
このところ季節の逆流が起こって、寒い日が続いている。天気もぱっとせず、どんよりとした鉛色の毎日だ。おかげで、昨年手に入れたアルニスのレインコートが大活躍だ。
アルニスと言えばフランスパリの左岸、サンジェルマンにある有名なメゾン。
昨夜は、現在フランスに在住する偉大な演出家に再会した。
土方孝哉、と言えば、年配のCM業界の人間なら一度は耳にしたことがあると思う。あるいは超映画マニア、それも古い日本映画のマニアなら俳優としての彼を知っているかもしれない。大映映画の市川昆作品には割と脇役で登場している。
土方さんとは、ボクが以前広告をやっていた頃、公私とも随分お世話になった。きわめつきが、彼が1990年頃に広告業界を引退して、最初の生活地英国ロンドンに居た時。たまたまボクの仕事もロンドンで、ちょうどイタリアでワールドカップの最中。連日パブは大賑わいで、ご多分に漏れず我々日本人仲間は土方さんに案内されたパブで、俄サーッカーファンに変身しイングランドを応援していた。
その後2年余りで現在のフランスパリのはずれに居を構え悠々自適な生活をおくっているという。羨ましい限りだ。
働いていた頃の土方さんは、CM業界でも売れっ子中の売れっ子で、カメラマンもライトマンも超一流の方々で固められていた。特にタレントモノは得意中の得意で、難しい売れっ娘の機嫌も損ねることなく、素敵な作品を数多く撮っていた。ボクはまだ小僧だったけど、クリエーターの端くれとして超一流のスタッフと一緒させてもらえたことは、本当に有難いことだったし、多くの事も学びまた多くの仲間も出来た。
17年という歳月は結構長いが、お会いするとそのブランクはあっという間に消え去り、昨日も一緒に仕事をしていたような錯覚に陥ってしまう。今思えば、当時はとてもディープな仕事上の付き合いをしていたことに驚く。
土方さんの名言。
「コマーシャルはアートではない。アートは白いキャンバスに自由に絵を描くことだが、コマーシャルは既に多くの点が打たれていて、その点と点を自分なりにどのようにつないで絵を描き上げるか、そこに根本的な違いがある。」
これは、凡そ、広告に関わる人間であれば、はっとなり、自戒することだ。
かく言うボクも広告を離れて十数年。昨夜集まった仲間はみんな歳をとった。でも、誰一人老け込んでなんかいなかった。こんな嬉しいことはない。
Posted at 2007/04/18 08:23:58 | |
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