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お散歩鹿のブログ一覧

2008年12月25日 イイね!

Shikko Man。 第6話

6 挑戦

その夜、男は考えていた。
免許取得以来、ずっとキープレフトを心がけて運転してきた。男の体に染み込んでいるはずだった。
だのになぜそこを突かれたのか。
なぜだ・・・。


技能の再試験は明日だ。幸運にも連続して予約が取れたのである。

できれば明日受かりたい。

明日は12月12日、金曜日。
仮免に合格すればその後5日間の路上練習をこなさねばならない。
男は週明け4日間、つまり翌週の木曜日まではどうしても仕事を休めなかった。
もし明日受かれば、5日間の練習期間と仕事の4日間をダブらせることが出来る。無駄がない。
別に練習は仕事が終わってからやればいいだけだ。
もし落ちれば、翌週金曜以降に再度技能試験を受け、そこで受かってもそこからさらに5日間を経過しないと本免の学科を受けられない。
1回の違いが最短でも1週間の違いになる。そんなことになればもう絶対に年内取得は不可能だ。


なぜだ・・・。
男は考え続けていた。
明日の朝までに答えを見つけないと、また同じ事の繰り返しになってしまう。
安全確認に気を取られて、検定が進むにつれ、つい地が出るだろう。
頭の中で、運転席から見たコースを思い出す。
出発して直進。そして右カーブ、また右カーブ・・・。

・・・・。

・・・・!

その刹那、男は閃いた。
「そうか。そうだ。ははは。」




翌日、金曜日。
再度の仮免技能試験。

男は相変わらず8時前にはN運転免許センターに着き、コースを暗記するのにたっぷりと時間を使った。
1時間ほど経って受付時間の終了5分前になってから窓口へ行き、今日の受付を終えた。
受験番号は2番。えらく少ないようだが、とにかくこれで後ろに乗れる。

今日は昨日とは違うAコースであった。試験官は物静かで、男には少し苦手なタイプに見えた。


ATの順番になり、男は呼ばれて後部座席に座った。
運転席の受験者は少々固くなりすぎているようだ。まだ若い。
一所懸命、しかしぎこちなく走り続ける。
「少し速度が遅すぎますね。もっと早くしてください。」
そう言われれば緊張はより高まるだろう。気の毒に。
いいじゃないか、ちょっとくらい遅くったって。


男は自分が運転しているつもりになってコースを復習していた。
他人の運転を云々言えるような立場ではない。

車は出発地点に戻り、男の番になった。
昨日と同じように乗り込み、発進する。

最初の直線。キープレフトだ。
実は昨夜男が思いついた対策というのはごく簡単なことであった。
要はこの試験場はレーンが広すぎるのだ。普段男がよく走っていた国道の1.5倍はあろうかという道幅だ。
だから自分ではキープレフト、つまりいつものように自分の体がレーンの真ん中に来るように走っていたのでは、左側が大きく空いてしまう。

今日、男は頭の中でレーンを三等分し、一番右のひとつは無いものとして走ることにしていた。
コースは完璧に覚えている。二つ先の曲り方向まで意識して運転した。
そうすることによって今曲がった先のレーンで左寄りを走るべきか右に寄っておくのか、正しいポジションでトレースできる。
坂道でLに落としたシフトもすぐにDに戻した。
左折時の寄りはもちろん、右折時も右足がセンターラインに触れそうなくらいに寄った。

またストップはかからない。
車は発着場に戻った。
息を殺して試験官の言葉を待った。
・・・。


「合格です。」

おっしゃあああああああ。
バーディだ、バーディ。2回で通ったぜ。
男は小躍りした。
快晴の空が一層眩しく見えた。


物語を読んでくれている皆様、期待に応えられなくてすみません。





******************
発覚から           7日後

ここまでの経費
前回まで          9480円
仮免受験料        3100円
検定車使用料       1730円
仮免用写真代        500円
仮免交付手数料      1200円
合計            16010円
Posted at 2008/12/25 14:09:58 | コメント(7) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月24日 イイね!

