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お散歩鹿のブログ一覧

2009年12月04日 イイね!

今ふたたび。

12月4日。
僕はこの日を当分忘れないと思う。



1年前の今日、こんなことがあった。

あっという間の1年。
あれほど誓った安全運転も、つい日々の惰性の中で忘れてしまいそうになる。

この1年の間にも、後から思えば肝を冷やすような場面に何度か出会ってしまった。
いや出会ったしまったなどと言うものではない。
全て気のゆるみが招いたもの。自分のせいだ。

再び1年前の出来事を思い出し、今改めて気を引き締め、これからも大好きなクルマと向き合ってゆきたいと思う。





Posted at 2009/12/04 22:37:26 | コメント(7) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月27日 イイね!

Shikko Man。 第8話

8 残ったもの。



12月21日、日曜日。
男は特定講習の現場にいた。

なんだ? この部屋。
申し込んだ教習所が借りた、とある会館の1室である。
講習と言うからにはてっきり教室みたいな所か、会議室みたいな場所かと男は思っていた。

この部屋は入るとすぐ右手にトイレ付のユニットバス。正面には旅館の窓際にありそうな小さなテーブルと椅子二脚。
左手には8畳の和室が二間続いており、昔ながらの小さなテレビと、塗りの4人用座卓がある。
座卓の上にお茶菓子さえあれば完全に宿泊施設である。

というより、ここは本当にどこかの職員の宿泊施設なのだろう。
ここでは応急救護処置教習と、午後からは実車を使った高速講習を行う手はずになっている。

応急救護処置関連のビデオを見た後、10分間の休憩。
煙草を吸って戻ってきた部屋には、ジャージを着た女性の人形が畳に横たわっていた。
びっくりした。

指導員が言う。
「この子、一体60万円するんですよ。大切に扱って下さいね。」
高ぇ。ジュエル並だ。


人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)の練習が始まった。
最初の若い男の子が人形を負傷者に見立てて肩を叩きながら耳元で問いかける。
「もしもしー。元気ですかー!」
元気なわけ無い。コイツは意識を失っとるのだ。

指導員もすかさずツッコミを入れる。
「いや、猪木やないんやから。『大丈夫ですかー!』です。」
静かなツッコミはそれはそれでこたえる。


真剣に講習を受けた。どうせなら身につけなければ損だ。
午後の高速講習は男にとって造作もない。
朝9時から夕方5時まで、講習はみっちり続き、最後に欲しかった修了証書を受け取った。
これで25日に路上検定に合格さえすれば、年内に免許が手に入る。
やっとここまで来た。男は素直に喜んだ。




12月25日、木曜日。
今日で全てが決まる。チャンスは一度きりだ・・・。


受験者は全部で4人。
男を含む3人がAT、男性一人がMTだった。
今日の試験はATから行われた。
最初の二人がペアで、男は「一人コース」を走ることになっている。
3人だとどうしてもこうなるのだ。

ちなみに路上検定のコースというのは少し変わっていて、最初から最後まで全て道順を決められているわけではない。
指定課題と自由課題の複合ルートなのだ。
例えば一人目はセンターが指定課題開始ポイントとなり、そこから指定課題終了ポイントまで走る。
この間は指定なので道順が決められている。
指定課題終了ポイントまで来ると、そこは同時に自由課題の開始ポイントとなり、受験者が自分で決めた道順で予め定められた自由課題終了ポイントまで走り、そこで2人目に交代となるわけだ。
もちろん採点は指定課題の開始ポイントから自由課題の終了ポイントまですべてで行われる。

しかも指定課題のルートは全く違うA,B,Cの三通りあり、当日の朝にならなければどのコースが採用されるかわからないのだ。

センター周辺の土地勘のない受験者には圧倒的に不利な試験。
行き当たりばったりで自由課題をこなそうとすると、とんでもない難しい道を走らざるをえないかもしれないし、袋小路に迷い込むかもしれない。

