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2026年06月15日 イイね!

宇宙人はいるのでしょうか

宇宙人はいるのでしょうか。



結論から言うと、わたしはいないと思ってる。
もっと正確にいえば、わたしたちが宇宙人だと錯覚する存在は確かにいるのだけど、でも、いない。
これが、高校生の頃のわたしが出した結論。

NASAではすでに宇宙人とコンタクトしていて、その極秘資料が最近になって公開され始めてきている。
それでもわたしは高校生の頃に自分が出した結論をなお信じてる。

risaSpecって、いかにも宇宙人を信じてそうなイメージが、みなさんにはきっとあって、じっさいわたしは信じて疑わなかった。
そしているのであれば、それはタコみたいな姿でも映画のE.T.のようでもなく、地球の人間と寸分たがわない姿かたちをしているはずだろうと思ってた。
そしてたとえばもしも強重力の天体に地球人と同じ原子の数を持つ生命体がいるとしたら。
それはたとえば、ふわふわと不規則に浮遊する虫が。
目の前を今すっと飛んで行った虫が。
それが強重力の天体から来たUFOであったかもしれないだろうとさえ思ってた。

地球の数千億倍の重力の中性子星の住人は、1秒間に考える量も地球の時間の数年分に相当するはずだ。
地球人が一生をかけて考えたりつくり上げるものに、1分もかからずに到達するのだ。
人間だって月には行けた。
彼らがさらに遠くの天体へ移動することはできて当然だろうと。

わたしたちは、男ってこんな生き物だとか、女ってこういうものだとかって、自分のごく身近な人からの経験則で決めつけるけれど、「宇宙原理」もそれとよく似たところがあり、かなり自分中心というか、地球の周辺の宇宙を見れば、それだけで宇宙全体がわかるという。
大学の頃に、「ああ、それがフラクタルっていう話なのか」とも思ったけど、それよりも前にわたしは高校生の頃の自分の発想にずっと惹かれつづけてた。



それはUFOの目撃報告を見ると、人生で一生見ない人も多いのに、見たという人は何度も見ている、ということ。
「だから目撃したという人は嘘つきなんだよ」っていうのもあるかもしれないけれど、これとよく似た話があるでしょう。
それは霊の目撃だ。
いや、怖い話はしない。わたしもそういう話はとても嫌い。
だから安心して、ちょっと聞いてほしい。

そもそも地球人ってどこからきたのだろう。
聖書によればアダムとエヴァだ。
アダムもエヴァも今のヒトと同じ姿をしている。
しかし進化論では違う。
最初は猿人で、そこから原人に進化し、ヒトになったという。
それは聖書とは異なる。
そしてそれが科学だという。

高校2年生の頃、断絶平衡説というのを知り、これは怪しいと思ったところから進化論に疑問を持っていろいろ本を読んだ。
勉強してみると、断絶平衡説を唱えたのはダーウィンではなく、むしろダーウィンの系統漸進説とは相対するものだったのだけれど、断絶平衡も系統漸進も、「進化する」ということにおいては変わらず、その種が進化するということ自体にわたしはずっと懐疑的である。

進化論は間違ってる。
なぜそう言い切れるかというと、それはわたしの考えではなく、もっとも強く進化論を否定していたのがチャールズ・ダーウィンその人だからだ。
これについては何年も前にブログに書いたし、長くなるので今回は書かないけど、ダーウィンはそもそものところの大きな誤りに自ら気づいて、あわてて自分の進化論を否定した。
でもすでに進化論は多くの人々に受け入れられ教科書にまで載っていて、ダーウィンの学説をダーウィン本人が否定してるのに、誰も相手にしなかったらしい。
いまさら勘弁してよってとこだったんだろう。
もうこれで行こうよ、と。

今ダーウィンの家には、進化論とはもっとも相容れない書物が並べられているそうだ。
それは、聖書。
進化論に心酔し、暮らした家を訪れた人たちに読んでほしいというダーウィンの想いなのだろう。

断絶平衡があんなに無理矢理になってしまってるのも仕方ないのだ。
だってベースとなる種の起源がそもそも間違ってるのだから、その上にくっつけていけばいくほど話はおかしくなっていくんだ。

