2024年09月01日
人生にはときに短い夏があり ときにいつまでも続く長い長い冬がある
その冬はあまりに永く やむことのない吹雪の中で
しだいに凍り始めてゆく魂を わたしはひとりで泣きながらさするように温めてきた
人の本体は肉体ではなく魂だとしても
ときに肉体の温度がその魂を救うこともある
それはほんとに人が弱ったときには
崇高で気高い愛ではなく
道端に転がるような安っぽい愛でしか救えないように
滑り落ちながら崖に飛び出た石をかろうじてつかんだ
でもその石も冷たくてツルツルと滑り
下を見れば もういっそこの手を離してしまえばとよぎる
叫んでも声にはならないし
足の置き場もない
わたし なんでこんなことになっちゃってるんだよ
つらいよ つらいよ つらいよ
手が痛いよ 冷たいよ
まるで何千本の針が突き刺すようだよ
腕もちぎれそうだよ
たすけてよ
お願い
たすけてよ
やがて力尽き小指がすべって離れると 薬指が続いて離れてゆき
わたしは目を閉じた
あそこから気を失ってわたしどうしたのだろう
気がつけばなぜか崖の上の原っぱに寝ていて
そっと目を開けると そこには
花が咲いてのどかに鳥の声が聞こえた
わたしのような
いっそ堕ちてしまえばいいような人間にも
だからあんなに永い冬に閉じ込められたわたしにも
春が きた
もうわたしの力ではどうにもならなかったあの絶望から
わたしいったいどうやったんだろう
はじめて大きな声で泣いた
幼い日のあのときよりもっと大きな声で
そしてそのわたしの体を
今度は わたしが温めていた魂が 包んだ
君たちにも永い冬はいつかくる
誰もたすけてくれないひとりの冬が
暗い つらく永い冬が
でもあの日 大声で泣きながら
わたしはあたりまえのことに気づき始めてた
春は 冬を超えた人にしか訪れないことを
そして春の暖かさは頼りないからわかりにくいけれど
その奥にある愛は その冬をたった一人で耐えた人にしか気づけないことを
自分は孤独なんだと
誰からも愛をもらえないと涙する人がいるけど
君が君を愛さなきゃ
君が君を信じなければ
君が君に優しくなけりゃ
君はいったいその冬で誰にたすけてもらうつもりなんだ
すべての友が去って行っても
いつか家族と別れても
いいか 人はぜったいに孤独になんかならない
君には君がついてる
ぜったいに君を裏切らない君がついてる
なのに「自分が嫌いだ」なんて言ってていったいどこで愛を知るつもりなんだ(理沙)
Posted at 2024/09/01 02:16:50 | |
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