
これまで、BMWのMモデルやAudiのRSシリーズのハイパフォーマンスモデルのステアリングを握る機会には恵まれましたが、Mercedes-BenzのAMGモデルは未体験。
今回、A45 AMGを運転する機会を得たので、そのときの印象を記しておこうと思います。
備忘録の意味も込めて比較的に感じたままに書いているので、読んで気を悪くされる方がいるのではないかと少し心配です。
また、長文となっているので、興味が湧いた方のみお付き合いください。
このA45 AMGが発売されたとき、ちょっとした衝撃を受けたことを今でも覚えています。
何故なら、Mercedes-Benzがいわゆるコンパクトカーに分類される、FF車がベースのAクラスにAMGモデルを設定する戦略を採ってきたわけですから。
相応の性能を備えてリリースされたこともあり、ジャジャ馬で面白いというインプレッションを何度か目にしました。
最高出力:360 ps/ 6,000 rpm
最大トルク:45.9 kgm / 2,250-5,000 rpm
0-100km/h:4.6秒
しかも、車両価格は600万円台。
比較対象としては不釣合いですが、C63 AMGの半分位の価格でAMGモデルが楽しめることになります。
ところで、今回運転したクルマは今年発表されたマイナーチェンジにより、さらに性能を向上させたモデルです。
最高出力:381 ps/ 6,000 rpm
最大トルク:48.4 kgm / 2,250-5,000 rpm
0-100km/h:4.2秒
搭載されているエンジンは従来と同じ直列4気筒ツインスクロールターボです。
E63M6の0-100km/h加速が4.6秒なので、スタートダッシュはかなり期待できそうです。
ブレーキペダルに右足を乗せ、ステアリングコラムの右にあるシルバーのスタートボタンを押してイグニッション・オンです。
地下駐車場内に低いエキゾーストが轟きましたが、音量は想像していたよりは控えめです。
ダウンサイジング全盛とはいえ、他のスポーツカーと比べたら決して大きいとはいえない排気量では音量に限界はあるでしょうが、個人的にはこれで十分に高揚感を味わえます。
逸る気持ちを抑えて、AMGのプレートが埋め込まれたD型ハンドルに手を伸ばします。
革とアルカンタラのコンビに赤いステッチが入り、やる気にさせてくれます。
トランスミッションは、AMGスピードシフトDCTという7速セミオートマチックです。
もちろん、シフトレバーをDレンジに入れてもクリープしません。
スロットルペダルに置いた足に少し力を入れると、クルマはオートマチック車のようにスムーズに動き出しました。
駐車スペースから出るためにステアリングを右に大きく切ると、右手、左手と継いだ手のひらがちょうどステアリングの底辺の角の部分に当たって両手とも掴み損ないそうになります。
同じようなD型ハンドルのRSシリーズのときは気にならなかったのですが、形状からくる実用的な扱いにくさを感じます。
少しして気がついたのですが、ステアリングを握っていても、アルカンタラの部分はもちろんのこと、本革の部分も乾いた触り心地なので手のひらにしっとりと引っかかる感じがありません。
しかも、ステアリングの径が少し小さく、握りも太いので、いつも握りを意識せざるを得ず、腕も指もリラックスできません。
もちろん、このあたりは感性や好みもあるのでしょうが、ちょっと慣れが必要です。
街中へ出てブレーキを踏むと、踏み始めからジワリと効いてくれてかなり好印象。
代車で乗っていた現行モデルのBMWも初動から良く効きましたが、制動の立ち上がりを意図的に強くしているのか、ブレーキペダルにいきなり足を掛けるとすぐにカックンとなります。
ところが、Mercedes-Benzは1回目のブレーキから上手く合わせられます。
ブレーキの踏みしろと効き具合がきちんと比例しているといえば良いのでしょうか。
だからこそ残念だったのは、ブレーキペダルがスロットルペダルよりかなり手前に出ていて、膝を曲げて足の甲を手前に引かないとブレーキペダルに足裏がかからないこと。
これさえ解消してくれれば言うことありません。
走行モードは全部で5種類あります。
「Comfort」、「Sports」、「Sports+」、「Race」、そして「Individual」。
走行中にモードを切り替えてみると、オートマチック変速では「Comfort」だと2,000rpm、「Sports」だと2,500rpm、「Sports+」だと3,000rpmあたりのギアを選択してきます。
ただ、「Sports+」でも少し走ると2,700rpmあたりに落ち着きます。
これだけのスペックがあるクルマなので、街中では「Comfort」でも十分に速く走れます。
もちろん、アイドリングストップが作動してくれるので燃費にも優しいです。
難点は再始動するときのエンジンの振動が気になることです。
そして、街中はオートマチック変速で「Comfort」で走るのが一番というのが結論のようです。
このモードでは、スロットルを踏み込むとほんの一瞬遅れて加速を始めます。もちろん、「Sports」や「Sports+」に設定すれば、より低いギアが選択されるのでスロットルに対するレスポンスは上がりますが、流しているときもエキゾーストが高まり落ち着いた気持ちで走れません。
実は、高速道路で試した結果でも結論は同じです。
「Comfort」で走っていると0-100km/h加速のカタログ値から期待していたような加速感が得られず、「Sports」、「Sports+」、「Race」と試してみましたが、思っていたような速さや力強さはありません。