ジョット・ディ・ボンドーネの絵の中にイエス・キリストの生誕の絵がある。
この絵には空に赤い尾を引いて流れるほうき星が描かれていて、たしか京大の研究チームだったと思うけど、そのほうき星は、ハレー彗星だと特定された。
まあ、ハレーかどうかはともかく、彗星って氷の塊で、宇宙を飛ぶときにいろんなものを吸着する。
尾は水とガス、宇宙の塵で、細胞分裂に必要なものが保たれる環境ではないそうだ。
それでも高校生のわたしは、もしかしたら地球人は彗星によって地球に運ばれてきたのではないかと思った。
彗星の尾にも微生物はいて、いろいろな星に生命の種をまいたというパンスペルミア説というのもあるけど、そういうことでもない。
科学は彗星に生命を育む環境はないというけど、わたしはそこに乗っている生命体とは細胞ではないと考えたんだ。

肉体は地球で生まれて地球で死んでいくだけだ。
肉体は宇宙へは行かない。行けない。
人間の体が彗星によって宇宙を飛ぶのではなく、肉体に宿る前の、あるいは肉体を離れた後の21グラムの「人間の魂」なのだ。

地球を選んでやってきたのか、それともいろんな天体に運ばれる中で、地球だけに受け入れる肉体があり、生きてゆく環境が整っていたのかはわからないけど。


ところでその高校生の頃、ご存じのとおりわたしは音楽をやっていて、ライヴのオープニングとしてつくった曲がある。

アップテンポのその曲は、高校生の女の子が歌うんだからほんとは恋愛ソングでなければならないのに、宇宙人をテーマにしていて、タイトルを「COSMIC STAGE」とした。

最初の出だしだけ思い出して書いてみる。


COSMIC STAGE (詩・理沙)

ある朝 突然 西の空から
巨大な光がわたしを起こした

止まったままの目覚まし時計 動かない風 そして・・・
振り向けば 部屋の中には 君が立ってた

どこから来たの?と尋ねるわたしに
君は黙って宇宙(ソラ)を見上げた

初めて見る君の姿は
どこかわたしたちとはちがったけれど
その瞳(め)に映したやさしさだけは ずっと前から知ってた

(C) risaSpec 2026





この歌詞は、聴く人がなんとなくスピルバーグのE.T.をイメージするようにつくったのだけれど、「その瞳のやさしさはずっと前から知ってた」という部分は、当時わたしが強く思い始めた「宇宙人の正体」で、それはすなわち地球外知的生命体というのは「わたしたちと同じ人間なんだ」という意味を秘かに込めた。

人間の細胞の数は60兆個。
おそらく宇宙の星の数も同じ数だ。
するとこれもフラクタル理論のように人間というのは宇宙そのものなのかもしれない。
(宇宙原理からすると60兆個のような少ない数ではないですが、宇宙原理を信じてないです。宇宙は球体で広がっていて、その終端部分でもその宇宙の星間距離が地球周辺と同じなんてあるわけない)

そしてその宇宙も、その世界がすべてではない。
もし宇宙がほんとに「全体」であり「全て」なら、じゃあいったいビッグバンはなぜ起こったのか。
宇宙の外側からなんらかのエネルギーが与えられなかったら、あんな爆発なんか起こるわけはないのだ。

ところでわたしのバンドのライヴはその後も1曲目は宇宙人で始まるものの、その後は地球の恋愛ソングがつづく。
でも最後の曲で、またオーディエンスを宇宙空間へと引っ張った。

それは21歳の頃、アルバムの最後とか、ライヴの最後の曲として書いて、初めて管弦楽のアレンジをして、録音のときもスタジオで途方もないトラックにシンセサイザーを1人で重ねてオーケストラにした、7分を超えるまさに入魂の1曲で、わたしがつくった曲の中でも代表曲と言っていい。

「生まれたときに 目の前には ただ大きな宇宙が在った」と始まるこの曲の、最後のサビの部分の歌詞を書いてみます。

From The Last Space Colony
気づけばいつのまにか
ああ 人は誰も 忘れてた「生きる理由(わけ)」を

From The Last Space Colony
宇宙の地平線を 超えたそこに
またきっと愛はあるね

あなたの心にいつでもわたしが
映した愛よ 宇宙へ届け

(c) risaSpec 2026


わたしは今も、若い頃の自分からいろいろ教えてもらってる。
丸の内線から銀座線へ忙しく乗り換える東京の街で、いつのまにかわたしも忘れてしまってた。人が生きる理由を。
あの子が今も、すっかり鈍くなったわたしに叫び続けてる。

