先週の土曜日、前回ロケしていたホタルのスポットに撮影に行ってきました(^^)
そこで今回はホタルの撮り方をご紹介します。
ホタル撮影は状況により難易度が変わりますが、やや高めになる印象です。
設定の仕方は一眼タイプのカメラを対象にしていますが、コンパクトカメラでも
おそらく参考にして頂けると思います。
まずはカメラ設定の基本条件を以下にまとめてみました。
【基本条件】
① レンズ :
明るい(F値の小さい)レンズ
② 撮影モード :
マニュアルモード(M)
③ 絞り値(F値) :
開放~1段絞り
④ 露出時間 :
最大秒数~バルブ
⑤ ISO感度 :
100~3200
⑥ ホワイトバランス(WB) :
太陽光
⑦ シャッターモード :
インターバル撮影または2秒タイマー/レリーズ
⑧ 記録方式 :
RAW(+JPEG)
⑨ フォーカスモード :
マニュアルフォーカス
⑩ ノイズリダクション :
長秒時NRオフ
①レンズ
ホタルの光はとても弱いので
明るいレンズを選ぶのがポイントです。
「明るいレンズ」とは概ねF値が2.8以下のレンズを指すのですが、
このようなレンズだと蛍の消え入る前の輝線の描写が有利になります。
とは言え、もちろんキットレンズでもホタルたちを捉えるのは可能です。
F値の変動するレンズ(F3.5-5.6など)の場合は広角側を使った方が明るく有利です。
それにどの画角を選ぶかによって絵作りが変わりますので、
状況と表現したい形に応じてレンズを選択して下さい。
【広角】
○:撮影エリアが広くホタルの輝線を捉えやすい
×:ホタルの輝線が細くなりがち
【標準】
○:ホタルの距離感が見た目に近い
×:三脚固定だと撮影エリアに狭さを感じる
【望遠】
○:ホタルの光が強調される
×:撮影エリアが狭くホタルの輝線を捉えるのは不利
【ズームレンズ】
○:ズームによる画角調整
×:レンズのF値が暗め
【単焦点レンズ】
○:ズームに比べて明るく光を捉えやすい
×:画角変更にレンズ交換が必要
②撮影モード
マニュアルモード(M)を使います。
③絞り値(F値)
基本的に
絞り値は開放(一番小さな値)に設定しますが、
外灯の光や明るい月光の下などでは1段くらいまでで絞ってもいいと思います。
④露出時間
露出オーバーにならない程度に
撮影できる最大秒数を設定します。
または状況によって
バルブ撮影を行ってもいいと思います。
⑤ISO感度
ノイズ感が許容できる範囲で高感度に設定します。
今回の撮影場所は外光もなく真っ暗な状況でしたが、前半ISO1600、後半はISO3200まで
感度を上げて撮影しました。ただ、あまり感度を上げすぎるとノイズの方が目立つので、
感度の上げすぎには注意して下さい。
(追記) 外灯など環境光のある場所ではISO100~800程度の感度を基準に設定しましょう。
⑥ホワイトバランス(WB)
基本的に「
太陽光」で構いません。
演出として色温度を変更しても蛍の光の色は殆ど変わりませんので、
背景に応じて選択するといいと思います。
⑦シャッターモード
一枚撮りの場合は
2秒セルフタイマー又は
レリーズを使います。
一眼レフの場合は
ミラーアップ撮影をするのがいいと思います。
また、いつホタルがカメラの前を飛ぶのか分からないので、
インターバル撮影で連続撮影をするのが有効です。
⑧記録方式
基本的に
RAWで撮影するのがオススメです。
蛍の光の捉え方はレンズ性能とカメラの高感度性能によりますが、
あとで現像するときにに露出補正をすることでホタルの光が浮かび上がります(後述)
⑨フォーカスモード
マニュアルフォーカス(=オートフォーカス・オフ)にします。
暗くなるとオートフォーカスが効かなくなりピント合わせが大変になるので、
まだ明るい段階でピント合わせをしておくのがいいです。
撮影の前段にデジタルプレビューでホタルの光付近の草木にフォーカスが合っているかを確認し、
もしピントのズレが分かった場合はフォーカスを少し動かしてはプレビューを繰り返してピントを
追い込んで調整をします。特に手頃な対象が確定しない場合はフォーカスリングの距離指標で
2~3m程度から∞方向に徐々に動かしつつ試写して、しっくりくるフォーカスポイントを探しましょう。
⑩ノイズリダクション
この項目は少し上級編なので、内容が分からない場合は読み飛ばして下さい(^^ゞ
ホタル撮影では連続撮影が主になるので
長秒時NRはオフにするのがオススメです。
暗い中で長秒時ノイズリダクションがオンになっている場合、例えば30秒の撮影だと
更に30秒のNR処理時間が掛かり、1枚の撮影に合計1分の撮影時間が掛かります。
