1980年代後半、まだ免許取りたてのころ、
週末は夜な夜な、お友達とあそんでいました。
1.楽しい余暇の過ごし方
週末の夕刻を過ぎると、我が家に数名の友達がやって来ます。
各々、車に乗って来て私も車で外出したいのですが、
そのころ、我が家にあるたった1台の車はいわゆる家族の車で、
私が自由に使える環境にはありませんでした。
車を使っていい日もあるのですが、
その日は、父親が車を使っており、私は遊びに来た
友達の車に便乗して出かけることとなりました。
行き先は、県内のとある「峠」。
そのころ「走り屋」と呼ばれる人たちが、
夜、峠に集まり、タイムだ、ドリフトだと
車を走らせ、遊んでいました。
社会的には良くない行為であることは、ある程度わかっていたものの、
最低限のマナーとして、近くに民家等のない峠を選んでいました。
私も、自分(我が家)の車で来たときは、
MTを操り、ヒール&トゥを決めながら、上り下りと楽しんでいました。
ドリフトなんて、出来はしませんでしたが....
2.峠の過ごし方
そのころ乗っていた車
我が家の車 マツダファミリア
免許取得後、初めて乗る車で、ダーボの加速が
こんなにも強烈であることを教えてくれた車。
その後、ターボラグの激しい、いわゆる「どっかんターボ」と
揶揄されることとなる。
友達
Aの車
ホンダ
CR-X
当時は排気量1.6
Lクラスのボーイズレーサーが
峠ではベストマッチだった。
そのころ、友達
Aはこの車を新車で購入。
NAの素直な加速と高回転型のエンジン、
そして、車重が軽い(なん
kgかは知りませんが...)と思う。
もう1台紹介、友達
Bの車
マツダ サバンナ
RX-7
マツダの誇るロータリーエンジン搭載。
当時、リトラクタブルライトは珍しかった。
後ろ座席の居住性は快適とは真逆の空間。
と、こんな車で峠で走らせ遊んでいました。
とこで私、少々飽きっぽいところがあります。
友達の車に便乗してきたその日は、
友達や他の人が走る車を眺めるだけのギャラリーとなります。
「友達の車を借りて走る」ということは、しないのです。
人の車で事故ったら大変ですからね。
ギャラリーだけでも満足する人もいるのですが、
私は、車で走りたい。でも車がない。
次第にストレスを感じてきます。
そして、足回りを峠仕様に決めたカッコいいはずの車が、
次第に峠を上ったり、下ったりの鉄の塊に見えてきます。
もう、こうなるとあまり楽しくはありません。
休憩中の友達の車のご自慢のφ100のマフラーに
缶ジュースの空き缶を入れて遊ぶなんて、当然の流れです。
(具合がイイと空き缶がロケットのようになります)
実際のところ、周囲にも迷惑です。
みんな楽しんでいるのに、私だけつまんないオーラだしまくり。
でもその頃は
KY(空気読めない)なんて、言葉がなかったので、
私のとったこの行動は、非難されるものではありません。
こうなると、気持ちは元に戻りませんので、友達に「家へ帰る」と
告げますが、友達はまだ鉄の塊で遊びたいようです。
この日、友達は
Aと
Bの2人が各々車で来ており、
私は
Aの
CR-Xを借りて、家へ帰ることとなりました。
この時、時刻は午前1:00くらい。
Aは
Bの車に便乗して我が家に
CR-Xを回収に来ることとしました。
3.検問
友達の
CR-Xを駆り家路へと走ります。
車が違えど、操作方法なんて変わりません。
ハンドルがあって足元は右からアクセル、ブレーキ、クラッチは
世界共通ですから。
違うと言えばフィーリングでしょう。
我が家の車、ファミリアとの若干の違いを感じながら、
家へ帰ります。
家まであと少しとなり、主要の幹線道路から、
路地裏へと
CR-Xを向けます。
なにか赤く光っているものが見えます。
なんだろうと思い近づくと、
それが検問であることがわかりました。
その刹那、シートベルトの確認です。
余談ですが、こんな
Tシャツがあります。
シートベルト風
Tシャツ。
持ってないし、着たこともない。
これは右ハンドル専用。
話を戻して、
前方に見える検問、
シートベルトは装着していた。問題なし。
こんな路地裏だ、速度違反の取り締まりでもあるまい。
しまった、携帯電話か...
1980年代のやたらと大きな携帯電話...
あっ、当時携帯電話なんて持ってなかった。
運転中の携帯電話使用についても取り締まりの対象ではなかった。
ま、また話が脱線してしまった。
もう一度話を戻して
前方に見える検問、
シートベルトは装着していた。問題なし。
こんな路地裏だ、速度違反の取り締まりでもあるまい。
友達の
CR-Xはフルノーマル、整備不良もない。
携帯電話は持ってない。
ズボンとパンツは...良かった。今は、はいている。
OK.
