2015年10月18日。
日本海沿岸部を新潟~青森まで結ぶ予定の高速道路『日本海東北自動車道』通称日東道は、にかほ市の金浦IC~象潟IC間が開通した。
これで新潟市から青森市までの322kmの内227kmの区間が開通済みとなった。
山形県境への延伸は、仁賀保IC~金浦IC間が開通した2012年以来、3年ぶりである。
にかほ市象潟までの道程は秋田市からでは、由利本荘市の岩城ICより松ヶ崎亀田IC~大内JCT~本荘IC~仁賀保IC~金浦IC~象潟ICと約70kmを正しく南下した先である。
とにもかくにも、県の最南端まで高速道路一本で行けることになったわけで、開通翌日の19日月曜日にさっそくこれを岩城ICから今回新設された象潟ICまで行ってみることにした。
時に、この日東道(界隈ではもっぱら日沿道と呼ぶのだが)であるが、筆者は県内の道路でも最も気に入っている路線の一つである。
秋田市から由利本荘市方面への道中、右手側には日本海が左手側には里山があり、まずカラリと晴れた日ならば、大内ICを過ぎたあたりから先は目の前に鳥海山の優美な景色が広がる。
しかも岩城ICからの乗り入れならばこの区間は無料である。これは本当にありがたいことである。
畢竟お天気のドライヴにはこのルートで矢島方面へ繰り出すことが多いのである。
この日は雲ひとつないとまではいささか大げさではあるけれど、それでもうららかな秋の晴天である。緑に囲まれた視界を適度にアップダウンしつつ進む。
この道路はいつ通っても景色のおかげもあるのだろうけれど、およそ圧迫感がない。
本荘ICの手前からは鳥海山を正面に望み、仁賀保ICからは左手側にその姿を見上げながら巡航する。
思うに道造りにも上達というものがあるのではないだろうかなどと考えていたら、一時間ほどで象潟ICまでたどり着く。
幼少の時分、象潟というのはマイクロバスの遠足で行くような遥か遠い場所だったのだが、それからすると随分近くなったものである。いや近く感じるようになったというべきだろうか。就中、新道を走るのは気持ちが良いものだ。
象潟ICから先の酒田までの40kmは未完成区間である。けだし山形は行ってくるにはそれなりには遠いのだ。

象潟ICから降りると日本海である。
象潟という地は県内でも異例といっていい程に暖かい。
やはり海流のよい影響を受けているのである。
街並みもどこか南国感のようなものがある(気がする)

まずは道の駅ねむの丘に立ち寄る。
ここは四階が大浴場になっており、遠くに飛島を望む日本海の眺望が楽しめる故、どうせならタオル持参で行くとよいだろう。

にゃんとここにはあのガルパンポップが展示してあるのだ!
何故ここにあるかというと、大洗の友好都市であるにかほ市が特に期限の定めなく大洗から借りたとのこと。よって、しばらくはこの一角に鎮座ましましているようである。

それにしてもやはり等身大であるからして、驚く程まこちんは可愛いのである。
これは本当にそうなのである。凝と眺めつつ今日の安全をあんこうさんチームに祈願して出発する。
ともあれ現在地である。

せっかくの秋晴れでもあるし、鳥海山の紅葉でも見に行こうかと思う。
鳥海山麓の道路はとても走りやすいのだが、やはりこの山を通過するとなると、どのルートもそれなりに大変である。今回は県道58号線通称象潟~矢島線を抜けることにする。

ここは鳥海伏流水を水源とする上郷温水路群を横目に獅子ヶ鼻湿原が入り口となる山岳道路である。
このルートは毎年11~6月まで冬期通行止めの区間であるため、中々チャンスはないのである。
GWにブルーラインを通った際もやはり閉鎖中であり、今回はそれ以来である。

また、ご覧の通り、大型車は通行できない区間があるので注意である。
ここの湿原も鳥海マリモで有名なのだが、中を散策して一周するのに歩いて3時間位かかる。散策が目的なら時間には余裕を持たせると良い。ドライヴァーはトイレや飲み物等の準備はここでできる。

序盤は美しいブナ帯を走る。

所々から美しい紅葉も望めるが、車を停める場所には注意が必要である。
このあとは、約五合目の祓川まで、標高を上げていくため運転にも気を使うのでドライバーはあまり紅葉を楽しむどころではないだろう(汗)気圧差で耳がキーンとしてくる。
車ではここまでが上限である。眼下に広がるのは鳥海町伏見の一帯である。

