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risaSpecのブログ一覧

2023年12月20日 イイね!

最後の改札

最近満員電車で自分の両足の間に大きなカバン置いてる人多いよね。
あれ、じゃまでしょうがないのよ。
乗る時は後ろから押されてそのカバンにつまづくし、降りるときもつまづいて転びそうになる。
でも当の本人はスマホ見ながらヘラヘラしていて一向に気にかけていないのです。

昨日の夕方もそういう人がいて、みんな彼のカバンにつまづいてたけど、1人の乗客があまりに頭にきたのか降りるときそのカバンを思い切り蹴飛ばしたのでした。
すると他の乗客の足元にカバンは転がり、その人もまた、まるでパスを受けたかのようにカバンを外に蹴り出したのです。

ちょうどその駅で降りたわたしはその光景を横目で見ながら、(いくらじゃまだとはいってもカバンをホームに蹴り出すなんてずいぶんひどいことするなあ。日本人はいつから人を思いやる気持ちをなくしたのか)と憂いていると、おばさんがわたしに「危ない!」と叫ぶのでした。
ふと見ると、その後何人にも蹴られ続けたさっきのカバンが宙高く舞い上がりわたしめがけて落ちてくるのでした。

とっさにわたしは高くジャンプし、宙返りをしながら、

オーバーヘッドキーーーック!!

カバンはレーザービームのようにホームの反対側に停まってた電車の開いてるドア目掛けて突き刺さる。
ドアは閉まり、その電車は逆方向にゆっくりと動き出しました。

ゴーーーーール!!!

みんなが高らかに歌いながら拍手する中、わたしはホームに手をついてでがっくりと肩を落とすカバンの持ち主に右手を差し出し、「ドンマイ。来年の決勝でまた会おう」と言ってあげたのでした。
我ながら人を思いやる日本人の鑑です。


さて、帰りは、この乗り換え駅の構内にあるカフェに必ず立ち寄ります。
カフェの窓からいつも改札を抜ける人たちを眺めるのです。

大きな仕事をやり遂げたのか、笑みを浮かべて小さくガッツポーズをつくる人。
また上司に怒鳴られたのか肩を落とす若いサラリーマン。
今日もなにもなく、明日もなにもなく、無表情で改札を通り抜けていくOL。

とにかく。一日は終わったのだ。
この一日がどんな一日だったとしても、改札を逆にくぐってみても、この一日はやり直しができない。

いつかわたしも職業人生の最後の日を迎えるだろう。
その最後の日にこの改札を抜けるとき、ふと二度と踏むことはない、いつもの通勤客でごった返すホームを振り返りわたしは何を思うだろう。

女ひとりこのポジションに立つことは並大抵ではなかった。
たくさん人に足元をすくわれ妨害されたし、わたしもまた闘っては人を傷つけた。
けれど、たったひとつだけ、誇れるものがある。

それは、
とにかくわたしは正直に生きたということ。

そのときまでそれを貫きとおすことができたなら。
わたしは胸を張って、振り返ることもなく、最後の改札をくぐれるだろう。
涙をこらえて精一杯の笑顔をつくったあの恋の終わりの顔で。




<おまけ>

今年risaSpecが受けた人生最大の屈辱の一言。

「ねえ理沙さん、さっき1人でオトナブルーの練習してませんでしたか?」
Posted at 2023/12/20 23:12:14 | コメント(7) | トラックバック(0) | 日記
2023年12月14日 イイね!

risaSpecのお料理日記

今回は珍しくお料理ブログなんだけど、「映え」とかお料理自慢とか、小賢しく女っぽさを出してみようみたいなことではなく、今「お金」に関するブログを書いてて、その中で「わたしは食費を月2万円から3万円に抑えるようにしている」ってとこがあります。
そのブログの伏線として、それでは月2〜3万円でどんな食事をつくっているのかというのを先にご紹介しておいたほうがいいと思ったわけです。


(1)驚愕のとろ〜りオムライス



ふわとろオムレツやスクランブルエッグが上手に作れないっていう人は多いと思います。
スランブルって名前からも熱が通る間もなく手早くつくるからとろとろってことなんでしょうが、わたしのオムライスに乗っかる卵はじつはおそろしく時間をかけてつくってます。
フライパンで焼くのではなく、卵を湯煎で温めてつくるのです。
焼いてないのでナイフで開くオムレツではないのだけれど、誰でも失敗せず驚愕のとろとろオムレツになります。
ソースはデミグラスソース。ライスはケチャップではなくソースライスです。


(2)ステーキ風ハンバーグ



つなぎも何も使わない牛肉だけのハンバーグをサイコロステーキっぽくしたもの。
ソースは焼肉のタレをベースにした和風仕立て。


(3)なつかしのビフカツ



とんかつみたいに見えますがビーフです。
東京にはビフカツっていうのがありません。
ときどきとんかつ屋さんの期間限定メニューに出ることはあってもレギュラーメニューになることはありません。
昔は関西に限らず西日本全域でビフカツはポピュラーだったと思うけど今はどうなのかな。
最近は京都に本店がある「勝牛」さんっていう牛カツのお店が東京にも進出してきてるけど、ああいうステーキに使えそうな厚いお肉を和食感覚でっていうのはちょっとわたしのビフカツのイメージと違うのです。
「勝牛」も大好きなんだけどね。
そこで昔の記憶をたどりながら作ったのがこれ。