だから土地勘のない受験者は、予め下見をして、自分の中で走るべき道順を決めておく方がよい。
もちろん、男は知人に頼んで予めそれぞれの課題のルートを走り、ABCのどれが来ても大丈夫なように自由課題のルートも決めてある。



前の二人の試験が終わり、男は検定車の古いクラウンに乗り込んだ。
一応、乗る前に前後の安全確認もした。車体の下もだ。

男は走り始めた。とにかく制限速度には気を付けておかねばならない。
試験場を出たすぐの道は30キロ。左に曲がってまた30キロ。
右に折れてからしばらくは40キロ、そして法定60キロへと変わる。

時折メーターを見ながら充分に注意を払う。
見通しの良い片側1車線ずつの60キロ道路。左手に一般の自動車学校がある。
そのすぐ前に交差点があり、自分の教え子がここを走るのだろうか、その学校の教官とおぼしき男性が歩道に立っているのが見えた。

男は順調に走る。
右折して町中をそのまま直進。大通りにぶつかったらそこを左折、次の信号をまた左折。
指定課題終点ポイントで一旦クルマを端に寄せ、Pレンジにシフトして止める。
このとき、左のラインと路肩との間が0.75m以下ならば、ラインをまたいで駐車してはいけない。
男はきっちりラインよりも道路寄りにクルマの左側を合わせて止めた。

出発。ここから自由課題ルートだ。
直進するとさっきの片側1車線道路に戻ってきた。そのままそこを左折し、免許センターへ向かう。

遙か前方の交差点に小さく男性が見えた。
さっきの自動車学校の教官だ。まだいたのか。
信号は青。

その瞬間、教官が小走りで道を渡った!
信号無視だ。

おおお。
教官のくせに信号無視するなぁああ。
するんだったら、昨日やれ。
もしくは明日やれ。
オレの前でやるんじゃない。

距離があったため、男は静かにブレーキを踏み、速度を落とした。
男性が渡り終えるのを確認した後で速度を元に戻した。
こんな時は頭で考えられるものではない。体が勝手に反応した。



免許センターに戻った。
場内コースで方向転換のテストを終え、クルマを降りた。

受験者は全てロビーで待つことになっている。
最終受験者まで終わった所で一斉に結果を発表する段取りになっているのだ。

不安がよぎる。




20分ほど待っただろうか。
最後の受験者と共に、試験官がロビーに帰ってきた。

「結果を言います。」
妙な間が空く。

「皆さん、合格です。」
全員に笑顔が溢れた。
「但し、4人のうち余裕で通ったのが一人。あとの3人はギリギリや。これからよう気ぃ付けて走るんやで。」
喜びに沸く女性受験者二人。

ほっとした。


去ってゆく試験官を追いかけて男は声を掛けた。
「すみません。」
この機会だ。自分の運転に悪いところがあれば指摘してもらおうと思った。


「言うたやろ。『ひとりは余裕で通った』って。あれキミのことやで。」
「何か悪い所教えて下さい。自分の運転をチェックしてもらう機会てそうないですから。」
「そうやなぁ。相手がいくら悪うても、あそこは本来きっちり止まるべきやなぁ。」
信号無視で渡った男がいた場面だ。
「充分に歩行者を認識しとるのがわかったから何も言うたりせんかったけど、もし事故でもあったら、いくら相手が悪うてもこっちの過失割合を高う見られてまう。」

「あとはウインカーのタイミングかな。もう少し早めでもええんちゃうか。ま、許容範囲やったけどな。」
そう言ってから、こう付け足した。
「道を怖がってるか、ゆとりを持って走ってるかはすぐわかる。あんたのは慣れた人の運転やった。安全確認もようでけとった。ところでなんで試験受けてんの?」
男は少し恥ずかしそうに答えた。
「更新をずっと忘れてて失効してしもたんです。」
「もったいないなぁ。これから忘れんように気ぃつけなあかんで。無駄なお金も使こたやろ。」
「はい。骨身に染みました・・・。」

