2013年10月01日
後篇です。
たなぼたから事故車とはいえ手に入ったソアラに乗っていますと、この車、百プラスうん十キロ楽に出ますし、静かですし、燃費も那須の田舎を走っていればリッター9キロ走りますし、天井は低いものの中は思ったよりも広くて一家5人がまずまず楽に乗れましたし、不満はないなと思いつつ2年余りを過ごしていました。
そうこうしていると、突然業務命令で、メンタルトレーニングの教官にされてしまいました。
どうせやるなら、自分で試してからとやってみたら、1年で家が建ちました。
事務所の敷地内にあった社宅から出て、3キロの距離とは言え通勤することになり、妻も、子供たちのために外出する用事が増えたため、もう1台車を買うことになり、全て込み80万で軽自動車のスズキ・アルトを買いました。
軽自動車とばかにしていたのですが、一家5人が乗れましたし、マニュアルシフトですと鈍重にならない程度に走りますし、高速で100キロまで出ますし(軽は80キロ制限だったのですが。)、重宝はしました。
この時、単純にキャリアの違いによる安全面と、妻はマニュアルの運転が下手でしたから、私がアルト、妻がソアラに乗ることになりましたから、彼女、体裁悪がりました。(後にもっと体裁悪いことになります。)
しかし、私は、キャリア、テクニックとも当時免許取り立てだった妻とは大きな差がありましたから、腕がある方が危険な車に乗るのは当然の選択だと妻には一切アルトを運転させませんでした。
それで、南は大阪、北は山形県上山までこのアルトで走りまわってみたのですが、高速でも純粋に運転しているだけならそれほど不安はなく、大雪の山形栗子峠越えでは、軽量を利してみずすましのように雪の上を走ってくれましたから、チェーンも必要がないぐらいでした。(積雪30センチになったため、念のため着けましたが。)
しかし、急なカーブだとボディー全体がしなるのがわかりますし、ドアーはべこべこですし、よく走ってはくれましたが、何かあったらまず命が助からない車だなとも実感しました。
それから、燃費の点では最高でもリッター15キロで、普段は12キロ程度ですから、コンパクトカーのヴィッツあたりの方が燃費は圧倒的によかったのです。
家が建った3ヶ月後、ローンを払っても意外に余裕がありましたから、もっといい車でも考えようかなあなんて思っていると、自動車雑誌にヤナセの広告が載っており、抽選でメルセデスベンツの本(文庫図鑑シリーズ)を差し上げますとありました。
今までこんな広告に応募した経験はありませんでしたし、まさか当たることはあるまいと思いながら応募したところ、何と当たってその本が届いたのです。
その本には、当時のメルセデスベンツの社是であった「最善か無か」の企業哲学や、作り自体が普通の車とは違うこと等が詳細に書かれていました。
へえ、そんなに違うのかと感心して興味を持った1ヶ月後、抽選に当選した者に連絡を取るように命じられたらしく、ヤナセのセールスマンがやってきました。
そのセールスマン、私を前にしたら何故かすごく居心地悪そうにしており、しばらく話したところで、突然こう聞いてきたのです。
「いい家に住んでおられますが、大変失礼ですが、年収はおいくらぐらいでしょうか。」
確かに積水ハウスの注文住宅ですし、まあ悪くはない家かと彼に年収を正直に答えたところ、こう言って態度が変わりました。
「買えるわ。是非一度ショールームにお越しください。」
ある意味失礼な対応で、妻は憤慨していましたが、当時の私、メンタルトレーニングの効果かそれを笑い飛ばすだけの余裕があり、次の週末に宇都宮のショールームまで出かけてみました。
せっかく来たのだから、一度乗ってみるかと、当時ベンツの中でもっとも安い車だった、190に乗ってみました。
入庫したばかりの車に、仮ナンバーを付けてもらって試乗したのですが、動いて数メートルで感動しました。
ああ、こんなに路面の状況を的確に伝える車があったのか、が第一印象で、次にわざとでこぼこを通過した時のボディーの反応で、ソアラは単にでかい軽に過ぎないと感じるぐらいボディー剛性の差を感じました。