宇宙人はいない。
でも宇宙人はいる。
その宇宙人とは、「わたしたち」なんだ。

そしてわたしたちこそ「宇宙」なんだと。


青春時代、夜空を見上げてはこんなことばかり考えてた。
恋人がムードを出そうと「理沙ちゃん、夜空を見てごらんよ。星が綺麗だね」とか言っても、真顔で「あれは夜空じゃないよ。夜にだけ見える<宇宙>というものだよ」と、そんなつもりではなかったもののわたしは、彼が勇気を出してつくってくれたキスのタイミングをいつも壊し続けてた。
Posted at 2026/06/15 23:03:29 | コメント(7) | トラックバック(0) | 日記
2026年05月04日 イイね!

驛 remix

今から14年前にブログのために撮った写真です。
14年前だから3歳の頃のわたしです。
今とほとんど変わりません。

そしてこの写真のイメージに合わせて詩を書きました。
これが、risaSpecの「2001年宇宙の旅」であり、「銀河鉄道の夜」です。






駅はきっと
時間を超えている

3歳のわたしは 母に手を引かれ 桜の花が舞うプラットホームを歩いた
17の春は 恋をなくしてぼんやりと駅のベンチに 暗くなるまで少女は一人で座ってた
大人になると東京の終電の窓に映る 変わってく自分の 歪んだ顔に涙をこぼした

そんなわたしの駅たちは
じつはどこかでひとつになって
わたしが来るのを時の向こうで待ってるような気がずっとしてた


暗い暗い駅に

冷たい風が吹き抜けて行った


もう一度切符のスタンプに
2012年12月の日付を確かめて
針のない時計がだらしなくぶら下がるホームから
滑り込んできた不思議な汽車にひとりで乗り込む

動き出した列車の窓から「過去」を振り返ると いつのまにか駅は消えていた
悲しくもなく うれしくもなく
わたしはそこで肉体を脱ぐと
汽車の窓を手でこすり
ひとりぼっちで外の銀河を見つめた

この人生で
わたしは誰より強い女だったろうか
それとも・・・世界でいちばん弱い女だろうか


駅が
わたしに ほんとうの孤独というものを見せ始める
そこに耐え得る魂であるかと

駅が
わたしに尋ねてる

みんなのクリスマスソングの そのずっと遥か遠くで 【理沙】






これを撮影したのは横浜鶴見線の早朝の始発が出る少し前。
一人でカメラを三脚に立ててリモコンで撮りました。
恥ずかしげもなくポーズをとっているけど、カメラのそばにはホームレスの人たちがいて、もしもカメラ盗られたらいつでもダッシュで走れる態勢。
でもそれどころかホームレスの人は、歩いてきた人を「今写真撮ってるから」と止めてくれた。笑

写真は、わたしの体が右方向にフェードしていくようにしたかったけど、顔だけにその効果がかかって、コートの黒にはエフェクトが反応しなかったので、かわりに階段にもう1人わたしを不透明度を下げて立たせてみた。
ちょっとドキッとするけど、詩のイメージにはよく合った。


Posted at 2026/05/04 01:23:13 | コメント(5) | トラックバック(0) | 日記
2026年04月03日 イイね!

次の街へ 次の街へ

今日はわたしにとって、ちょっと懐かしい話をします。


若い頃、音響エンジニアだった頃に、テレビ局やコンサート会場でわたしが使ってたミキシングコンソールをご紹介します。

アナログコンソールのPM5000。これで横幅は2mちょっとあったと思う。



こっちは、すぐに時代が変わって出てきたフルデジタルコンソールのPM5D。




コンサートの本番は何度やっても緊張した。
顔や口では、満席の会場を見て、「今日のお客さんはラッキーだよ。わたしの素晴らしい音を聴かせてあげる」とか言ってたけれど、本当の本音は毎回こわくてそのまま家に帰って毛布にもぐりたかった。
とくにライヴ収録なんかあると、回線は別だけど、わたしのミスがそのままCDに残ってしまう。

客席の中に設置したミキシングコンソールの前に座って、最終チェックをしているとインカムのコールが光るので、ヘッドセットをかぶる。

舞台監督からだ。

「PA(音響)さん、照明さん、センター(ピンスポット)さん、とれますか?」

「はい。音響です」

「定刻スタートです。まもなく1ベル(開演5分前の予ベル)入ります。2ベルはなしで音響さんのSEからスタートです。CUE出します。メンバーは全員下手(しもて)から入って、1曲目イントロ途中で本人(メインのアーティスト)迫りで上がってきます。センターさんピンフォローよろしくです」

