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2014年08月15日

コーナリング物理の考察09ヨー慣性モーメント


円運動をする物体には、進行方向と直行する方向に力が働いています。
コーナーを曲がっている時、加速も減速もせず真横にGを感じていて、そのGにタイヤのグリップが耐えられている限り、車体は物理的に最も安定して旋回していることになります。
荷重操作やハンドル操作によって、そのバランスを積極的に崩すことで、物理法則の都合に合わせて動くままにするのでなく、その物理法則を可能な限り運転者の都合の良いように利用して、ひとつの運動状態から次の運動状態へ変化させようというのが、この夏休み自由研究コーナリング物理の考察の、目指すところです。

ヨー慣性モーメントというのは、一度力をくわえて回転運動をさせた物体が、その勢いで回転し続ける力のことです。たとえばコインをはじくと回転し続けるのは、このヨー慣性モーメントが働いているからです。
車の設計の話でヨー慣性モーメントというと、いかにヨー慣性モーメントを打ち消すかという話が出てきます。たとえばタイトなS字コーナーを抜けようとしている時、まず最初に右に曲がってそれからすぐ左に曲がる、とします。すると、最初のコーナーに進入するときハンドルを切って、タイヤの摩擦の力を使って車体を右に回転させるヨー慣性モーメントを発生させなければいけません。ところが二つ目のカーブに進入するとき、その右に回転しようとし続けるヨー慣性モーメントが働いている状態から今度は左に回転しようとするヨー慣性モーメントを発生させなければいけません。これは直進状態からコーナーにアプローチするよりも、大きなヨー慣性モーメントの変化をタイヤの摩擦力から発生させなければいけない、ということです。
ですから、自動車はその設計上、すばやくヨー慣性モーメントを発生させたり止めたり逆向きにしたり、という運動性能を持っているほうが望ましいことになります。前後左右に複雑に変化する四輪のグリップバランスが素早く落ち着いて舵取りをする前輪に良い仕事をさせられるようなサスペンションを作るほか、たとえば軽量化なんかはものすごく効果的な設計上の対策です。

で、ここではその設計上コントロールするヨー慣性モーメントを素早く抑制する機能の話ではなく、運転方法によって必要なヨー慣性モーメントを発生させることを考えて行こうと思います。もう一歩踏み込んで言うと、発生したヨー慣性モーメントをどう利用しようか、ということを考えます。

直進状態から、フリクションバンドの許す帯域でハンドルを切ったとします。すると車体は旋回し始めます。
このとき、ヨー慣性モーメントがゼロの状態から、いきなり狙ったヨー慣性モーメントに達するわけではありません。物体の運動は必ず加速度にしたがって時間をかけて変化します。大きな力があれば狙ったヨー慣性モーメントまで短時間で達成できるし、小さな力しか出せなければ狙ったヨー慣性モーメントに達するまで時間がかかります。
フリクションバンドを広げるために減速して前荷重にし、前タイヤの摩擦を大きくすると、後タイヤから荷重が抜けて摩擦が小さくなります。この状態のまま前タイヤしか耐えられないような大きなヨー慣性モーメントが働けば、リアがブレイクしてスピンモーションが起こります。ですが、直進状態から狙ったヨー慣性モーメントを発生させるため初動を起こした瞬間は、ヨー慣性モーメントは小さいです。ですからこの瞬間、後タイヤの荷重が足りなくて摩擦が弱くなっていたとしても、スピンモーションは起こりません。リアがブレイクする前に前タイヤの大きな摩擦力を使って狙ったヨー慣性モーメントを発生させられれば、その段階で減速をやめてリアに荷重を移すことでスピンモーションを防ぐことができます。

とはいえ、車体は一トンの鉄の塊で、そう簡単に狙った慣性に達するわけがありません。強い前荷重によるヨー慣性モーメントの立ち上げを一定時間続けると、狙ったヨー慣性モーメントに達する前に後タイヤの摩擦力が不足してしまうこともあるでしょう。