この道路は結局どこに抜けるかというと、ここ東北電力の看板の三叉路である。

右に行けば百宅~笹子峠を経て108号線に出て57号線へ曲がれば羽後町となる。
現状にかほ~フォレスタが通行禁止区間になっていることを考えると、迂回せずに象潟から抜けるには多分このラインだけだろうか。
この時期は道が落ち葉の絨毯になっているのと、やはり相当の時間をかけて標高をこれだけ上がることを考えるとLサイズのセダン等だと結構苦労するのではと思う。
とりあえず象潟矢島線はブルーラインよりは勾配が楽だが、それよりは道が狭い分を考慮して
県道58号線通称象潟~矢島線
踏破難易度☆☆☆☆☆/☆☆といったところだろうか。
さて、鳥海山もこっち側は慣れたルートな分肩から力が抜ける。
麓へ降りる途中は、まだ午後の早い時間でもあるし、猿倉温泉では鳥海荘でお湯に浸かる。
筆者は実はお湯そのものは若干フォレスタに軍配を上げるのだが、晴れていればやはり露天風呂の正面に鳥海山があるこちらに来る。
もし山頂が雲がかって見えなければその時はフォレスタなのだが(笑)
ところで、今日はこのあと実に記念すべき大変な一日となる。
猿倉温泉を麓へ降りると、鳥海町の伏見は川内というところへ出るのだが、そこから隣接する羽後町へ行くには108号線を延々南下して、57号線のぐるりを回って仙道方面からちょっとした峠越えする。
しかし、そんなことをしなくても要は目の前の山を超えればいいわけだ!
実は最短で超える道はあるのだ。
というわけで今日は遂にその道に挑む!
紫水館のところから川内のストリートへ出て、左手側のこのお店の脇から

笹子川を渡る
しばらく道なりに謎の集落を右側へ行くと(左側は千本カツラ方面)

こんなところに出る。

集落の人間でもない限り、まず分かるわけがない。
もちろん初めて目にする案内である。
対向車がこないお祈りを済ませてから
ではいざいかん!

しばらく上るとある程度開けたとこへ出る。
しかしここからが難所なのである!
どうにか、かわせる場所は幾つかあるのでそこを脳裏に焼き付けて登っていく。
といってたらキター!(滝汗
しかし何という幸運か、相手がまずヴィッツだったのと、そしてそこは唯一と言っていいほどかわせるポイントだった!

ふーっと思って上がり始めたらまたキター!今度は軽トラである!
この斜面をゆっくりバックしてさっきの神ポイントまで戻る。(軽トラのオヤジは全力で礼をしていた)
気配がないことを確認して、再アタック!
遂に集落が見えた!
そして抜け出た場所は・・・

そう!羽後町は軽井沢地区、蒐(アザミ)沢集落のあの突き当たりである!!
右側の八木山方面とはこの道のことだったのだ!
この名も無き峠が何故舗装されて通行できるかというと、江戸時代の紀行家、菅江真澄が超えた由緒正しき峠だからなのだ。
当時歩いてここを超えるには相当の苦労だったと思う。(しかも菅江が超えたのは真冬だったとか)
この峠を超えて直接川内へ出るために蒐沢集落で一晩の宿を取ったという記録がある。
人の足ならばこのルートしかないのだと思う。
前回(30話の羽後町編)訪ねたときは、ここまでは来たのだが、実は本能が危険察知して引き返したのである(笑)
その後、いろいろと情報収集をしつつ、お盆に鈴木さんちを再訪した折にこの道路の話をしたら、冬季を除けば
右は行けるとの情報を得てその機会を伺っていたのである。

いまこうして菅江が辿ったこの道を振り返ると往時を偲ばせるのだった。
距離時間共に軽井沢方面まではR57ルートの10分の1位に短縮できるが、100%対向車が来ないことが保証されていない限り、できれば通りたくない。
菅江真澄が超えた由緒正しき名も無き峠
踏破難易度☆☆☆☆☆/☆☆☆と少し。
(道路自体はちゃんと走れるが、難易度は天候や日照状況、また対向車の有無等走行時の状況による)

さて、気を良くしたところで周辺の散策を楽しむのであった。

目の前は笹子峠の山々である。この角度から眺める機会は中々ないだろう。

つまり方角はこういうことである。

さて帰りだが、どうせならこの看板の左に行ってみたくなるのが人情というものではないだろうか。
尤もどのような道なのかは、行ってみないと分からない・・・
というわけで、この後は地獄道を突き進むことになる(泣

しばらくして舗装路は消えてダートになった。
明らかにまともな通行路ではない!
しかし引き返す勇気も何も、このまま道的に進むしかないのだ。
先が見えないためブラインドコーナーでは静止しつつ進むのだが、その都度砂利が崩れる嫌な音を足元から聞かされる。
最早、対向車が来たらなどと考える余裕などは持ち合わせていない。
どれくらい来ただろうか。
パンクしたらどうなるのだろう?その時はヘリで吊るすとかできるのだろうかと真剣に悩む。
来た道をバックして戻るなど、日没までにできるわけがない。多分一日あっても無理である。
サイバーナビの地図MapFanにルート表示されるのだけが一縷の望みである。
そして、やっとどこかに出た。
舗装路とはなんと素晴らしいとしみじみ胸をなでおろす。

ここはもしかしたら私有地なのかもしれない。抜けた先には民家の他何らの看板もなかった。

いずれここから鳥海側へ下れば、平根という鳥海町側のスタート地点をもっとずっと笹子方面に行った先に降りられるのだ。
とにかく初めて知った。
というわけで
羽後町蒐沢~由利本荘市鳥海町村木へ抜ける謎の道路
踏破難易度☆☆☆☆☆/☆☆☆☆☆
(普通車でも走行自体は可能だが、関係者でもなければ止めた方が良い。勿論二度と通らない)
無事脱出したときは、丁度鳥海山に日が沈んで行くとこであった。
秋の日はつるべ落としで、あっという間に日が暮れていった。

そしてやっと元の場所へ戻る。
やはり、この辺りは古い道路が多いのだ。
ちなみに母上の実家はこの商店の通りにあるのだが、今日の道路は川内の人は使うものかどうかと思い尋ねてみたら、
「何それ初めて知った・・・」であった!
なんだそりゃ~!