あと5分でわたしが叩くCDからコンサートが始まる。
極度に緊張が高まる。
あれ?CDちゃんと入れてたかな?
CDプレイヤーをOPENして、もう一度頭出ししてスタンバイ状態にする。

・・・ちょっと待て。
音響チーム専用のインカムをかぶって、ステージ側のスタッフに連絡する。

「あのさ山﨑、リハのときマルチの6チャンネルを15番に挿し替えたよね。送り側もちゃんと挿し替えてあるよね?」

「あのとき確認しましたよ」

「もう一回見て!早く!30秒で!」

そしてステージマンにも。

「田川。スネアの57(SHURE SM57っていうマイク)曲がってない?」

「ああ、食らっちゃってますね(誰かに当てられて曲がってる)」

「ばか!よく見とけ!走れー!」

「山﨑です。理沙さん、回線再チェックしました。15chからマルチAの6番で送ってます!だいじょうぶです」

「念のため今からオーディションかけて確認する。マイク、ガリって!(マイクを爪で引っ掻いて)」

「理沙さん、スネアの57直してきました!」

「おまえ!ぼーっとしてんなよ!ステージから目を離すな!」

「はい!すいません!」

よし、OKだ。
共通のインカムから舞台監督が喋ってくる。

「音響さん!トラブルですか?」

「いいえ、何も。わたしがトラブル起こしたことなんて今まであった?」

「了解です。まもなくSE入ります。5秒前・・・」

あれ?CDってPLAYボタン押したら回るよね?ちゃんと。
でもほんと?
だってあんな円盤にどうやって音が記録されてるの?
音なんか出るわけないじゃない。
わたしがPLAYボタン押したってきっと音は出ない。

音がビット信号に変換されて・・・

1/1000ミリで記録して・・・

「音響さん、まもなく」

そこに・・レーザーが当たって・・・

「3・2・1・・・SE、どうぞ・・」

PLAYボタンを叩く。
サブウーファの重低音が会場を揺るがす。

会場に拍手と歓声が起こり、メンバーが登場する。

SEがフェードアウトすると、ドラムのカウントが始まって音の塊が飛んでくる。
ここから8小節が一番緊張する。
口から心臓が飛び出しそうなんだけど、全部の音を大急ぎで目と耳と頭で解析する。

もちろんリハーサルで全部バランスはとってる。
でも空調が入った会場の温度はリハーサルとは違う。
1秒間の音速は331.5に0.6に温度を乗じたものを加える。
温度が上がると音速は増すんだ。
そしてリハーサルではいなかった満席のお客さんの人体と洋服で音は吸われ反射は小さくなる。
そしてもうスタンディングされちゃってるからコンサートホールの容積が小さくなってる。

すべてが音に影響する環境変化なんだ。

ベースがやけに大きい。

「田川!スタンディングでステージわからない。ベースはプレベ(プレシジョンベース)だよね?」

「あれ?理沙さん、急に変えてる。MUSICMANです!」

「おまえどこ見てんの!もう帰れ!」

パッシブじゃなくアクティブベースだからでかいんだ。
フェーダーを下げて行って、PADを入れた瞬間フェーダーを突き上げて誰にも音量変化がわからないよう一瞬でやる。1秒以内で。

そして本人が歌い始める。

音量は?(周波数は)どこ持ち上がってる?ダイナミクスは?

なんかHi-Midが厳しい。
2,5kHz? もうちょっと上か?
何千個のつまみの中からVocalのたった一個のEQを探して、周波数を3kHzのちょっと下にして2mmGAINを下げて3dBくらいカットする。
これに3秒かかったらもうプロは失格だ。

Vocalは整った。よし、綺麗な音だ。

Kick(バスドラム)は?
Sn(スネア)は?
パーカス(パーカッション)は?
ギターは?
キーボードは?
ピアノは?

いいんじゃない? いいんじゃない?
いいんじゃないの?!

