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risaSpecのブログ一覧

2024年12月25日 イイね!

21グラムの愛

ドラッグストアのポスターに「ひとつでも思い当たることがあったら頻尿です」と書かれていて、その中に「夜中に1回以上トイレに行く」っていうのがあってびっくり。
何度もじゃないけど1回は行くでしょ。それってフツーじゃない?

え? わたしって頻尿なの?
お医者さんに行ったほうがいいのかなあ。

「えーっと 今日はどうされましたか?」
「はい どうやら頻尿になったみたいです」
「えええ! 貧乳の次は頻尿ですか どうやら合併症ですね」

うーん。お医者さんにはちょっと行けないな。。

いい歳になってきたのでわたしも健康に気を遣いだした。
気がついたらいつの間にかわたしも来年でいよいよ18歳だよ。
ついに洋子ちゃんとおんなじ歳だよ。
18にもなるとさすがに血圧とか更年期とか気になってくるでしょ。

今年の夏も、体育館に女子だけ集められた夏休み前の諸注意でも言われたんだから。

「明日からいよいよ待ちに待った夏休みです。
若い君たちもハメを外したいところでしょう。
新宿とか渋谷へ行って知らない男の子から声をかけられるかもしれません。
もっとも本校の場合、そういう女の子は理沙ちゃんだけかも知れませんが、まあ一応ブサイクなその他の生徒も聞いてください。

君たちは大人のつもりかもしれないが、まだいろんなことに自分では責任を取れない子どもです。
思春期であると同時に更年期という人生でいちばんたいせつな時期だということを忘れずに行動してください。
ちょっとでもめまいとか立ちくらみがあったら知らない男性にはついて行かず、日陰ですぐに休息と水分をとること!わかりましたか? 
それではみなさん!2学期には正常な血圧でまた学校で会いましょう!」

ブサイクなみんなは「あっつ〜」って言いながらスカートをバタバタさせてこの諸注意を聞いてなかったけれど、わたしは胸に響いたな。
一生懸命拍手した。パチパチパチパチ。

そうだ、わたしはまだ子どもだ。
青春真っ盛り。若さいっぱい更年期のど真ん中を駆け抜けるのだ。
とにかく体はだいじ。健康がいちばんなのだ。


君の体は、君のものだ。
君のためだけに動く。
右手を上げようと思えば右手が上がる。
わたしがどんなに念じても君の左手を上げることはできない。
でも君なら、君の呼吸を10秒だけ止めて、そしてまた呼吸を再開することもできる。
まあ自分の体なのだから、思いどおりに動かせるのは当たり前だ。

でも、それなら疑問に思うことはないか。
自分の体だから自分が支配していて、自分の思い通りに動かしたり、その動きを止められるのが当然だというなら、じゃあ君は10秒だけ十二指腸の動きを止めてその後にまた動かすみたいなことがなぜできないのだろうか。
そもそも十二指腸とか胆嚢がどこにあって何をやってるのかすら知らないだろう。
しかしそんなこととは無関係に十二指腸も胆嚢も休むことなく働き続ける。
心臓も、肺も、胃も、肝臓も、膵臓も、すべてそうだ。たとえ君が眠っていても、君の意思なんかとは無関係に働き続ける。

するとこの体は自分のものだと勘違いしているだけで、本当は自分のものなんかではないのではないか。
ではいったい誰のものか。
そして体が自分ではないとするなら、自分とは一体何で、この体のどこにいるのか。

脳ではない。
脳だって、君は考えたくないことを勝手に考えるし、考えなくちゃいけないことを考えてなかったりする。
まったく自分が支配できてるものとはいえない。

肉体はいつか必ず滅びる。
今も日々、朽ちていってる。
心臓の寿命は3億回くらいと言われる。
個体差があってもう少し短かったり、もう少し長くなったりするけれど、その個体の性能は生まれるときに決まっている。
それが寿命だ。
運命とかいうより、肉体的にはじめから決まっているのだ。
そしてわたしたちはそれに従わざるを得ない。