そう言ってから、男は少しおどけて笑顔でこう聞いてみた。
「それにしても自分の時は一人やったし、もっと世間話でもしながら走るんかなて思てました。」


「そんなことでけへん。君らより僕らの方がホンマは緊張してんねやで。事故でも起こしたらどうする?
 僕らはその責任があるんやで。喋ってる余裕なんかないわ。」

微笑みながらそう言い残して試験官は去っていった。
男はその背中に敬意を込めて深く頭を下げた。




人生に無駄な事は何ひとつないという。
だとすれば、今回のこの騒動は男に一体何を残したのだろう。

あらためて免許の大切さ、クルマに乗れる喜びと責任の重さを知った。
冷徹な断罪マシーンだと思っていた試験官は、とても人間くさく、決して敵なんかではなかった。
そして何より、いつも男を応援し、最後は我が事のように喜んでくれた友がいた。



人もまばらになったロビー。
差し込む西日があたりを黄色く染めている。

長椅子に腰掛けたまま、男は手の中の免許証を見つめていた。
それはとても長い時間に思えた。

・・・・。

手の中の免許証。平成23年まで有効の免許証。

そっと大切に財布に仕舞い、男は静かに立ち上がった。















******************
       最終集計

発覚から          20日後

ここまでの経費
前回まで         33410円
検定車使用料       1050円
免許交付手数料      1200円
安全協会費         1500円
総合計            37160円



        

                    


--------------------------------------




みなさま、こんにちは。こんばんは。お散歩鹿です。
これで「Shikko Man。」はおしまいです。

自分の不注意から免許証を失効するという大失態を演じた男の話を通して、僕らがふだん当たり前のように持っている免許証の重さ、クルマを運転することの楽しさとその責任を今一度振り返ってみるよいきっかけとなればとの思いで書いてみました。
長いお話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


あ、そうそう。
「男」から1枚の写真を預かっています。
最後に載せておきますので見てやって下さい。

それでは皆様、今年も1年間お世話になりました。
どうぞよいお年をお迎え下さい。
ありがとうございました。













































Posted at 2008/12/27 09:05:07 | コメント(28) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月26日 イイね!

Shikko Man。 第7話

7 焦燥

男が仮免交付窓口で待っていると、昨日の若い試験官が通りがかって声を掛けた。
「どうやった?」
「おかげさまで受かりました。」
「じゃあ昨日注意したとこ、ちゃんとできたんやね。」
「そればっかり気に掛けてましたから。」
なんだ、いいやつじゃないか。

男は仮免許証を受け取った。
カード2枚分程度の大きさのただの紙だが、今の男にはとんでもない宝物に思えた。
男の名前や住所がボールペンで書かれている。
写真の男はまるでアラブ人だ。もうちょっとなんとかならないものか。


日付が変わり、5日間の路上練習期間に入った。
運転歴3年以上の人に同乗してもらい、「仮免許練習中」のプレートを付けて街中を運転すればよい。ただし、高速道路は運転できない。
次回の学科試験までに「路上練習証明書」に5日分の同乗者の署名をしてもらえばよいだけだ。


実は男にはそれよりも気になっていることがあった。
それは本免路上試験後に受けることになる取得時講習についてである。
この講習は免許センターで実施するものではなく、いわゆる自動車学校で受講しなければならないが、
男の調べた限りこれの予約がなかなか取れないらしい。というより、あまり頻繁には実施していないのが実情だ。
そりゃそうであろう。教習所側からすればこんな客はちっとも稼ぎにならない。

