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いつもこんな天気だと顔が乾燥して嫌になるな…

静かな駅ホームでボソッと口ずさむ男は今日もそこにいた。
あの只野と名乗る男だ

彼は定刻定時に家を出て、駅に向かう。
それは電車のスケジュールとマッチした完璧なリズムだ。

定刻定時にいつものルートを歩くと大体いつも同じ人間とすれ違ったり、
同じ方角へ歩く者と会ったりするものだ。

その中でいつもすれ違う少し変わった男がいた。

彼の名前は、知るはずもないので「５５分の男」と名付けている。

５５分の男は、シルバーのシルビア、マニュアル車に乗っている。

彼の変わったところとは、月水金は丁寧なシフトチェンジで、火木は少し荒い運転でいつもの交差点を曲がってくる。

かれこれ３ヶ月ほど同じ光景を見てきた。

最初は不思議な人だ。
と、思っていたが、彼の運転で麻痺している曜日感覚が戻ることもある(小袈裟

そんな中、もうひとつ特徴があるのは、雨の日に私とすれ違う時は、必ず減速してすれ違ってくれるのだ。

水しぶきが、かからないように紳士的に乗りこなしているのが印象的だった。

そんな彼が乗るシルビアは、いつも一方通行の道から出て来るのできっとこの近くの駐車場に止めているのだろう。
そんな程度に思っていた。

そう…

あんなことがあるまでは…

…引っ張ったが、実は何もないのだ。

だが、今日は５５分の男は、現れなかった。
こんな時は、不思議と少し不安と心配な気持ちが溢れてくる。
男に興味はないが…

自分にとって現在の時間が５５分ではないかもしれないという不安なのかも知れない。

この際、不安の気持ちは置いておこう。
いつもの曲がり角を曲がった先にある駐車場に目をやると
そこには、彼のシルビアがあった。
中には人が座っているようにも見えないのでたまの休みなのかと思った。

しかし次の瞬間…

やはり何もなかった。

ホイールがないように見えたが気のせいだったし、やはり何もなかった…

ように見えた。

違和感があったのでもう一度振り返ってみた。
そこには、あるはずのフロントガラスがないのでる。

事故をして紛失したというより綺麗に取り外されたような格好でないのだ。

本人は辺りにいるように感じなかったし、何より定刻定時に駅に着きたい私は、
興味より時間をとり深く見ることはなかった。

帰りにでもまた確認しようと思う。

何もなければこの話は終わる。