
※これは以前書いた試乗記の再編集版です。
【概要】
NSX……それは唯一無二の国産ミッドシップスーパーカー。
と言う訳で乗り比べツーリング試乗記の大トリはこのNSXとなります。実は今回の乗り比べ、本来はホンダのクルマ三台でやる予定だったのですが、次々と故障などでダウンしていき……NSXだけが残ることになったのです。なのでGT-Rはぶっちゃけオマケです(笑)。
ちなみにこのNSX。当時日本で最高級のクルマだったそうです。
トヨタ2000GTに続く日本発のスーパーカーとして世界で販売され、あのフェラーリにも絶大な影響を与えた点が今でも高く評価されています。そんなNSXに、幸運にも試乗してきました。
【エクステリア】

ランボルギーニを知る方なら分かるかもしれませんが、あのミッドシップスーパーカーのスタイリングを、柔らかい線でリメイクしたのがNSXです。スーパーカーの常套装備だったリトラクタブルヘッドライト(パカッと開くライト)を装備し、サイドに大きなインテーク(吸気口)を備え、低く幅広いボディを持つ姿は、どこから見てもスーパーカーです。シンプルにカッコいい!

そんなNSXですが、このスタイリングに批判的な意見がないわけではありません。例えばリア。NSXはリアオーバーハング(タイヤより外側の部分)が長いのですが、これが重くて鈍重そうに見えるという批判があります。NSXは運転席の後ろにエンジンを積んでいるのですが、それにも関わらずゴルフバッグを2個積めるトランクを備えているため、トランクのためにリアを伸ばしたと噂されることもありました。実際は大きな間違いで、空力を追求してダウンフォースを高めるためでした。空力を重視した設計は当時珍しく、如何にNSXが先進的な設計を取り入れたか分かるエピソードともなりました。ちなみに批判は他にもあり、リアコンビランプが一直線の間延びしたデザインでダサいなどとも言われています。
しかし私は大きく贔屓目を加味した上ではありますが、NSXは誰が見てもカッコよく仕上がったスーパーカーだと思っています。実車を目にしてカッコ悪いと思う人はいないと、確信しています。
【インテリア】
今でこそ豪奢な内装が多くなったスーパーカー界ですが、当時のスーパーカーは華やかな外見に反して案外地味です。当時ライバルだったフェラーリ348やランボルギーニ ディアブロ、ポルシェ911も、今とは比べ物にならないほどシンプルな配色、デザインとなっています。
何故こんな話を挟んだかと言うと、NSXがよく内装で叩かれているからです。地味だとか、スーパーカーに相応しくないとか、所詮は日本車だとか。ですが当時のレベルを知れば、決してNSXが一人負けしていた訳ではありません。むしろ、健闘していた方だと思います。特徴的なのはダッシュボードが斜めにせり上がっていっている点。センターコンソールからフロントウインドウ下端までが斜めに上がっていっており、おかげでスポーツカーらしくない開放感があります。NSXは視界にも拘ったそうで、ミッドシップスポーツカーとは思えないほど視界は良好です。リアは流石に見辛かったですが、これはホンダのスポーツカーの大多数に言えることです(私の愛車も真ん中にウイングが走るせいですこぶる見辛いです)。NSXはフロントフェンダー(タイヤを包む部分)が膨らんでいるデザインのせいで前端が見辛いと言われていたのですが、実際に気になることはありませんでした。コーナーを注意深く攻める際には気になるのかな?
エアコンはよく効きます。広々とした空間に適度に座り心地の良いレザーシート、足を十分に伸ばせる足元ときてエアコンまで効いては、本当にスポーツカーなのかと思うくらい快適でした。特に助手席にいるときは快適な余り寝てました(笑)。シートのホールド性能に関しては特に記憶にはないのですが、逆に言えば箱根ターンパイクのハイスピードコーナーを攻めてる時も気にならなかったということは、十分なホールド性能があるということでしょうね。レザーは多少擦り切れていましたが、よく馴染んで心地よかったです。
さて、本来の話に戻りますが、NSXの内装が地味かどうかは時代の流れを加味すると何とも言えないとご説明しました。では質感は?と尋ねられれば、私としては「充分だ」と応えます。ダッシュボードのソフトパッドは分厚くて黒々と艶があり、地味ながら安っぽさを微塵も感じさせない質の良さを感じましたし、細かいところで言えばグローブボックスの蓋なんかは分厚くてソフトパッドがもりもりと奢られていて、贅沢だ!とさえ感じさせました(笑)。1000万の価格に見合うかは分かりませんが、私としては決して安っぽくないと思います。ただし、ドリンクホルダーやドアポケットがないのは大いにマイナスですが。
【運動性】
もう運転していて「欲しい!」と思ったクルマは久々ですね(笑)。前に運転していて欲しいと思ったクルマはフィットハイブリッドRSでしたが、あれとはもちろん全く違う意味で購買意欲をそそられる魅力的な走りをしてくれました。