しかし自分の体が自分だと強く思い込む人は、このときにどうしても素直に従えない。
どうしても自分が死んでしまうことを受け入れられない。
どうしても自分が消滅するなんて想像がつかない。
だから、恐れてしまう。どうしても。

けれども考えてみれば、もともとそれは車のようなものかもしれない。
君の車は君のものだ。
動く仕組みはよくわかってないかもしれないけれど、とにかく君がコントロールできる、君のものだ。
でもその車もいつかは寿命がきて動かなくなる。
走ることも、曲がることも、止まることも、そしていつかエンジンが壊れればそこで終わる。
でも君がそこで終わることはなく、また別の車に乗り換えていつもの顔で高速道路を走ってるだろう。

ねえ、それではその新しい車に乗ってる君は誰だ。
それが君だというなら、じゃあ、あの肉体はいったい誰だったんだ。
あの肉体は君自身ではなかった。
そしてその新しい体が走るのは、いったいどこへ向かう道だろうか。

今から120年くらい前に、アメリカの医師が、「人は死んだ瞬間に、どんな人でも必ず体重から21グラムが消失する」という論文を発表した。
この医師はさまざまな人で実験を繰り返し、その論文で「魂の重さは21グラムだ」と結論づけている。

肉体はわたしたちにいろんなことを教えてくれている。
わたしたちは正義を信じて悪を嫌う。
そしてそれこそが正しいと信じている。

確かに肉体も汚いものを食べると死んでしまうから、きれいなものしか体に入れない。
なのに、だから、その結果、汚いものを排泄することになる。
汚いものは嫌だからと排泄を嫌うと、それはそれでやっぱり死んでしまう。
つまり肉体とはきれいなものだけでは成り立たなくて、きれいなものと汚いものの両方を等しく認めないと維持できない。そのようにできているのだ。

「この人は好きだけど、あの人は嫌いだから会いたくない」「こういう仕事は好きだけどあんな仕事はやりたくない」・・・それでは成り立たないのだ。

だから愛とは、善も悪も、きれいなものも汚いものも、好きな人も嫌いな人も対等に受け入れることなのだろう。
こういう相反したものを一元的に捉えることは、つまり、相対ではない絶対ということなんだけど、きれいなものを食べて汚いものを出す肉体を持つと、どうしても好き嫌いという思い方が染み付く。

でもその肉体から離れるとは。
21グラムが離れていくとは。
そのときに素直に絶対的な思い方になれるかどうかが問われる。

もう消しちゃったけれど、以前写真付きで「驛」という詩をブログにあげた。
あの中で「わたしはそこで肉体を脱ぐと」という一節があるが、伝わる人にしか伝わらなかったかもしれないけど、そこにはまさにこれから相対の価値観を超えて絶対の世界へ向かう、という意味を込めた。

そしてわたしが何度も何度も「人はひとり」と言い続けてるのは悲しい独り言なんかじゃない。
モテるかモテないかで言ったら、わたしずーっとモテてきてるからなっ

そういうことではなくて、絶対の世界へ向かうとき、心細くても誰かと手を繋いで行くことはできないんだ。
21グラムは他の21グラムとはぜったいに交わったり結合したりしない。
21グラムは21グラムでしかないのだ。

ただ、それでも、そのときたった1人だけ、あなたと手を繋いで一緒に旅をしてくれる人がいる。
その人が誰かは最初はわからないかもしれないけれど、よく見れば、それはあなた自身だとわかるだろう。

だからさ。

だから今、自分を裏切ったり、自分を傷つけたり、自分のことをいじめたり、自分を嫌ったり、自分をごまかして生きてちゃダメなんだよ。
それじゃあ最後の最後で、最後の最後の最後の友をあなたは失ってしまう。
だから、ずっと、それを言い続けてる。

最初のお笑いから読んできて、もうほとんどの人がここまで読みつづけてきてないんだろうから(笑)、だから書いちゃうけど。


わたしがたったひとり愛してる人への、たったひとつだけの願いは。

それは、これから何十年先なのか、それとも何百、何千年先かわからないけど。

どこか、遠い、宇宙の縁の辺りで、不意にすれ違って振り返ったときに。

もう体のない21グラムのわたしをまっすぐに見て、ひとこと言ってほしいんだ。


「あなたのことを、憶えている」と。
Posted at 2024/12/25 05:08:38 | コメント(4) | トラックバック(0) | 日記
2024年11月24日 イイね!

