2014年04月27日
新しい技術・・・その2 ATミッション
ATミッションについて書いてみます。
私が免許をとった時代には勿論すでにAT車は世にありました。
輸入車は当然ですが、国産車でもいわゆる高級車と中心に徐々に
拡がりつつある、という時代でした。
GMの2速ATパワーグライドを真似たトヨグライドをなんと
高級車には程遠いパブリカに搭載して、AT普及の本気度を
見せたりしていた。
このトヨグライド搭載のバブリカは親戚が所有しており
当時、多少の小金をためて輸入車たるVWビートルを買った
ばかりのうちの親父がそのオートマチックミッションを
しきりに気にしていたのを覚えています。
当時はだれもAT、あるいは『オートマ』とは言わずに
『ノークラ』と呼んでいました。
当然、ノークラッチペダルのことです。
この頃には本家のGMはパワーグライドからただのフリュードカップリング
(流体継手)をトルク増幅機構を備えたトルクコンバーターに替え、
さらにキックダウンも装備したターボハイドラマチックに移行していました。
免許を取る直前の1977年にバートレイノルズ主演の
『Smoky and the Bandit』(邦題トランザム7000)で黒のトランザムが
スタートからアクセルを床まで踏込み猛烈なホイルスピンで白煙上げながら
ダッシュしたりアクセルターンしたりするのを見ながら繊細さとは真逆の
魅力を大トルクの車とATとの組合せに見いだして涎を垂らしていいたのを
思い出します。
オートマチック(クラッチレス)の主流は遊星ギヤを使って主に油圧の
アクチュエータで変速操作を行い、エンジン側からの入力にはトルクコンバーター
を利用するタイプ。
80年台には平行軸ギヤ式のものをホンダがホンダマチックとして搭載して
いたが初期のホンダマチックはオートマチックといえるかどうか、私は
少し怪しいと思っている。
トルクコンバーターによる動力伝達なのでノークラッチペダルなのは確か
だがLレンジで発進し、ひとつ上の☆(スター)レンジに『手動変速』する
構造になっている。 Lと☆の2つの変速比を持っていて、それを『手動変速』
させ、2つの変速比しか持たない不利はトルコンのストールトルク比を
大きくとることでカバーするという、ある種合理的な発想のトランスミッション
だった。 これは私も友人の親が買った初代アコードでずいぶんと
乗り倒したが横着をして☆レンジでも発進はでき、それをもってホンダは
『無段変速』と今のCVTのようなキャッチフレーズを謳っていたけれど所詮は
MTの4速相当程度のギヤ比をトルコンのストールトルクでカバーしている
だけだったので便利で楽ちんではあっても欲しいとは思わなかったです。
でも、ホンダは当時AT比率は他メーカーに比べて格段に高かったのでCM
を含めたイメージ戦略がうまかったのでしょう。
自動変速機構を持たない2速のトルコン付きミッションなら実はコストも
安いしね。
この頃、面白かったのはMT車でも5速が増えては来ましたがまだ普及車
は4MTが多かった時代に副変速機でオーバードライブ比をカバーして
実質5速とする車がありました。
シフトレバーは4速のHパターンなのですが4速の時だけダッシュボード
にあるプルスイッチを引くと副変速機が高速側に切り替わって実質5速目の
ギヤ比が使える車があった記憶があります。
副変速機を全段で使えれば4*2で8速になりますが操作を含めてあまり
意味もないし、この車では4速時のみトランスファーのHが使えたはずです。
副変速機を積むほど高価だったとも思えないのでもしかしたら同軸上に配置
した2種類のドリブンギヤを軸方向のスライドさせる程度の機構だったのかも
しれません。 すいません、記憶が曖昧で。
この形式は形を替えて初代ミラージュがスーパーシフトと称してトランスファー
付きの4速で合計8速を謳っていましたが結局、このミラージュで全日本ラリー
に出場していた山内伸也選手が2本のシフトレバーを同時操作する必殺技を
編み出した程度でその後は見なくなりました。
その後はCVTが登場してきます。
日本初登場はたしかスバルのジャスティ。
オランダのヴァンドールネからスチールベルトを買ってきて、動力伝達は
トルコンではなく電磁クラッチ。
私は乗ったことがないのですが、あちこちで当時を知る人に聞くと
(スバルのDの年配メカニックなどは結構この頃の話を知っている方がいます。)
変速機自体の問題よりもやはり電磁クラッチの制御が一番大変で、主にここに
不満、不評のほとんどが集まったようです。 電磁石で鉄粉を固めて動力伝達
をする、というのが今でも私にはビックリです。
前後した時期だったかとおもうがいすずがNAVI-5という独特のミッションを
開発してリリースしました。
基本的なミッションとクラッチはマニュアルと同じもの。 それを電子制御の
油圧アクチュエータでクラッチの断続と変速操作を行うもの。
MT車風のシフトパターンで各ギヤ固定と1~3速、あるいは1~5速の自動変速
を選択していました。
考え方で言うと、自動変速機、ではなく変速機を自動ロボットが操作する、
というコンセプトで開発したようなシステムでした。
一度だけ、いすゞに就職した友人が買ったアスカで乗りましたが思ったほどの
違和感はなく、空いた道路を気ままに走るにはなかなかいい感じでした。
ただ、マニュアル操作した際の実際の変速までのタイムラグや半クラッチ領域
の感触など慣れや、NAVI-5用の運転をマスターする必要がありそうな印象も
ありました。 いすゞの乗用車撤退の流れもあり2世代で乗用車からは消えましたが
バス、トラックに特化してNAVI-6に進化してさらに現在でもその進化形が
使われているはずです。
時代的にはこのころまで、オーソドックスなATミッションは普及型3速、
高級車/高価格車は4速というのが基本でしたが、このあたりから多段化の
流れが出てきました。 今では5速は当たり前。
6速/7速というのも多く、今のところの最多段は確か8速のZF製だったか
と思います。 スペース的にも9速が限界と聞いたことがありますが
最初に限界値に到達するのはどこのメーカーになるのでしょうか?