Shikko Man。 第5話

5 期待

男はこの技能試験を、せいぜい年に一度しか行かないゴルフに例えていた。
距離の短いパー3。グリーンは狭く、周りにはたくさんのハザード。
ここは平均ストローク数6.5を誇る難ホールだ。

平均が5回以上なら自分は3回で受かりたい。
男は思った。
1打目でグリーンに乗せ、2打目で寄せ、3打目を確実に決める。
だから1回目は落ちてもいい。
敗因をしっかり分析し、合格に近づくための不合格になればいいんだ。
そう思うようにした。



比較的若い試験官が車を乗り換える。
「では、1番○○さん(男の名)、運転席へ。2番△△さん、後ろに乗って下さい。」

ついに来た。
後ろの△△さんというは20代後半くらいだろうか、背の高いすらりとした女性である。

まず運転席の横に立ち、それから車の前へ。しゃがんで車体の下を確認し、助手席側、車の後ろと順に見て回る。ドアは一気に開けず、後方確認の後でまず10センチほど開け、それから素早く乗り込む。閉めるときも一旦止めてから閉める。

すぐにロックをし、座席を調整。シートベルトをしたら必ず左手でルームミラーを合わせる。右手を使うと頭が動くからダメだ。

生年月日と名前を尋ねられた後、
「じゃ、行きましょうか。」
試験官が言った。

シフトをDに入れ、サイドブレーキを解除。
左右のミラーを確認した後、右後ろを目視確認し、右ウインカーを出した。
ゆっくりとブレーキを緩め、前方とミラーを交互に見つつ発進。

まずは直進だ。この外周道は150m程向こうで右に90度カーブしている。
キープレフトを心がけて広い外周道路を走り出す男。右から繋がってくる脇道の確認も忘れなかった。
二度右カーブを曲がるとすぐに左障害物、ウインカーを忙しく右、左と出す。
障害物を避けたらすぐにその障害物の前方、自分が戻るべき場所を目視確認しなければならない。

250m程直進するとまた右カーブ。直後に踏切がある。
一旦停止。窓を開けて警報機の音を確認する。前方、右、左、右と確認して踏切を渡る。

すぐさま坂道。
一旦停止。サイドブレーキを引き、Lレンジへチェンジ。
「こんな奴おらんやろ。」とは思うが試験ではこれをしないと減点だ。
坂道発進の後は前方優先道路に徐行して合流し、右折。さらにすぐ右折すると右側にクランクの入口がある。めまぐるしくウインカーを操作する。

クランクに入る前に、クランク上に障害物がないか目視確認。直進車と右後ろを気にしつつクランクへ進入。
通過。楽勝。但し、出る前には次の左折のためのウインカーを出しておかなければならない。

走っている間に男の緊張は徐々に解れてきた。
「後ろのお姉ちゃん、前でこんな上手に運転されてプレッシャーやろな。」
とまで思った。

その後も難なく右左折を繰り返した後、左ウインカーを出して「止まれ」の標識で一旦停止。
ここを左に折れれば、次はもう一度左カーブだ。

もしかしたら一発で合格するかもしれない。
それほど男は快調だった。


「はい。」
突然試験官が言った。
えっ。何?

試験官は勢いよく助手席のドアを大きく開け、
「見て。左側、ドア1枚分空いてるで。もっと寄らな。」

なんでやねん。キープレフトには自信あったぞ。

「それから、これ。」
と言って試験官はシフトレバーを指さした。

やってしまった。Lのままだ。
全く気がつかなかった。
「『なんかスピード乗らへんな』て思てたでしょ。」
笑みを浮かべる試験官。
「さ、右曲がって帰りましょう。」

・・・・。

終わった。
なんとあっけない。まだ半分くらいじゃないか。
最後まで走りもさせてもらえなかった。

降り際、試験官が言った。
「『寄り』やな。曲がる時は特にね。曲がる度に点、引かれていく。そこ気ぃ付けて次がんばって。じゃ。」

じゃ、て。


・・・落ちた。
やっぱり落ちた。
「パーでいい。」などと自分に暗示を掛けながら、心の底では「一発合格するかも」という甘い期待を抱いた。
なのに・・・。
運転歴20余年の自信など吹き飛んだ。
次は今日出来た事まで出来なくなってしまうかもしれない。

男は次回の予約を取りに、窓口へと走った。





******************
発覚から           6日後

ここまでの経費
前回まで          9480円
合計            9480円
Posted at 2008/12/24 13:14:09 | コメント(9) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月22日 イイね!