I WISH

WISHではほんとにいろんなところへ行った。
中でも東京から九州へ旅した1週間のロングツーリングはいちばん印象深い。
東京から下関、そして九州は福岡、熊本(阿蘇)、やまなみハイウェイを通って大分、北九州を走った。
まだWISHが納車になって2年目で、この旅のためにタイヤとホイールを換えた。

全行程では2800kmを走り、長時間の振動で全身が痺れ、SAで車から降りると下半身の感覚がおかしくて、なんだかふわふわして自分の足で歩いてるという感覚がない。
なるほどこれが噂に聞く「下半身は別人格」というやつなのかな。



この画像は、カタログのような写真を撮りたくて阿蘇で撮影したもの。
カメラはCanon EOS 60D。(レンズはTAMRONだったかCanonだったか・・)
これを帰ってからPhotoshopで仕上げ、この旅の想いを、やっぱりカタログのイメージでテキストにした。

遠い夏休みの落書きのように
でたらめな線で人生を描いてきた
けれどそのラインから それでも懸命に
ずっとずっと離れないで走り続けた
長いワインディングの峠をいくつも越えて
わたしもここまで登ってきたよ

地図の上に 大人がいうとおりの
じょうずなルートが描けるかなんて
たいせつなのはそんなことじゃない
どこからどんなふうに登ったって
たどり着いた空と景色は そこで 誰にだって等しくやさしい

ただちょっと
すこし人とは
途中の景色がちがうだけのことなんだよ

だからやり直すことのできない失敗だとか
うずくまって泣き出す理由なんて ほんとはどこにもないんだ

1,000kmを超えると ドライブは闘いになる
長い長い映画のようなその道を
共に闘い抜いた同志と振り返りながら
宇宙と地球とを分ける その線の淵で

そっと自分をほめてみようか

わたしは、WISH と。【理沙 nov.2012】




岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、富山、石川、静岡、岐阜、愛知、滋賀、三重、和歌山、奈良、大阪、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、福岡、熊本、大分。(北海道と沖縄はレンタカー)

それもさらっと巡ったのではなく、同じ場所にも何度も行ってる。
とくに長野と岡山はよく行った。
名古屋とかは高速道が1000円のとき、ただ味噌カツを食べるためだけに、休日に食事以外の名古屋での滞在時間はゼロでよく往復したものだ。





車中泊を始めたのもWISHから。
140cm*190cmのダブルサイズのエアベッドがぴったり収まり、夜はiPadで映画を観て眠り、朝はカーテンの隙間から外を覗いてコーヒーを飲む。
この、「夏休みの秘密基地」の感覚が大好きだ。



走れるだけ限界まで走り、疲れたらSAに入ってすぐに眠れる。
何日も旅が続くときはお風呂に入るために車中泊とホテル泊を交互に繰り返すんだけど、ホテルに泊まる日は時間も場所も限定され、ある程度計画的に動かなければならない。
駐車場から重い荷物を運ばなければならないし、とても億劫だった。
ルーフにバスタブを載せて旅ができたらどんなにいいだろう。



わたしはクルマに名前をつけるような趣味がない。
WISHが恋人だとか、そんなこと思ったことがない。
けれども15年を振り返ればそこにはわたしの歴史があり、その風景にはいつもWISHがいた。
Posted at 2024/11/24 03:44:17 | コメント(6) | トラックバック(0) | 日記
2024年11月22日 イイね!

