
エンジンのBMWを知る人間が、それでも納得できるEV
1. 乗り換え背景と第一印象
G20型320i M Sportからの乗り換え。
長年、自動車のベンチマーク業務に携わってきた立場として、EVに対しては「性能は高いが運転の楽しさは別物」という先入観を持っていた。しかしBMW iX2は、その固定観念を良い意味で裏切る一台である。
走り出してすぐに感じるのは、基本性能の高さと一体感のある走行フィール。EV特有の静粛性と即応性に加え、BMWらしい車両運動性能の作り込みが随所に感じられる。
2. 走行性能・シャシー評価
BMW iX2は、単なる「X2のEV版」ではなく、EVとしての重量配分と剛性設計を前提に再構築された車という印象が強い。
• 低重心化されたバッテリー配置によるロールの抑制
• 電動パワートレインのレスポンスを活かした立ち上がりの正確さ
• ステアリング初期応答の自然さと、切り増し時の不安感の少なさ
特に印象的なのは、EVでありながら「速度域に応じた操舵感の変化」がきちんと作られている点。
これはBMWが従来から重視してきたシャシーチューニング思想が、EVでも継承されている証拠だと感じる。
3. 乗り心地と静粛性
乗り心地はしなやかで、入力を丸めながらも曖昧さがない。
M Sportでありながら、不必要に硬くならず、日常域での快適性をしっかり確保している。
• 路面の細かい入力を吸収する一次側のしなやかさ
• 高速域でのボディの落ち着き
• EVならではの低騒音環境による上質感
「EVは速いが疲れる」という印象を持つ人ほど、この完成度には驚くはず。
4. パワートレイン(EVとしての完成度)
内燃機関時代のBMWが持っていた「回して楽しいエンジン」は存在しない。
しかしiX2では、その代わりに
• アクセル操作と車速変化のリニアさ
• 回生ブレーキ制御の自然さ
• ドライバーの意思に対する即応性
といった、運転操作と挙動の一致感が強く感じられる。
結果として、
「エンジンが無いのに、運転が楽しい」
というBMWらしい価値が成立している。
5. 装備・インテリア評価
価格帯を考えると、装備内容は非常に充実している。
• 最新世代のBMW Operating System
• ドライバーアシスト・安全装備の網羅性
• デジタルUXの完成度
一方で、内装の低い位置(ドア下部やセンターコンソール下部)に使われている樹脂素材については、もう一段上質なマテリアルを期待したいところ。
走行性能やデジタル体験が優れているだけに、触覚・視覚的な質感で惜しさが残る。
6. BMW App・デジタル体験
BMW Appを中心とした車両とのコミュニケーションは非常に完成度が高い。
• 車両状態の把握
• 充電管理
• リモート操作
• コンテンツ連携
単なる「操作ツール」ではなく、車との関係性を継続させるUXとして機能している点は評価が高い。
EVとの相性も良く、「所有体験」を拡張している。
7. 総合評価
BMW iX2は、
• EVとしての合理性
• BMWらしい運転の楽しさ
• 現代的なデジタル体験
を高い次元でバランスさせた一台。
「エンジンのBMW」を知る人間が、違和感なく、むしろ満足して乗れるEV」
という点に、この車の本質的な価値がある。
ベンチマーク目線で見ても、
「EV時代のBMWらしさとは何か」
に対する一つの完成形を示しているモデルだと評価できる