男の親しい友人が、県下のある自動車学校に尋ねてくれた。
なんと来年の1月20日まで全く予定が無く、しかも2日間もかかるらしい。

なんてことだ。
これではいくらセンターでの試験を頑張ってもどうしようもないではないか。
何か対策はないのか。年内に取れるようなマジックは。
男は調べた。

・・・・。

探せばあるものだ。
「特定講習」という。
路上試験の前にこれを特定届出教習所で受けていれば、試験後の取得時講習は免除されるらしい。
すばらしい。これしかない。
ちなみにこの特定講習は、路上試験の後ではもう受講することが出来ない。そういうしくみになっている。
だがこんな制度があるなんて、センターでは何も教えてくれなかった。何故だろう。
センターの案内通りに行ってたら、とんでもない期間がかかるところであった。

調べた結果、N県下には特定講習を実施している教習所が3箇所ある。
正直、今まで聞いたことがなかった教習所ばかりだ。
男はそのうちのひとつに受講を申し込んだ。幸運な事に21日(日)がわずかに空いていた。
しかも1日で済ませてくれるらしい。日曜日は免許センターが休館だからちょうどいい。全く無駄がない。


日が経った。
本免の学科試験が近づいてきた。

試験の前日、男は集中力をもって勉強した。
今度の試験は95問、内容もひっかけが多くなり、仮免の時よりぐっと難度があがるという。
しかし学科は絶対に落とさない。男には強い意志があった。
落ちるかもしれない、という状態で試験を受けるのは受験料の無駄でしかない。
学科の実力は問題集を解いている段階でわかるのだから、自信が無ければ受けなければいい。
落ちたらお金と時間を捨てるようなものだ。
「なにがなんでも通ってやる。」
仮免受験時に覚えた事柄を忘れかけていた男は一心不乱に勉強した。
男が寝ようと思った時、時計の針は午前4時を指していた。


男は1週間ぶりにN運転免許センターを訪れた。
今日は12月19日、金曜日。いよいよ押し迫ってきた。
学科試験が始まるまでにトイレに行き、少しグズグズいっている鼻をかもうと大ブースのぺーパーホルダーに手をやった。

男はふと正面の壁に落書きがしてある事に気づいた。
『なんでここの人らは初対面やのにみんなタメぐちなん?』
笑った。男もそう思っていた。
『○×○○×××○○×○×○○・・・』
これこれ、ながら勉強はイカンよ。ながら勉強は。
てか、ここ和式だぜ。どんだけ足腰強いんだ。


本免学科試験、終了。
男は97点で合格した。
合否発表のあと、男は路上試験予約のために急いで電光掲示板を見に行った。

・・・・。
驚いたことにほとんど予約可能のランプが点いていない。
仮免の時のように簡単に予約が取れると思っていた男は見事に当てが外れた。
唯一空いていた25日で予約せざるを得ない。

この運転免許センターは26日で年内業務を終了する。しかもその26日の技能試験予約はもう満杯だ。
ということは、年内に免許を取りたければこの25日の試験にパスするしかない。
一発勝負。チャンスは一度きりだ。失敗は許されない。

思いがけず、クリスマスにドラマが訪れることになった。





******************
発覚から          14日後

ここまでの経費
前回まで         16010円
特定講習料        15000円
本免受験料         2400円
合計             33410円
Posted at 2008/12/26 15:51:49 | コメント(4) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月25日 イイね!

Shikko Man。 第6話

6 挑戦

その夜、男は考えていた。
免許取得以来、ずっとキープレフトを心がけて運転してきた。男の体に染み込んでいるはずだった。
だのになぜそこを突かれたのか。
なぜだ・・・。


技能の再試験は明日だ。幸運にも連続して予約が取れたのである。

できれば明日受かりたい。

明日は12月12日、金曜日。
仮免に合格すればその後5日間の路上練習をこなさねばならない。
男は週明け4日間、つまり翌週の木曜日まではどうしても仕事を休めなかった。
もし明日受かれば、5日間の練習期間と仕事の4日間をダブらせることが出来る。無駄がない。
別に練習は仕事が終わってからやればいいだけだ。
もし落ちれば、翌週金曜以降に再度技能試験を受け、そこで受かってもそこからさらに5日間を経過しないと本免の学科を受けられない。
1回の違いが最短でも1週間の違いになる。そんなことになればもう絶対に年内取得は不可能だ。


なぜだ・・・。
男は考え続けていた。
明日の朝までに答えを見つけないと、また同じ事の繰り返しになってしまう。
安全確認に気を取られて、検定が進むにつれ、つい地が出るだろう。
頭の中で、運転席から見たコースを思い出す。
出発して直進。そして右カーブ、また右カーブ・・・。

・・・・。

・・・・!