しあわせとは、わずかに温もりを残す鯛焼き

休日の朝、少し離れた公園に行ってみた。
ベンチに座って、持ってきた温かいコーヒーを飲んでいると、素朴を絵にしたような若い夫婦が、小さな子どもと手を繋いで公園に入ってきた。
それは見ているわたしまで温かくなる姿だった。

休日だから子どもをどこかに連れて行ってあげたいけれどもTDLに行くような余裕はなく、昨夜、それでもと、旦那さまが「ねえ、明日、みんなで近くの公園に行ってみない?」と言い出した光景が目に浮かぶ。
「よかったね、たっくん!じゃあわたしお弁当つくるね!」
おにぎりの大きさすら揃えられないくせに「さあ、腕をふるうわよー」という顔をして奥さまがそれに応える。
「やったー!」と、素朴な夫婦の素朴な子どもは大喜びだ。

レジャーランドやアミューズメントパークより、きっとその子は大きくなっても、この公園はずっと心に残るだろう。
ちょっと離れたベンチから自分を見ていた美しいおねえさんの記憶と共に。

たとえば冬の寒い日にあたたかい鯛焼きはおいしい。
出来立てのアツアツがおいしい。
けれどもなぜか、紙袋に入れて歩いてるうちにどんどん冷えて、最後にはとても頼りない温もりがわずかに残った鯛焼きのほうに幸せを感じない?

高気密高断熱に床暖房の家で、奥さまはキッチンでパイを焼き、旦那さまはソファで音楽を聴きながらお酒を飲むというのも確かに幸せだ。

しかし、部屋の中でも空気が冷たい小さなアパートで、互いの手を包み合って「凍ってる?」と大笑いしながら温め合う二人がわたしは好きだ。

その二人を包む1枚の毛布はこの地球の中に二人だけの世界をつくり、それはこんなにも薄いけど、あらゆるものから二人を守るだろう。

寒い季節は、人に、そのささやかな温もりがもつ幸せを教えてくれる。


それにしても今夜は寒い。
そういえばあの公園の夫婦はどうしているだろうと気になり、もしかすると少しだけおせっかいだったかもしれないが、わたしは脚立とロープと盗聴器を持ってこっそりあの家族のアパートを覗きに行った。

しかしそんなわたしの心配をよそに、あの家族はまずそうなカレーライスを「美味しいね」と笑顔で食べていて安心した。
食べ終わると子どもはアパートの部屋の中を走り回って転び、そのままあどけない顔で眠ってしまった。

その後、家族のみんなが寝静まったのを見届けて、「よかったよかった」とわたしはそっと脚立とロープを片付けて家路についた。
幸せそうで何よりだ。
ただ、あの素朴な夫婦があんなにすけべだとは思わなかった。
それにはすこしがっかりしたよ。わたしはね。
Posted at 2024/11/22 02:41:14 | コメント(9) | トラックバック(0) | 日記
2024年11月09日 イイね!

risaSpecの冬じたく

気候も気分も良かったので、毎年11月恒例の洗車フルコースをやりました。
フルコースというのは普段のシャンプー洗車とコーティングに加えて、電動ポリッシャーでの研磨をするのです。
塗装膜厚の資源を失わないよう年に1回だけと決めてるのです。
そして、WISHの研磨はたぶんこれが最後になると思います。

ここ数年、コンパウンドは3Mの2-Lだけで磨いてきましたが、今日は1段粗い1-Lから磨き、2-Lで仕上げました。
ポリッシャーの扱いも、もう業者さん並みに慣れていて、腰の入れかたも一人前です。
女性がそういうことやってるのが珍しいのか、散歩で通るご近所の方がみんな見て行くので、見物料と書いた箱を置きました。

洗車を終えてお庭のベンチでソルティライチを飲みながら休憩した後、まだ元気があったので横に伸びすぎたラベンダーとローズマリーの強剪定。
ローズマリーはもう枝が太くなっているのでノコギリです。

これも腰の入れ方は、もはや山形県の木こりさんレベルで、そしてまた散歩の人たちがジロジロ見て行くので見物料の箱をもう一個増やしましたが見て行くくせに誰もお金は入れません。

