まえがき
私のプロフィールをご覧になった方はご存じと思うが、私の本業は侍でありながら、現在は浪人の身で細々と農業を営んでいるのが現状である。
そして仮の職業である農業についてからかれこれ25年ほどが経過している。
農業と言っても幅広いが、軽トラックを使っている農家は多く私もその一人だ。
そしてそれは単なる移動手段や、運搬用の車ではなく重要な農機具の一つと言って良いほど仕事に密着している。
これは農業の私だけでなく大工さんや電気屋さん等の職人さんにも同様に思っているものも少なくなかろう。
例えばその荷台はあるときは作業台になり普段は道具の収納スペースとなる。
軽トラックを単に運搬にしか使わない例えば、酒屋さんでもその軽トラのボディーは広告スペースとなるであろう。
仮に広告が入っていなくても酒屋さんの使い込んだ軽トラは独特の味が出て美しく見えるときさえある。
少し話が脱線してきたようにも思うが、つまりは我々軽トラックを使って生業を得ている者にとって軽トラックはプロの道具であるわけだ。
しかしそのような観点からのインプレッションはあまり見たことがない。
以前、ある自動車評論家がスバルのサンバーを買ったので期待したこともあったが、「ポルシェを目指す」とかフロントガラス上部にシールを貼ったりとかそれはもう既に知っている品のないクソ餓鬼の価値観によるもので失望させられたこともあった。
よし!それならば私がインプレッションを書き日本の軽トラを変えてゆこうと思ったわけである。
グレード
パワーウィンドウなどが装備されるKXとエアコン、パワステの設定があるKCがあり更にKCにはデフロックなどを装備したKC農繁仕様がある。
私は、KCのエアコン、パワステ4WDを選んだ。
農繁仕様を選ばなかった理由については後程。
ちなみにABSと助手席エアバックはセットでオプション。これも選ばなかった。
原動機
R06Aエンジンは力強く、アイドリングはとても静か、エンジン搭載は、前モデルDA63Tより後方になり荷台のサービスホールと座席を跳ね上げての整備上のアクセスが可能である。
エンジン位置の変更に伴いラジエターも以前より後方の座席下になり、軽い衝突でダメージを受けることはないであろう。
なにしろ農業での軽トラ使用の場合、草の中に隠れた木の切り株や穴などでラジエターを損傷することは珍しくないのでこれはありがたい。
アイドリングで静かなエンジンはアクセルを踏み込むと力強い音と共に加速するが、タコメーターが無いので美味しい回転域は目で確認することができない。
とりあえず数年前に$30位で買ったOBD2テスターを接続して見たが走行中は見づらいし常時接続しておくわけにもいかない。
水温計も装備されていないので後で走行中も使い易いOBD2ツールを探さなけばならない。

次にここのタイトルがエンジンではなく原動機であることに違和感を感じた方もいるかもしれないが、私は出来ればエンジンではなくモーターが原動機となることを望んでた。
つまり電気自動車であるが、三菱の軽トラックにはあるものの本来は乗用車のアイミーブや日産リーフよりも先に軽トラックを本格的電気自動車としてデビューさせてほしかった。
その理由は、電気自動車のおおきな弱点の冷暖房効率と航続距離が軽トラックの場合には克服できるからだ。
なぜなら特に農業で使う軽トラックの場合一回の走行が非常に短くそれを毎日繰り返す場合が多い。
この時ガソリンエンジンだと冷えたエンジンが暖まりきる前に目的地に到着してしまってエンジンは燃焼を安定させるためにガソリン噴射を増量したままで燃費が悪い。
また触媒も上手くはたらなないので大量の有害物質を排出するのだ。
車内の冷暖房も適温になる前に目的地に到着してしまう。
ところが、電気自動車であれば車庫のコンセントで充電した状態でタイマーによって出発時間には、車内温度を適温にすることができる。
この方式は既にリーフで実用化されているようだが、本来は軽トラックでいち早く実用化するべきだった。
そして電気自動車としてのもう一つの弱点のコストについてもバッテリー搭載量を減らすことで克服できるのだ。
いずれも電気自動車のデメリットをメリットとするものでこれを軽トラックでいち早く採用しなかったメーカーどもは頭が悪いとしか言いようがないのである。