さらに、マニュアル変速に設定してパドルを駆使して積極的にシフトダウンして加速を試みましたが、許容回転数の制約からなのかギアは4速までしか落とせず、シフト操作する時間だけオートマチック変速より加速へ入るのが遅れてしまう感じがします。
どうやら、パドルを駆使するより、オートマチック変速でベタ踏みするほうがスタートの反応は良い感じです。
もちろん、レッドゾーンの6,250rpm付近までは引っ張らずに5,000rpmを少し超えたあたりでシフトアップされてしまうというデメリットはありますが・・・
車速と回転数を落としてシフトダウンさせても70km/hから80km/hでは3速までに制限されてしまいますし、そこからレッドゾーン付近までは僅かな回転域しか残されておらず、スロットルを踏み始めるとあっという間に4速にシフトアップしなければなりません。
予想外だったのは、マニュアル変速のまま6速や7速で走行している場合、高速道路ならエンジン回転数は2,000rpm付近なのですが、フルスロットルしてもほとんど反応しません。
エンジンのスペックを見る限り、2,250rpmから5,000rpmまで最大トルクを発揮できるフラットトルクを実現しているので、それなりに加速できるのではと予想していたのですが、E63M6の高回転型V10エンジンのようにギアをパワーバンドに合わせないと加速しないのは想定外です。
本格的なスポーツカーと張り合う場面でもない限りは置いていかれることはないのでしょうが、鋭い加速を引き出すことはできませんでした。
足回りは「Comfort」でもしっかりしています。
悪い路面や車線変更でもフワフワしてバタつかないので、安心して運転していられる硬さといえば良いのでしょうか。
ただし、首都高速のきついカーブを少し良いペースで突入したとき、もう少し硬さが欲しいと感じる場面もありました。
4MATICとはいえFF車ベースですし、背丈はあってもホイールベースは長くないので、切り加減を誤ると立て直しが難しいなあと。
カーブの入り口でステアリングの切り足りなかったのを取り返そうといつもの感覚で切り増すとオーバーステアぎみになり、それを戻そうとすると足回りがガッチリと追従してくれずに車体のバランスを失う感じ。
FR車しか乗っていない腕の悪いドライバーが偉そうに言うことではないのでしょうが・・・
ただし、シートはサイドサポートが体をしっかりと支えてくれるので、スポーツ走行は楽しめるように準備されていると思います。
さて、このクルマを運転して、最も気に入ったのがスロットルをオフにしたときにブリッピングして「パリパリパリ」とエキゾーストを響かせることです。
街中を走っていても、強めに踏み込んだスロットルを戻すと「パリパリパリ」と。
自分としてはごく自然にスロットルワークをしているだけなので、何だか運転が上手くなったような、物凄いスポーツカーに乗っているような、クルマに担がれて良い心地です。
AMGパフォーマンスエグゾーストシステムをオンにしたらもっと過激になるのかと期待しましたが、これは違いが分かりませんでした。
コンパクトカーのリアシートとしては十分なスペースがあります。
中肉中背の男性でもきつくはないでしょうし、パノラマウィンドウなので天井に広さを感じます。
サンルーフはチルトアップとスライドの両方が楽しめます。
この日は蒸し暑かったので、サンシェードだけを開けてパノラマウィンドウ越しに入る明かりを楽しみました。
ダッシュボードやドアトリムに奢られたレザーARTICOという合成皮革は、残念ながら質感が良さそうに見えませんでした。
ただ、同価格帯のクルマに対し、樹脂剥き出しにせず赤いステッチの入った合皮を纏ったダッシュボードを取り付け、カーボン調のフェイシアと合わせてよりスペシャリティを出そうとした取り組みは一歩先を行っていると言えると思います。
ここでの難点はダッシュボードの赤いステッチがフロントガラスに写り込み、前方の視界を邪魔すること。赤が標準色ですが、ステッチの色選びですら慎重にしないとならないと思い知らされました。
こんなところにサングラスを収納できると便利ですね。
スピーカーはHarman Kardonです。このあたりは、Aクラスといえども手抜かりなしといった感じです。
控えめなリアスポイラーがAMGであることを主張しています。Edition1の立派なリアウイングも格好良いですが、性能を誇張しないさりげないリアスポイラーというのも好感が持てます。
エンジンが始動すると同時にスピードメーターとタコメーターが上限まで振れます。
ピークに合わせてシャッターは下ろせませんでした。
もちろん、走行中の写真ではありませんよ。
速度計はAMGのロゴが入った320km/hフルスケールで、このクルマの最高速は270km/hと発表されています。
辰巳PAに遠征したら隣に素敵なポルシェが止まってくれました。
写真を撮る直前まで少し強い雨が降っていましたが、晴れ間も出てオープンにして走れたでしょうか。
ボディカラーはコスモスブラックという専用カラーですが、紫色が帯びているメタリックに見えます。
光が当たると黒っぽさが後退して紫色が前に出てくるので面白いカラーです。
久しぶりの外苑の銀杏並木通りでの撮影。
もう少し青みがかかった空が写り込めば良い絵になったでしょうか。
SHAKE SNACKは13時過ぎになっても大行列です。
KIHACHI青山本店では結婚式が行われていました。
こういう場に立ち会うと、幸せを分けてもらった気持ちになります。
クルマを返す時間が近づいてきました。
都庁舎との1枚を試みますが、どこに停めても上手くいきません。
そのうち、ベストポジションを探してみたいと思います。
実は、レーンキーピングアシストの機能も触れたかったのですが、また機会があれば。
最後まで読んでいただきありがとうございます。