
今日の試乗会には4台の試乗車がラインナップされていました。
Vanquish Coupe、V12 Vantage S Coupe、DB9 Volante、V8 Vantage S Coupeです。
リクエストしたのはVanquishです。
会場に予約した時間より少し前に着くと、すでに試乗車が並べられていました。
やはり、
Vanquishは先日試乗したTungsten Silverで同じクルマです。
以前のブログでも2015年モデルのスペックは紹介していますが、次のとおりです。
最高出力:576ps/6,650rpm
最大トルク:64.2kgm/5,500rpm
0-100km/h加速:3.8秒
最高速:324km/h
エンジンは、5,935ccの V12型DOHCです。
試乗まで少し時間があったので、Vanquishを中心にしばらく写真撮影で時間を過ごします。
それにしても、このTungsten Silverという色はエッジの効いたVanquishのデザインを見事に引き立ててくれます。
硬い金属の塊りから削り出して作ったモデルに見えます。
中身が詰まっていて重量感を感じます。
アストンマーティンは、斜め上に開くスワンスイングと呼ばれるドアの開き方をします。
Vanquishの場合は12度とのことですが、かなり上方に開く印象があります。
ドアノブもボディーの外側に出ておらず、ノブのクルマの前側の部分を指で押し込むとシーソーのように後側の部分が出てくるので、ここを掴んで引っ張って開けます。
手のひらを上に向け、人差し指で前側を押して出てきた後ろ側のノブを中指から小指を使って握って引っ張るのがやりやすいです。
逆に手のひらを下に向け、小指で前側を押して出てきた後ろ側のノブを親指から中指を使って引っ張り出す方法もあります。
後者の方法は慣れないとやりにくいですが、よりスマートで格好良く見えるかもしれません。
色々と写真を撮っていると声がかかり、試乗コースに向かうことになります。
アストンマーティン独特のイグニッションスタートは何度やっても楽しめます。
ブレーキを踏みながらリモコンキーをセンターコンソールの上部中央にある差込口に指で長めに差し込むと、ガォーンという大きな咆哮を轟かせてエンジンが始動します。
センターコンソールに差し込みかけているリモコンキーはサブ・キーなのか、頭の部分がクリスタルになっていません。
ちなみに、セカンドグラスキーという86,400円のオプションを選べば、サブ・キーもクリスタルになります。
シート右手にあるシフトレバーを手前に引いてサイドブレーキを解除して、リモコンキー差込口の並びにある右側のDボタンを押すと準備完了です・
ミッションがTouchtronic IIIという8速AT車なので、ブレーキから足を離してクリープを使って静々と走りはじめます。
今回の試乗コースは、2車線道路で直線部分が長い箇所があるので楽しみです。
前回の試乗でもすぐに気になった部分ですが、Touchtronic IIの 6速モデルと違って変速に対する排気音の反応が合っていてスポーティーな印象です。
しかも、2速や3速での加速感がスムーズでクルマが滑るように加速していきます。
E63 M6でドラッグレースしても勝ち目がないなあと。
アストンマーティンはパドルを使ってギアチェンジするとマニュアルモードに変わります。
マニュアルモードから戻したければ、センターコンソールにあるDボタンを押せばボタン上部にある小さな赤いダイオードが光ってオートマモードであることを教えてくれます。
しばらく運転を楽しんでいると2車線の直線道路でトンネル部分が近づいてきます。
シフトダウンしながら速度を十分に落として3速に入れます。
どうも、シフトダウンによる速度レンジが決まっているみたいで、2速に入れるにはかなり速度を落とさないと入らないと思います。
さて、トンネル部分に突入してアクセルを踏み込みます。
もう、気分は「007慰めの報酬」のオープニングでアルファロメオ159に追われてアストンマーティンDBSで振り切ろうとするダニエル・クレイグです。
アストンマーティンならではの高音のパリパリという音は本当に痺れます。
ただ、
前回に同じ場所をV12 Vantage Sで走ったときは背中をグググッとシートで押していくような強い加速感を感じましたが、Vanquishはスイスイと加速してしまう印象です。
トンネルと出ると路面は少し凹凸でうねっているのですが、ここもV12 Vantage Sと違ってコツン、コツンとしっかりとした足回りを感じさせるくらいのマイルドな印象です。
ハンドルの切りはじめが少し軽いかなあ。
普段はこれでも良いのですが、思わず腕に力が入るような場面でハンドルが浮いているような感じがして気になりました。
この点は、E63 M6はどっしりしていて好印象です。