ミッドシップ、つまり運転席の後ろにエンジンを積んでいるクルマは、一番重い物が真ん中に来るので非常にバランス良くなります。やじろべえを思い出してください。片方の腕に重い物が乗ると、途端にバランスが取れなくなりますよね? 逆に足元に重りがくればどっしり安定します。つまりはそういうことです。NSXは伝統的なスーパーカー的手法に則り、このミッドシップ構造を採用しています。このため急にハンドルを切っても車体がぐわんぐわんと揺れません。そのくせニュートラルなハンドル特性なのでスッとコーナーに鼻先が入ってくれます。箱根ターンパイクの高速セクションは得意過ぎて困るくらいです。4WDで強引に捻じ曲げる訳でも、FR(前にエンジンを載せて、後ろのタイヤを回転させる方式)のようにノーズをグイッと押し込む訳でも、ましてやFF(こちらはエンジンも回転させるタイヤも前のタイプ)のように膨らみながら何とか乗り切る訳でもありません。とても優雅です。
そして何と言っても官能的なのはV6エンジンです。アクセルをクンッと踏み込むと軽やかに噴け上がります。それでいて五月蝿くありません。真後ろにエンジン抱えている割にはジェントルです。流石はバブル(遮音材抜いた私のクルマより静かなのは内緒ですww)。とにかくよく噴けます。そして排気量に余裕があるだけあってトルクにも余裕があります。高回転を維持しなくてもエンジンは悲鳴上げません。優秀。ミッションは1速が入れづらいのが難点でした。むしろそこまで無理に噴かすなよってことですかね。5速MTと私の愛車と同じく古めかしいミッションですが、十分だったりします(というか、5速ほぼ使ってない)。ついでにクラッチも重くないのでラクチンです。
ただし難点は車幅。スーパーカーはタイヤのトレッドを稼ぐため、剛性を高めるため、そして何よりスタイルのために幅が広くなりがちです。そしてNSXはスーパーカーなのです。つまり横幅ヤバイです。なので道幅に余裕がありません。正直、街中で乗ると神経使うかもしれませんね。うっかりぶつけても板金屋じゃ直せませんから。アルミボディは高く付きます。
とにかく走ってて楽しいクルマです。金持ちのガレージで眠らせるクルマとは違います。予算500万くらいになるけど買いたいなぁ……。流石にインテグラと2台持ちはしんどい。
【価格】
調べてみると、初期型6.6万km、修復暦なしのMTで純正状態の個体だと490万くらいします。ちなみに最終型で特別手入れが良かったりカスタムメイドされてたりすると、1000万を越えます。20年前のクルマなのに凄い……。修復暦ありなら300~400万の個体もあります。
NSXの最大の特徴はホンダがリフレッシュプランを用意している点ですね。これによって経年劣化した個体を蘇らせることができます。様々なプランが用意され、基本的なもので30万、外装のリフレッシュとなると300万ほど必要になる贅沢なプランですが、このリフレッシュプランによって新車のようにNSXを楽しめる訳です。いつか購入することが出来れば利用したいプランですね。
【総評】
ホンダフリーク垂涎の一品でした。派手なスタイリングは所有感をくすぐり、快適な室内は外へ出ることを拒否させ、運動性能はステアリングから手を離すことを許しません。とにかくピュア。そしてイージー。今のスーパーカー界の源流を作っただけの素晴らしいクルマでした。褒めてばかりだと胡散臭いので文句をつけるなら、トランクルームは広さこそ十分ですが灼熱地獄です。買い物には全く向きません。室内はドリンクホルダーがありません。これが地味に厄介だったりします。収納もグローブボックスとアームレストコンソールボックスのみで、その上どちらも容量は少ないです。後席がないので収納の少なさは地味に痛いです。センターコンソールも、2DIN規格のオーディオ拡張スペースがないのでパネル加工が必須だったりします。別途純正のオンダッシュナビステーを上に増設することも可能そうですが、部品が恐らく入手困難ですし……。
しかしそういうことは抜きにしてほしいクルマでした。オープンカー、実用車以外でこれほど惹かれたのは初めてです。それくらい素晴らしいクルマでした。ありがとう、fun2drive。
・エクステリア … 4 リアが賛否両論なので泣く泣く-1。
・インテリア … 3 結構上質でした。後はスイッチ類の質感かな。
・運動性能 … 5 文句なし。と言いたいが、ミッションのフィーリングは流石にちょっと古臭い。
・快適性 … 3 エアコンは良く効くがドリンクホルダーがない。後トランクに生鮮食品置けないのは地味に痛い。
・積載性 … 2.5 スーパーカーにしては頑張ったと思う。
・価格 … 3 安くはないが、最近は手が届くレベルになってきたと思う。
・総合評価 … 5 唯一無二のジャパニーズスーパーカー。次期NSXはこれを越えられるか?
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試乗記 | クルマ
Posted at
2013/10/16 21:26:07