「山﨑。ナカ音(ステージ側のモニターの音)上がってない?なんか位相ぶつかってる感じだけど」

「次の曲で整理します」

「この曲終わるまでにやって!」

こんなのが最初の8小節の間のできごとだ。
3曲目になってもまだごちゃごちゃいじってる人は、わたしはヘタだと思う。

そこから先は、MC(おしゃべり)の間にVocalのディレイやリバーブを切って、他の楽器にMUTEかけて演奏に入る直前にすべて戻すっていうことに気をつけてればなんとかいく。

しかし最後の問題はアンコールだ。
客席のボルテージは最高潮に達する。
また総立ちになるので音がまっすぐ来ないから、いけないんだけどわたしも立ち上がる。

「田川!アンプのVU読んで!」

「ほぼ0VUまで振れてます!」

「上げてくよ!CLIPよく見てて!」

「えええ?スピーカー吹っ飛んじゃいますよ!」

「この客席のボルテージにPAが負けててどうする!VUよく見とけ!」

家庭用の民生オーディオなら出力突っ込んでもスピーカーが飛ぶことはない。
スピーカーの許容入力がアンプの最大出力を上回るから。
でもプロフェッショナルオーディオは違う。
スピーカーの許容入力をはるかに上回る出力のパワーアンプを組み合わせる。
それでスピーカーが飛ぶぎぎりぎりのとこでコーンをドライブさせて鳴らし切る。そこがいちばんいい音なんだ。
どうやって、スピーカーが飛ぶ限界点を知るかというと、それは耳だ。
メーターではどこにも出てこない。
極限の状態で、ただ自分の耳を信じるしかない。

「理沙さん!クリップ入りました!音、下げてください!」

「歪んでない!田川!最後はメーターじゃなく自分の耳で判断しろ!」

アンコールの曲が終わり、本人が客席に叫ぶ。
ーーーーー どうもありがとう!Thank you!バイバイ!

そして音が止まる。
すべてのチャンネルをMUTEして「追い出し(終演後のBGM)」をかける。

舞台監督が、照明チーフが、ピンチーフが、そして音響チーフのわたしが。
やっと穏やかな声で、それぞれの戦場で闘い抜いた同志たちをねぎらい合う。

「終了です。これ以上のアンコールはありません。おつかれさまでした」
「おつかれさまでした」
「おつかれでしたー」

「おつかれさまー・で・し・た」

そう言ってフェーダーをぜんぶハラって、客ハケ(お客さんが出て行くこと)を待つ。

お客さんたちの喧騒の中、音響専用のインカムをゆっくりかぶる。

「山﨑、お疲れー」
「理沙さん、お疲れさまでした」
「田川、おまえもう保険のセールスに転職しろ」
「すいませんでした!お疲れさまでした!」

お客さんたちがハケたら音を出し、すべてのスピーカーが傷んでないかをチェックして、積み上げたスピーカーをバラし、何十本のマイクとスタンドをバラし、何百本ものケーブルを八の字に巻いて収納して、現地のバイトくんたちに手伝ってもらって客席からコンソールやエフェクターラックをステージに運んで、ぜんぶ11tトラックに積み込み、ラッシングベルトをかけて、機材車を送り出してから、わたしたちは23時に会場を出て車で高速に乗って、また次の街へと走る。

深夜のサービスエリアではもう、うどんとかおそばしか食べられない。
でもリハーサルでトラブったりするとこれが18時間ぶりの食事だったりすることもある。

「理沙さん、コンビニでおにぎり買ってきます!昆布でしたよね」
「ねえ、あのアンプ、あんな程度でCLIP入るの?歪んでないのに?」
「入りっぱなしでした」
「倉庫に1200Wあったよね。会社に連絡してチャーター便走らせて、2つ先の会場で差し替えて。あんなんあかんわ」
「わかりました」



このお仕事を辞めるとき。
わたしはもう次の夢に向かって進んでた。

最後のコンサートで。
アンコールも終わって、いつもはザーッとハラってしまうフェーダーを1本1本ていねいにおろした。

もう二度とミキシングコンソールの前に座ることはないだろう。
そしてコンソールに、トラブルもあったけど、少なくとも本番中はノートラブルで、「今までどうもありがとう」とお礼を言った。

胃が痛くなるとかいうけど、そんな痛さにすら気づかない緊張の連続の毎日だった。

プロも失敗はする。
けれどプロはそのミスを秒速でなかったことにしなきゃいけない。
だからミスには誰一人気づかないけど、心が壊れそうになるくらい自分に自分で失敗を責める。
自分からの厳しい説教に、いったい何度泣かされたことか。
そうやって、少しずつ上手くなっていく。