CVTもいつの間にかかなりの普及率になっています。
ジャスティ以降、ほぼ姿を見なくなったCVTが再び市場に現れたのは
15年くらい前でしたか、プリメーラだったように記憶していましたが
違ってたでしょうか? もともとの無段変速に加えてプリセットされた
6ステップのプーリー比をマニュアル操作できるようにしたM6という
名前で市場に出てきた記憶があります。
これは一度、VWがゴルフ4でGTXグレードを日本に投入する前の市場調査
で10台以上の輸入/国産入り混ぜての試乗で乗ったことがあります。
今でいうラバーバンド制御が通常のATに比べるとやはり多少目立つものの
それほど大きな違和感のない印象でしたが、肝心のM6機構をつかっても
さしてスポーティに走れないという、それなら洗練された無段変速を
ねらったほうがいいじゃん、という印象をもった記憶があります。
それから年月がたちいつの間にか小排気量/小トルクの車の自動変速は
かなりの比率でCVTになっていました。
どうやらCVTは部品点数や多段化に伴うコストアップを避けられることが
原因なのでしょうか。
基本的な伝達効率が、特に極低速と高速時に高くないことや、
レシオカバレッジと称するカバーできる変速比のレンジがあまり広くいない
といった欠点をカバーするために副変速機を追加してレシオカバレッジを
広げ、ついでにキックダウンまで可能にしたり、あるいはスチールベルトを
チェーンに変えてプーリーが小径になった場合でもキンクしないように
工夫したりして改良を重ねています。
私は自分の車はBRGでチェーンドライブにした大容量CVTに乗っていて
職場ではたまに現行ノートの副変速機付きCVTに乗ることもありますので
そこでの印象の違いなどもあとで書きます。
マニュアルミッションも今では自動変速機構を備えたものが増えています。
シングルクラッチでアクチュエータで変速とクラッチ断続を制御する昔から
あるタイプの他にクラッチを2つ備えギヤセットを奇数段用と偶数段用の
2列持ち、それギヤを交互にドライブシャフトと綱ぎかえて変速するタイプ
があり、現在はダブルクラッチ式が変速ラグ0秒のシフトを実現しています。
初期の初期は日産がチェリーで搭載したことのあるスポーツマチック、
同時期にポルシェが924で搭載したスポルトマチック。 要するに通常の
変速機とクラッチを油圧なりのアクチュエータで操作し、その制御に
コンピュータを使うというもの。
フェラーリがモンディアル8でヴァレオマチックという名で搭載し、
そこから熟成を経てF1マチックとして355からデビューしてからは知る人も
多いでしょう。 マセラティのカンビオコルサもランボルギーニのE-ギヤも
みんなこの構造。 BMWが始めたSMGもそうでした。
それが、ルマン用にポルシェがツインクラッチの変速機のPDKを出してから
ツインクラッチを持つ2軸式のトランスミッションの変速に断続のない
構造が注目され、開発が進みいつのまにかシングルクラッチの2ペダルMTを
凌駕してしまいました。
VWのDSGがアウディのSトロニックにも使われ、F1マチックも458からデュアルクラッチ
に変わり、日本でもR35GTRのDCT、エボXのSST、など採用例が増えている。
意外なところではそのメカニズムの黎明期直前くらいにはF1のロータスの
テクニカルパートナーだった小松製作所がデュアルクラッチ式の変速ラグ”0”の
8速フルオートマ(遊星ギヤ式ではなく、当時はこうした表記だった)で
試作し実戦投入直前まで言っているし、その当時の技術解説でも理論上変速の
タイムラグが0にできることが最大のメリットとしていた。
なんて書き続けたらいつの間にかいい加減長いものになってしまって
肝心の、使ってどうなの、ってことが書けなくなりました。
一旦仕切りなおして ATその2として次のエントリーにします。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2014/04/27 13:44:13
今、あなたにおすすめ