お金がないなら見るなっ
見せものなんだからなっ

剪定は切った後がたいへんです。
ゴミで捨てるために剪定したたくさんの枝を10センチくらいに細かく切っていくのです。
でもちょっと高級な剪定バサミをこないだ買ったのです。
直径1センチくらいの枝もスパンスパンと気持ちよく切れてくれます。
20代の頃のわたしなら、まさか自分が剪定バサミなんかでテンション上がって興奮するようになるとは思いもしなかったでありましょう。

あの頃はブルガリの時計が欲しくて、いつもショウウィンドウを眺め、頑張って仕事してやっと買って大喜びしてたものですが、今はホームセンターの土起こし器を「えーこんなのあるんだ」と憧れ、転圧器と一緒に買ったときは興奮で体が震えました。

お散歩で通りかかった年配のご婦人に笑顔で「素敵なお庭、冬支度ですね」と話しかけられ、なんだか自分が大人の仲間入りをしてるみたいでとても嬉しい気持ちになりました。
まだ未成年なのにね。

そのわりにこのご婦人もお金は入れていきませんでした。

でもそうか。そういえば。
秋は深まり、まもなく冬がやってきます。
今夜はあったかいシチューです。
Posted at 2024/11/09 20:00:37 | コメント(5) | トラックバック(0) | 日記
2024年11月05日 イイね!

ヤマザキの肉まん

大学へ進学したら綺麗なワンルームマンションを親に契約してもらった人って不幸だと思うな。

みんなも生まれた家の思い出はあるだろうけど、わたしには最初に一人暮らしをした、誰も知らない崩れかかった昭和の汚い貧しいアパートの思い出がある。

音楽をやるために大学進学にかこつけて無理やり東京に出てきたから、生活費は家賃も全部自分でアルバイトして払ってた。
実家はわりと裕福な家庭だったけど、父は厳しく、お金は一切くれなかった。
お金が必要なときはちゃんと自分で、何になぜいくら必要なのかをきちんと説明しなければならなかった。

小学校の頃、英会話の教材が欲しくて買ってもらったことがある。
後で母に聞いたが、「あんなもの買ってやってもすぐ飽きるのはわかってる。でもあいつのプレゼンはしっかりしていたから買ったんだ」と言ってたそうだ。

高校生のとき、夕食の食卓で誰も喋らないので「今日アインシュタインの本を読んだよ。相対性理論っておもしろい」と言ったら、父はいきなりホワイトボードに数式を書いて「おまえこれわかるか?」と言った。
首を傾げるわたしに、「フィッツジェラルドの方程式もわからんやつが相対性理論がわかったような顔をするな」と言われ、食卓はまた沈黙。

そんな父だから、一人暮らしを始めてちょっと困ったくらいで「お金ちょうだい」なんてとても言えない。
少しでもバイト料のいいとこを探して、工場とかガソリンスタンドの肉体労働をやった。
工場ではなぜか溶接の工程に回され、部屋に帰ると、ちゃんと作業服着てても飛び散る火花でTシャツには小さな穴がたくさん開いてて、胸にはいつも無数の点のようなやけどがあった。
ガソリンスタンドでは可愛がってもらったけど、帰りが遅くて、もちろんお風呂なんかないので銭湯の時間に間に合わなかったときは、お湯の出ない流し台の水でシャンプーして、濡れたタオルで体を拭いた。
冬に真水で髪の毛を洗うのは激痛が走る。
毎日洗ってもスタンドのオイルでシャンプーの泡は黒く流れた。
花も恥じらう女子大生のわたしの爪の周りはいつもやらされてたオイル交換で黒く、それがとれなかった。
工場もスタンドも、わるい意味で(笑)、男女平等だった。

テレビもない。
隣の部屋はなぜか昼間もカーテンを閉めて一日中いる中年のおじさんで、そのおじさんが壁に耳を当てて女子大生のわたしの部屋を盗聴してるならともかく、壁に耳を当てて隣のテレビの音を聴いてたのはわたしのほうだった。

