
2016年11月に第二世代のVanquishを進化させたVanquish Sが発表されてから僅か1年。
そのファイルエディションとして、Vanquish S Ultimateが世界限定175台で発売されるというニュースがインターネットで流れます。
同時に次期モデルはターボエンジンと噂され、これがアストンマーティンのフラグシップとして自然吸気V型12気筒エンジンを搭載した最後のモデルになるであろう、と。
モデルサイクルを考えると、V12 DBSの後継モデルとして発表されてから5年が経過しており、生産終了も当然です。
しかしながら、国内でVanquish Sのデモカーが披露されてからまだ数か月しか経過しておらず、私にとっては驚きでした。
それに、初代Vanquish Sのように3年程度は製造されるのではという期待もあったわけですが、その淡い期待は儚くも消えてしまいました。
これからどう向き合っていこうか、と。
色々な希望と制約があるなか、エンジンスペックの違いもあり、本国から右ハンドルを並行輸入するシナリオをメインに置くことに決めます。
クルマを選定するにあたり最も重視したのは外装色。
Vanquish S Coupeのプロモーションビデオでも使われた新色のMing Blueは目を惹きました。
ただ、インテルラゴス・ブルーのM6とメタリック・ブルーで被ることもあり、英国車に乗るならやはりグリーンと私の好きな色を第一候補として探すことにしました。
この辺りまでの流れを、前回のプログに記しています。
2020年のゴールデンウィークが明ける頃、突如としてChiltern GreenのVanquish S Coupeが110milesという低走行で売り出されます。
実は、私の中では伏線があって、その少し前にVanquish S Ultimate EditionのCoupeとVolanteの2台が、売りに出されました。
最終モデルの世界限定175台、しかも2台とも200miles以下と低走行の好物件でした。
一度はオープンカーへとの夢と相まってVolanteに惹かれましたが、ネックなのは、外装色がXenon Greyであったこと、好みのオプションがいくつか付けられていなかったこと、そして高めに設定された車両価格です。
価格は、DBS Superleggeraの中古車価格につられるように、少しづつ下がり始めたものの、流石に予算オーバーかなと見送りの心境でした。
そのうち、Coupe、Volanteの順でSOLDとなり、低走行の中古車が市場から消えてしまいます。
そんな矢先、グリーン系のVanquish Sが低走行で出てきたとあっては、流石に心が沸き立ちます。
さて、このChiltern Greenとはどんな色でどんな謂れなのか、インターネットで色々と調べました。
結局、解説どころかヒントすら見当たらず、分からず仕舞いでしたが、こんな講釈をしてみました。
Aston Martinの由来は、バッキンガムシャー州のAston Clintonという村で1914年に行われたヒルクライムレースでLionel Martin大尉が優勝したことに始まります。
今では、このAston Clintonは、アストンマーティンにとっての聖地とも言える場所であり、ロンドン北西の郊外にオックスフォードシャー、バッキンガムシャー、ベッドフォードシャー、ハートフォードシャーと4つの州に広がるChiltern Hillsという丘陵地帯にあります。
そう、Chiltern Greenはこの丘陵に因んだ名前なのではないか、と。
Chiltern Greenは、DB7の時代にはラインナップされており、ペイントされた車両が中古車市場で確認できます。
2001年に登場した初代VanquishでもChiltern Greenの個体は確認でき、先日、国内でも中古車が売り出されていました。
このV8 Vantage Sには、最初のオーナーさんのこだわりでPrevious AMLシリーズからChiltern Greenを選んで塗装されているようです。
2012年に発表された二代目Vanquishのカタログにありません。
グリーン系にあるのは、全41色のうちContemporaryに設定されたAppletree Green、Viridian GreenそしてHardly Greenの3色のみです。
Vanquish Sでは、アストンマーティンのビスポークを担当するQ部門が手掛けるQ Specialと特注色扱いになっています。
そして、実車を見るまで確信が持てなかったのは、このQ SpecialのChiltern Greenは、目の前にあるV8 Vantage Sと同色なのかということ。
関係者の話を総合すると、同じChiltern Greenでも違う色になるようです。
Q Specialは、Q部門が特別に調合するので、オリジナルと同じではないということのようです。
このあたりは、アストンマーティンフリークの方にお話し伺ってみたい、と思っています。
現在、同時代に存在したBuckinghamshire GreenがQ Specialとして復活しています。
こちらは、アストンマーティン本社が現在のゲイドンに移転する前のニューポートパグネルがBuckinghamshire州にあり、名門ゴルフクラブであるBuckinghamshire Golf Clubの芝の色をイメージしたのではないか、との評釈がありました。
確かに写真で見る限り、V8 Vantage V550に塗装されているBuckinghamshire Greenとは全く異なり、かなり鮮やかなグリーンメタリックに変化しています。
ちなみに、ラインナップの多いシルバー系には、映画「007」から生まれたものもあります。
『Die Another Day』でボンドカーを務めたV12 VanquishをイメージしたTangsten Silverは因んだ名前が付されておりませんが、その後、V12 DBSをボンドカーとして採用した『Casino Royale』からはCasino Royale、『Quantum of Solace』からはQuantum Silver、そしてDB5がボンドカーに復帰した『Skyfall』からはSkyfall Silver、さらには映画用として専用に開発されたDB10をボンドカーに据えた前作『Spectre』からはSpectre Silverという具合です。
さて、次作『No Time To Die』の予告編では、007の任を解かれたダニエル・クレイグ扮するジェームズボンドは、DB5とV8 Vantageで登場するシーンが確認できますし、新しい女性ダブルオーがDBS Superleggeraに乗り込んでいるカットも挿入されております。
Aston Martinの活躍も楽しみですが、新色は登場するのでしょうか。
話が逸れて長くなってきました。
私は今回このクルマのオリジナルペイントを保護するため、プロテクションフィルムを全面に貼ることにしました。
その件はいずれ紹介したいと思います。