その刹那、男は閃いた。
「そうか。そうだ。ははは。」




翌日、金曜日。
再度の仮免技能試験。

男は相変わらず8時前にはN運転免許センターに着き、コースを暗記するのにたっぷりと時間を使った。
1時間ほど経って受付時間の終了5分前になってから窓口へ行き、今日の受付を終えた。
受験番号は2番。えらく少ないようだが、とにかくこれで後ろに乗れる。

今日は昨日とは違うAコースであった。試験官は物静かで、男には少し苦手なタイプに見えた。


ATの順番になり、男は呼ばれて後部座席に座った。
運転席の受験者は少々固くなりすぎているようだ。まだ若い。
一所懸命、しかしぎこちなく走り続ける。
「少し速度が遅すぎますね。もっと早くしてください。」
そう言われれば緊張はより高まるだろう。気の毒に。
いいじゃないか、ちょっとくらい遅くったって。


男は自分が運転しているつもりになってコースを復習していた。
他人の運転を云々言えるような立場ではない。

車は出発地点に戻り、男の番になった。
昨日と同じように乗り込み、発進する。

最初の直線。キープレフトだ。
実は昨夜男が思いついた対策というのはごく簡単なことであった。
要はこの試験場はレーンが広すぎるのだ。普段男がよく走っていた国道の1.5倍はあろうかという道幅だ。
だから自分ではキープレフト、つまりいつものように自分の体がレーンの真ん中に来るように走っていたのでは、左側が大きく空いてしまう。

今日、男は頭の中でレーンを三等分し、一番右のひとつは無いものとして走ることにしていた。
コースは完璧に覚えている。二つ先の曲り方向まで意識して運転した。
そうすることによって今曲がった先のレーンで左寄りを走るべきか右に寄っておくのか、正しいポジションでトレースできる。
坂道でLに落としたシフトもすぐにDに戻した。
左折時の寄りはもちろん、右折時も右足がセンターラインに触れそうなくらいに寄った。

またストップはかからない。
車は発着場に戻った。
息を殺して試験官の言葉を待った。
・・・。


「合格です。」

おっしゃあああああああ。
バーディだ、バーディ。2回で通ったぜ。
男は小躍りした。
快晴の空が一層眩しく見えた。


物語を読んでくれている皆様、期待に応えられなくてすみません。





******************
発覚から           7日後

ここまでの経費
前回まで          9480円
仮免受験料        3100円
検定車使用料       1730円
仮免用写真代        500円
仮免交付手数料      1200円
合計            16010円
Posted at 2008/12/25 14:09:58 | コメント(7) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月24日 イイね!

Shikko Man。 第5話

5 期待

男はこの技能試験を、せいぜい年に一度しか行かないゴルフに例えていた。
距離の短いパー3。グリーンは狭く、周りにはたくさんのハザード。
ここは平均ストローク数6.5を誇る難ホールだ。

平均が5回以上なら自分は3回で受かりたい。
男は思った。
1打目でグリーンに乗せ、2打目で寄せ、3打目を確実に決める。
だから1回目は落ちてもいい。
敗因をしっかり分析し、合格に近づくための不合格になればいいんだ。
そう思うようにした。



