スピードトリプルRに乗り始めて、今月の21日でちょうど1年となります。
リッターバイクは初めてだったので、色々と勝手が分からない事が有ります。
「走る・曲がる・止まる」
基本的な動作の中で、ハイパワーと重量を支えるタイヤは重要な位置を占めていると考えています。
昨今、様々なタイヤメーカーから、多くのタイヤがリリースされていますが、マシンのカテゴリーやスペック、ライディングスタイルによって、どのようなタイヤをチョイスしたら良いのか悩むところです。
新商品のタイヤならタイヤメーカー主催の試乗会等に行くことも可能かもしれませんが、既存の製品を乗り比べる機会などは殆ど無いと思います。
大体は信頼できるショップに相談して、奨められるタイヤに落ち着くのが無難だと思いますが、中には口コミで良いと評判のタイヤが良いのだと思い込んでしまうケースもあると思います。
肝心なのは自分のライディングスタイルとタイヤがマッチングしているかというところで、ショップの対応がいかに良くても、自分のスタイルをしっかり伝えなければ、望む性能のタイヤをチョイスしてもらうことはなかなか難しいと思います。
タイヤを履き換えるだけで、乗り味がガラッと変わる事もあるので、自分のスタイルがどういうものなのかしっかりしておくのが良いと考えています。
カウのマシンは今回のタイヤ交換で3種類目となります。なのでこれまでに履いたタイヤの感じた事を纏めてみようと思います。
スピードトリプルRは「そのままサーキットに持ち込めるスペックのネイキッド」というものでしたので、ノーマル装備でハイスペックなパーツが取り付けられていましたから、一般道ではスペック高過ぎな気がしてました。
タイヤはPIRELLI DIABLO SUPER CORSA SPが着いていました。
トラックユースのSUPER CORSAと同様のスリックライクパターンで、公道タイヤ用にコンパウンドを見直し、ウエット性能と寿命を見直しています。今一番タイムが出せる公道タイヤとして一世風靡してますが、ドライ時の性能は熱の入り方が早く、転ぶ気がしない程のグリップ性能は確かに凄いタイヤです。
しかし見ての通り溝は殆ど無く、基本的にドライ性能に特化している為、「雨天時の走行は十分注意して走行して下さい」と注意書きがある程ウエットには弱いです。冷寒時も同様で、熱が入る前のグリップは恐ろしい程ありません。
この時点で公道タイヤとしてかなりリスキーであることは確かで、こんな特性のタイヤをコントロールできるほどの腕はカウにはありません。
夏場は逆にグリップは良く、ガンガン倒し込める感じがあります。内側に切れ込み、旋回性能も凄いです。逆に切れ込み過ぎて、ハンドルを押し戻さなければならず、ライントレースが難しく疲れます。
元々熱が入り易いので、アスファルトの高熱に熱ダレを起こします。
従ってオイシイところが使えるのは凄く短い期間しか無いという結論となり、公道でそれ程のグリップが必要かといえば、タイヤの性能を出し切れない公道ではむしろ勿体無いです。
やはりトラックユースのタイヤがベースなので、致し方ないといったところです。走る度にみるみる減って行くのが分かるほど寿命は短く、3月の納車から7月の4ヶ月間、公道で普通に走って4000kmでフロントタイヤがスリップラインを越え溝が無くなりました。公道スペックとはいえ用途は特化されるタイヤだと思いました。
SUPER CORSA SPよりも公道向きのタイヤとして次に選んだのがPIRELLI DIABLO ROSSO CORSAでした。
より公道向きになっていますが、SUPER CORSA SPのコンパウンドがブレンドされており、公道からサーキットまでというワイドレンジのタイヤになっています。溝も深くなりパターンも公道向きのレイアウトになっていますが、DIABLOと名のつくものは、基本的にコンセプトが同じで、性質は同じものだという認識です。内側に切れ込み、旋回性能があり、コーナーリング中にハンドルを押し戻す力が必要で、ライントレースが難しく疲れるのも同じです。
