとは違った
価値観を僕に提示してくれたのであって、
カフェオレばかりがフランスではないのかもしれない、と。
そう考えるようになった頃でもあるのだ。
サンクのオーナー女史は慣れたような口ぶりで、32ヶ国、450種類(オープン当時)の茶葉から
好みの一品をギャルソンに伝えた。
僕は ... 、と言えば。
日の名残り、やぐらを組んだ3枚の皿が実に英国なアフタヌーンティー・スタイルを望んだけれど、
ここはサロン・ド・テなのであって、ティー・サロンではないのだ。
サンク女史が勧める、実は苦手としていたフレーバー・ティーを啜ってみたのだ。
マルコポーロ
東方見聞録を連想するそのお茶は、中国の果実と花。そして、ティベットの不思議な花と果実。
漂う芳香は、日出ずる国においても、不思議なほどに甘くせつない。
アールグレィの上品さにパッションを加えたような、香りのエロスだ。
さすがに、ブリジットバルドーや、ナタリー・ドロンや、ジェーン・バーキンを生んだ国の、
紅茶なのだ。
以来、マリアージュの紅茶は、日東紅茶で育った僕を魅了して止まない。
だから時間と懐に余裕のある時は、この紅茶の館を訪れたいのだけど、ただ一点、難点がある。
全館禁煙
それはまぁ、香りを楽しむ空間に紫煙が邪魔なのはわかるけれど。
ヤニ臭くなくて素敵♪と微笑む鬼嫁の気持ちも理解できるけれど。
同じ嗜好品なのに、あまりに冷たい仕打ちと思われ
Posted at 2006/08/22 17:11:47 | |
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