関西電力・大飯原発の再稼働を巡って、野田総理大臣はきょう3回目の関係閣僚会議を開き、ストレステストに加えて、すべての電源が喪失した場合の対策がとられていることなど、再稼働を判断する上でのあらたな安全基準を決めた。
しかし基準の多くはこれまでの対策を整理したものにすぎず、今後の安全対策についても電力会社が実施計画を示せば再稼働。
政府が決めた再稼働の基準は3点。
1点目として求めているのはすべての電源が喪失した場合。
2点目としてストレステストの1次評価が終わっていること。
3点目として、今後のさらなる安全対策について、電力会社が実施計画を作ること。
運転中の原発は北海道電力の泊原発1基だけで、来月5日には停止予定。
夏場の電力不足への懸念もあり、政府は当面の再稼働は必要だとの立場で、原発ゼロという事態だけは避けたい、当初、ストレステストの1次評価の結果だけで再稼働を判断する方針。
しかし地元はテストだけでは不十分で、福島の事故を教訓にした暫定的な安全基準を作るよう求めていた。
今回はこうした声にようやく政府がこたえたもので、再稼働の判断基準が示されたこと自体は評価。
問題はその中身。
これまでの対策を整理したものにすぎず、新味には欠ける。
1点目の電源対策では、電源車の配備や建屋の浸水対策、緊急に注水ができるポンプの配備など、これは緊急安全対策と同じ内容で、大飯原発ではすでに実施。
2点目のストレステストについても、大飯原発はすでに終了、地震の揺れについては想定の1.8倍、また津波については元々の想定の4倍の11.4mまでであれば炉心溶融することはないとの結果。
唯一新しいのは、3点目の今後のさらなる安全対策の取り組みについて、電力会社に実施計画を提出させる点。
大飯原発の場合、防潮堤のかさ上げやフィルター付きベントの設置のほか、緊急時の指揮所となる免震重要棟の前倒しの設置など、工程表を作って政府に提出することに。
最も問題なのがこの3点目のさらなる安全対策について、実施計画を示せば再稼働を認めるという点。
これらの対策はすべて福島第一原発の事故の教訓としてこれまで示されてきたもの。
東電が、15mを超える津波の試算に基づいて防潮堤のかさ上げをしていれば、全電源喪失に至ることはなく、事故は防げたかも。
ベント装置にフィルターがついていれば、放出される放射能を100分の1から最大で1000分の1まで抑える事が期待でき、避難範囲を大幅に小さくできた可能性。
現場が大混乱する中でも、揺れに強く、放射性物質除去装置が付いた免震重要棟があったため、本店との最低限の通信は確保され、多くの作業員の被ばくを抑えながら事故対応に当たれた。
関西電力では、防潮堤のかさ上げについては来年度末までに、免震重要棟については4年後までに整備する方針、フィルター付きのベント装置については具体的な計画はまだ。
さらなる安全対策が行われていない状態で再稼働して、仮に炉心溶融する事故が起こった場合にどんな影響があるのかについてはまだ評価されてない。
こうした状況を確認するのに有効なのがストレステストの2次評価。
これまで行われた1次評価は炉心溶融するまでの安全上の余裕。
炉心溶融後に、水素爆発を起こすことはないのかどうか、放射性物質がどれだけ放出されるのか、避難範囲はどこまで及ぶのかなどの影響については2次評価で。
こうした影響評価は周辺自治体の防災対策にも直結する話。
今、再稼働を言うのであればさらなる安全対策の実施計画だけでなく、2次評価の結果も合わせて周辺自治体に示して説明し、理解を求めていくことが必要。
原発が立地するおおい町の時岡町長は「基準を早く地元に示したうえで、再稼働の必要性についての説明も求めたい」と。
また福井県に隣接する滋賀県の嘉田知事は「実施できていない対策を先送りし安全性を一部捨ててまでなぜ再開を急ぐのか、新たな基準は見切り発車だ」と批判、京都府の山田知事も基準を専門家に評価してもらう考えを示す。
政府はこうした自治体の理解は求めるとはしながらも、再稼働にあたって同意は必要ないとの考え。確かに法律上は原発の再稼働の際に、地元の同意は条件とはなっていない。これまで福井県やおおい町は電力会社との間の安全協定・覚書きの中で、同意を条件としてきた経緯。
また今回の事故で避難範囲が広範囲に及んだことで、原子力安全委員会は防災対策を重点的に取る範囲をこれまでの10キロから30キロ圏までに広げる案、30キロ圏に入る滋賀県などは独自に放射能の影響調査を行うなど地元としての意識を持ち始めている。
こうした自治体の同意は得ずに理解を得るだけ、という対応に、地元が納得するとは思えない。
理解というのはどの程度のことをいうのか。
さらに地元の理解を得る上で問題なのは今回の基準を、事故を防ぐことができず国民の信頼を失った原子力安全・保安院が作らざるを得なかったこと。
政府は保安院を経済産業省から切り離し、安全委員会などと統合して、今月1日に環境省のもとに原子力規制庁を発足させて、基準作りを進め、規制体制を強化していく方針だった。
しかし野党側から、より独立性の高い組織にすべきだなどの意見が出て、いまだに法案の審議に入れず、設置できず。
急きょ、保安院と安全委員会が存続することに、予定外だったため保安院が意見を聞く専門家の会合も今月に入って議論の日程が決まっていない。安全委員会では一部の委員の任期が今月16日に切れて重要なことが決められなくなってしまう。
こうした状況で、原発の安全を確保することができるか。
政府は大飯原発の再稼働の前に、新たな基準も参考にストレステストの2次評価を行った上で新しい規制機関をいつ発足させ、それまでどういう体制で安全規制を行っていくのかを明確にして、福井県や隣接自治体の納得が得られるよう説明していくこと。
福一は全電源を消失して、炉内を冷却する水を循環させることが出来なくなりメルトダウンしました。
福一は確かに古い原発ですが、予備電源装置は複数ありました。
大きく分けて、外部から電源供給してもらう外部電源と施設内に有る非常用電源(ディーゼル発電機)。
外部から電源供給するはずの送電線は津波の影響が無かったにもかかわらず、倒壊やショートしたりと6系統有ったとされる外部電源すべてが使えなくなりました。
要するに地震だけですべての外部供給機能が役に立たなくなったと言えます。
そこで、施設内に有る非常用電源(ディーゼル発電機)が稼動し電源供給し始めましたが、約40分後に来た津波(15m。想定は5.7m)で発電機は水没。発電機の燃料タンクや二次冷却系海水ポンプなども消失し壊滅的な打撃を受けた。
一方、福島第二は5.2~5.7メートルの想定を大幅に上回る14メートル以上の津波に襲われたが非常用発電機・電源装置を堅牢で浸水を防げる原子炉建屋に設置していた為、大きな事故には至らなかった。
想定外って言葉で言い訳してますが、女川原発も福島よりも5m高い敷地に設置で大津波の被害から免れたのも事実です。
要するに各電力会社に想定させるっていう行為が危険なのではないのでしょうか?
具体的に15m級が来てもおかしくないという想定で対策をさせる位しないと安心は得られないでしょう。
私は、今回の福一を襲った15m級の津波を想定して安全対策を施した原発なら稼動はやむなしと思ってますが、大飯原発のように「地震の揺れについては想定の1.8倍、また津波については元々の想定の4倍の11.4m」という福一の事故より甘い想定の原発稼動には反対です。
福一みたいな15mは来ないという想定自体が甘いのではないでしょうか?
Posted at 2013/07/08 16:08:57 | |
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