
川崎重工はツーストロークエンジンのスペシャリストが世界GPでカワサキの黄金期を築き上げた時期がありましたがレース活動中止で多くのスペシャリストがホンダやヤマハに移籍してしまいました。
そんな川崎重工がレース活動を復活させた当時Kさんは川崎重工のオートバイ・スタイリングデザイナー。
89年から91年までのカワサキ・ワークスロードレーサーは、TT-F1もF3もSPもGP250も全てKさんが一人で作ってました。
そんな中に幻のワークスGPマシンのX-09があります。
画像は矢田部の風洞実験施設の外
人間込みの撮影をしているのがポイント
意外と人間抜きで作られているバイクが多いんですよね
見た目では解りませんがこのX-09のCD/a値は0.028だった筈・・
これは非常に驚異的な数値で現在でもGP250クラスの空気抵抗係数の数字ではX-09は世界一で今だに抜かれていません。コレは本当
実際に実験をしているんですがこれを他社のヤマハTZ250被せると14km/hも最高速が伸びます。
同じく他社のホンダRS250に被せると17km/hも最高速に・・
意外な話ですがTZよりRSの方が空力は悪かった見たいですね
ここまで凄いカウルなのにX-09の成績は全くダメでした・・
エンジンがどうしようもなかったみたいですね・・
ツーストロークエンジンのスペシャリスト他社に行っていますからね・・
昔聞いたうる覚えの話・・
X-09
カワサキが「ちょっとだけ」GP250クラスに参戦した時の、幻のマシンですね。
2サイクルエンジンは生き物のような機械なので、職人技を持つメカニックや設計者が必要です。
昔、カワサキには多くの優れた2サイクル職人がいて、世界GPでカワサキの黄金期を築き上げました。
しかしカワサキがGPから撤退したことにより彼らは腕を振るう場所を求め、他社へと散って行きました。
その後、他社の活躍に「元、カワサキ」の職人たちが大いに貢献した、と聞いています。
そんなわけで、職人皆無の状態ではぜんぜんダメでした。
とりあえずカウリングは風洞でかなりの数字を記録していましたが、エンジン遅すぎで役に立ちませんでした。
他社製マシンよりカウリングが大きかったので、ストレートのあまりの遅さに「カウリングの空力が悪すぎるのではないか?」とか雑誌に書かれました。
「アホんだらー。大きいのはわざとじゃ。他社より小さくとかじゃなく、ライダーとの対比で作ってるんじゃ。」
と文句言いましたが、あの遅さを見たら言いたくもなるよな、と思います。
空力は目で見えないので、ある意味何とでも言えます。
雑誌によくある空力の記事なんか見ても、「おっ、けっこうわかってるじゃん。」と思ったことなんて数回しかありません。
ほとんどが「見た目」と「前面投影面積」だけで勝手に思い込んで書いてるんでしょう。
当時の250cc市販レーサーでは、ホンダのRS250とヤマハのTZ250しかありませんでしたが、2車を並べるとRS250の方が「シュッとしてる」し、低いし、小さい。
TZ250はカウリングがなんかずんぐりむっくりだし、大きいように見えるし、見た目がなんかイケてない。
それでRSの方が空力も良いと思ってる人がほとんどだったと思います。
でも実際にはTZの方がずいぶん良かったことはほとんど誰も知らない。
さらに、X-09はTZ以上に良かったなんて、もっと知らない。
空力の良い順番と、ストレートでのスピードの速い順番が全く逆とはこれいかに。
もう空力なんてテキトーに理屈コネといて、カッコいいの作った方がライダーが「その気」になってよっぽどタイム出るよ。 って思ったのがこの頃でした。
Kさんの凄い所は「勝つためのデザイン」を真剣に考える事です。
勝ちに拘る
↑僕も同じですけどね。笑
レーシングマシンの「人気」で勝ち
それのレプリカ車の「売れ行き」でも勝ち
ありとあらゆる分野で「勝つため」
素人目に見てもカッコよく、空力、冷却、雨対策、ライディングポジションなど、全ての性能が他社製品を上回らなければならないし、なにより「結果」を数字で残さなければならない。
それをたった一人で仕切っていた人です。
メーカーの中で、デザイナーが「そこまでしろ」とは言われませんが、Kさんはそこまでしなければいけない、と考えていました。
それまで売れないモデルを連発していて事業部存続が危ぶまれていた川重の単車事業部を復活させたのはレーサーレプリカシリーズの「ZXR」
成績は全くダメでしたが、GP250クラスの「X-09」は空気抵抗係数の数字では世界一の記録をだして今だに抜かれていないのも立派ですよね。
90年はル・マン24hに招待され、3人全てが日本人ライダーで世界初の3位入賞、91年には塚本昭一選手がTT-F1クラスでカワサキ初の全日本チャンピオン。
当然の川崎重工はKさんだけではなく、多くの人達の努力があっての結果ですが、Kさんが考える「勝ちに拘る」結果が次々と実現していった事は素晴しい事だと思います。