恋なんか、種類の違う人たちがするものだと思ってた。
友達が合コンへ行ったり、パーティーに行ったりするのに、わたしはクリスマスイブに渋谷の人混みをかき分けてスタジオに走ってた。

大きな瓶に小銭を貯めてて、それをぶちまけて10円玉をかき集め、タバコ屋さんで100円玉に変えてもらい、近所の安い中華料理店でチャーハンを食べるのがたまの贅沢だった。
あの頃わたしは基本一日を300円で過ごした。
普段はお茶とヤマザキの肉まん一個しか口にできなかった。
それでもスタジオ代や楽器にお金は消えていき、ある日とうとう追い詰められた。

その日、わたしはハンバーグランチを食べていた。
最後のお金を使っていた。
もうまともな食事はこの先いったいいつ食べられるのかわからない、と思いながら一人でハンバーグを食べた。なんとかこの先1ヶ月くらいのエネルギーを体に貯める思いだった。

そして、わたしは風俗へ行くことをかなり本気で考えてた。
考えてみたらほとんど男性との経験はなかったのでテクニックもなく、務まらなそうだったので、Sの女王様だったらそういう行為なしでできるんじゃないかと思いつき、そして女王様ならみなぎるような自信もあった。(ちなみに今もある)

ちょうどその翌日、父から電話があった。
仕事で東京に来てるから時間がないけどちょっとどこかで会えないか?というので新宿かどこかの喫茶店で会った。

2年ぶりに会ってもお互い何も喋らなかったけど、不意に父が「おまえお金あんのか?」と訊いてきた。
素直に「ないです!ください!」と言えばいいのに、「ある」と答えた。

「いくらあるんだ」
「ある」
「あるのはわかったけどいくらあるんだ」
「ある!」

父は、「そうか。じゃあこんなもんいらんかもしらんけど」と封筒をテーブルに置いて、これから会議があるからと1人で出て行った。
封筒を開けると中にはわたしの名前の貯金通帳と印鑑が入っていて、開くと100万円が入ってた。
それを見てわたしは「これで生活が立て直せる」とは思わず、「これでヤマザキの肉まんが1万個食べられる!」と思ったくらいおかしくなっていた。

あのお金がなかったら今のわたしはなかった。

今は戸建の家を買って住んでいるけど、夜、遠くの街の明かりを窓から眺め、あのアパートを想い出していた。

わたしはあの場所から、ずいぶん遠くへきた。
寒い青春の日々に、膝を抱えてあの頃のわたしはまだあのアパートにいるような気もする。

今日、秋になってまたスーパーに、あの頃わたしの命を支えてくれたヤマザキの肉まんが出ていたので買ってきたんだ。
あの寒い冬の夜、コンビニ前の暗がりでひとりしゃがんで食べた肉まんの、あの頼りない温もりを、まだわたしの手のひらは覚えていた。

大人になって、今またあの青春をやり直せと言われたらまっぴらだ。
それは青春時代に戻りたいと願う大人に比べてとても幸せなんだと思う。
あの時代を駆け抜けたタフなわたしを、わたしは愛してる。
そしてあそこから長い年月を駆け抜けてたどり着いた今の自分に自信を持ててる。

君はどうだい?
もしも泥水を啜るような青春時代だったなら、あの頃の自分が目指す大人にはなれたかい。
あのときのかっこいい自分を、1人でそっと誉めてあげないか?_

あるいはもし。
そうではなくて、幸せでキラキラとした青春をバカヅラで過ごした人なら。
「ヤマザキの肉まんってうまいよね」なんてヘラヘラと気安くわたしに言わないでほしいんだ。
Posted at 2024/11/05 02:06:05 | コメント(6) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「少し前を歩く娘へ http://cvw.jp/b/2273104/48483430/
何シテル?   06/13 15:18
身長 / 168センチ 体重 / 52kg  スリーサイズ / B:貧乳  W:ふつう  H:ふつう  年齢:そこらへんによくある ごくふつうの年齢
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かき氷器、禁断の改造。 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/06/05 22:03:39

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