比較的若い試験官が車を乗り換える。
「では、1番○○さん(男の名)、運転席へ。2番△△さん、後ろに乗って下さい。」

ついに来た。
後ろの△△さんというは20代後半くらいだろうか、背の高いすらりとした女性である。

まず運転席の横に立ち、それから車の前へ。しゃがんで車体の下を確認し、助手席側、車の後ろと順に見て回る。ドアは一気に開けず、後方確認の後でまず10センチほど開け、それから素早く乗り込む。閉めるときも一旦止めてから閉める。

すぐにロックをし、座席を調整。シートベルトをしたら必ず左手でルームミラーを合わせる。右手を使うと頭が動くからダメだ。

生年月日と名前を尋ねられた後、
「じゃ、行きましょうか。」
試験官が言った。

シフトをDに入れ、サイドブレーキを解除。
左右のミラーを確認した後、右後ろを目視確認し、右ウインカーを出した。
ゆっくりとブレーキを緩め、前方とミラーを交互に見つつ発進。

まずは直進だ。この外周道は150m程向こうで右に90度カーブしている。
キープレフトを心がけて広い外周道路を走り出す男。右から繋がってくる脇道の確認も忘れなかった。
二度右カーブを曲がるとすぐに左障害物、ウインカーを忙しく右、左と出す。
障害物を避けたらすぐにその障害物の前方、自分が戻るべき場所を目視確認しなければならない。

250m程直進するとまた右カーブ。直後に踏切がある。
一旦停止。窓を開けて警報機の音を確認する。前方、右、左、右と確認して踏切を渡る。

すぐさま坂道。
一旦停止。サイドブレーキを引き、Lレンジへチェンジ。
「こんな奴おらんやろ。」とは思うが試験ではこれをしないと減点だ。
坂道発進の後は前方優先道路に徐行して合流し、右折。さらにすぐ右折すると右側にクランクの入口がある。めまぐるしくウインカーを操作する。

クランクに入る前に、クランク上に障害物がないか目視確認。直進車と右後ろを気にしつつクランクへ進入。
通過。楽勝。但し、出る前には次の左折のためのウインカーを出しておかなければならない。

走っている間に男の緊張は徐々に解れてきた。
「後ろのお姉ちゃん、前でこんな上手に運転されてプレッシャーやろな。」
とまで思った。

その後も難なく右左折を繰り返した後、左ウインカーを出して「止まれ」の標識で一旦停止。
ここを左に折れれば、次はもう一度左カーブだ。

もしかしたら一発で合格するかもしれない。
それほど男は快調だった。


「はい。」
突然試験官が言った。
えっ。何?

試験官は勢いよく助手席のドアを大きく開け、
「見て。左側、ドア1枚分空いてるで。もっと寄らな。」

なんでやねん。キープレフトには自信あったぞ。

「それから、これ。」
と言って試験官はシフトレバーを指さした。

やってしまった。Lのままだ。
全く気がつかなかった。
「『なんかスピード乗らへんな』て思てたでしょ。」
笑みを浮かべる試験官。
「さ、右曲がって帰りましょう。」

・・・・。

終わった。
なんとあっけない。まだ半分くらいじゃないか。
最後まで走りもさせてもらえなかった。

降り際、試験官が言った。
「『寄り』やな。曲がる時は特にね。曲がる度に点、引かれていく。そこ気ぃ付けて次がんばって。じゃ。」

じゃ、て。


・・・落ちた。
やっぱり落ちた。
「パーでいい。」などと自分に暗示を掛けながら、心の底では「一発合格するかも」という甘い期待を抱いた。
なのに・・・。
運転歴20余年の自信など吹き飛んだ。
次は今日出来た事まで出来なくなってしまうかもしれない。

男は次回の予約を取りに、窓口へと走った。





******************
発覚から           6日後

ここまでの経費
前回まで          9480円
合計            9480円
Posted at 2008/12/24 13:14:09 | コメント(9) | シッコーマン。 | 日記

プロフィール

「あれっ、あっちに書いたはずなのにこっちにも出てる???」
何シテル?   09/25 22:43
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