試乗時間がまだあるのでもう1周しても良いと提案いただいたので、スポーツモードにしたりやサスペンションを硬くして2周目に臨みましたが、今回もその違いは分かりませんでした。
鈍感なのか、もう少し乗り慣れないと気が付かないかなあ。
今回の失敗は加速感を楽しもうと集中しすぎてリミッターに何度も当たってしまったこと。
ノーマルモードだとエンジン回転数がリミッターに達すると自動的にシフトアップしてくれるので、アクセルの踏込み具合だけで気ままに走ることは可能ですが、スポーツモードだとシフトが固定されているのでリミッターに当たらないようなシフト操作が必要です。
M6のようなヘッドアップディスプレイがないのでメーターパネルを見る必要がありますが、タコメーターを見るより中央上部に表示されるシフトポジションの数字がリミッターに近づくと赤く表示されるので、そのタイミングでシフトアップするのが実用的です。
最初にステアリングの位置を調整せずに走り始めてしまったので、シフトポジションの数字の一部がステアリング遮っている状況でした。
そこでステアリング位置を少し上げてシフトポジションの数字を見やすくしたら、失敗がなくなりました。
見やすさの観点からいえばヘッドアップディスプレイに劣後しますが、シフトポジションの表示は目線の正面やや下くらいなので少しでも軽いスポーツカーをと考えればアストンマーティンというクルマにはこれで十分なのかもしれません。
2周目も終わりに近づいたときに、他に気になっているクルマはありませんかと聞かれました。
V12 Vantage Sと乗り比べしたいという気持ちがあったので正直に伝えると、確認しましょうと。
結果的にあまり時間が確保できないので少しだけであればということで、すぐに乗り込みます。
こちらは、Speed Sportshift IIIという7速セミAT車です。
エンジンは2014年までのVanquishモデルと同じスペックですが、車重が1,665 kgと1,739 kgのVanquishに匹敵する加速性能と最高速度を実現しています。
最高出力:573ps/6750rpm
最大トルク:63.2kgm/5750rpm
0-100km/h加速:3.9秒
最高速:328km/h
グレイブルという名のボディーカラーはとても渋いです。
クルマの乗り込み方やエンジンのかけ方は全く同じです。
運転席からほんの僅かに見えるボンネットのシルエットがVanquishと違って小さなスポーツカーを予感させます。
アクセルを踏んでクルマを走り始めてオートマモードだとVanquishと違ってギクシャクするのですぐにパドルでギア操作を始めます。
こちらは、スムーズな加速が難しい。
排気音や室内の揺れ方が荒々しくて、フルアクセルをするとギアチェンジでギクシャクします。
加速時の滑るようにというよりハンドルや車体の揺れを感じながらといった印象です。
だからこそ、V12 Vantage Sのほうがパワー感を感じます。
Vanquishでホイルスピンしながら加速してもゆっくりな動きで安心感があります。
V12 Vantage Sはそういう安心感が頭の中で働かず、ドライバーに緊張感をもたらします。
ここから先の話は、クルマの使い方や好き嫌いなのでしょうが、運転を楽しむ遊びのクルマとしてV12 Vantage Sはとても良いと思います。
フェラーリのデザイナーとして有名なあの日本人の方がイエロータンのV12 Vantage Sを試乗してその場でサインして購入していったという話も納得できます。
どちらのクルマが良いのだろうと空想していると、担当の営業の方からAMGからエンジン供給という話もあり、自然吸気エンジンも長くないから決めましょうと持ちかけられます。
再来年あたりに、V8エンジンがターボ化され、次にDB9を皮切りにV12エンジンも変わっていくのではないかと。
アストンマーティンも時代の流れには逆光できずに遂にと立ちすくんでいると、今度は社長がやってきました。
名刺を頂戴して簡単な挨拶を済ませてクルマ談義に盛り上がっていると、アストンマーティンは経営危機のときもレースはやめなかった、V12エンジンを開発し続けると言っていると心強い話がありました。
さて、未来はどちらにシナリオになるのか。
今回の試乗で、VanquishとV12 Vantage Sがこんなにも違うクルマなのかと思い知らされました。
もう一度、冷静に考えないとダメですね。
それに、来週は禁断の地に足を踏み入れます。
予想どおり好印象なら他のクルマも選択肢へという評価につながり対象が格段に広がります。
もちろん、色々なクルマに乗ることで頭の中の整理が進みます。
試乗の帰り道にはE63 M6の素晴らしさをいつも実感します。
このクルマはなかなか手放せそうにありません。
自分なりの客観的なマッピングを作って、どういう結論にするかを考えたいと思っています。
長文にお付き合いいただきありがとうございます。