なんとも言えない重厚感、安心感があったのです。
ドアーにしても、大変頑丈に固定されており、風が吹いたぐらいでは外れそうにはありませんでしたし、試乗コースを一周してきた時、私は同乗していたセールスマン(我が家に来た当人)に正直に言いました。
「こんな素晴らしい車に乗ったのは初めてです。この車、買います。」
当時既にトップセールスマンであった彼も、喜んで商談に乗ってくれて、試乗した車を将来いいお客になるからと支店長に特別にかけあって、大幅に値引いてくれたのです。
それでも、確か430万ぐらいでしたが、190その1年前には500万を超えていて、価格改定で大変お買い得になったところを更に値引いてくれたのです。
これも、一種のシンクロニシティーと言えそうです。
100万円高かったら、流石に考えたと思いますから。
このベンツ190、2000ccのエンジンで、決して速い車ではありませんでしたが、高速でも大変安定しており、ある程度の腕のあるドライバーにとっては、とにかく安全な車でした。
2速発進のオートマも、アクセルを間違えて踏んでもすぐには急発進しない配慮だったのですが、大変よくできたものでした。
でも、ソアラを下取りに出したため(何と買った時と同じ120万円で取ってくれた。)、ベンツの恩恵にあずかったのは妻で、私の普段の足はアルトのままでした。
妻はベンツ、私はアルトのこの関係、メンタルトレーニングの講義をしていて大いに受けましたが、興味深かったのは、成功している者ほど、妻にいい車を乗せておけば、事故にあう心配も減り、自分は安心していい仕事ができると賛同してくれたことでした。
アルトはいい車でしたが、近くで軽自動車に乗った親子4人が、飲酒運転のセドリックにぶつけられて全員死ぬ事故があったこともあり、1年足らずでやめました。
そこで、当時はヤナセが扱っていたので、妻が欲しがっていたフォルクスワーゲンゴルフを買って彼女に乗せ、ようやくベンツが私の愛車になりました。
その後妻の車は、BMWに変わってこちらも15年続いたのですが、懇意にしていたセールスマンがクレーマーとのトラブルで辞めたのを機に、妻もベンツCクラスセダンに変えました。
25年間ベンツに乗り続けているのも、15年間BMWに乗り続けたのも、信頼できるセールスマンとの縁が大きかったと思います。
3年間はベンツ2台の生活でしたが、子供たちが巣立って2台使う機会が無くなったことにより、1台に減らしました。
ちなみに我が家に来たセールスマン、ベンツを担当するだけあって大変なやり手で、25年にわたって付き合うことになったのですが、5年目ぐらいに、私相手に最初戸惑っていた理由を聞いてみたら、自分より若い人にベンツを売ったのは私が初めてだったからでした。
でもまあ、自営業者の憧れの車と言われるEクラスのステーションワゴン(確かに実用的で素晴らしい車でした。)にも2台乗った後、Cクラスに3台乗り、今のE300に落ち着いたところで、彼も定年でリタイアしました。
何と彼、生涯にベンツを1900台以上売った伝説のセールスマンであったことを、リタイアして初めて知りましたが、妻がセールスの秘訣を聞いたら、こう答えてくれました。
「どうすれば、お客さんに喜んでもらえるか、一生懸命考えて、提案することです。」
私は、彼にとっては最ももうからなかった客だそうですが、台数合わせで困った時に出物があれば、利益度外視で売り込めば買ってくれるありがたい客でもあったそうです。(190の2台目と、Eクラスステーションワゴンの2台目、Cクラスの2台目と3台目、現在のE300は、その特別値引きの恩恵にあずかった車です。)
もう一度Eクラスのステーションワゴンに乗れたらいいな、と思っているのですが、彼ほど値引いてくれるセールスマンには二度と巡り合うことはないと思いますから、難しいでしょう。
Posted at 2013/10/01 13:54:17 | |
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