Shikko Man。 第4話

4 火蓋

受付開始時刻になり、男は建物内に戻った。
受験申請書と一緒に受け取った用紙には「過去5年間の違反歴」を書く欄がある。
男はそこに何も記入しなかった。心当たりがない。

窓口で住民票や保険証と共に、記入した書類を提出する。
「違反歴書いてないやんか。」
担当官が言った。

「過去5年に違反した記憶がありませんから。」
「えっ。ほな、なんで来たん?」
「失効してたんです。2年前に。」
「あっ、失効か。そしたら向こうの窓口へ・・・いや違うか?」
「一から取り直しでしょ。」

どうも一瞬どう処理したらよいのかわからなかったらしい。
いかに一年を超えて失効するような阿呆が少ないかよくわかる。

「そや、取り直しや。ここでええわ。過去の免許も出して。」
「昨日○○警察に相談に行ったら取り上げられましたけど。」
「あ、そ。」

情けない会話である。


9時過ぎ、学科受験者は2階の学科試験室へ移動するようアナウンスされた。
受験者は9名。二輪や二種の受験者も一緒くたである。

マークシートと問題が配られた。
パウチされたB4大シートの両面に問題が印刷されてある。
仮免学科は全50問、一問2点で90点以上が合格ラインである。与えられた時間は30分。

勉強さえしていればさほど難しくはない。
見直しを済ませた男は他の受験者を残し、解答用紙を伏せて部屋を出た。
最初の説明通りなら結果が出るのは10時半くらいだろう。電光掲示板に受験番号が表示されれば合格だ。

結果を待つ間、男はもう一度場内コースを見に外へ出た。
待機スペースから既に検定中の車をぼんやりと眺めていた。


結果が出た。
合格だ。

少し、安堵した。
男は再度2階の教室に上がり、今後の説明を聞いた。
返却された受験票の結果欄には「98点」と朱で記入されている。


試験監督であった人物が再び現れて説明を開始した。聞き入る男。

まず、仮免技能の予約を取らなければならない。
1階にカレンダー形式になった電光掲示板があり、車の空いている時間にはランプが点灯する。
午前・午後の区別があり、その中から自分の希望する日を選んで予約用紙に記入し、受け付けられれば完了である。

1階に降りた男は掲示板を確認したが、あいにく今日の欄にも明日の欄にもランプは点灯していなかった。
午前の学科に受かれば、そのまま午後には技能試験。そんなスピーディな展開にはならないのである。
男は仕方なく「明後日の午前」で予約を入れた。


帰り道、男は思っていた。
こんなペースではもう年内取得なんて絶対に無理だ。
思わず溜め息が漏れる。

技能試験まで中1日。
束の間、男は休息する。




木曜日、男は朝一番にN運転免許センターへ行った。
受付開始より30分以上早い。
清々しい朝だが、それを楽しむ余裕はなかった。

すぐに場内コースへ行くと、何かの紙を見ながらコース内を歩いている人達がいる。
どうやらここは検定時間外なら自由に歩くことが出来るらしい。
中央の大きな交差点の信号機が消灯しているのが、時間外である事を示している。

建物内に引き返した男は、「本日の試験コース」と表示された電光掲示板を見つけた。
今日の「普通・仮免」は「Bコース」であった。
もちろん場内コースはひとつしかないのであるが、試験の道順は日替わりなのだ。
だから正確には「Bコース」というより「Bルート」と呼ぶべきなのかもしれない。

壁面に掲示してあるコース図を見つけた。さっき歩いている人が持っていたのはきっとこれだろう。

やっかいな事に、受験者はその日のコースを暗記しておかなければならない。試験官は教えてはくれないのだ。男は自分もコース図を欲したが窓口はまだ全て閉まっている。懸命にBコースを記憶した。

男は再び外へ出て、頭の中でシミュレーションしながらコース内を道順通りに歩いた。
乗車、出発、障害物通過、踏切、坂道発進、クランク・・・。


8時半になった。一番に証紙販売窓口へ行き、コース図を購入した。
場内図4枚と路上図3枚で850円。ぼったくりだ。

受験窓口へ行って受付を済ませる。
受験番号は、1番。

番号をもらってから、男は「しまった」と思った。
検定車には受験者が2人乗る。先の受験者が運転席、次の受験者が後部座席だ。
1番では前の受験者が運転するのを後ろから見学するチャンスはない。
何でも考えて行動しないといけないものだ、と男は反省した。

しかし参考資料が全く無い訳ではない。
試験はMTから先に行ない、どちらも同じ試験官が担当する。
つまりATの1番はMTの最終者のあとだ。自分がその日の一番ではない。
もちろん車が違うので「後部座席に乗って」という訳にはいかないが、
少なくともMT受験者がコース通りに走るのを待合いスペースから目で追うことは出来る。

男は走り出す検定車を注視し続けた。
一人、また一人と試験が終わってゆく。


どうやら噂は嘘ではなかったようだ。
その日のMT受験者は、全員不合格だった。





******************
発覚から           6日後

ここまでの経費
前回まで         3800円
コース図          850円
仮免受験料       3100円
検定車使用料      1730円
合計            9480円
Posted at 2008/12/22 12:55:33 | コメント(7) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月20日 イイね!