これだと撮影リズムが悪くなるので連続で撮影する場合は長秒時NRはオフにします。
代わりに撮影の最後にレンズにキャップをして、撮影で使用した感度・時間の真っ黒の
写真(ダークフレーム)を記録しておくと長秒時NRと同じ処理(ダーク減算)が可能です。
但し、後でダーク減算によりノイズリダクションをするのは30秒では処理できませんので、
手間を掛けずに高画質に撮影するには長秒時ノイズリダクションをオンにして撮影する
のもありだと思います。もちろん多少のノイズを気にしないのであれば長秒時NRをオフ
にして現像するのが最もお手軽にはなります(^_^;
※「ダークフレーム」とは記録素子の定在ノイズ(暗電流)を記録したデータになります。
※現像時にソフトウェアを使ってダーク減算をすることで長秒時NRと同じ効果が得られます。
⑪その他
カメラの設定は以上ですが、ホタル撮影での重要な要素 があるので記載しておきます。
ホタル撮影に重要なのは
【情報収集】と
【時刻】と
【場所】の選択です。
時期に関してはホタルの種類によって見頃が変わります。
代表的なのは次の3種類のホタルになります。
【ヒメボタル】
明滅:黄金色で短くデジタル的な点滅
飛方:メスは飛べないため草の茎、枝などに捕まりながら光る
見頃:5月下旬~6月上旬頃
【ゲンジボタル】
明滅:ゆっくりと2~5秒間隔くらいで滑らかに明滅
飛方:曲線的
見頃:6月頃
【ヘイケボタル】
明滅:間隔は短く1秒くらいで揺れるような明滅
飛方:直線的
見頃:7月頃
ホタルたちは概ね暗くなる
19~20時ごろ飛び出し30分くらい光って一度休憩します。
そしてまた30分くらいして光り出すというリズムを繰り返して活動します。
ですので撮影するためには
19時くらいには撮影スポットに到着しておきます。
周りに見物客が来ている状況でも最初のピークが過ぎると大体は帰っていくので、
人の多い時間帯は撮影場所を探しながら目で楽しんで、その次の光り出しを狙って
撮影してみるのもいいと思います(^^)
ただし光り終わってから40~50分以上待っても再び光り出さない場合は、
その日はホタルも寝てしまったと思って撤収するのがいいでしょう。
また暗い道を歩いたり状況を確認するのに
懐中電灯が必須ですが、
その際もなるべくホタルを刺激しないよう赤い光のものを使う方が良いです。
ホタルは強い光を受けると警戒して光らなくなったり寄りつきにくくなりますし、
また赤い光の場合、どうしても使いたい写真に光が写り込んでしまっても
現像する際に赤系の色だけ取り除くことで救える可能性が出ます。
そして最も重要なのが撮影場所の選択ですが、インターネット検索でヒットするような
場所は事前に確認しないと
三脚禁止の措置をしている所が多く、またそういう所では
数十人から数百人の人が来られるので、ホタルの鑑賞はできても撮影はできる状況
ではないことが殆どです。
ですので少し遠方になっても、
人の少なさでスポットを探すことが重要だと思います。
※人気のない場所ではヘビなどもいる場合があるので十分に注意して下さい。
もちろん暗い中での撮影なので、お使いのカメラは十分に使い慣れておく必要がありますし、
灯りを点さなくてもボタンの位置や設定などができるくらいにはしておかないと
撮影タイミングを逃してしまいます(^_^;
ちなみに今回、私がホタルを撮ってきたのは19時半~21時半くらいです。
レンズは31㎜/F1.8の単焦点レンズで、換算47.5㎜の標準画角になります。
撮影場所には他にもう一組の方が見に来られていて直前に軽く雨が降るなどしましたが、
撮影時刻には雨も上がり、見物客もその一組以外は誰も来ない好条件の撮影となりました(^^)
ホタルは定点撮影をして合成することで雰囲気のある写真に仕上げることができます。
先のホタル画像も数枚の写真を合成して仕上げたものですが、簡単にではありますが、
次の2枚の写真を使った合成手順をご紹介します。

この2枚の写真は撮影時の撮って出しの画像です。
かなり暗い状況で撮影したので、ホタルの光以外は殆ど真っ暗ですね(^^ゞ
本来は左くらい賑やかな写真が撮れていれば、合成する必要はありませんが(^_^;
この2枚の写真を使って現像する手順を以下の画像にまとめてみました。
【基本作業】
【ダーク減算によるノイズリダクション比較】(画像右半分切り出し)
この2枚の写真の違いは軽微ですが、ホタルの光のような微妙な現像をする場合、
この違いが分かる程度のモニター、または調整はしておきたいところです(^^ゞ
【完成写真】
長くなりましたが、今の時期しか撮れないホタルたちの幻想的な世界に挑戦してみて下さい(^^)/