エクステリア
軽トラックをお仕事で使った場合に外装に傷がついてしまうのは良くあることで避けられないことだ。
この時昔の車のように傷つけやすいバンパーは別体となっていたりすれば修理もしやすいのだが、今の車の場合一体成型のフロントバンパーになっている。
まぁ見た目とかコストとか考えるとこうなるのはある程度仕方がないのだろう。
せめて前モデルよりバンパー地上高が大きくぶつけにくいように見えるのは救いだろう。
また、車体色にシルバーを選べば、汎用の黒いパンパーモールとの色の相性も良いので汎用品を使い良くなるだろう。
ラジオのアンテナは相変わらずロッドアンテナだが、農業用に使用した場合、木の枝にひっかけて良く折れてしまう。
私は前モデルでアンテナを折ってしまったので、ガラスに貼りつけるタイプのアンテナに交換したが、日本ではこのような部品はほとんど販売されておらずアメリカから輸入することになった。
もしメーカーが最初からガラスに埋め込みがたのアンテナを装備していればこんな苦労はないのだが、
恐らくメーカーの開発の人たちは畑で軽トラックを走らせたことがないから仕方がないのだろうね。
駆動系とか
軽トラックに乗らない皆さんもご存知の方が多いと思うが、田舎では雪国でなくても軽トラックの4WD比率は高い。
それほど軽トラックは滑りやいところで使われているということだろう。
私の住む常陸の国でも冬には雪が降ることは少ないが、気温は零度を下回り、地面が凍ることは良くある。
関東ローム層という土の質の影響もうけるだろうが、この凍った土が日中溶けて非常に滑りやすい状態
になるのだ。
だからこの地域の農業用軽トラックのほとんどは4WDになっている。
ところが数十年前のまだ4WDがなかったころあるメーカーは雪国以外で4WDが売れると思わずに開発を怠ったという。
その結果今もリアルタイム4WDというクソみたいな4WDの軽トラを作っているという噂である。
噂の真偽については証拠はないが、リアルタイム4WDは普段の舗装路でもタイトブレーキング現象がでて乗りにくいことは確かだ。
他メーカーはパートタイム4WDでスズキキャリイもそれは良いのだが、FRでショートホイールベース、狭いトレッドの軽トラックの場合、特に滑りやすい路面でなくても路面の凸凹や勾配の変化で
駆動輪が浮き上がり気味になって片輪が空転することが良くある。
例えば急こう配の坂に斜めに侵入した場合に、駆動輪の片方が空転して路面にブラックマークを残しながら坂を上ってゆくことが良くある。
大抵の場合1、2mの間、片輪を空転させればなんとかその場を乗り切れるのでその場で4WDに入れるようなことはないが、空転している側の車輪にブレーキをかけるトラクションコントロールが装備されていればタイヤの摩耗も防げるし、ちょっとしたところでは4WDやデフロックを使うことなくスムーズに走れるであろう。
キャリイの場合ABSと助手席エアバックがセットで36750円のメーカーオプションになっているが、ABSを全車標準装備とすればトラクションコントロールの追加装備も物理的なものはわずかでロジック追加で可能である。
少なくともデフロックとつまらない装備で25000円位高い農繁仕様よりは実用的だ。
いずれにしても現在トラクションコントロールがついている軽トラはないので前述のリアルタイム4WDのクソシステムが優位な場面があるのが現状だ。
このように軽トラックは、まるで軽トラックの使い方を解っていない人たちが作っている。これは他ではありえないことだ。
例えば侍の使う刀は、刀鍛冶が作っているが、少なくとも使い方を知っている人が作っている。
もしそうでなければ、真剣勝負のつばぜり合いで刀は折れてしまう。
ところが軽トラックの場合アンテナひとつとっても武士の真剣勝負の場と言っても良い現場で折れてしまうのだ。
そうならないように、木の枝があるところではアンテナを縮めれば良いだろうか?いや、それは、真剣勝負の最中に「つばぜり合いはお手柔らかにお願いします」と言うようなもので出来ないことだ。
当分はナマクラな刀のような軽トラックで真剣勝負に挑まなければなるまい。