2013年09月19日
いい車というと、何を条件にされるでしょう。
これこそ個人の価値観といわれるかもしれませんが、それ以上に大きな問題があると思います。
それは安全面で、車の場合、誰が何といおうが、走る凶器の一面があるからです。
ですから、よく、走る、曲がる、止まる、と表現されますが、安全性からいうと、順位は反対になって、まず止まること、それから曲がること、最後に走ることが問題になります。
まずは、止まることについて触れたいと思います。
私は馬術のインストラクターもつとめていますが、初心者に最初に教えるのは馬の止め方です。
何度か暴走する癖のある馬に乗ったことがありますが、止まらない馬に乗るほど怖いことはありません。
車も同じです。
じゃあ、車ならブレーキが効けばいいんだなといわれそうですが、単に効けばいいとだけ考えるのは早計だと思います。
今や死語だと思いますが、30年前に私が免許を取った頃は、カックンブレーキなる言葉がありました。
主にトラック等の営業用の車に使われていた言葉ですが、最初は踏んでも効かず、ある程度踏んだところで急激に効くブレーキをいう言葉でしたが、荒っぽく使われるのが常であった当時のトラック等には適していた部分もありました。
今のブレーキは、バキュームブースター装備が常識ですから、踏み始めからよく効くようにできています。
そこで、各社の哲学の差が出ますが、日本の車は全体にオーバーサーボ気味で、小さな力でよく効きますが、思い切り踏んでもやわらかく踏んでも、その差が出にくい傾向があります。(国産車でも、スポーツ指向の一部のブレーキは違ってドイツ車的です。)
効きかたで極端だったのは、昔のシトロエンで、サスペンションから全て油圧制御していた関係か、ブレーキ制御はオンかオフかだけで、チョンと踏んだだけで派手に効く代物でした。
アメリカ車は、日本車に近い傾向があり、ドイツ車は、踏力に応じて効き方が変化するタイプです。
ドイツ車の中でも、メルセデス・ベンツは全体に重めで、しっかり踏めばそれに応じてよく効くとともに微妙なコントロールもしやすいタイプ、BMWは軽くかつ踏み方に応じてコントロールできるタイプでした。
私はベンツ党ですが、ブレーキに関してだけは、ABSが作動するまで思い切りブレーキを踏めない人が多い日本人ドライバーには、BMWタイプの方が適しているかなと思います。
すると、彼らもユーザーの動向を敏感に察知したのか、今のCクラスから、ベンツもBMWタイプに軽くなっていました。
曲がるの要素にも関係するのですが、ABSについても、哲学の差があります。
元々アンチロック制御の目的は、ブレーキがロックした場合、ブレーキだけでなくハンドルも効かなくなることから、それを防ぐ意味がありました。
ところが、日本車のABSは、今でこそかなり改良されましたが、初期はブレーキの効きは犠牲にしてでも、ロックさせない方向に制御されていました。
その点メルセデス・ベンツのブレーキは大したもので、本来の目的である止まることを全く犠牲にしない、双方を高次元でバランスした素晴らしいものでした。
実際私、ベンツの190に乗っていた時に、このABSのお陰で追突せずに済んだことがありましたから、効き目は保証できます。
ただし、思い切ってブレーキを踏めることという条件つきです。
今は教えていないと思いますが、昔は自動車教習所で、急ブレーキ急発進急ハンドルは避けましょうと教えていました。
すると、急ブレーキを踏まないといけないケースで心理的な影響でブレーキが踏めない人が増え、折角のブレーキ性能を十分に発揮できない問題が生じてきました。
そこに注目したベンツとトヨタ(恐らく、部品メーカーのボッシュとアイシン精機あたりが担当したものと思いますが)は、ブレーキアシストなるものを開発して装着するようになりました。
これは、ブレーキの踏力ではなく、踏む速さを検出して急ブレーキを要すると判断したらブレーキ側で最初から最大限の効き目で効かせるようにするものです。
個人的な感想ですが、私はこれ、嫌いです。
なぜかというと、反射神経には自信があるからか、私のブレーキの踏み方は一般ドライバーより速いらしく、簡単にこのアシストが作動するのです。
そして作動するや、低速ならその場で止まったのではと思うぐらい急停止するため、座席の上に置いてあったものが慣性の法則にしたがって全て前に飛んで行ってしまうのです。
後続車にも追突されかかったのです。
でもまあ、妻はABSを作動させずに追突した経験がありますから、私が気を付ければ済むもので、便利なものだと割り切ることにしました。
ブレーキの効きかたについては、極端にいえば、同じ車種でも1台1台違うものです。
その点では、ドイツ車は、車種ごとのばらつきが少なく、特にベンツに至っては、SクラスからAクラスまでどの車種でも比較的近い効きかたをしてくれるのです。
ベンツオーナーならどの車種に乗っても安心して運転できる、これはベンツのポリシーなのでしょうし、大変優れた点だと思います。
では、ベンツのブレーキの欠点はというと、ホイールが汚れることです。
国産車に乗っている人にはわからないと思いますが、ベンツのブレーキは、パッドもディスクも摩擦で減りやすく、そのダストの量が多いため、特に前輪は、ホイールがすぐに真っ黒けになってしまいます。
以前は、ベンツのブレーキ、キーキー鳴くのは当然としていて、何とかならないか聞いたら、こんな回答が帰ってきました。
「鳴きの少ないブレーキパッドに換えることも可能ですが、その分ブレーキ性能が低下しますので、お勧めしませんし、その際は故障しても保証の対象となりません。」
汚れると文句をつけたら、きっとこういうと思います。
「事故を避けるために1センチでも短い距離で止まることができるなら、汚れなんか大したことではないでしょう。」
つまらないことが気になる人には、ベンツだけでなく、外国車には乗らないことです。
不思議なことに、外国車の場合、気にする人ほど、ありえないようなところが故障する傾向があるのです。
あるポルシェオーナーの名言。
「故障するとか、ネガティヴのことは考えないこと。考えるから故障する。気持ちが車に伝わるんです。」
比較的信頼性の高いベンツでさえ、その日の気分を反映する傾向はあります。
国産車は、信頼性は世界一で、気分の影響も受けにくいものです。
でも、なつかないペットみたいで、可愛くないという人もいます。
そんな人は、故障も車の個性であり、自己主張であるとか、苦しい言い訳をしていますが。
Posted at 2013/09/19 15:47:24 | |
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