
おおよそ3週間前のことになるでしょうか。
銀杏並木の紅葉は見頃を過ぎておりましたが、落ちた葉が歩道に降り積もり、黄色い絨毯が敷かれているようにも見えました。
この日、私にとって待ち望んでいたぼー&ぼーさんの愛車である450SLCとの初対面が実現します。
しかも、同乗させていただけるとのことで、楽しいひと時を過ごすことになります。
お父さんと一緒にと希望されたお子さまたちはリアシートへ。
助手席に座り続けてしまいましたが、リア席の乗り心地は機会があれば確認してみたいと思います。
走り出した450SLCはとても勇ましい排気音を轟かせ、最高級のメルセデスベンツに乗っていることを忘れてしまうほど。
街中での僅かな加速でもトルク感が伝わってきます。
考えてみれば、70年代前半に4.5ℓのV型8気筒エンジンを搭載したクルマとなるともはやスーパーカーの世界であり、一線級のスポーツカー並みの動力性能を備えていて不思議はありません。
強力なエンジンパワーを路面に伝えつつも、足回りのしなやかさとシートの程良い柔らかさでタイヤへの入力に対していなしが入るので、剛柔併せもつ何とも不思議な乗り味。
ツンデレという言葉と一緒に頭の中で何かがグルグルと回り始めます。
当時のお金持ちはこれに乗っていた・・・
当日は308のプチオフ会が開催されると聞いていましたが、プジョーだと思っていたというのはここだけの話です!
ぼー&ぼーさんの愛車遍歴を考えれば、当然にフェラーリですよね。
308GTBといえば、子供の頃に憧れたスーパーカーの中の1台。
スーパーカーのカードや消しゴムはたくさん収集しました。
ノック式ボールペンのノック部分をスーパーカー消しゴムに当てて、芯をしまうときにノック部分が勢い良く戻る力を利用して相手の消しゴムが机から落ちるようにぶつけ合ったり、コースを決めてゴールまで競い合う、とか。
メンコで勝負したりもしていましたね。
エンジンが横置きという情報は当時からあったように記憶していますが、V8エンジンだとか、ミッドシップだとか、クルマの構造や仕様に興味があったのか定かではありません。
最高速252km/hというスペックは覚えていたように思います。
当時はインターネットのような便利なツールで欲しい情報が簡単に手に入る時代ではなかったので、子供心にリトラクタブルヘッドライトのフェラーリは格好良い、という程度だったのでは、と思います。
308GTBに続いて208GT4が止まっています。
ディーノシリーズのラインナップ拡張のために用意された2+2。
ミッドシップのクーペは、206、246、308とピニンファリーナで丸みのある造形に特徴がありますが、こちらはベルトーネ社のマルチェロ・ガンディーニが得意としたウェッジシェープでデザインされています。
3ℓのV型8気筒エンジンを搭載したディーノ308GT4に対し、イタリアの税金対策のために2ℓのV型8気筒エンジンを搭載した208GT4。
1,991ccで8気筒なので製造にお金を掛けた豪華なエンジンといって良いでしょうか。
1975年から1980年の間に840台が製造されているようです。
スーパーカーの風格を存分に漂わせるフェラーリ365GT4BB。
ランボルギーニカウンタックと双璧をなす人気のクルマという印象は残っています。
格好良いカウンタックに対して美しいBB。
当時、365BBと512BBは双子の兄弟のように見分けが付きませんでしたが、今でも見分けられる自信はありません。
365BBを512BBの仕様に換装されてしまうこともあるようですが、オーナーさまがこのクルマは365BBと話しておりました。
三連灯のリアランプが365BBであると主張しています。
デッサンしたら良い絵になりそうです。
いつまでも眺めていたくなります。
最高出力380PS/7,000rpm、最大トルク44.0kgm/3,900rpmを発揮する自然吸気のV型12気筒DOHCのエンジンで最高速302km/hとされています。
最高速に関して議論はあります。
最近のスポーツカーとの比較で考えても、車両重量1,450kgに対して最高出力380PSで300km/hに到達させるには厳しい気もします。
高速域になるとフロントリフトも避けられず、現実の姿も色々と知ることとなります。
個人的には、当時の乗用車の性能を考えると、300km/hと謳うことができる要素を兼ね備えていることで充分。
このクルマは今でも強いオーラを放ち、多くの人を周りに惹きつけることこそスーパーカーの王様であり続けている証と言えるのではないでしょうか。
365BBから始まるV12ミッドシップの流れにある512TR。
512BBiの後継モデルとして登場したテスタロッサを改良した512TRは走りが良くなったと聞きます。
しかし、次のF512MでV12ミッドシップの製造が打ち止めになったことから、高性能のモデルを製造し続ける難しさに直面していたのではないでしょうか。
