2022年10月30日
納車前夜ということで、プロライダーやバイク雑誌ライダーたちがこのバイクについてどう感じたか、そのレビューをご紹介しておこうと思います。
風が本当に気持ちいいし、景色が目に入ってくる。
パワーや走りなどの設定が、本当にツーリングモデルとして合っている。穏やかな気持ちで乗っていられるモーターサイクルだ。
モーターサイクルジャーナリスト NSさん
長距離を走るほどに、良さが出てくるモーターサイクルだ。
このジャンルを求める人はこれからも増えると思う。
ヤングマシン MHさん
実はこういう乗り味が好きなんだ。
にもかかわらずいいバイクがなく、仕方なくオフロードモデルに乗っているユーザーがたくさんいたと思う。そういう人がきっと乗り換えてくれるだろう。
クラブマン YKさん
塗装がキレイ。さすがヤマハといった感じ。
緑がメインカラーですけど、個人的には赤も好きです。エンブレムの色もあって、外車の雰囲気があります。威圧感がないので、女性にもおすすめできると思います。
レディスバイク KAさん
カウルの効果は評判通りだ。
風を感じながらも、プロテクション効果がある。長時間座っても疲れないシートと相まって、快適なツーリングを約束してくれる。
ミスターバイク STさん
操縦安定性もウインドツアラーのコンセプトどおりきちんと仕上がっている。
気負わずに、長く付き合えるモーターサイクルといえる。
アウトライダー KHさん
コンセプトどおりのマシンだ。
それぞれのメーカーがノンカウルを出してきたけれど、エンジンを全面新設計するなどここまで新しく作り込んだモデルは他にない。
我々としては、大人向けのバイクとして、こういうバイクのある生活提案を誌面をとおして訴えていきたい。
ライダーズクラブ NKさん
リップサービスもあるとは思うけれど、とはいえ、あえて言うなら、こんな印象を受けたといったものではあるはず。
さて、次にエンジン開発をした鈴木さんの言葉をご紹介。
鈴木さんは鳥人間コンテストで学生時代優勝したこともある人物。
今も(当時)社内チームを作って、鳥人間コンテストに挑戦しているとのこと。
空気の流れの専門家でもあるということだ。
そんな彼は、当然のように、このバイクのコンセプトである「風」担当となる。
「担当したのは、ヘッド回りの動弁系、カムチェーン回り、電装、スターター、オイル回り、そして外観デザインなんです。特に、ヘッド回りの図面は、絶対やらせてくれと申し出たんです。
難しい形状のヘッドパーツを金型屋さんに依頼したら、できないと言われたんですが”死んでもやってくれ”と食い下がりました。モックを持って見せながら、どこをどう変えればできるのか教えてほしい、と粘りました。すると職人さんも、やる気になってくれて、結局、理想的な型を造ることに成功したんです。」
「空気と長い間つき合ってきて、積み重ねたノウハウが、あの独特のヘッド回りのデザインに反映され、冷却性はもちろん、強度と剛性に優れ、騒音面でも有利になるように作ることができました。」
「最高の一品をそれぞれに集めて組み上げたら、すごくいいエンジンができるかというと実はそうではない。これはちょうど音楽と同じで調和というべきか、エンジンとしてどんな方向にまとめるのか、という作り手の感性がなければダメなんです。たとえば通常のバイクの走行速度では最大馬力の3分の1から5分の1ぐらいしか使ってないんです。そこのところをいかに大切にするか、という作り方をすれば、おのずといい答えというのは出てくるのです。」
「ヨーロッパのクルマ作りは、実はこのあたりの考えがしっかりしている。肩肘張ってまで馬力を求めていない。馬力に頼らなくて速くて気持ちがいい乗り物を、空力面とエンジンの両面から作っている。こんなヨーロピアンテイストはひとつのあるべき姿だと思うのです。」
結果として、このコンセプトは出てくる時代が30年以上早すぎた。
しかし、この開発の裏話を聞いて、果たして今のバイクにこんな情熱を燃やして作り上げられたものがあるだろうかと、純粋に思った。
まだ日本に力があった時代、まだ人々がお金ではなく夢を大切にしていた時代、そんな時代だからこそ生み出すことができたバイクなのではないだろうか。
かくいう自分も、55歳の今だからこそ、このコンセプトが理解できたのだし、それはカワサキのエストレヤに乗らなくては分からなかった感覚でもある。
エストレヤがどうしてロングセラーだったのか、どうして人々に受け入れられたのか、それはスペックには決して表れない”感性に訴えかける”という性能を有しているからにほかならないと思う。
今回、ガレージが一杯なのにもかかわらず、後先考えずに飛びついて購入した理由は、エストレヤと同じ「ロングストローク」「2バルブ」エンジンだからであって、しかも、エストレヤとはまた違った乗り味を期待させる「空冷4気筒」であったからだ。
そういう”心地よさ”という感性をコンセプトにしたにもかかわらず、給排気効率を最適化するためにダウンドラフトキャブを採用し、そのために直列4気筒にもかかわらず、フェラーリ308GTBのV8エンジンを半分に切ったようなバンクを持たせた、当時最先端のヤマハのコンセプトのひとつであるジェネシスエンジンを採用するという、ある意味オーバースペックなんて言葉では足りないくらいの、ある意味”やり過ぎ”な、とんでもなく手間暇の掛かったエンジン。
こんなエンジンをはじめとしてすべてを新設計して、金型から起こして、工場に組立ラインを敷いて、それで売れなかったらどうすんだ?という言葉もあっただろうに、それでも会社がGOサインを出して、大金を注ぎ込んだという事実。
しかし、当時まったくそのコンセプトは理解されず、たった一年で製造中止となってしまった事実。
(ヨーロッパではやはりコンセプトが理解され、売れ行きは好調、そのおかげでおそらくは開発費用は回収できたとは思うが…)
これらを知るにつけ、逆にこう思ったのだった。
え、これってなんならある意味の市販ワークスじゃね?って。
たった一年限り生産するために、コンセプトから書き起こして、エンジン、フレーム、外装などすべてを新設計、製造ラインも億単位の資金を投入して新たに増設。
これって逆に言えば、超高級限定モデルじゃね?って。
(もちろんそれでは採算もへったくれもないので、ボアアップしてヨーロッパで販売することで、開発・生産費用は回収。
しかし、ボアアップしたことにより、当初の設計コンセプトであるロングストロークエンジンからショートストロークエンジンに”成り下がって”しまった)
これを狂気の沙汰という以外にあるだろうか。
方向性はまったく異なるが、ホンダでいうところのRC30にも似た狂気。
時代の徒花(あだはな)。
そんな狂気がまだ許された時代の、見た目とは裏腹に、最も”とんがった”寵児の一人である今回のバイク。
コンセプトの一つ「美」を担当したあのGKデザイン社でさえ、自ら手掛けた数々の秀逸なバイクデザイン史上から、あえて”なかったこと”にされている鬼っ子。
本当に不思議な存在だとしか思えない。
そんな子が明日、我が家にやってくる。
これを楽しみと言わずして、何と言おうか。
Posted at 2022/10/30 23:05:37 | |
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