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「日本の製造業はチャイナ・韓国に負けている」「日本は衰退している」との意の文章をネットで見かけることが多くなってきました。本当にそうなのでしょうか。

自動車の出荷額世界一はトヨタ、武漢コロナ後の販売回復もNo.1はトヨタです。一方、スマホやパソコン、家電で日本企業がトップを取ったという話は聞こえてきませんね。どういう違いがあるのでしょう。日本の家電は弱くなっているのでしょうか。

その通りです。家電の競争力は弱くなっています。なぜでしょう？

コモディティ商品という言葉があります。直訳すると陳腐化した商品とでもなりましょうか。私は最近国産冷蔵庫を買いました。冷蔵庫は基本機能としては10年以上大した進化はしていません。カタログ上は冷凍が速いとか鮮度長持ちとか謳ってはいますがそれが消費者の利便性にどの程度結びついているかというとさほど…というところでしょう（ただし省エネ性能についてはチャイナの安物とは明確な差があります）。つまり、コモディティ商品とはもう進化の余地がない商品のことです。スマホもそうです。タイトル写真は「折れ曲がる画面のスマホ」だそうですが、こんなものいったいどれだけの消費者が利便性を感じるのでしょうか。私はスマホなんて信頼性さえ高ければスペックは8コア4GBで十分、あとは安いほうがいい。スマホは性能の低いものから高いものまですでにフルラインナップで、進化する余地は極小です。5Gにしても大した利便性ありませんし。

ちなみに日本メーカのスマホに目立ったものがないのは、「初めからコモディティ化することが分かっていたからまじめに参入しなかった」と言うところでしょう。ただの部品の寄せ集めで新規技術開発が要らないからコモディティ化があっという間に起きます。10年かかりませんでしたね。こんなものに社運賭けていたら会社は蒸発してしまうでしょうから正しい判断です。

進化の余地がなくなると何が起きるでしょう。価格競争です。需要があってコモディティ化した市場には価格競争が起きます。そうなると多少質が悪くても（＝粗悪なものでも）価格を落とせば、消費者は「なーんだこっちのほうが安いから買おう、機能は大差ないし」となってしまいます。こういう市場のことをマーケティング用語でレッドオーシャンと言います。地獄の窯の中みたいなものです。

チャイナ製の自動車用品…ドラレコなど…がAmazonなどで安売りされています。価格は数分の一で機能自体は大差ないように見える…のですが、これなんかもただ部品を組み合わせれば作れるコモディティ商品そのものです。ただ、チャイナ製の電子回路は使用する部品の質が悪すぎ、2夏越せなかったり内部のリチウムイオン電池が発火したりしますので避けたほうが賢明です。数百万円の車に4,980円のドラレコはどう考えてもアンバランスですね。ボロッぼろの軽自動車ならいいけど。

日本人は勤勉・真面目・丁寧・先進という特性を文化として持ちます。この文化はレッドオーシャンに向きません。価格競争はがめつく自己中心的な人たちに任せておけばよろしい。日本はレッドオーシャンから漕ぎ出し、もっともっと難しく付加価値の高い市場に行くべきなのです。

自動車市場はどうでしょうか。赤くなりかけた海、というところでしょう。大きく進化しているところは省エネと自動運転ですがどちらもあと10年もすれば技術的に飽和します。特に自動運転はソフトウェアですからコピーすればいくらでも広く利用され他者との差別化はできません。実際、安全・自動運転技術の各社のレベルはどんぐりの背比べです。そこでトヨタはここ10年来自動車以外の本業を発掘し出しています。私感ですがトヨタはエネルギー業に行くのではないかと考えています。車を動かす電気を作る事業を車づくりと並行して始める。

前のブログで「日本は製品を作るのをやめて工場を作るようになる」と書いたのはこういうことです。工場は極めて精緻な機械でかつ日本が世界一、ダントツに進んでおり他者を絶対に寄せ付けない極めて高い競争力があります。すべてのモノがコモディティ化に向けて進んでいる今、工場を作ることに活路を見出すのは賢明なことに感じます。