
今回の試乗は提案が太っ腹です。
遅い時間にもかかわらず、どこを走りますかと。
どうせなら中央環状線を一周したいとリクエストしたらそうしましょうと。
渋滞が緩和した21時過ぎにショールームを出発です。
RS6 Avantといえば、BMWでいうとM5が競合車になるそうです。
車両本体価格は1,563万円ですが、乗り出しで1,750万円くらいになるとのこと。
試乗車にはオプションでサンルーフがついていました。
Audiは来年1月から価格見直しで一律に3%値上げするようです。
円安の影響なのでしょうか。
それから、2015年モデルのフェイスリフトでナビゲーションシステムが一新されるとのことですが、注目はヘッドライトが点灯したときのLEDライトが作り出す形状が変更されることらしいです。
従来は、タイトル画像のとおりヘッドライト下側を取り囲むように点灯していますが、新モデルは下側に膨らんでいる部分も真っ直ぐに真横に伸びてサイドにぶつかったところで上下に枝分かれするようになります。
つまりY字を45度倒したみたいな形状で点灯します。
(書いて伝えるのが難しい…)
これを契機にセールス攻勢をかけたのかRS6はかなり売れたらしく、在庫は赤の1台のみとのこと。
若いセールスマンは不人気の赤と言っていましたが、RSモデルなら歓迎できる色だと思います。
このライトが気に入っているかたは直ちにAudiショールームへ。
エンジンはV8 3,992ccツインターボでスペックは次のとおり。
最大出力:560ps/5,700-6,700rpm
最大トルク:71.3kgm/1,750-5,500rpm
0-100km/h:3.9秒
最高速:305km/h
それでは、運転席に乗り込むことにします。
先週、
RS4 Avantに試乗したので運転席周りの操作機器は見慣れた感じです。
大きな特徴として、BMWは上級モデルほど高級感が増しますが、Audiのそれは変わりません。
前回、今回とも真っ暗な中での試乗だったので細かな見栄えは分かりませんが、さすがはRS6というようなワンランク上の高級感は感じません。
シートは標準のものでレカロシートは装着されていません。
これならE63M6のもののほうが良いです。
ただ、高い次元での比較で不満とまではいえません。
エンジンのスタートボタンはやはりシフトレバーの左です。
どうやら左ハンドルとパネルが共通のようです。
ただ、RS4Avantでは不満の残ったハザードランプのボタン位置はナビモニターの下の中央にあるので、これなら良いと思います。
ブレーキペダルを踏みながらスタートボタンを押すと…あれ、エンジン掛かったよなという印象です。
低い排気音はもちろん聞こえてきますが、華美な演出がないことに好感がもてます。
これは充分なスペックからくる余裕と受け止めました。
一言つけ加えるなら、RS4 Avantは高性能車であることを印象付けようと背伸びしてアピールしています。
ボディーサイズは全長498cm×全幅193cm×全高148cmとかなり大型ですが、運転席に座ってみると大きさはそれほど感じません。
敢えていえば、全長があるせいか、ルームミラーに映る後方視界と左ドアミラーから見る左サイドの景色が遠い感じ。
RS6 Avantはパドルシフト付きの8速AT車です。
すぐにスポーツ走行を試してみたいところですが、逸る気持ちを抑えて、コンフォートモードでスタートします。
ブレーキから足を離すとクリープが始まり、アクセルペダルを軽く踏み込むとスムーズに走り出します。
クルマの流れに任せてアクセルを踏む限りはエコカーみたいに静かです。
もちろん、足回りはしっかりしているのですべてはいなしてくれませんが、乗り心地はマイルドです。
欧州車であればこれくらいの硬さというくらいで、スペックが信じらません。
このままでは良くわからないと思いアクセルを意識的に踏むと、踏み込んだ瞬間にわずかに大きくなったエキゾーストとともにグンと加速します。
あまりにも加速が鋭いので前車への距離があっという間に詰まり、うかうかしていると突っ込んでしまいそうです。
