
こんばんは。久しぶりの投稿です。
以前、オイル交換時にインプレッションしましたが、昨日、ついに総走行距離が10,000kmに到達しましたのでその後の印象変化を記載したいとおもいます。
納車から約1年4ヶ月。
この期間で10,000km。結構走ったほうではないでしょうか。
今回は、この10,000kmを通して感じたこと、そしてアルピナというクルマに対する私自身の評価がどのように変化していったのか、少し長くなりますが書いてみたいと思います。
■ アルピナマジックへの疑問
納車された当初、正直なところ「アルピナって、こんなものなのか?」という疑問がありました。
その代表的なものが、アルピナ独特の足回りです。
自動車評論家の中には、アルピナの乗り心地を「マジックカーペット」と表現する方もいます。
しかし、実際に乗ってみると、路面の凹凸や道路の継ぎ目からの入力は意外と感じます。
特に高速域では、アルピナ特有のしなやかなサスペンションセッティングと超扁平タイヤの組み合わせが、時としてアンバランスに感じられることがありました。
比較的大きな凹凸を通過した際、サスペンションが吸収しきれないような強い入力が伝わり、一瞬、車体の動きが大きく感じられることがあります。
もちろん、危険なほど不安定になるという意味ではありません。
ただ、私が想像していた「マジックカーペット」とは少し違っていたのです。
では、BMWのMだったらどうなのか。
私の印象では、Mはもともと足回りが硬く、路面からの入力をよりダイレクトに受け止める方向性です。
当然、段差を越えた際のショックは大きい。しかし、その後の車体の動きは素早く収束し、挙動が明確に感じられます。
一方、アルピナは路面の凹凸をいなそうとする。
その代わり、大きな入力を受けた際には、Mとは異なる車体の動きが生まれる。
言い換えれば、アルピナは快適性を追求するために、車体の動きをある程度許容しているように感じます。
Mは車体の動きを厳格にコントロールする代わりに、路面からの入力をドライバーにも積極的に伝える。
どちらが優れているという話ではなく、そもそも目指している方向が違うのだと思います。
例えば、時速60km程度で流しているときのアルピナは、本当に素晴らしく快適です。
一方、高速道路で時速100km程度になると、比較的大きな段差では、想像以上のショックを感じることがあります。
当初の私は、この違いをなかなか受け入れられませんでした。
しかし、走行距離を重ねるうちに、少しずつ理解できるようになってきました。
アルピナはBMWであって、BMWではない。
私が間違っていたのは、アルピナをMと同じ方向性のクルマとして評価していたことでした。
Mがサーキット走行も視野に入れた高性能車であるのに対し、アルピナはあくまでも公道を走るための高性能車。
この思想の違いを理解せず、同じ物差しで比較し続けていたのです。
■ 速く走らなくても満足できるクルマ
この1年ほど、私はずっとその答えを探していたように思います。
高速域での挙動、ステアリングのレスポンス、コーナリング時の車体の動き。
これまで乗ってきたBMWの感覚を基準に、アルピナの走りを評価していました。
ところが、あるとき気づいたのです。
「ゆっくり走れば、こんなに快適なクルマはないのではないか」
もちろん、ときには力強い加速を楽しみたい。
追い越しや高速道路への合流では、圧倒的なトルクを生かした加速を味わいたい。
しかし、普段はそんな走りをする必要がありません。
ゆったりと流れに乗って走っているだけで、何の不満も感じないのです。
公道には交通ルールがあり、秩序があり、マナーがあります。
その範囲の中でクルマを走らせるとき、アルピナは実に素晴らしいパフォーマンスを発揮する。
それも、ドライバーに特別な操作や緊張を要求することなく。
Mは、より高い運動性能を積極的に味わうことに価値を置いたクルマだと思います。
対してアルピナは、高い性能を持ちながらも、それを必要以上に主張しない。
この違いに気づいたとき、ようやくアルピナというクルマが少し理解できたような気がしました。
私はE91の320からBMWライフをスタートし、420、X1dと3台を乗り継いできました。
そしてアルピナにたどり着いた。
当然、その延長線上にアルピナがあるものだと考えていました。
しかし、アルピナは単なるBMWの上級モデルではなかったのです。
■ エンジンについて思うこと
次にエンジンについて。
まず、アイドリングの落ち着きは本当に素晴らしいと思います。
毎回エンジンを始動するたびに感じるのですが、回転のばらつきや振動がほとんど気になりません。
もちろん直列6気筒ならではの素性の良さもあるのでしょうが、それだけではないような気がします。
アルピナ独自のエンジン制御やチューニングによるものなのでしょうか。
このあたりは技術的な理由も知りたいところです。
そして、走り出して感じるのは、エンジンを高回転まで回す必要がないということ。
圧倒的なトルクで走らせるクルマなのです。
