ここ10日ほど、風邪をひいて寝込んでいました。
去年買った羽毛ふとんがとっても暖かくて、羽毛ふとんの上に毛布をかけて冷気をシールドするとふとんの中をずっと温風が駆け巡ってるようになります。
足の親指を左右でとんとんぶつけながら、くちびるをとんがらせ、じっと白い天井を見上げてました。
幼い頃、実家の天井は板張りで、ところどころのシミや木の節目が、お花のように見えたり、山があったり、誰かの顔のようだったり、ふだんはそれをすっかり忘れているんだけど、天井には「風邪をひいたときにだけ現れる風景」がありました。
面長の気取ったような顔に見えるところがあり、わたしはひそかに「彼」を「ジャック」と名付けていました。
風邪をひくと必ずお母さんがクリーム湯をつくってくれて、それが大好きだったのだけど、病気でないときにどんなにせがんでも、なぜか頑ななまでに一度もつくってもらえなかった。
今なら自分で好きなときにつくろうと思えばつくれるけれど、なんだか幸せに健康なときには食べちゃいけないような気がして、いまだにつくったことがない。
風邪をひいたときにだけ、わたしはクリーム湯を食べられて、ふだんは忘れて思い出すこともないジャックに再会し、そしてまた天井に、新しい景色や、新しい友だちを見つけるのでした。
今の家の天井は白いクロスです。
元気になったら片隅に、えんぴつで、思い出せるかぎりジャックを描こうと思ったんですが、きっと元気になればすぐに忘れてしまうでしょう。
風邪をひいたとき。
恋をなくしたとき。
仕事で失敗したとき。
たいせつな誰かと別れたとき。
ここで夢をあきらめる決断をしたとき。
人にはなぜか。
孤独になったときにだけ現れる風景があって。
弱ったときにだけ心に生まれるやさしさがある。
つらくて悲しいときが誰にもあるけど。
そのときにだけ、自分のやさしさと出会えるのなら、それも愛おしい時間だ。
ずいぶんよくなってきたので、鯛だし茶漬けをつくってみました。
出汁茶漬けに、むかし四国へ行ったとき松山で食べた宇和島鯛めしの要素を入れられないかなと考えた。

Posted at 2026/01/28 11:38:41 | |
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