新潟県糸魚川市。日本海沿いを走る国道8号線。
「天険」と呼ばれる絶壁が連なる親不知と呼ばれる区間。
去年もほぼ同じ時期にここを訪れたのだが
その時も偶然、雪が小康状態になっていて路面は乾いていたのだが
路肩にはちゃんと雪が積もっていて遊歩道は完璧な雪道であった。
それに比べ今年は雪が全くない。まあ、こちらとしてそのほうが良いのだが。
今回の目的は旧北陸本線の廃トンネル。
そして海岸沿いの親不知第一世代道路。
この時期はもう入口は雪で埋まってしまっていると思っていたがこの暖冬でどうやら雪が無い様だ。
それならばいかざるをえない・・・。
熊錫のついたステッキを手に取り、
いつもの冒険セットが入ったリュックを背負って靴にも滑り止め金具の付いたゴムバンドを装着する。
さすが冬である。邪魔な草や木が少ないのでとても進みやすい。
ちゃんと遊歩道として整備されている・・・
波の音、国道から聞こえるロックシェードを走り抜ける車の音、滑り止めの金具が付いた自分の足音。
それと・・・何かよくわからない音。バリバリバリ・・・木が倒れるような音?なんだろう・・・
ゆっくりと階段を下りていくと、崖の下から海が見える、海岸だ。
気候は穏やかなのだが、波はかなり荒っぽい様でまさに伝え聞く親不知と言われる由縁だ。
半分くらい来た。崖を見上げてみる。
ガードレールが見える・・・国道8号であろう。そこから水が流れ落ちて滝のようになっている。
本当に険しい場所だと再認識させられる。道を作るのもどれだけ大変だったのだろうか・・・。
なにやら人口建造物が見えてきた。
ついにきたか・・・かなり前から一度見てみたかった、あの廃隧道・・・
旧北陸線の廃隧道・・・
崖を隔てて向こう側にあり、橋もなくなっているため近くには行けない。
苔むしたレンガがみえるだけでたまらないものである。
そして、後ろを振り返ると、こちらにも・・・・
見た瞬間ちょっと抑え込まれるプレッシャーを感じるレンガの廃隧道。
落ち着いてながめてみると、廃隧道のわりにはきれいなのがわかる。
やはり整備されいるようである。
でも残念ながら入れない様子。まあ、入るのはさすがに・・・
汽車が通ったからだろうか、ところどころ白い部分があるが・・・白化現象かもしれない。
さあここで廃隧道をみながらコーヒータイム。
プレボス(微糖)でないのが残念だが仕方あるまい・・・
廃隧道に挟まれてエレガントな時間を過ごす。
休憩を終えてここからさらに階段を降りていく。
ガチャコンガチャコンと靴に付けてある滑り止めが音を立てる。
風が強く、波の音も近い・・・が
休憩中にもやはりバリバリと謎の音が聞こえてきてすごく気になっていた。
階段が終わり、海岸に降り立つ。
ここがおそらく、親不知第一世代道路なのだろう。
もちろん古代の道路でありいまでこそ波に削られてまったくもって岸壁なわけだが、
現役時代も人が一人通るのがやっとの道だったのかもしれない。
そして謎の音の正体がここで判明した。
波が引くときに海岸の石が擦れ合い、バリバリバリとまるで倒木のような音を出していたのだ。
謎の音が無事解明されたためか少し安心した。
石に腰かけ、のんびりと海と崖を見つめる。
波が強く風はあるが、そこまで寒いわけではない・・・
1月でこの気候はやはり異常なのだろう。
少しばかり第一世代の痕跡がないかと海岸を詮索してみたが
もう削られてしまったのか、見渡しても絶壁しかみあたらない。
一通り見学を終えて海岸に別れを告げて、車に戻るべく階段を登りはじめる。
これで私の冒険は親不知の4世代にわたる道路に足跡を付けたことになる。
第一世代は先ほども説明した、いまここにいる海岸
第二世代は去年訪れたウエストン(筆者曰く、ツェペリ)像のあった「親不知コミュニティーロード」
第三世代は現在の国道8号。ここはしばしば通っている。
第四世代は北陸自動車道。ここも以前通った。
まあ第四世代に関してはほぼなにも感動もないただICがあるんだなくらいの印象しかないのだが・・・。
とはいえここにこれだけの道路を作ったのだからそれ相当な戦いになったことだろう。
先ほどのトンネルまで戻ってきた。
そう、4世代にわたる道路にばかり気を取られているが、この旧北陸本線も相当なものである。
きっと道路と同じく、ここに路線を敷くのはものすごく苦労があり
この地形ではそれを維持するのも大変だったと思う。
もちろんたくさんの犠牲もあったと思う。
トンネルの前に立ち、またしばらくぼんやりと考え事したあと
「残っててくれてありがとう、またくるね」
本来の役割を終えたのにも関わらず、
いまだその場所でトンネルであり続けているトンネルにお別れの言葉をかけ
また階段をゆっくりと登りはじめた・・・・
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どの道にも、どの路線にもかならず歴史が存在するもの。
その歴史の足元にもかならず暗い影がある。
中には知らないほうが良かったと思うような話も出てくることだってある。
そういうものひっくるめて私はそれを「業」と呼んでいる。
ただ冒険するだけじゃなくて
その土地の「業」もちゃんと拾ってリュックに入れて持って帰りたい。
それが私の、冒険の楽しみ方である。
って
終わるとおもった?
実はこの地形に似た場所がもうひとつあるのん・・・!
静岡の焼津にある大崩海岸なんだけど
ここもおととしの年末におとずれているのん。
まったく正反対の場所にあるから似てるのはただの偶然でしょうっておもうかもしれないけど
この二か所は糸魚川静岡構造線で繋がっているのん。
え、だからなんだって・・・?
いや・・・そんだけですわー!!!!!!!!!
尾張
取材日時 2016年1月3日