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師匠の所に行ってから２週間
ドライブが楽しくなっていた。

　相変わらず美少女は現れたが物言いが優しくなっていた。
「ブレーキ上手になったわね、」
「フロントに荷重かけてここから徐々にハンドル切って」
「そうそう、うまいじゃない。」
「コーナー出口に向けて徐々にアクセルを開けて加速♡」
こんな感じで優しく車の状態をおしえてくれる
何だか自分の運転がうまくなったようだった。

　ある天気のいい休日、ワインディングをいつもの様にドライブしていた。
早朝ということもあって走っている車は殆どいなかった。

　いい気分でチョット速めの速度で走っていると
後ろから低い排気音を響かせながら近づいてくる車が一台いた。
コーナーを２，３抜けると後ろにピッタリついていた。
明らかに速そうだったので長めの直線で道を譲った。

　抜かれる瞬間、相手を見ると古めのポルシェであった。
ポルシェの後ろ姿を眺めているとお淑やかな美人が現れ
「付いてきて。お話がしたいの」
とお誘いを受けた気がした。

　チョット速度は速かったがいつも走っているワインディングだし
行けると思いアクセルを踏み込んだ。

　すると慌てたようにゼロワンが声を発した。
「チョット、急にアクセルなんか踏んで付いて行けるわけないじゃない」
「そんなスピード出しちゃダメー。」
「次のコーナー曲がれないよー」

　大丈夫、前のポルシェも曲がってるし行けるよ

「だから、違うんだってそんなスピードじゃ曲がれないよー」
「ブレーキもっと踏んでー、まだハンドル早いよ」
「・・・・。」

　左カーブを勢い良く入ってい行ったが
ハンドルを回してもいつもの様にゼロワンは曲がらなかった。

　急にハンドルが軽くなり大きく反対車線にはみ出した。
対向車がいなく何とかぶつからなくて済んだ。

　その後はよたよたとコーナーを抜けていくと
前を走っていたポルシェが路肩の空きスペースに止まっていた。

つづく

１カ月ほど前に譲り受けたゼロワンだが
乗っててあまりにも楽しくなかったので返そうと師匠の所に持って行ったのだ。

師匠に、「このゼロワン扱いづらくて乗ってて楽しくないです」と
訴えて、ゼロワンを返そうとすると。

師匠は、頭を掻きながら
「そうか？よく走るし曲がるし、楽しい車なんだけどな」
「キミの走り方も見たいし、これからドライブに行こうか」

僕と師匠はゼロワンに乗り込み１０分ほど街中を走った。

師匠が徐ろに口を開き
「ゼロワンの声、聞こえてる？」

僕はその質問にはっとした。
「ゼロワンの声ですか？」
「聞こえるというか、駄目だしされてます。」
そう答えると

師匠は嬉しそうに言った
「駄目だしか、結構聞こえてるみたいだね。」

工場に戻った師匠は古いノートを見ながらゼロワンをいじり始めた。
３０分後、
「できたよ、だいぶ素直になったんじゃないかな」
こう言ってゼロワンの鍵を渡してくれた。

こうして、ゼロワンは魔法が掛かったように性格が良くなった。
帰りの道のりは見違えるほど乗りやすくなっていた。

つづく