見込み違いのアクセルワークをしそうなので、首都高速に入るまでは大人しくすることにしました。
これはかなり速いなあと予兆を感じました。
とある首都高速の入口からETCレーンをくぐって、本線でアクセルを踏む瞬間を探します。
少し前車との距離を空けてアクセルを踏み込むと加速が鋭い。
エコモードのままシフトダウンもせずに徐にアクセルを強く踏み込みますが、それだけでぐっと前に出ます。
フルスロットルにすると、アクセルを踏んだ瞬間にプラス20km/hの世界に連れていかれ、そこからグイグイと加速する感じ。
1,750rpmから71.3kgm ものトルクを発揮するエンジンは、2,040kgもある車重もものともせずに瞬間的に日常走行からスポーツ走行にワープします。
試乗車にオプションのヘッドアップディスプレイがついていないなかったので、加速中の速度が分かりません。
強くアクセルを踏むと低めの排気音が大きくなりますが、ハイパフォーマンスカーとしてはかなり静かな範疇です。
聞かせようという設計はしていないと思います。
これがアダとなって速度感が掴みにくいのです。
本当はスピードメーターに目を向けたいのですが、この加速感の中ではほかのクルマの割り込みが怖くて正面から目を外すのは危険です。
このクルマにヘッドアップディスプレイは必要です。
4,000~5,000回転で有り余る性能ですので、リミッターは気になりません。
RS4 Avantのように高回転まで回して楽しむクルマはシフトアップするタイミングを探るためにリミッターと睨めっこするのにヘッドアップディスプレイが欲しいですが、RS6 Avantはクルマの速度をチェックするのに欲しいです。
これ以上の性能は使い切れないと思いつつも折角なのでダイナミックモードに切り替えます。
今回の試乗で教えてもらったことですが、シフトレバーをDレンジで縦下に引くとコンフォートとダイナミックモードの切り替えが行われます。
ちなみに、シフトレバーを左に倒すとマニュアルモード、右に戻すとオートマモードです。
ダイナミックモードに切り替えると足回りが硬くなったのが分かりました。
継ぎ目を乗り越えるときにしっかりと反応が伝わります。
でも、その差はそれほど大きくありません。
知らされなかったら分からないかもしれないと言ったら過言でしょうか。
このクルマの乗り心地は本当にマイルドです。
今までRSモデルはMモデルやAMGと同じ方向性のスポーツ性の高いモデルであり、ALPINAが対極にいるというイメージでした。
今回の試乗でRS6 Avantがどちらに近いかと問われれば、MモデルではなくALPINAと答えます。
それくらい乗り味はマイルド、排気音も室内に響くことはなく控えめでした。
MモデルやALPINA乗りの方の意見を聞いてみたいところです。
このクルマには4気筒休止システムがついています。
高速道路でものんびりと走っているとシステムが作動します。
運転がダルイよと言われているみたい…
ちょっと悔しくてアクセルを踏んだりして無駄な抵抗をします。
結局のところ、あまりにも加速性能が良くて、パドルシフトを積極的に使いながらマニュアルモードでもっと早く走ってみようという場面は訪れませんでした。
レインボーブリッジでシフトダウンして駆け上がれば良かったと少し後悔したくらいです。
ダイレクトモードにしてもハンドルの重さは感じません。
切りはじめも軽いままでもう少しタイトになったほうが良いかなあと。
M6グランクーペに試乗したときのスポーツ・プラス・モードのような過激な設定はみじんも感じません。
もっとも、このクルマの位置づけからすると優雅に乗るほうがスマートなのでしょうね。
デザイン面でいってもツーリングモデルが好きではない私がみてもバランスが良くて格好良い。
フェンダーの張り出し具合もボリュームがあって迫力を感じます。
首都高を走っても全く疲れはありません。
あえていえば、オプションでレカロシートにしておきたいところ。
来週は同じエンジンを搭載したRS7 Sportbackです。
長文にお付き合いいただきありがとうございます。