さて、ちょっと話を戻します。
直進状態からヨー慣性モーメントを発生させようとした場合、フリクションバンドの許す範囲内で前タイヤの摩擦力を利用して、車体を旋回させます。たとえどんなに小さい変化でも、通常、直進状態からある程度のヨー慣性モーメントを発生させることは可能です。(非常識な加速力を持った後輪駆動車によって前タイヤが浮かび上がってる、なんてことがあれば話は別です。そういう極端なのは考慮しません)
では、あるヨー慣性モーメントに達して一定の割合で旋回している車体に、さらにヨー慣性モーメントを増やすことを考えてみます。このとき加速も減速もしていないとして、タイヤにかかっている力は進行方向に対して真横の力だけになります。この真横の力が、荷重操作ではなく自重により発生している摩擦力で耐えられる範囲内なら、一定の割合で旋回し続けることができます。
この状態から、加速も減速もせずにさらに少しだけハンドルを切る、ということは可能でしょうか。フリクションバンドは、旋回している向きより内側は狭くなり、外側は広くなっています。旋回している内側に切り込める範囲は小さくなり、旋回している外側に切り戻せる範囲は大きくなっています。このとき、旋回している内側に切り込める範囲がゼロでない限り、さらに切り足すことができます。
このとき減速して前に荷重すれば、さらに内側に切り込める範囲は大きくなります。ただし、後ろの荷重は抜けるので、摩擦が減りすぎるとスピンモーションが起こります。たとえば定常円旋回をしているとき、アクセルを踏み込んだ時よりも、アクセルを戻した時のほうが、スピンモーションが出やすいのは、こういうことが起こっているからです。

つまり、直進状態からアンダーもオーバーも出ないちょうどいいヨー慣性モーメントが発生するところまで舵を切れたら、それで落ち着いた状態からさらにハンドルを切り足してさらにヨー慣性モーメントを大きくできる、ということです。大きくなったヨー慣性モーメントが落ち着いたら、さらにそこからヨー慣性モーメントを足していけます。

ヨー慣性モーメントは、旋回中にあとからつけ足しできるんです。

コーナーにアプローチする手前のフルブレーキ中にスピンしない程度に少しだけハンドルを切る、という技術があります。このとき、ほんの少しだけヨー慣性モーメントを発生させておきます。このあと、ブレーキをリリースするにつれて前後の荷重バランスがそろって来ます。ヨー慣性モーメントを起こす初動ですから、前に荷重が残ってる状態を維持して前に集めた摩擦を利用し、できるだけ短時間に狙ったヨー慣性モーメントに近づけていきます。
車速が落ちれば、さらに摩擦の限界は高くなります。前荷重を作るために減速しているということは、どんどん車速が落ちているということです。
ヨー慣性モーメントの増加率がフリクションバンドの曲がる帯域の拡大におさまるように、荷重と舵角をコントロールしていくことになります。フリクションバンドの変化の様子は、直進状態から減速していったときの変化とだいたい同じです。左右非対称になっているだけで。
ヨー慣性モーメントは少しずつ足されていっているので、直進状態からいきなり狙ったヨー慣性モーメントを発生させようとしても無理なはずのフリクションバンドの帯域で、それ以上のヨー慣性モーメントに到達できます。

具体的な操作は、直進状態からハンドルまっすぐのまま減速して、いくぶん減速してハンドルが重くなったあたりで少しだけハンドルを切り始めて、ヨーが出始めたらブレーキを少しリリースしてハンドルを切り足して、十分車速が落ちていたら加減速のない状態にしてリア荷重を確保して同時にハンドル舵角は最大になる。このタイミングがクリッピングポイントと一致するように、アクション開始のタイミングを探していくと、最速ラインが見つかります。

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Posted at 2014/08/15 21:50:34

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