Shikko Man。 第3話

3 闘志

家に戻り、男は勉強を始めた。
天気は快晴。テーブルに降り注ぐ木漏れ日が眩しい。

現在の学科試験は95問から成り立っている(仮免は50問)。
うち90問は○×の正誤問題、残り5問はイラスト問題である。
運転席から見た様々な状況のイラストが描かれており、ちょうど雑誌「JAFメイト」の危険予測のページのようなものである。

男が改めて大変だと思ったのは、合格ラインが90点と高いことである。
世に様々な資格試験があるが、正答率90%を求める試験も希であろう。


その日、男は問題集1冊半、9試験分の855問を解き、解説をじっくり読んだ。
81点、86点、89点、87点・・・。
最初はなかなか合格ラインに達しない。

20年以上も運転してて、こうも間違えるものか。
学科試験独特の言い回しに翻弄される。

試験を作る奴にはもっと日本語を勉強してもらいたいものだ。なんなら俺が教えてやろう。
車の免許は無いが、国語の教員免許ならあるぜ。
毒づく男。

だが文句を言ったところで始まらない。
「絶対満点で受かってやる。」
今の男にはそう思うよりほか無かった。



週明けの月曜日。
男の会社に取引先の人がやって来た。

茶飲み話に男が顛末を話すと、
「一度、警察へ行って相談してみたら?」
と言う。
「悪質ドライバーじゃないし、もしかしたら『講習行っといで。』くらいで済むかもよ。」

男は素直に最寄りの警察署を訪れた。
全ての事実を話し、どうしたらよいのか聞いた。

・・・・。


現実は甘くはなかった。
情状を酌量されるわけでもなく、「取り直し」の事実は何ら変わることはなかったのである。
おまけに、
「これ(男の免許証)、あんまり古いからこっちで破棄しとくわ。」

期限切れの免許は没収されてしまったのである。

来なければ良かった。
どうも人間というのは自分に都合の良いほうの話を信じたがるものだ。
例えば「手術を受けろ」という医者と「薬だけで治る」という医者なら、後者に従いたがる。
それが本当に正しいのかどうか考えもせずに。
「悪い癖だ。」
そんな事を思いながら、男は警察署をあとにした。



通勤電車に揺られ、仕事から帰った男に妻が住民票を用意していてくれた。
男は既に一発試験を選ぶことを決めていたが、それでもまだ考えるべきことがあった。

MTにするかAT限定にするかである。

男はもちろんMTの運転も出来る。
若い頃には限定免許など無かったし、兄のロードスターを拝借して乗り回していた時期もあった。
坂道発進くらい楽勝である。

だが、MT車はクラッチ癖を捉えるのにしばらく時間がかかる。
以前レンタカーを借りた時、男は選んだMT車のクラッチ癖がなかなか掴めず、結局辺りを一周しただけでAT車に交換してもらったことがあった。

一発試験は教習ではない。
乗った瞬間から採点は始まるのだ。
初めて乗る試験車のクラッチ癖を探る暇などあろうはずがない。男は試験車の車種さえ知らない。
クラッチさばきに気を取られて必ず足を引っ張られる。他に注意すべき点は山ほどあるというのに。

男は考えた。
限定であっても、営業車も自分の車も身の回りの車は全て運転できる。
仕事にもプライベートにも困ることはない。
限定解除なぞ、免許を手にしてから時間のある時にゆるゆるとやればよいのだ。

男は決断した。MTを捨てた。
大の男が限定だ。かっこわる。

だがそんなことはどうでもいい。
とにかく一日も早く免許が必要なのだ。
体裁など、もはやどうでもよかった。


男は静かに明日の準備を始めた。
・本籍地記載の住民票
・保険証
・筆記用具
・写真
・お金(3100円+1730円)

 
まずは仮免学科試験。
こんな所でつまづく訳にはいかない。
男は誓いも新たに布団に入り、灯りを消して静かに目を閉じた。



翌日、火曜日。
男は受付開始30分前、早朝のN運転免許センターにいた。
受験申請書を見つけて手早く記入を済ませようとしていたのだが、あいにくその用紙は受付時間を迎えてからでないと配布されないようだ。

ひと気のない建物内を歩く男。
まだ満足に蛍光灯も点いていない。
そのうち男は場内コースへ出る扉が施錠されていないことに気づき、外へ出た。

晴れ渡った空の下、大きなコースが広がっている。
最難関の仮免技能試験。
そこは男にとって、決戦の場となるべきステージだった。





******************
発覚から           4日後

ここまでの経費
前回まで          2800円
写真             700円
住民票            300円
合計            3800円
Posted at 2008/12/20 13:02:29 | コメント(11) | シッコーマン。 | 日記
2008年12月19日 イイね!

