前回の考察で挙げた鈴木利男氏の速さについて書いていきます。
画像や動画に不都合がある場合、速やかに差し替えるか削除させていただきますのでご一報ください。
早速ですが、最初に鈴木氏が運転するGT-Rがニュルブルクリンクの北コースでどのような動きをしていたのか。
動画をご覧ください。
ものの見事にハイグリップタイヤ(自分的には普通のタイヤ)を使用しているようです。
Sタイヤではありませんね。
常識的に考えてみると、市販車クラスでどの程度の走行性能があるかをテストしていると思うので、
ハイグリップタイヤを使用しても、Sタイヤを使用するはずがないことが窺えます。
それだけSタイヤの力というのは絶大なのでしょう。
ここで少し脱線しますが、Sタイヤと普通のタイヤの違いは何だと思いますか?
Sタイヤは耐磨耗性や排水性を犠牲にして、よりグリップ力を高めているかどうかですね。
普通のタイヤでは耐摩耗性はともかく、排水性までは犠牲にできませんね。
この違いは言い換えると、タイヤの限界が違うということだと思います。
グリップするということは滑りづらいということです。
滑りづらいということは大きなアドバンテージですね。
ですが、滑りづらい=曲がりづらいとも考えることもできます。
逆に、曲がろうとしてタイヤを滑らせてしまうとフロントの向きは変わるでしょうが、スピードは上がりません。
話を戻しまして、最初の動画を思い返してみてください。
鈴木氏がコーナーを曲がる際にスキール音がしていると思います。
タイヤのグリップの限界を超えて曲がっているのでスキール音が鳴っているのでしょう。
通常、タイヤの限界を超えると、その分の力がムダになります。
しかし、
もしそれが限界の中で鳴っている音だとしたら?
と考えるとどうなるでしょう?
乱暴な仮説になりますが、このような結論になりました。
一言で言うと、
「タイヤは滑らせたほうがグリップする(少なくとも普通のタイヤに限る)」
ということです。
先に、タイヤは摩擦の力によってグリップしていることはご存知であることを前提として話を進めます。
この摩擦には
「動摩擦」と
「静摩擦」の2種類があります。
一般的には静摩擦が一番摩擦力が大きい、つまり滑らせないほうがグリップすると言われています。
しかし私は言いたい。
少なくとも普通のタイヤに関しては、これは真っ赤なウソである
と。
さすがにウソは言い過ぎました。ごめんなさい……
ですが、少なくとも現在の最適解ではないと思います。
それでは、なぜそう思うかを書いていきます。
駆動方式はAWDで、タイヤにかかる荷重は全て同じとした条件での例を書きますね。
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例題:車が坂の下に落ちてしまいました。
そのままにはしておけないので、自分の車で引き上げるためにロープをかけました。
引き上げている途中に、落下した車の足場が崩れ、自分の車が後ろに下がっていきます。
ブレーキを目一杯踏んでも止まりません。
このままでは自分も落ちてしまいます。
この場合、下の3つの内どの方法が停止、もしくは前進できる可能性が高いでしょう?
1.アクセルをタイヤが滑らないように踏む
2.アクセルを踏んでタイヤをある程度空転させる
3.アクセルを目一杯踏む
例題2:軽自動車があります。4輪ともブレーキがかかっており、タイヤがロックしている状態です。
この車を動かすには車をどの方向から動かせばより少ない力で動かせるでしょう?