さあ、大丈夫だ、なんでも来い!いざ検問へ突入。
おまわりさんが「止まれ」の旗で合図。
友達の
CR-Xを静かに停める。
なにもやましいことがないので、
みなぎる潔白への自信、すがすがしい好青年。
その時、目に入ったのは、私の前に検問で止められ、
なにかの機械に息を吹きかける人の姿。
そうか、飲酒の検問か、息を吹きかけていたのは、
アルコールを検知する機械だ。
なるほど、こんな路地裏で検問をしていたのは、
飲酒運転の摘発だからか。
飲酒運転者は検問を避けるため、
幹線道路を敬遠し、路地裏を走る傾向にあるのだろう。
などと、その光景に意識をむけていると。
「...ませーん。」
ん?
「すいませーん、運転手さん。」
おまわりさんが満面の笑顔を窓越しに、こちらを見ている。
「すいませーん、窓を開けてください。」
ああ、そうだった、検問だ。ま、窓を開けよう。
えーと、ハンドルは...
当時、車の窓の開閉は、ハンドル式が主流だった。
今でも、商用車はハンドル式が多いですよね。
当時、パワーウィンドウという装備は車格のあるエライ車か、
一部の車のトップグレードのみに設定されていた。
友達の
CR-Xはトップグレードで、
当然のようにパワーウィンドウが装着されていた。
パワーウィンドウになれておらず、当然のようにハンドルを探す私。
この時、時刻は深夜1:30ごろ。あたりは路地裏で真っ暗。
車内は真っ暗で、どこに何があるのかわからない。
車を友達から借りたときの、
「ハンドルがあって足元は右からアクセル、ブレーキ、クラッチは
世界共通ですから。」
なんて、豪語した私を省みる余裕も今はない。
ハンドルを必死で探す私を、イラつくように見るおまわりさん。
違うんだ、私は潔白だ。ただ、そこにハンドルがないだけなんだ。
そうだ、車内を明るくしよう、そうすれば
ハンドルの場所がわかる。←まだハンドルがあると思っている。
えーと、ルームランプのスイッチは...
だいたいルームランプのスイッチは、
車内の天井の中央にあることが多い。
私は、運転席から後ろを振り返り、
視線を天井に向けスイッチを探す。
もちろん、視線を向けても真っ暗なので手探りで探すだけど、
なにか、感触が違う。
天井の内貼りは、なにかしら柔らかい素材だと思うのだが、
手に伝わる感触は固い。なんだ、この感触は?
実はこの
CR-Xはグラストップ装着車。
ルーフ全体が強化ガラス製なのです。
なんて、ややこしい屋根なんだ。
グラストップ...オシャレな装備なんだろうけれども、
今の私にとっては混乱をきたす代物でしかなかった。
手に伝わるグラストップの固い感触が冷静な判断を失わせ、
結局ルームランプのスイッチは分からなかった。どこにあったのだろう。
そんな右往左往している私を見るおまわりさん。
ほどなくして、ある種の誤解が芽生えてきた。
おまわりさんの表情が険しくなる。
きっと、
「おまえ酒飲んでんだろう、早く開けろ」
なんて思っているんだろう。
ああ、まずいぞ、変な誤解を受けている。
そうだ、ドアを開ければいいんだ。
ハンドルがないなら、←だから最初からないんだよ。
ドアを開けよう。
ドアハンドルの位置は...
おっ、あったあった、手探りでも一発で分かった。
おまわりさん、おまたせしました。
こんな深夜までお仕事、ご苦労様です。
今、このドアを開けますので、お待ちください。
では、
ガチャ...
ガチャガチャ.......
開きません。
ドアが開きません。
ドアロックがかかってます。
ドアロック解除は、また車種により違いがあります。
ドアハンドルの近くか、窓のサッシのようなところか、
どちらかにあります。
この時、私はすでに、精神が崩壊しており、
ドアハンドルの近くにあるドアロック解除部分を
見つける気力が失せていた。
あれ~、外でおまわりさんが何か叫んでいるぞ~
あっ、なにか犯罪者を見るような眼差しだ~
あっ、おまわりさんが増えてきた、棒みたいなものを持ってるぞ~
あはははは~.....
結局はおとがめなしでした。
1人のおまわりさんが、懐中電灯で車内を照らし、
明るい車内を冷静に見ることができたので、
ドアロック解除を行い、ドアを開けることができました。
軽くパニックになったことを一通り説明し、
本来の目的である飲酒のチェックを受け、
何事もなく?検問は終わり、家へ帰ることができました。
4.教訓
普段と違う車を運転する時は、いろいろな補機類も確認しよう。
もう少しで、公務執行妨害になるところだった。
エピローグ
さあ、会社の車(トヨタアリオン)で営業だ。
私が運転しよう、きみ(部下)は助手席に座りなさい。
車で移動中、急に部下が...
部下「
Rijoさん、そこ左折です!」
私「おっ、おぉ、分かった」
左折のウインカー、合図しなくては...
その瞬間、ワイパーが動く...
だって私の愛車は輸入車チャレンジャー...