山崎くんも田川くんも、今は大きくなって、ここに書けばみんながびっくりするようなアーティストやイベントのお仕事をしてる。
もう立派に会社を背負って立つサウンドエンジニアだ。

そんな彼らと最近喫茶店で会った。
わたしがお店に入った途端、二人は同時に立ち上がり、大きな声で「おはようございます!」と言う。
わたしはあわてて近づき「ちょっとやめてよ、そういうの。わたしもうカタギなんだから」

音の話なんかしない。
ただ「あそこの桜、咲いたねー」「みんな歳とったねー」みたいな話。

別れ際に山崎くんが、「音はメーターじゃなくて、出音を自分の耳で確認しろ!って、今俺はスタッフたちによく言ってるんですよ」と笑う。

「わたしそんなこと言ってたっけ?」と憶えているのに笑ってとぼけると、田川くんが「自分は理沙さんから1万回言われました」と、あの懐かしい笑顔で言った。


どんな仕事でも。
自分が壊れる寸前まで自分を追い込んでみようか。
それはまるでスピーカーが飛ぶ寸前にまでパワーを突っ込むように。
そこがね、いちばんスピーカーもよく鳴るピンポイントのゾーンなんだ。

闘いの果ての、そのずっとずっと先に、穏やかな笑顔で仲間と見つめ合える春が来るんだ。

あと少しだ。
みんな、がんばろうね。



あの頃移動の車の中で、わたしがよく口ずさんだ曲です。


Posted at 2026/04/03 19:55:32 | コメント(10) | トラックバック(0) | 日記
2026年03月28日 イイね!

中東情勢のブログについて

中東情勢についてのブログは削除しました。
これはこのシリーズの最初に「わたしのブログとしては異例のテーマなので、一定期間を経過した後に削除します」と予めお断りしていたとおりの理由です。
その他の理由によるものではありません。
Posted at 2026/03/28 10:09:50 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2026年03月09日 イイね!

東 京 remix

ランチでおそば屋さんに行ったんだけど、混んでてカウンター席に座った。
すこし遅れてすぐ隣に初老の男と青年の2人が座った。

「さっき見た部屋のほうが新しいけど、収納は少ないよね。その前の古いアパートでいいかな」
「がんばって東京の大学に入れたんだ。お金のことなら気にしなくていいんだぞ?」

みんなは東北訛りのこの会話で、2人の関係や今の状況がわかるだろうか。
わたしくらいになるとこれだけの会話でも、この2人のすべてがおそろしいほどにわかってしまうのだ。

父の名は権蔵。
青森の工業高校を卒業し、大きな工場に就職。
ずっとがんばって働いてきたのだが、子どもが産まれてまもなくリーマンショックで工場が倒産。
それでも小さな町工場に転職し、より一層仕事に励む権蔵であった。
しかし妻の涼子は、そういう地道な権蔵とのくらしに不満を抱き、週末には仙台のホストクラブに通い権蔵のお金を使い果たした挙句、若い男と夜逃げしてしまったのだ。

息子の竜也はそんな権蔵を尊敬しており、グレたり反抗することもなく、中学の頃、権三に自分が設計した家をプレゼントするために建築家になりたいという夢を持ち、そしてこの春、晴れて東京の大学の建築学部に合格したのであった。

権蔵が席を立ち、トイレに行って戻ってきたとき、わたしの座っている椅子にすこし体を当ててしまい、あわててわたしに「すみませんすみません」とぺこぺこおじぎをしてそのせいで今度は自分のお茶をひっくりかえしてしまう。

わたしは彼に「そんなそんな」と言いながら、立ち上がってすばやくカウンターにあったティッシュでこぼれたお茶を拭き、「だいじょうぶですか?」と衣服にお茶がかかっていないか気遣うと、親子はとても驚いた顔でわたしを見た。

「東京にもこんなにやさしい女性がいるんだねえ」と父親は息子を振り返り、
「今も東京の地下鉄で、ほんとにきれいな女性ばかりで驚いてましたが、心の中まできれいに見える女性は1人もいなかったです」と言うのだった。

