
熊本を中心として九州地方にお住いの方は大きな地震により大変な生活を強いられていることと思います。
親戚や親しい知人はおりませんが、次々と地震速報が流れて気が気ではありません。
みん友さんに九州在住という方もいらっしゃいますし、みん友さんの関係者まで含めると関心が薄くて良いものかどうか。
被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
さて、昔から最新型の117Coupeには興味があり、一度は乗ってみたいと思っていました。
角目4灯のヘッドランプがシンボルの117Coupeの後期型です。
黒いラバーで覆われたバンパーやチンスポイラーも特徴ではと言える方は間違いなく117クーペフリークです。
フロントグリルの唐獅子も違うのではと言われてしまったら、もう申し上げることはございません。
117Coupe は、昭和41年3月のジュネーヴ・モーターショーで「ギア/いすゞ117スポルト」としてプロトタイプが発表され、コンクール・デレガンスを獲得しています。
市販車は、昭和43年12月から販売されています。
初期の頃、生産工程の大部分を手作業に頼ったことから、初期型のことを「ハンドメイド・モデル」と称したりします。
月産台数が販売当初は30 台前後だった貴重なモデルであり、中期型に乗っている立場からいうと羨望の的です。
その後、量産化へ対応するため内外装の設計が見直され、昭和48年3月からコストも抑えて一部を簡素化した「丸目量産モデル」と称される中期型が販売されます。
そして、昭和52年12月からヘッドランプが丸形から角形に変更された「角目モデル」と称される後期型が販売されます。
前期型、中期型、後期型と並べたら雰囲気はかなり違いますが、フルモデルチェンジすることなくジョルジェット・ジウジアーロのデザインを最後まで忠実に再現したクルマといえます。
私が乗っているのは中期型です。
エンジンの型式はG181WEという1,817ccの直列4気筒DOHCであり、最高出力:140ps/6,400rpm、最大トルク:17.0kgm/5,000rpmという117Coupe史上では最強のものが搭載されています。
このエンジンは、51年排ガス規制に適合するため圧縮比を9.7から9.0に引き下げられ、最高出力:130ps/6,400rpm、最大トルク:16.0kgm/5,000rpmにパワーダウンしてしまいます。
G181WEは後期型に引き継がれますが、さらに厳しい53年排ガス規制が導入されることとなり、適合するための出力低下を補う目的でボアアップした1,949ccのG200WEという型式のエンジンを昭和53年11月から搭載されています。
圧縮比は9.0のままですが、最高出力:135PS/6200rpm、最大トルク:17.0kgm/5000rpmに引き上げられます。
ややマニアックな話ですが、型式の最後のWはツインカム、Eはインジェクションを表しており、DOHCの搭載したインジェクションモデルはWEと表記されます。
少し脱線しましたが、このG200WEのアイドリング時の排気音はG181WEと同じです。おそらく、ハンドメイド・モデルに搭載されているG161Wも同じ音に聞こえると想像しています。
G200WEが搭載されている117クーペのトランクリッドに「DOHC」とは別に2つのスターが並んだ「☆☆」のエンブレムが取り付けられています。
ただ、このG200WEは2ℓ級のエンジンというには排気量が少し足りなかったこともあって、「スターシリーズ」と呼ばれていたと聞いたことがあります。
残念ながら、このクルマは「☆☆」のエンブレムが外されていました。
内装はオリジナルではなく、ウルトラスウェードというスウェード調の人工皮革によりリフレッシュされています。
しっとりとした手触りで滑る感じもなく落ち着いた茶色が当時の高級車を思わせます。
自分の愛車もオリジナルは薄めのベージュ色でかなり厚めのコーディロイ生地でしたが、20年ほど前に生地が裂けてしまい、見た目が似ている生地に張り替えています。
当時、生地屋さんに照会したらこんなに立派なコーディロイ生地はないと整備工場から聞かされ、落胆した記憶があります。
このウルトラスウェードで薄めのベージュがあれば、思い切って全面張り替えしても良いかなあと。
