
注)
前回の続き
L社の陰謀に貶められ、N社に投獄されたジョー。
その後に待ち受けていたのは、あまりに過酷で激しすぎる拷問の日々であった。
ジョー
「俺は何も知らない・・・、嵌められたんだ・・・」
それ以外、口から出る言葉はない。
ジョーは無実だ・・・、嵌められたままこんなところで犬死にするわけにはいかない。
ジョーは鋼鉄の意志で拷問に耐え、朦朧としそうな意識を保ち続けた。
あれからどれくらいの時間が流れたのであろう・・・
檻の外から鞭の撓る音が聞こえた。
今日も拷問が始まる・・・。
そう思った刹那、外から檻の中に何かが投げ込まれた。
そしてその物体から、なぞの煙幕が上がる。
N社員
「何?ゴホッ、ゴホッ・・・!」
N社員がいきなり咳き込む。
これは、催涙ガスだ。
そしてその煙幕の中で、何かの打撃音とN社員のうめき声が聞こえた。
何が起こっているのか、よくわからない。
やがて何者かによりジョーを拘束していたロープが切られ、顔にガスマスクを当てられる。
ジョー
「誰だ?俺を殺しに来たのか?
・・・まさか助けに来てくれたなんてことないよな?」
???
「話は後よ、付いてきて」
聞き覚えのある女の声がした。
そのままN社の地下牢から抜け出し、言われるまま謎の女性について行くジョー。
???
「―ここまで来れば大丈夫ね」
ジョーと謎の女性はガスマスクを外した。
ジョー
「君は・・・!」
そこにいたのは、ジョーを嵌めた張本人であるレクサスのお姉さんだった!
・・・そしてその傍には、一台の車が佇んでいた。
それはレクサスの新型スポーツセダン、IS-Fだった!
ジョー
「驚いたよ、こんな車まで用意されていたのか」
お姉さん
「さあ、早く乗って、ここを抜け出すのよ!」
乗り込んでプッシュスタートボタンを押す。
炸裂するように、ヤマハと共同開発という5リッターV8が目覚めた。
今回は一般道から高速まで、かなりの長時間運転させてもらいました。
ATモードは、メーター内の表示を確認する限りでは8速ATの変速が次々と押し寄せる。
公道での瞬発力では国産280psクラスのスポーツ車の方が上かもしれませんが、メーターで判断する限りでは速度の伸びが違う。
どの速度域からも踏み込んだだけトルクが押し寄せ、猛烈な加速が実感できます。
これも最近のハイパワー車でよく感じる、実際は速いんだろうけど速く感じないというあの感覚です。
そしてある回転域を境にカムが切り替わり、エンジン音が変化する。
S2000のV-TEC、あるいはFDのセカンダリータービンが開く際の感覚に似てますね。
足も一般的には固めの乗り心地だとは思いますが、ジョー的には乗り心地がよいと感じるレベルでとてもいい足です。
ブレーキも強靭なタッチで文句ないです。
ただしハンドルはかなりの重ステで、直後に乗ったRX-7のハンドルがものすごく軽いと感じたほど。
ハンドルが取られにくいというメリットはあるものの、これで峠を攻めるのは多分しんどいですね。
それでも街中をゆっくり流す分には、普通のファミリーカーと変わりません。
やはりアクセルを踏み込まなければ、その真価は味わえないですね。
速くてなかなか楽しめる、いい意味でトヨタ車らしからぬいい車だと思いました。
外観や納期が二年ということを抜きにしたら、はっきり言って文句なしです。
・・・でも、これも何かが足りないと感じました。
それは恐らく、以前V36クーペに試乗したときに感じたものと同じ物足りなさだと思います。
やっぱりジョーにとっての足りない一番の要素は「屋根が開かない」ということなんですが、それはもう今までも散々言ってきて聞き飽きたと思いますので、今回はあえてそれを抜きにして語ります。
では、何が足りなく感じたのか?
今回の試乗で、ようやくその正体がつかめた気がします。
・・・それは「危険な香り」に他ならないでしょう!