Shikko Man。 第2話

2 自責

その日男は車を置き、電車で帰宅した。
電車を待っている時も、乗っている時も、自責の思いは消えない。
足取りは重い。
思えば失効中に事故を起こさなかったことだけが幸いだったかもしれない。


男には友人がいた。
皆クルマを趣味とする人達だ。
仲間だと思っていた。
だが免許がない。その事実は、男に彼らを騙し続けてきたような罪悪感をもたらした。
その罪悪感から、男はしばらくその友人達との接触を控えようと思った。
会わせる顔がない。
そして迫り来る孤独感・・・。


その日男はなかなか寝付けなかった。
悔やんでも悔やみきれない。
しかしもう始まってしまったのだ。選択肢はない。
「明日朝一番で問題集を買いに行こう。」
男はそう決めて頭まで布団を被った。


翌日、土曜日。
今日は休みである。
晴れ渡った清々しい朝にもかかわらず、男の頭の中は昨日発覚した免許の事でいっぱいだった。


免許を取得する方法は大きくふたつある。
ひとつは、地域の公認自動車教習所に通う方法。
そしてもうひとつは運転免許センターで一発試験に臨む方法である。

教習所はやさしい。男が初めて免許を取ったのもこの方法だった。
何と言っても最大のメリットはセンターでの技能試験が免除されることだ。
ただ、時間とお金がかかる。
男が調べたところによると、普通免許の教習費用は31万円。
なんてことだ。

一方、一発試験の費用はそれに比べて格安である。
N県の場合、仮免の受験手数料が3100円、これに検定自動車使用料として1730円、
本免の手数料は2400円、車の使用料は1050円である。
ただしこれらは「1回あたり」の料金なので、不合格になればその都度改めて支払う必要がある。
しかしそれでも安い。圧倒的だ。

ただ。
「恐ろしく難度が高い。」と聞く。
特に場内コースを回る仮免許の技能試験は「まず受からない。」らしい。
平均6-7回は再試験となる最高のヤマ場で、10回以上不合格になる人もいる。
横に乗るのは警察官。しかも落ちた理由がわからないというから難儀な話である。
しかしそれもそうだ。これは教習ではなく、試験なのだから。

だが何と言っても、一発試験最大のデメリットは
「免許を取れる保証がまるでない」
ということである。
通らない仮免技能試験で疲れ果て、結局、教習所の門を叩く人も出るという。


一発試験の全体の流れはこうだ。ゴールまでに大きく6つの関門がある。

仮免学科
 ↓
仮免技能(場内)
 ↓
5日間の路上練習
 ↓
本免学科
 ↓
本免技能(路上)
 ↓
指定教習所での応急救護措置ならびに普通車講習
 ↓
免許発行

もちろん5日間の路上練習を除き、それぞれの段階で都度試験に合格しなければ次の段階には進めない。



どちらにしようか、男は考えがまとまらないまま家を出た。
天気のよい日は師走の寒さも心地いい。
15分ほど歩いて本屋へ行き、問題集2冊と運転に関する本1冊を購入した。
こんな類の本を手にするのは、思えば何年ぶりだろうか。

本屋を出た男は近くのスタバに寄り、マキアートのグランデを注文した。
席に着いて問題集に目を通し始める。
隣では3人の奥様方が井戸端ならぬテーブル端会議に花を咲かせていた。

「おたくの○○ちゃんはよくできるから羨ましいわぁ。」
日本中どこにでも転がっている不毛な会話。

「このオバサン達もみんな免許持ってんだろな。
だのになんで俺はこの歳でこんな問題集やってんだろう・・・。」

男の胸中に悔しさがこみ上げる。
でも悪いのは全て自分である。

情けない。

男は静かに問題集に視線を落とした。





******************
発覚から           1日後

ここまでの経費
書籍代           2800円
合計            2800円

Posted at 2008/12/19 14:30:06 | コメント(8) | シッコーマン。 | 日記

プロフィール

「あれっ、あっちに書いたはずなのにこっちにも出てる???」
何シテル?   09/25 22:43
「お散歩鹿」は奈良土産です。 プロフ写真は、移動系アートパフォーマーの MEDAMAN-MEDAMANさんです。 http://www.medaman...
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