
その電話を着信した時、僕は都心環状線の本線上にいた。
運転中はケータイ使用してはならない のが
ニッポンの道路交通法だから電話を受けることはしないけれど。
誰からの通話要請かを助手席の奥方に確認してもらうことはできる。
できる、が。その発信元が家庭平和を乱す
色事 仕事であったなら
残る休日は修羅場と化す。
三宅坂を通過した John Cooper は竹橋ジャンクションへとひた走る。
この先、5号池袋線や八重洲線からの流入をかわし、
どん詰まりの江戸橋ジャンクションを経て7号小松川線に至るいわば
生き馬の目を抜く戦場へ打って出ようとしている際に
些細なことを押し問答している余裕は心理的にも物理的にもない。
この電話。無視すべき ...
しつこく鳴り続ける電子音をBGMとしながら
水は眠っても敵は眠らぬ
高架線をやり過ごした John Cooper は、この日最後の用を足すためにペットショップ前の路上で
ハザードを炊いたのであった。
そうそう。ケータイを確認せねば
着信履歴に躍る文字は、
暇を持て余した主婦からの誘い 点数稼ぎで休日出勤したのはいいが
PCが固まって Help Me!と叫ぶ(間抜けな)社員ではなかった。ディーラーからである。
はて? ディラーには用事なぞないが ... 単なるご機嫌伺い?
面倒だから(電話は)なかったことにもできたけれど、ムスメを抱いたままお店に入った奥方が
出てくる気配もない。暇つぶしに電話を入れてみれば。二代目担当氏の弾んだ声が耳に届く。
お休みのところ申し訳ありません ... 実は
来週末に新しい MINI の内覧会を行うんですが、今日。クルマが入ってきまして
もしお時間がありましたら(じっくりと)ご覧に頂けますが ...
と、いうお誘いである。
(行けたら)行きます! と答えたものの、ある意味。
色事や仕事に匹敵する修羅場へ展開しそうな、新しい MINI とのご対面である。
我が家に限って。
次は MINI でないのだから見ない方が身のためであるけれど、それでも
行ってみようかと思ってしまうのは MINI 乗りの性であり。
これは、これは。奥様とワンちゃんもご一緒で ...
先代担当氏譲りの慇懃さに若さ分の清潔感を加えた
二代目担当氏がドアを開ける。
ショールームに鎮座するは F56 型 MINI ではなく
R61 型 MINI PACEMAN であった。
しかも JCW →
まぁ、午前中の雨と風は凄かったですねぇ
無難な天気の話題から会話の導入を図るあたりも
先代譲りの二代目である。英国車を取り扱う
営業マンたるもの天気の話題は欠かせない。
まずは。新型をご覧になります?
ウェルカムドリンクを後回しにして、F56 が
置かれているという作業場へと向かう。
新しいオーナーを待つ納車間際の MINI と
同じ納車待ちでも居住まいまでもが上質な
サンやゴの置かれた奥の奥にそれは、いた。
ステージ上でスポットライト浴びていた
東京モータショーと舞台は異なる。
より日常へと近づいたディーラーの敷地で
イメージカラーのボルカニックオレンジを
身に纏った F56 型 MINI は少し
浮いた存在のようにも思えた、が。
これが当たり前の光景となるのも時間の
問題であるような気がしたんであった。
それほど。新しい MINI にデザイン的な
違和感は宿っておらず、むしろ
偉大なる先祖へのオマージュが込められた
大きな台形グリルに、続く6~7年の風景を
リードすべく強い意志を覚えてみたり ...
これからは。こちらがエンジンスタートボタンになるんですよ~
まるで。納車説明のように実演する二代目担当氏の声は明るい。
エンジンに火を入れる儀式ってのは(他人事ながら)いいもんだ
ドロロロ~ん
アメリカン V8 を彷彿とさせる低く重い音質の
エキゾーストノートはだけども現代的な音量に
抑制されており、JCW サウンドに耳慣れた
ワタクシは物足りなさを感じたが。
まごうことなき MINI サウンドである。
← 新型 Cooper S のエンジンルームを見る
写真が暗くてわかりづらいですが
ヘッドカバーまで大きくなっちゃったぁ
どうぞ。運転席へ
では、失礼して ...
R から F へと形式変更された MINI の最もな相違は
室内にあるとの印象をモーターショーで受けた。
そのイメージに偽りはない、やはり。
腰を下ろしたシート、
眼前に広がるダッシュボードのデザイン、
手に触れたトリム類の質感、などなど。
現行 MINI に散見されるコストダウンの弊害は
見当たらず、プレミアムコンパクトを謳っても
恥ずかしくないインテリアが備わったと言える、が。
MINI というよりも。イチな感じがつきまとう。
より使いやすく、より安全に、より高品質に。は、
モデルチェンジの王道であれど、遊び心を
失ってまでやることではないような気もしたり ...
MINI 乗りの思考回路はえてして天の邪鬼なり
← 本来の機能と決別したセンターメーターに
収まる電子的インテリジェントシステムは
初期設定が済んでいないためブラックアウト
左右独立の温度調整が付いたエアコンと
ギアポジションが光るシフトノブにご注目!
ドライバーの正面に回転計を据えたのは MINI の良心ながら、添え物のようにひっつく
速度計の存在の軽さはご愛敬である。誰もが想う MINI の世界観を表現しつつ
21世紀のドライブに必要な要素を盛り込んだ F56 の挑戦は吉と出るか、凶と出るか ...

右足に呼応するエンジンは、やる気十分である。
セレクターを D に入れ、ブレーキペダルを
リリースすればあとは、野となれ山となれ ...
まだ。ナンバーが取れてないんですよ~
あらら。なんでしょう、この尻切れトンボな感じ
来週末に迫った内覧会での試乗を約束し(?)、
JCW Paceman が新しい弟分の感想を問い掛ける
店内へと舞い戻る。
アイスコーヒーを頂きながら F56 談義へと
座の空気は進む。
いいですよねぇ。私、欲しいですもの
なんの躊躇いもなくそう言い放つ二代目担当氏に
営業マンの顔はなかった。あるのは
新型 MINI を自分のものにしたいと心底願う
自動車好きの、青年の顔であった。
おそらく彼は
走ったのだ と確信する。
走って(今までの MINI 以上の)何かを感じ取り
その結果、F56 の虜になってしまったんであろう。
そんなにいいのか? 新型はっ

二代目担当氏の熱い想いが込められたかのような
分厚いカタログをめくる。
Cooper S 6MT \3,180,000 也、のプライスタグ。
ナビゲーションシステム標準装備分を考慮すれば
現行型との価格差は誤差の範囲にある。
この価格であの内容 ... (意外に)安いか?
いかん、いかん。
彼の熱き想いに感化されつつある自分が恐い。
やはり。
見なかったことにしよ~、っと。
MINI が新しくなったことを忘れてしまえば。家庭平和は維持できる。
新しい特徴なんて知らない、知らない ...
Posted at 2014/03/31 15:17:28 | |
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