7月から3月まで8ヶ月履いていましたが、公道のアスファルト上でのグリップ性能は、SUPER CORSAと変わらず、十分過ぎる性能だと思います。夏場はSUPER CORSAほど熱ダレはありませんが、もう少しコンパウンドを公道用に見直しても良い位だと思いました。
ウエットも一応大丈夫な筈ですが、基本的には弱いです。冷寒時はSUPER CORSA SPと同様、熱が入らないとツルツル滑ります。その点はSUPER CORSA SPよりも顕著に出るイメージを持っています。ですので冷寒時のウエットの時は乗らない事にしていました。今回は6000kmで交換したので、SUPER CORSA SPよりも1.5倍の寿命といったところです。
このことから、コンパウンドとパターンは公道寄りにしてはいるものの、やはり基本的にはドライ性能重視というところは変わらず、夏場は良いですが、冬場はドライでも気を使うタイヤだと思いました。
そして今回交換したタイヤはMETZELER SPORTEC M7RR です。
METZELER はドイツのメーカーですが、現在はPIRRELLI傘下で開発部門もイタリアにありますが、開発アプローチがPIRELLIと違うコンセプトであることから、その性能に期待してます。
METZELER は大きく分けてトラックユースの「RACETEC」、ツーリングユースの「ROADTEC]、そして今回履いたスポーツユースの「SPORTEC」となります。
SPORTEC M7RR は昨年の9月にM5の後継として発売されました。末尾のRRは
Road Racingの略で公道レース仕様ということになります。公道レースというと、日本ではあまり良い印象が持たれませんが、METZELER は伝統的なマン島TTレースにタイヤを供給しており、そこからのフィードバックが活かされてM7RRが開発されたということです。
色々な場面を想定したマルチパーパスなスペックを求められる公道でのベンチマークが活かされているので、より実用的な性能を備えたタイヤだと言えます。次期タイヤを悩んでいる時に、周囲のメカニックさんや営業さんに、ライディングスタイルを相談してみたところ、皆にオススメされるので、これは理想的なタイヤではないかと思い履いてみました。
履いた一番最初の印象は、これまでのPIRELLIの2種類のウイークポイントを考えると、METZELER は全てクリアされていると言っても良い程です。これはあくまでもトラックでのハイグリップに特化したものではなく、状況変化が激しい公道に対応できる設計とデザインだからというところだと思います。
夏場の走行を経験していないところは除いて、冷寒時の性能はとても安心感があります。真っ新の皮むき前のあのグニョグニョした感じはなく、しっかりグリップしているのが分かります。 砂混じりのウエット路面でスリップするシチュエーションがありましたが、滑っても挙動が分かり易く安定感があります。
癖が無く素直なタイヤで、イメージ通りにライントレースできるコントロールのし易さは、緻密な設計思想によってタイヤの外径からトレッドパターン、サイドウォールに至るまで計算されて、路面状況にタイヤが追従しているのが納得できます。PIRELLIよりも扱い易くて、そこが公道向きという感じです。
人によって好みは分かれると思いますが、結局のところ、よりトラックユースベースのタイヤは、性能こそ飛び抜けていますが、公道のアスファルトの上ではタイヤの性能をフルに引き出すのは困難ですし、変化のある天候や路面状況に追従出来ないことの方が多いのではないかと考えます。
M7RRのようにRoad Racingのコンセプト通り、公道でいかに性能を発揮出来るかという点を高めることは、結果的に安全マージンが広がるので共感できるところです。
これから先、タイヤを選ぶ時の基準になるような位置付けとなり、現時点では自分のライディングスタイルに一番合っているタイヤだと思います。
あくまでも私感で感じた事を述べましたが、重要なのは、自分のライディングスタイルとタイヤの特性がマッチしているかというところをよく考えて、タイヤをよく知るショップやメカニックさんに相談して選択するのが、楽しいバイクライフを送る上で大切な事だと考えています。