テスタロッサシリーズは存在感あるリアのデザインに大きな魅力がありますが、リアの横幅が197cmというスペックは造形のためというより駆動系の制御という観点からの苦労の現れではないかと思わずにはいられません。
512TRは、テスタロッサから動力性能に加えて運転性も大きく改良されたと言われますが、外見の違いは小幅です。
前方からでいえば、フロントグリルの形状が一番の識別ポイントになるでしょうか。
テスタロッサより小さくなっています。
クラシカルなクーペの持つ優雅で美しい姿を伝える最も象徴的なクルマといえば、ジャガーEタイプでしょうか。
流れるような造形がクルマの速さを連想させますが、機能美に満ちている最近のスポーツカーとは目指している方向が違うと感じます。
もちろん、FRのスポーツカーをデザインするのであれば、一度はこのクルマを意識することになるでしょう。
1961年に製造が開始されたシリーズ1は、ライトカバーのかかったフロントライトがボディにしっかりと埋め込まれ、スッキリとしたフェイスに仕上がっているのが大きな魅力です。
93の後継モデルとして登場した96。
丸っこくて可愛いらしい外見ながら、RACラリーやモンテカルロラリーで優勝する実績を誇るラリーに強いクルマです。
96は1960年から1980年まで製造された息の長いモデルになりますが、フロントグリルの形状からこのクルマは1965年の意匠変更を受けたモデルのようです。
私が子供の頃、父親が117Coupeの次に選んだクルマがSAAB 900 Turbo S。
117Coupeで用事が済まないとき、借りて乗っていました。
FFの左ハンドル、しかもドッカンターボで癖はありましたが、ターボの過給でキューンという音が離陸するときの飛行機そのもの。
運転が楽しく今でもハンドルを握りたくなります。
そして、今ではこのブランドが消滅してしまいましたが、特別な思い入れがあります。
ルーフからトランクリッドに流れるフォルムが柔らかくて何とも素敵です。
リアフェンダーとのバランスも良く、テールランプやリアバンパーとも絶妙な組合せに思います。
すぐ後ろに止まっていた通称ヨタハチ。
1965年からトヨタ自転車で製造していたスポーツ800。
パプリカをベースに開発したスポーツカーなのでサイズも小型ながら、愛嬌のある外見です。
一方、車両重量は580kgと軽量ながら、最大出力45PSの790cc 2気筒OHVエンジンで最高速155km/hと見かけによらない実力があります。
Eタイプが世に出る頃にヨタハチの開発が始まったと思うと、先人たちが欧米に追いつけ追い越せと一生懸命に取り組んだ結晶のように思えてなりません。
そのライバルのホンダS800。
愛称はエスハチとヨタハチの仲間にも聞こえますが、こちらは小柄ながら端正な顔立ちに見えます。
車両重量は755kgとライバルより175kgも重いものの、最大出力70PSを発揮する791cc 直列4気筒DOHCエンジンで最高速160km/hと僅かに上回っています。
800ccのエンジンで小型スポーツカーを作って国内の需要に応えていたというのは、商売のためというより国産メーカーの意地のようにも思えます。
アストンマーティンV8 Vantage Zagato。
目に飛び込んできた瞬間からどこに止まるのか思わず注目しておりました。
初めて実車を目にしてあの個性的なデザインを近くで見てみたいという想いが湧き出してくるからです。
V8 Vantageをザガート流儀に仕立てたというより新たに設計された独創的なデザインです。
ただ、アストンマーティンのアイコンとも言える凸型に空いたフロントグリルは、デザインの一部としてしっかり取り込まれています。
ザガートといえばルーフのダブルバブルですが、このクルマは目立つほどの抑揚になっていないようです。
1986年から4年間製造され、クーペ52台、ヴォランテ37台とかなり希少なクルマです。
エンジンは車名のとおりV8 Vantageと同じ、最高出力430hpを発揮する5.3ℓV型8気筒エンジンを搭載しています。
リアからみると、ジョルジェット・ジウジアーロが設計したアルシオーネSVXを思わせます。
私の感性の問題なのか、何らかの必然性があるのか。
外苑銀杏並木がお開きの時間を迎える頃、ランボルギーニミウラが登場しました。
このクルマの存在がなければ、スーパーカーというジャンルが生まれていなかったかもしれません。
もちろん、多くの方々が一目見ようとこのクルマの周りを取り囲むように集まってきました。
ベルトーネ社のマルチェロ・ガンディーニが設計したボディを架装して1966年のジュネーブモーターショーに出展されましたが、そのときにコンクール・ド・エレガンスを受賞したのがのちに117クーペとして市販されることとなる117スポルトです。