例えば、高速道路の出口でパドルを操作し、D8からD3へとシフトダウンする場面。
200mほどの減速区間で数段落としても、エンジンは3,500rpm程度で静かに回っているような印象です。
逆に4,500rpmを超えるあたりから、エンジンの存在感が表に出てきます。
S58エンジン特有のメカニカルなサウンドが聞こえ始め、ようやく高性能エンジンらしい表情を見せる。
ただ、このクルマは、常にエンジン音をドライバーに聞かせようとするクルマではないのだと思います。
少し語弊があるかもしれませんが。
私の中でのMは、高回転まで回したときの勇ましいエンジン音や回転フィール、そして排気音を楽しむクルマというイメージがあります。
ところがアルピナは、そこを積極的に演出しない。
当初は、ここにも不満がありました。
■ 穏やかすぎる排気音
排気音についても同様です。
私のアルピナは、とにかく音が穏やかです。
エンジン始動直後は排気バルブが開いた状態なのか、やや太い排気音が響きます。
しかし、1分ほどすると静かになり、室内からは排気音がほとんど聞こえなくなります。
F30系アルピナには、アクラポビッチ製のエキゾーストシステムを標準装着していると聞いています。
動画サイトなどでそのサウンドを聞くと、なかなか勇ましく惚れ惚れする。
一方、私のG20系は勇ましいどころか、むしろ上品で穏やかです。
これも当初、大きな不満の一つでした。
速いクルマなのだから、もう少し存在感を主張してもよいのではないか。
そう思っていたのです。
しかし、今になって考えると、その考え方自体がMを基準にしたものだったのかもしれません。
乗り心地が良くて速い。それはアルピナらしい。
しかし、エンジンの存在を必要以上に主張しないこともアルピナらしさ。
排気音が穏やかなこともアルピナらしさ。
そして、トランスミッションが変速スピードをことさらに強調せず、滑らかにギアをつないでいくこともアルピナらしさ。
私が不満に感じていたこれらの要素は、実はアルピナが意図して作り込んだ個性だったのだと思います。
■ 4WDの圧倒的な安定感と、失われたFRらしさ
私のアルピナは4WDです。
この四輪駆動システムによる直進安定性と、加速時に路面を捉えるグリップ力には驚かされます。
以前、伊勢湾岸自動車道を走行していた際、交通状況に十分注意しながら、強い加速を試したことがあります。
そのとき印象に残ったのは、530ps、700N・mという大きな出力を、四輪で実に自然に路面へ伝えていく感覚でした。
強大なトルクを受け止めながら、車体は驚くほど落ち着いている。
パワーに対して、トラクション性能が非常に高いのです。
もちろん、その性能を公道で使い切る必要はありませんし、使い切れるものでもありません。
この安心感は、日常の低速走行や雨天時の運転でも恩恵があると感じています。
ただし、四輪駆動であるがゆえに、FRらしさがやや薄いことも事実です。
私はこれまでのBMWで、ステアリングを切った瞬間に鼻先がスッと入っていくような回頭性を好んでいました。
少ないステアリング操作で軽快に向きを変える。
BMWは、このFRらしい操作感を積極的に演出しているように感じます。
しかし、アルピナにはその演出が控えめです。
もちろん、しっかり曲がります。
ただ、積極的に「よく曲がるクルマ」であることをドライバーへ訴えてこないのです。
ここは今でも、私が好きだったBMWと比較して、少し残念に感じる部分です。
しかし、これもアルピナの思想なのでしょう。
俊敏さを前面に出すのではなく、自然で落ち着いた操縦性を大切にしている。
そう考えると、足回りからステアリング、四輪駆動の味付けに至るまで、一貫した考え方があるように思えてきます。
■ コンフォートは「普通」、コンフォートプラスは「さらに普通」
私のアルピナには、走行特性を切り替えるドライブモードがあります。
私の感覚で表現すると、
コンフォートは「普通」。
コンフォートプラスは「さらに普通」。
そしてスポーツ(プラス)は「過激」。
この表現が、自分の中では一番しっくりきます。
「普通」というのは、決して性能が平凡だという意味ではありません。
静かで、滑らかで、速さを意識させず、自然に走ることができる。
その完成度が非常に高いという意味です。
普段は強大な性能をひた隠しにしながら、必要に応じて驚くほどの力を発揮する。
まさに「羊の皮を被った狼」。
それがアルピナなのだと思います。
そして、その性能を常に誇示するのではなく、あくまで控えめに振る舞う。
この姿勢こそが、アルピナの哲学である「アンダーステートメント(控えめな自己主張)」なのではないでしょうか。
■ 不満に感じていたことこそ、アルピナの個性だった
思えば、この1年ほど、私はアルピナに対して随分と多くの不満を抱いていました。
Mほどシャープではない。
Mほどエンジンの存在を主張しない。
Mほど排気音が勇ましくない。
Mほど変速の鋭さを感じない。
BMWほど軽快に鼻先が入らない。
