駆け抜ける歓びを極めた
ドライビング・カンパニーの軌跡
そんなサブタイトルが付くにはこの本が、
BMWというバイエルンの独立系自動車会社の
その誕生から現在に至るまでの光と影を、
一人のモータージャーナリストの目を通して
語られているからである。
車名に BMW という文字が見当たらない BMW に乗ってる僕は、
書店でこの本を見かけた時、買って読むには至らないと思ったのです。
でも...、ちょっと。
手にとって目次を眺めれば、第6章のタイトルが妙に気になる。
究極の大失敗 ... the Ultimate Blunder
本物を追求するすべての人々から羨望を集めるというエクセレントカンパニーが
犯した失敗劇とは、なんだ?
ボンネットを開けないと BMW という文字を見ることができない BMW に乗っている僕は、
もしかして MINI にまつわる話ではないか?
そう直感したのです。
バイエルンの青い空と白い雲を切り裂く十字のプロペラ。
風前の灯火であったラウンデルマークを戦後の痛手からいち早く復活させ、
その後40年も赤字を出していない、ホンダよりも純利益率が高いといわれる
賞賛すべき経営方針を取る BMW が、唯一。
判断を誤ったとされる出来事、それは。
英国ローバー社の買収とその後6年間に及ぶ80億ドル以上の損失。
その大失態の主役、
90年代初頭の BMW の舵取りを任されていた "Bernd Pischetsrieder" CEO。
実質上のオーナーとされる大富豪クヴァント家の怒りを買い
退任へと追い込まれたピシェツリーダー社長が実は、
mini の生みの親であるアレック・イシゴニスの甥であったりするところは。
単純な暴走と言うよりもたぶん、
偉大なる叔父の自動車工学上の奇跡を自らの手で存続させたい
そんな自動車ファンとしての強い気持ちが、経営者としての冷静な判断を鈍らせたのではないか ...
そう、僕は思うのだけど。
現在はVWグループの会長であるベルント・ピシェツリーダー博士と、
ドイツを代表するスペシャリストであるヴォルフガング・ライツレ開発担当重役。
当時の BMW No.1、No.2。
というよりも ...
純粋に自動車を愛する二人のカーマニアが巨額の赤字に喘ぐ英国の名門企業の姿に
戦前の BMW を重ね合わせ、救いの手をさしのべた。
歴史は、そうは言ってはいないのだけど。
BMW を去った二人のその後が想像されることとは反対に、相変わらず華々しいことから。
ライツレのシンパが未だにたくさん、BMW 社内にいることから。
手元に残された MINI が BMW の新しいビジネスモデルとして独り立ちし、利益を生んでいることから。
キドニーグリルの付かない BMW に乗っている僕は、そこに志のある話として受け取りたいのです。
僕らが New MINI というクルマに惹かれ、購入し、愛用している今という現実は、
BMW という会社が犯した歴史的な大失策のおかげである、のだけど。
同時にそれは、堅実なる BMW が一瞬思い描いた、夢の跡 ....、なのかもしれません。
舵取りが交代し、究極のブランド戦略をひた走る、2006年の BMW、そして、これからの BMW が、
MINI ブランドをどんなふうに育てていくのか?
クヴァント家の冷静な意見と潤沢な資金をバックボーンに、究極のドライビング・マシンを創造し続ける
バイエルンの自動車メーカー。
その100年近い歴史を知ることで、次の MINI が見えてくるような気がする、そんな本です。
Posted at 2006/05/15 15:19:05 | |
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