また、ガンディーニの前任がギア社に移籍したジウジアーロ。
最も遠い存在のはずのミウラに最も繋がりを感じるという不思議な気持ちになります。
450SLCの本当の実力を少し堪能しませんか、と辰巳PAに連れてきて頂きました。
ブラインドテストしたらアメ車だと感じるのだろうかと思いながら山の手トンネル内で音と振動を楽しみました。
ドイツ車はカッチリとしているというイメージがあるので、とても良い経験になります。
お隣にフォードGTが止まっていました。
フォード創立100周年を記念して2004年に発表されたGT40のリメイクモデルのようです。
2006年までに1,500台が生産されています。
GT40は映画『フォード vs フェラーリ』により知名度を大きく上げたと思います。
そればかりか、このクルマに纏わる物語に触れ、多くの観客がこのときばかりはケン・マイルズがんばれ、フェラーリなんかに負けるなと応援したことでしょう。
給油口は右側Aピラーの付け根のボンネット後方にあります。
存在感ある給油口なので、ガソリンスタンドにある給油機の細いノズルではなく、フォーミュラカーで使うようなクイックチャージで給油したくなりそうです。
リメイクモデルは、ミッドシップレイアウトにスーパーチャージャー付きの5.4ℓV型8気筒DOHCエンジンを搭載しています。
こういうクルマに乗る方は気にしないと思いますが、燃費がどれくらいなのかとても気になります。
もう少しクルマを楽しみましょう、と大黒PAに向かいました。
いつもより多くのスカイラインが集結しているように見えました。
その中で最も目立っていたのがRB26DETTの専用エンジンを搭載したいわゆる第二世代のGT-Rと呼ばれるモデルです。
1989年に登場したR32型スカイラインGT-R。
ガングレーメタリックはイメージカラーです。
2桁ナンバーだったので、オーナーさんは長く大切に乗られているのでしょう。
R33型GT-Rは並びから離れた場所に1台停まっていました。
ドリキンの一言から曰くつきになったVスペック。
ボディが大型化されたことが災いしてケンメリGT-Rから16年ぶりの登場に沸いたR32型GT-Rと比べて盛り上がりは大きくありませんでした。
エンジンの最高出力は当時の自主規制枠一杯の280PSと同じではありますが、幾つもの改良を加えて走行性能は上がっています。
アメリカのオークションでR33型GT-Rに良い価格が付いたとニュースになっていたので、市場価格もこれから上昇していくのかも知れません。
1999年に登場したR34型GT-R。
エンジンの最高出力は280PSですが、最大トルクはR32型GT-Rより上がったR33型より更に引き上げられています。
R33型への批判に応えるようにクルマが小さくなったこともあり、評価は高まりました。
スカイラインのグレードの1つのGT-Rは、このR34型で終止符を打ち、2002年にVスペックII NürとMスペックNürの1,500台の販売で終了。
主に国内市場向けの第二世代GT-Rは、今では海外から注目を浴び、アメリカの新車販売から25年経過により輸入が解禁されるといういわゆる25年ルールにより、この最終モデルが特に狙われ青田刈りされているようです。
走行距離10kmの未登録VスペックII Nürが、7月に国内のオークションで6,050万1円で落札されたのには驚きました。
ランボルギーニ社がスポーツカーを制作するための会社を設立した1963年にちなんで世界限定63台制作されたSVJ63。
アヴェンタドールSVJと走行性能は変わりませんが、通常モデルよりカーボンパーツを多く使用しているようです。
艶消しピンクの外装色が目を惹きます。
ステアリングやヘッドレストにもピンクが採用されているので、好きな色に囲まれて楽しく運転されることでしょう。
そのお隣にはフェラーリF12tdf。
テーラーメイドプログラムでカスタマイズされた1台でしょうか。
近くで鑑賞していた親子のお父さんがSVJ63に惹かれる小さな息子さんに向かって、こっちはtdfだからもっと凄いぞと声を掛けていましたが、シザードアのランボルギーニは真のスーパーカーだったと子供の頃の自分に重なりました。
前後のディフューザーやサイドスカートはブルーのカーボンパーツが奢られています。
こういうオプションが幾らするのか予想もできませんが、この世界のクルマを購入する方たちの話を聞いていると、価格も確認せずにオーダーしていることが多いように思います。
オプションだけで高級外車が一台買えるのではないでしょうか。
他にも色々と気になるクルマはありますが、このあたりでブログを終了します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
年の瀬も押し迫り、新年に向けた準備を始める時期を迎えています。
皆さま良い年をお迎えください。