
朝。カーテンを開けたら
どんよりとした曇り空だった。
夕べ上手く睡眠を取れなかった
だるい頭を熱めのシャワーで起こす。
今日は山のイベントの日。
見ているだけで幸せな気分になれる
旧い車達が集まってくる。
そろそろ旬な秋の味覚を求めに山をいくつも越えるのも魅力的。
ジャケットを掴んで外へ出ると予想していたよりも少し肌寒い。
帽子を深く被り手袋をはめながら、まだ何処へ行こうか心は迷っている。
キーを回しルーフスイッチに指をかける。
ルーフが格納されるまでのわずかな時間は儀式のようだ。
警告灯が消えると2シーターの車はオープンカーへと変わる。
見慣れたいつもの空がまるで私一人だけのモノになったような
錯覚に興奮しながらアクセルを優しく踏む。
「さぁ、出かけよう」
待ち合わせの時間までは充分な余裕がある。
いつものルートを変えて川沿いの道を選ぶ。
ここはもう少し秋の気配が濃くなると渋滞するのだが
シーズン前の早朝は車の姿もまばらでゆっくりと景色を愉しみながら逝く。
最後の信号を曲がれば山の入り口。
ここからは車との会話の時間。シフトをひとつおとして姿勢を正す。
待ち合わせ場所に数分遅れて
パールのコペンが現れる。
私がほんの数キロをゆっくりと走った時間で山の遥か奥から戻ってきたのだ。
おそらく相当に愉しんだに違いない。
今日は大廻りルートを走る事にした。
上手くいけば旧い車達のツーリングにも出会えるかもしれない。
空は相変わらず雲が低く垂れ込めどんよりとしているけれど
山の冷えた空気を気持ちよく吸い込むのを喜んでいるかのように車は快適に走る。
杉木立の中のカーブを美しいラインで走るコペンの後姿を見ながら
人も車もまだどれだけの性能を秘めているのかと考える。
初めて入った峠は秋の気配で一杯だった。
狭い木立の間に低いターボの音を響かせながら高く高く上っていくと
山頂で一気に視界が開ける。
道路に敷き詰められた枯葉。桜や紅葉は風の通り道の先だけ色づき始めている。
濃い緑の直線的な杉と淡い緑の柔らかなかえで。
ここが綾錦の色に染まる頃、もう一度来ようと思う。
山を延々と下っていく。
途中に何箇所か小さな山里が現れる。
車一台がやっと通れるような細い道。茅葺家のすぐ背後まで迫る山。
小屋には隙間無く綺麗に詰まれたマキ。小さな畑の隅にはコスモスが揺れている。
きっと手を入れたら渋れるほどの冷たさだろう
澄んだ水が流れる小川には山へ入るための小さな丸太橋。
収穫の済んだ田には二番穂の緑。わらの野焼きの匂い。
人を拒むような自然だけが息づいていた世界から
人が生きる世界へ戻ったような気がしてほっとため息をつく。
ゆっくりと村落を抜け再びの山を愉しみながら朝の場所へ戻ってきた。
すれ違ったオープンコペンに手を振り。
失踪するバイクの排気音を聞き。
良い車だねと言われる事3回。
今日の走行距離150km。
秋の気配とコペンを愉しんだ一日。
Posted at 2007/10/14 20:51:36 | |
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コペンと車ライフ♪07 | 日記