下手に触ると火傷しそうに漂う緊張感、そして車と格闘してねじ伏せるような感覚。
近年のハイパワー車は進化が著しいですが、それと引き換えにその緊張感が希薄になってるのかもしれないですね・・・
(まあ、そんな車に毎日乗るというのは、それはそれでしんどく感じるでしょうけどw)
ジョー
「・・・つまりは薔薇の美しさは、
そのトゲまで含めてはじめて完成するものだということだじょー」
お姉さん
「え?」
ジョー
「いや、こっちの話さ、でも君もそんな女性だったんだね・・・、
ますます夢中になれそうだよ」
お姉さん
「うふふ、私ってそんなに刺々しい女かしら?」
ジョー
「とぼけても無駄さ・・・、
N社の人間は僕がL社の女エージェントと裏で繋がっていると誤解していた、
その言葉から君の正体にも想像が及んだよ。
・・・そのおかげで僕もあんな目に合わされた、・・・これを見ろ!」
ジョーは上着を脱いだ。
お姉さんは息を呑んだ。
ジョーの丸太のように太い上腕二頭筋、そして分厚い胸板と六つに割れた腹筋には、N社の拷問によるロープの縛り跡、そして鞭と蝋燭による痛々しい痣が刻み付けられていた。
ジョー
「これを目の当たりにしても、まだとぼけるつもりか!」
お姉さん
「そう・・・、気付いてしまったのね、・・・なら仕方ないわね」
お姉さんは隠し持っていた銃を、ジョーのこめかみに突きつけた。
ジョー
「やはり僕を殺すのか?・・・
今はやめておけ、今時速何キロ出ていると思っている?
こんな状況で運転手がいきなり死んだら、
車の姿勢を立て直せるかどうか・・・」
お姉さん
「・・・」
ジョー
「それ以前に・・・、
その震える指で惚れた男に向けた拳銃の引き金を引けるのか?」
しばしの沈黙、・・・やがてお姉さんは涙を流し、銃を下ろした。
お姉さん
「許して・・・、私、あなたの為なら何でもするわ」
ジョー
「わかった・・・、じゃあとりあえず・・・、
お、思い切り僕をぶってくれ、激しく・・・、情熱的に・・・、ハァハァ・・・」
お姉さん
「・・・え!?」
ジョー
「あ・・・、い、いや、
・・・舐めてくれ、体中に刻まれた僕のあざを・・・、
下の方も同じような痣でいっぱいなんだ」
お姉さんの濡れた瞳に、ジョーが写りこむ。
お姉さん
「わかったわ、ジョーさん」
ジョー
「違う!・・・わかったニャン♪ご主人様と言うんだ!」
お姉さん
「わ・・・、わかったニャン、ご主人様」
お姉さんの手が、ジョーのベルトをゆっくり外す。
そしてジーンズのファスナーが下ろされようとするそのときに、お姉さんの手が止まった。
ジョー
「・・・どうした?」
数ヶ月間拷問を受けていた間、一度も風呂に入っていなかったことを思い出し背筋が冷たくなった。
・・・が、どうやら理由は別のようだ。
お姉さん
「今はそれどころじゃないみたい・・・、
どうやらこのまま黙って見逃してくれるほど甘くなかったようね、
奴等が追ってくるわ!だんだん追いついてくる・・・!!」
ジョー
「ふっ、まさか・・・、
この5リッターV8DOHC32バルブ(423ps/6600rpm、51.5kgm/5200rpm)
のスペックを誇るIS-Fに、追いつける車があるわけないだろう」
お姉さん
「い、いえ、どんどん差が縮まってるわ・・・!」
ジョー
「・・・何?」
ミラーに写ったそれを見た瞬間、ジョーの顔は驚愕の表情に凍りついた。
・・・それはストレートでも、IS-Fに余裕で追いついてこられる車。
今はっきりと見えた・・・、ミラーに写った機影。
それは・・・
ジョー
「あ、あれは・・・!ま、まさか・・・」
お姉さん
「そ、そんな・・・、信じられないわ!!」
蘇る伝説が、二人の頭をよぎった。
それは『新次元マルチパフォーマンススーパーカー』と銘打たれた、N社が誇る最強の最新鋭機。
どこでも、誰でも、どんなときでも、時速300㎞以上でも助手席の人間と会話ができるというあの車だ!
ジョー
「す、既に完成していたのか・・・!!」
お姉さん
「こ、これはマズイわ・・・」
ジョー
「ふっ・・・、安心しろ、このまま逃げ切ってやるぜ!」
ジョーはアクセルを床まで踏み込んだ。
V8、5リッターが咆哮を上げた。
みるみる速度計の針が上昇する。
300㎞まで刻まれた速度計を見て、薄ら笑いを浮かべる。
これならいける・・・、そう思ったときだった。
ジョー
「何!?」
速度計、そして回転計の針が止まった。
それ以上アクセルを踏み込んでも、回転数が上がらない!
ジョー
「く・・・、くそっ、リミッターに達していたか!
体感上はもっと遅く感じたので、そこまで速度が出ていたとは気付かなかった!!
でも余裕だよ・・・、これでも恐怖を感じない」
お姉さん
「なに解説風の口調になってるのよ!追いつかれるわ!!」
このままでは追跡車に追いつかれてしまう!
一難去ったところにまた一難。
果たしてジョーの運命やいかに!?
続・・・・
けたいけど、どうなるかわからない。
Posted at 2008/02/04 19:15:53 | |
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