ヘッドランプの角目に加えて賛否が分かれるのが、このメーターパネルです。
7つの計器が横に並ぶいわゆる7連装パネルをやめてしまい、燃料計、水温計、油圧計、電流計に時計とすべて左側に角型の1つのパネルに入れてしまっています。
当時は斬新だったのでしょうが、時計もデジタル表示です。
この蓋つきのアームレストは後期型だけですが、ウルトラスウェードが貼られて質感が高められています。
こういうリファインができるのであれば、自分のクルマにも施したいところですが・・・
スロットルに対する反応は格段に良くなっています。
街乗りで1,500rpmあたりからスロットルを踏み込めば、踏み込む強さに合わせてエンジン回転数がきちんと上がっていきます。
中期型はオートマティックとの兼ね合いなのか、排ガス上の制約なのか、ある程度までスロットルペダルを踏み込んでもエンジンの吹け上がりの速さは変わりません。キックダウンさせるか、シフトノブを使って強制的にシフトダウンしないとスロットルに対する反応が良くなりません。
ただ、残念なのは、ゴロゴロゴロというディーゼル車のような排気音が響いてくるのと、エキゾーストが大きい割に加速感に乏しい点です。
年式やクルマの位置付けを考えると後者はやむを得ないとして、前者はむしろ驚きです。
高速道路を走ると、3,000rpmあたりの80km/hで排気音がゴロゴロゴロと煩くなって、もうそれ以上で走る気が失せてしまいます。その先は心地よくなるのではと5,000rpm近くまで回してみましたが、ガラガラガラとやはりディーゼルエンジンのような排気音が強く響いて、高級車の雰囲気を壊してしまいます。
このクルマに乗る前にボンネットを開けてG系のヘッドカバーを被せたツインカムエンジンを確認しているので、ディーゼル車ということはありえないのですが・・・
私のクルマであれば、4,000rpmでもシャカシャカシャカとメカニカルな音がボンネットから響いてきて煩いという感じは全くないし、心地良いのでもっと回そうという気になります。
また、このクルマで走りはじめの低速時に段差を乗り越えたときはリアのサスペンションがしっかりしていて心地良いと感じたのも、中高速域では衝撃が強くてフワフワだけれど粘る中期型の足回りのほうが爽快に走れるかなあと。
後期型になって取り付けられたパワーステアリングは街中では秀逸です。
重ステと格闘する117クーペオーナーにとっては、このクルマでこんなに気楽にハンドルを切れるのかとショックを感じると思います。
ただ、このパワーステアリングも高速道路を走るとステアリングの軽さがあだとなり、ステアリングを握る腕に緊張感をもたらします。
もともと拳1個分くらいの遊びと重ステというセッティングを上手くマッチさせて安定感のある走りを実現している感があるだけに、自分のクルマにパワーステアリングを入れるなら煮詰めないといけないだろうと。
ホーンも軽自動車のようにプゥプゥと軽い感じだし、ウィンカーもカチカチと安っぽい感じ・・・
メーター読みで110kmあたりからキンコン、キンコンと懐かしい響きを発します。私のクルマはプーという連続音でしたが、道路交通法が改正されたときに鳴らないように回線を外してしまいました。
クルマを停めてイグニッションキーを抜こうとしたら引き抜けません。
ハンドルロックしたかなあとステアリングを切っても抜けない、もしやと思ってのぞき込んだらボタンを押さないと抜けないのですね。
これも後期型だけの機能だと思います。
パワーステアリングがあるので車庫入れは本当に楽です。
ちょっとしたところに停めるのも苦になりません。
室内はまだ暑くなるような季節ではありませんが、後期型には中期型までの外付けクーラーではなくエアコンが載っているのでいつでも快適に走れるでしょうし。
シェアしたオーナーさんに印象を伝えたところ、やはり排気音はガラガラといってディーゼルみたいとのこと。
中期型との違いを伝えて、いつかガレージで並べて楽しみましょうと約束します。
後期型をシェアするにあたり良いところばかりを想像していましたが、諸刃の剣のような点は多々ありました。
それでも、もっと117クーペを知るため、自分のクルマの特性を知るために、また後期型に乗って運転を楽しんでみたいと感じた次第です。