しかし、それらの不満の多くは、私がアルピナをBMWやMと同じ価値観で評価していたことから生まれていたのだと思います。
アルピナは、速さを誇示するためのクルマではない。
快適さだけを追求したクルマでもない。
圧倒的な性能を持ちながら、それを日常の中に自然に溶け込ませるクルマ。
そして、その性能をドライバーに意識させないことにこそ、価値がある。
私が「普通」と表現したものは、実は非常に高い次元で作り込まれた「普通」だったのです。
普通であることの大切さ。
それは、平穏であることの価値なのかもしれません。
アルピナが追求しているのは、そんな世界なのではないでしょうか。
10,000km走って、ようやくそんなことを考えるようになりました。
もっとも、今でもMのような刺激が恋しくなることはあります。
それもまた、クルマ好きの本音です。
ただ、今ではその刺激が少ないことも含めて、アルピナというクルマの個性を楽しめるようになってきました。
■ 阪神高速で出会った、もう一台のアルピナ
そんなふうに、アルピナというクルマに対する理解が少しずつ深まってきた頃、忘れられない出来事がありました。
先日、阪神高速を走っていたときのことです。
前方の左車線に、美しいアルピナグリーンのG20系アルピナが走っていました。
思わず目を奪われました。
同型のアルピナと公道で遭遇するのは、おそらく初めてのことです。
「あっ、仲間だ!」
そんな気持ちになり、思わずそのアルピナの前を走る位置に入りました。
実は私には、みんカラ以外で交流のあるアルピナオーナーの知り合いがいません。
リアルな世界では、アルピナ仲間と呼べる人が一人もいないのです。
そんな私にとって、同じG20系のアルピナとの偶然の出会いは、思いのほか嬉しい出来事でした。
しばらく走っていると、不思議なことが起こりました。
私が車線を変更すると、後ろを走る美しいグリーンのアルピナも同じように車線を変更してくるのです。
一度だけではありません。
お互いに適度な距離を保ちながら、同じ方向へ走り続けました。
おそらく10kmほどだったと思います。
もちろん、相手の方がどう感じていたのかは分かりません。
しかし、私にはお互いの存在を意識しながら走っているように感じられました。
言葉を交わしたわけでもなく、顔を合わせたわけでもない。
ただ、同じアルピナというクルマに乗り、同じ道を走っている。
それだけなのに、何かが通じ合っているような気がしたのです。
これは、なんとも不思議で、素晴らしい体験でした。
考えてみれば、アルピナは決して多くの人が選ぶクルマではありません。
BMWという大きなブランドの中で、あえてアルピナを選ぶ。
そこには、速さや豪華さだけでは説明できない、ある種の価値観や美意識があるように思います。
だからこそ、同じアルピナに乗る人を見かけると、勝手ながら親近感を覚えてしまうのでしょう。
アルピナには、オーナー同士に不思議な仲間意識、あるいは帰属意識のようなものを生み出す力があるのかもしれません。
この16ヶ月、私はアルピナというクルマそのものを理解しようとしてきました。
しかし、アルピナを所有する喜びは、クルマの性能や乗り味だけではないのかもしれません。
同じ価値観を持つ誰かと、言葉を交わさずともつながることができる。
そんな楽しみ方もあるのだと、あの日の阪神高速で教えてもらった気がします。
あの美しいグリーンのアルピナのオーナーさん。
もし、みんカラをご覧になっていたら嬉しいですね。
あのときの青のアルピナ、実はこんなことを考えながら走っていました!
■ これからのアルピナライフ
約1年4ヶ月で10,000km。
日本でアルピナに乗っている方のうち、これくらいのペースで走る方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。
もっと走っている方もいらっしゃるでしょうし、大切に保管されている方も多いと思います。
私にとってアルピナは、眺めるだけのクルマではありません。
実際に走らせ、さまざまな道を経験し、ときには不満を感じながらも、少しずつ理解を深めていくクルマです。
そして、今回の阪神高速での出来事のように、思いがけない出会いや喜びを与えてくれるクルマでもあります。
この16ヶ月は、アルピナを理解するための時間だったように思います。
まだまだ分からないこともありますし、これから評価が変わることもあるでしょう。
それも含めて、楽しみたい。
人生は一度きりです。
いつか振り返ったとき、もっと走っておけばよかった、もっと楽しんでおけばよかった、そんな後悔だけはしたくありません。
だからこそ、これからもアルピナとともに、いろいろな場所へ出かけたいと思います。
10,000km走って、ようやく気づいたこと。
アルピナは、速く走るためだけのクルマではなく、走る時間そのものを豊かにしてくれるクルマなのだと。
そして、その時間の中には、同じアルピナを愛する誰かとの小さな出会いもある。
これからも、このクルマとの対話を楽しんでいきたいと思います。