いやいや。そんな勘違いをされてしまっては東京の女たちもかわいそうなので、わたしはちゃんと言ったよ。

「いえいえ。東京にはいろんな女性がたくさんいるのですよ。でも東京でやさしい女性って、じつはわたし1人なのです」

「そうでしょうねえ。私たちは田舎者なんで、どうも東京の女性は冷たいという思い込みがあるんですが、やっぱりそうなんですね。ただきれいな女性は確かに多い」

いやいや。この誤解も解いておかなければならない。

「東京には芸能人もたくさん住んでいます。モデルさんも女優さんもアイドルも。でもじつはほんとうにきれいな女性は・・」

すると息子のほうがすかさず「おねえさんだけなんですよね!」と口をはさんだ。

そこでわたしが「いやあこれは一本とられましたな。わっはっは」と笑うと、周囲のお客さん達もみんなが「ちげーねーや」と笑い、厨房からは蕎麦屋の大将が「そばの湯気が目に入って泣けてきちまったじゃねーか。ええい、3人ともニシンもつけちゃうよ」

食事を終えてお店を出ようとすると、お父さんはわざわざ立ち上がってわたしにおじぎをされたので、わたしはその肩にそっと手をおき、やさしくお父さんに言った。

「これからいろいろたいへんでしょうけど、がんばってください。権蔵さん」

「え? ど、どうして私の名を・・」



東京に、また春が来た。
スマホのMAPを片手にきょろきょろしている若い子を見ると、わたしもかつて初めて東京に来た日のことを思い出す。

胸に抱いていた夢はいつか東京の道路の脇に紙くずと一緒に吹き溜まり、いつかこの青年も父親の「元気でやってるのか?」というLINEを既読スルーで、寒い東京の街をポケットに手を突っ込んで急ぎ足で歩くのだろう。

田舎ではミスなんちゃら高校と言われ、「おまえはキレイなんだから東京の男には気をつけろ」とみんなに見送られ、初めての渋谷に思いきりおしゃれをして行った女の子は、さっそくかっこいい男の子に声をかけられて笑顔で振り返ると「田園都市線ってどこから降りるんですか?」「わたしも東京来たばっかりでわからないです。ごめんなさい」「なんだよ知らねーのかよ」と立ち去られたミニスカートの膝が悲しい。

人に傷つけられ、人を傷つけ、そしてそのどちらにももがき苦しみながら、いつか新宿の横断歩道を人にぶつからないよう、自分でいやになるくらいじょうずに渡っていく。

ちがうんだよ。
都会の生きかたとか、東京ではこうするんだとか、社会ってこうだとか、そういうこと考えたり言ったりしてるヤツこそがもっとも東京に呑み込まれた負け犬なんだ。

わたしは東京に来た頃、あと1人しか乗れなさそうな満員電車にむりやり乗ろうとしたときサラリーマンに突き飛ばされて横取りされた。
だからわたしを押しのけかろうじて電車に乗ったその男の襟をつかんで、ドアが閉まる寸前に再びホームに引きずり出したんだ。

思い出せ。
君を送り出してくれた父ちゃんの口を結んだままのさびしい顔を。
「これ電車で食べなさい」と母ちゃんがくれたチョコレートを新幹線で一粒食べたら涙が溢れてきたことを。
そして、残してきた恋人の顔を。

勝って故郷に錦を飾るために花の都へ来たんだろ?
こんなとこでもう、まるで上履きを隠されてしまった少女のような顔でうつむいてどうするんだ。
今日も満員の山手線に10メートルの助走をつけて肩から切り込む角度で飛び込んでくわたしの勇姿を見ろ。乗った後も周囲の7、8人とメンチ切り合ってるしな。

よろしいか。愛すべき田舎者ども。

都会のカルチャーに合わせて顔色伺いながら生きるんじゃない。
18年も田舎で築き上げてきた「自分」をもっと信じるんだ。
東京に、自分のカルチャーを押し込むんだよ。


Posted at 2026/03/09 02:44:18 | コメント(5) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「ナフサはありました 政府が正しかった コメ騒動と構造は同じでマスメディアの煽りによって企業がため込んでただけでした 今たいへんな状況の業界もやがて落ち着きます マスコミとそれに乗って騒いだ者たちに日本は大きな危機に陥りました 忘れないよう」
何シテル?   06/20 00:16
身長 / 168センチ 体重 / 52kg  スリーサイズ / B:貧乳  W:ふつう  H:ふつう  年齢 / よくあるふつうの年齢
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