1.左右どちらか
2.前または後ろ
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色々と突っ込みどころ満載ですが、考察していきます。
例題1の考察:
ここで最も重要なことは、
滑っているタイヤは最も大きい摩擦係数である静摩擦係数を出せないということです。
この場合、滑り出した瞬間から動摩擦係数となってしまうので、坂道である限り止まらなくなります。
本来であれば、ブレーキを踏んで停止している状態はタイヤのグリップが最大限まで発揮されているということになります。
それでも重さに負けて車体が後ろに下がるということは、静摩擦<車の重量となっているということです。
この重量と後ろに下がる速度に対抗するためには前へ進む必要がありますね。
最大限とされているグリップ以上のグリップを出さなければならないんですから。
しかし単にタイヤを転がすだけでは、静摩擦と(ほぼ?)同じだけの摩擦しか生み出すことはできないと考えられます。
そこでホイールスピンをさせるわけです。
「ある程度」タイヤをわざと空転させることで、車は前に進もうとします。
実際には進んでいなくても、です。
(「ある程度」というのがキモです。空転の回数が多すぎると、その分ロスになるだけです)
この場合、スピンさせてから時間が経つほど前に進む力(作用)は強くなっていきます。
以上のことから、例題1の答えは2だと私は思います。
例題2の考察:
はじめに、タイヤには
「縦のグリップ」と
「横のグリップ」があることをご存知でしょうか?
ご自身の愛車のタイヤの形状を思い出してみてください。普通の形状のタイヤが装着されていると思います。
そのタイヤの接地面が縦長に作られていることは、その形状から見て想像に難くないと思われます。
発進・減速~停止の際は縦のグリップを、曲がる時は横のグリップを使っていることはよく知られているお話です。
普通のタイヤの接地面は縦長になるよう作られているので、横のグリップは縦のグリップより設置面積が少ないといえるでしょう。
ということは、横のグリップは縦のグリップよりグリップしないともいえます。
よって、例題2の答えは1だと思います。
これを踏まえた上で、もう一度上の例題の考察と動画を見直してください。
いかがでしょうか?
私が言いたいことは、
横のグリップ<縦のグリップということです。
その上、
縦のグリップの限界を超えるグリップを引き出すことができるということです。
カーブを曲がるときに横のグリップを積極的に使うより、縦のグリップを積極的に使うとどうなるか?
限界を超えた縦のグリップを引き出せばどうなるか?
答えは想像に難くないでしょう。
次にタイヤの「もしかしたら」の使い道を書いていきます。
この考察は昔(?)から議論されている「グリップ・ドリフト論争」と重なる所があるのではないでしょうか。
「グリップとドリフトはどちらが速いのか?」を考えてみると、通常であればほとんどの方が
「グリップが速い」と答えるでしょう。
それはごもっともです。
ですがそれは本当に正しいでしょうか?本当に?
では、この一般的な常識を見直してみましょう。
(サーキットや特定の道路を走っている方にとってこの答えは半分正解で半分不正解のようなものだと思います)
なぜグリップが速いのかを考えると、
・トラクションを無駄にしないから
・タイヤがドリフトと比べて減りづらいから
・ドリフトと比べ、入口で遅くても中間~出口が速いから
などの理由があると思います。
ここから通常外の使い方に戻ります。
通常であれば、タイヤの
「横の」限界を超えているからアンダーやオーバーが出ます。
ではもしも、タイヤの限界を超えたグリップ力を引き出せるとしたら?
もっと速く曲がれますね。
もしも、加速と減速におけるアンダー・オーバーの関係が逆転するとしたら?
アクセルを踏めば踏むほど曲がりますね。
前回のタグでつけた”前輪駆動の可能性”というのがこれにあたります。
後輪駆動の場合はどうなるかについては知りませんが、ここまで書いてしまった以上、大体の想像はつく方も多いのではないでしょうか。
これらの答えこそが鈴木利男氏とGT-Rの速さの秘密ではないかと考えている今日この頃でした。
いかがでしたか?
私で考えることができた要因としてはまだいくつかありますが、(知恵熱の都合上)ここまでです。
最後に、この文章を読んでいる貴方が考えていた速さとは違うかもしれません。
タイヤについて考えていたことも違うかもしれません。
ですが、今一度、車の常識を疑ってみるというのも私は楽しいと思いますよ。
偉そうに色々書いてしまいましたが、これで今回は終わりです。
※追記:投稿日時を2014/8/31へ訂正しました。