◇ 010 : 1983 HONDA Ballade Sports CR-X ◇
時は、1983年。
千葉の浦安に
東京 を名乗るテーマパークが誕生し
うら若き乙女達はシンデレラ城へ行くことを夢見る。
だが、しかし。
営団地下鉄東西線 浦安駅 が最寄り駅だった当時、
そこから夢の国まではバスに乗る必要があったのだ。
夢も破れる路線バス、片道200円、先払い(記憶では)
こんなんじゃ、おとぎの気分も台無しだわ 
ギュウギュウに詰め込まれたバスに揺られながら、乙女達は嘆いた。
白馬(クルマ持ちの意)の王子様(アッシー君の意)は現れないのかしら ...
(アッシー君と思ってない)王子はいたが、(夢の国に相応しき)白馬の用意がなかった。
アッシーくんやメッシーくんが言葉として誕生する以前の、バブル前夜。
恋人達は赤いファミリアで街を流し、独り者は AE86(レビン/トレノ)で峠道を目指し、
クラウン一筋でたたき上げてきた町工場の社長がソアラに浮気心を出し始めた頃のこと。
同じ東京が冠言葉に付いてもサマーランドとは違う(らしい)アメリカの遊園地へ
乙女をお連れするにあたり、従来の価値観で設計されたクルマは白馬たり得るのか?
大衆車然とした恋人仕様ハッチバックやドリフト命の男臭いクルマはあきる野市まで、である。
オーランド風に化粧直しされた浦安という街に相応しきクルマとは、なんだ?
デュエットクルーザーが。あるじゃないか ...
と、いうわけで? ワタシも買ってしまった純白のデュエットクルーザーであります。
恋のバラードを奏でるはずの CR-X ではあったが、尻軽すぎて恋の道には役立たず 

そんな理由もあったかもしれないが、CR-X を
選んだ訳にはもっと、まっとうな考えがあった。
これって。アルファじゃねぇの~
愛読書は Car Graphic であったその頃、
理想の一台として頭に刻まれていた
Alfa Romeo Giulia Coupe GT Junior Z →
coda tronca といういわば 切断された尻尾 を
テールエンドとしたデザイン手法に甚く感心した
60年代末期の傑作が、だ。
財布の軽い若者にも手の届く価格で世に出てきた
その事実に、アルファは買うことも維持することも
できない駆け出しのサラリーマンは溜飲を下げたんであって。 HONDA Ballade Sports CR-X
まがい物ではあれど。
(等身大の自分らしくて)いいじゃないかぁ~
だけども、しかし。 '83年夏に登場した CR-X には肝心のものが欠けていた。
ジュニア Z が腹に抱えていたのは
官能 の代名詞とも言える
アルファ・ツインカム であったが、
CR-X は
排ガス規制の代償とも言えた
CVCC であり、エンジンにロマンが足りないと思えた。

待つこと一年、(S800以来)14年ぶりの復活を
果たした ZC型エンジンの搭載を待って僕は
ホンダベルノの敷居を跨いだんである。
DOHC 16Valve Crossflow 135ps/6,500rpm
踏めば答えるホンダ製スポーツユニットは
マスキー法に端を発するエンジン暗黒時代の
終わりを告げる、新しい時代の幕開けのように
思えたんである。
かくして。人生初の
新車(!)として僕の元へとやって来た CR-X Si は同時に、
初めてのホンダ車であり、初めての前輪駆動車であり、初めてのツインカム搭載車であり、

初めての。ドアミラー車でもあったのだ。
低くうずくまった寸詰まりのボディは無類の存在感を
放ち、特徴的なドアノブを引いて開ける大きな
サッシュレスドアが理屈抜きに格好良く、まるで
路面に座るかのような低いシートがレカロに思え、
キーをひねった瞬間に目覚める DOHC の鼓動に
胸躍らせる、ライトウェイトスポーツ。
見ても、座っても、走っても。
クルマって楽しいんだぁ~ と心の底から思えた、
最初のクルマでもあった。
そんな CR-X を紹介する、当時のプロモーションフィルム↓
TV CF から走行シーン、車両コンセプトやメカニズムの解説までを
13分あまりにまとめたフィルムはホンダディラーで流れておりました
初のマイカーが昭和48年排出ガス規制車、続く二代目は昭和50年排ガス規制車 ...
それまで眠たいエンジンのクルマしか知らなかった僕は、ホンダ製ツインカムユニットに
涙もこぼれるくらい感動したんである。
レッドゾーンの始まる 7,000rpm まで淀みなく上がるエンジンは
もっと踏み込め! と
右足に囁きかけ、その結果、箱根の峠道で九死に一生を得るスピンをくらったのだけど。
オーバースピードであったし、それをコントロールする腕もなかった、のは事実。
だけども、そのスピンに至る事態が唐突だったように記憶している。
僅かに 2.2m しかないホイールベース、半固定式のリアサスペンション、そして。
2 : 1 という(おそろしく)前よりの重量配分が、HONDA Ballade Sports CR-X Si を
テールハッピーな性格に仕立て上げていたんじゃないか、などと。自分なりに推測し
自動車における重量配分の重要性や、FWD 車であってもリアサスペンションは大事だと
知ったのも良い想い出である。
まぁ、なんにせよ。このスタイルだけで全てが許せちゃう徳のあるクルマだったよねぇ~
全長 : 3675㎜ 全幅 : 1625㎜ 全高 : 1290㎜ ホイールベース : 2200㎜
水冷直列4気筒DOHC 1590cc 最高出力 : 135ps/6500rpm 最大トルク : 15.5Kgm/5000rpm
サスペンション:前 ストラット + トーションバー / 後 車軸式 車両重量 : 860Kg
ブレーキ:前 ディスク / 後 ドラム 変速機 : 5速MT 乗車定員4名 FWD
無限 CR-X Pro に似せるべく ENKEI ディッシュホイール装着、の図
Posted at 2014/04/30 11:41:36 | |
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