2024年11月22日
しあわせとは、わずかに温もりを残す鯛焼き
休日の朝、少し離れた公園に行ってみた。
ベンチに座って、持ってきた温かいコーヒーを飲んでいると、素朴を絵にしたような若い夫婦が、小さな子どもと手を繋いで公園に入ってきた。
それは見ているわたしまで温かくなる姿だった。
休日だから子どもをどこかに連れて行ってあげたいけれどもTDLに行くような余裕はなく、昨夜、それでもと、旦那さまが「ねえ、明日、みんなで近くの公園に行ってみない?」と言い出した光景が目に浮かぶ。
「よかったね、たっくん!じゃあわたしお弁当つくるね!」
おにぎりの大きさすら揃えられないくせに「さあ、腕をふるうわよー」という顔をして奥さまがそれに応える。
「やったー!」と、素朴な夫婦の素朴な子どもは大喜びだ。
レジャーランドやアミューズメントパークより、きっとその子は大きくなっても、この公園はずっと心に残るだろう。
ちょっと離れたベンチから自分を見ていた美しいおねえさんの記憶と共に。
たとえば冬の寒い日にあたたかい鯛焼きはおいしい。
出来立てのアツアツがおいしい。
けれどもなぜか、紙袋に入れて歩いてるうちにどんどん冷えて、最後にはとても頼りない温もりがわずかに残った鯛焼きのほうに幸せを感じない?
高気密高断熱に床暖房の家で、奥さまはキッチンでパイを焼き、旦那さまはソファで音楽を聴きながらお酒を飲むというのも確かに幸せだ。
しかし、部屋の中でも空気が冷たい小さなアパートで、互いの手を包み合って「凍ってる?」と大笑いしながら温め合う二人がわたしは好きだ。
その二人を包む1枚の毛布はこの地球の中に二人だけの世界をつくり、それはこんなにも薄いけど、あらゆるものから二人を守るだろう。
寒い季節は、人に、そのささやかな温もりがもつ幸せを教えてくれる。
それにしても今夜は寒い。
そういえばあの公園の夫婦はどうしているだろうと気になり、もしかすると少しだけおせっかいだったかもしれないが、わたしは脚立とロープと盗聴器を持ってこっそりあの家族のアパートを覗きに行った。
しかしそんなわたしの心配をよそに、あの家族はまずそうなカレーライスを「美味しいね」と笑顔で食べていて安心した。
食べ終わると子どもはアパートの部屋の中を走り回って転び、そのままあどけない顔で眠ってしまった。
その後、家族のみんなが寝静まったのを見届けて、「よかったよかった」とわたしはそっと脚立とロープを片付けて家路についた。
幸せそうで何よりだ。
ただ、あの素朴な夫婦があんなにすけべだとは思わなかった。
それにはすこしがっかりしたよ。わたしはね。
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Posted at
2024/11/22 02:41:14
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