牛肉はとにかく叩く!叩く!叩く!
叩いて薄く大きく伸ばします。
ソースはデミグラスをベースに試行錯誤したソース。酸味はなくします。
お肉もいろいろ試したけど、和牛のA5とかより赤身のほうがなぜかおいしい。
赤身だと体にもいいし、経済的。
ビフカツはB級感満載であるべき料理だと思ってる。


(4)びっくりドンキー風チーズハンバーグ



びっくりドンキーのチーズハンバーグを完コピ。
びくドンの再現レシピはYouTubeにたくさんあるので、それを何本か観ていいとこどりしてつくってみた。
びくドンって、なんだかシンプルなのになぜかおいしいよね。
でもなぜおいしいのか謎だった。
ポイントはタネにお味噌を練り込むことと、ソースにオレンジジュースを加えるとこ。
映えは気にしないので大根サラダにミニトマトはのせない。
これは大成功。めっちゃおいしい。


(5)サグ・パニール



サグ・パニールはわたしの得意料理のひとつ。
20年前渋谷のインド料理レストランで食べて以来どハマり。
20年前なのでもちろん産まれる前に行ってたわけです。

スパイスからつくるインドのカレーは、やってみたらわかるけど日本のインスタントカレーより簡単で手早くできるのです。
でもサグ・パニールは下ごしらえにちょっと手間がかかる。
ほうれん草とトマトをそれぞれフードプロセッサでピューレにして混ぜ合わせるんだけど、この鮮やかな緑と赤の配分で見た目の色が大きく変わるし、それは酸味と甘さのどちらが強いかにも直接影響する。
インド料理だからと調子にのって辛くしないのがコツ。
サフランライスに合わせます。


(6)risaSpecオリジナルハンバーグ



これがわたし本来のオリジナルハンバーグ。
かんじんのハンバーグが隠れているところにわたしの奥ゆかしさが滲み出ている。
もしもわたしに子どもがいたらこれがお母さんの味になるのかも。
焼肉のタレをベースにしてつくったソースがポイント。


(7)鍋焼きビビンバ



鍋でつくる石焼きビビンバ。
いいお肉なら焼肉にしたいし、そうでないお肉はすごくニガテ。
そこで牛のそぼろを入れてつくってます。
ビビンバのごはんは白飯なんでしょうけど、コチュジャンや豆板醤とかをあらかじめご飯に混ぜ込んでます。
食べるときかき混ぜるのめんどくさいし、わたしは必ずこぼすし、このほうがおいしいと思ったんだけど、そこが失敗かなあ。
次回からは白飯にしてみます。


(8)天ぷら



写真ではインパクトないんですが、天ぷらはちょっと自信持ってます。
天ぷらをカラッと揚げるのはとにかくグルテンを出さないこと。
そのために氷水を使うのは定番だけど、わたしはさらに米粉をブレンドしています。
なのでかき揚げもサクサクです。
かき揚げは筒に入れて高さをつくるお店もあるけど、わたしは鍋の中で揚げながら形を整えてつくります。
ここまでの職人技を極めるのに60年かかりました。


(9)アップルパイ



ケーキは滅多に食べませんが、アップルパイはよく自分でつくります。
このためにレーズンをラム酒で漬け込んでます。
パイ生地は市販のものですが、これあんまりリンゴを詰め込めないんですよね。
昨今リンゴがすごく高くなっていて、ケーキ屋さんで買ったほうが安いんじゃないかっていうことに気づきつくるのに躊躇しています。


さて、今回のブログのコメントはどれがいちばん食べてみたいか、番号で投票してほしいです。
え?いちばん食べたいのは理沙さんだって?

おいおい。オトナの女をからかうものじゃないのよ?ボーヤ。
Posted at 2023/12/14 22:21:31 | コメント(15) | トラックバック(0) | 日記
2023年12月09日 イイね!

砂の吹く街へ Merry X'mas




みんなが悲しみを背負って生きてる

人に傷つけられては悲しい

人を傷つけては悲しい


空を見上げて願うことは

未来の幸せなんかじゃなく

わたしは いつだってあのときのことを謝りたい想いばかりなんだ



暴力の後ろに 2千年の歴史を語る必要なんてない

そして5を奪われて取り返していいのは10ではない



せめてクリスマスの夜は

みんなで空を見上げてみよう

その日 吹き荒れる砂嵐の中でグローブからそっと手を抜く兵士と一緒に



Posted at 2023/12/09 01:55:24 | コメント(3) | トラックバック(0) | 日記
2023年03月27日 イイね!

東京

ランチでおそば屋さんに行ったんだけど、混んでてカウンター席に座った。
すこし遅れてすぐ隣に初老の男と青年の2人が座った。

「さっき見た部屋のほうが新しいけど、収納は少ないよね。その前の古いアパートでいいかな」

「がんばって東京の大学に入れたんだ。家賃のことなら気にしなくていいんだぞ?」

みんなは東北訛りのこの会話でこの2人の関係や今の状況がわかるだろうか。
わたしくらいになるとこれだけの会話でこの2人のすべてがおそろしいほどにわかってしまうのだ。

父の名は権蔵。
青森の工業高校を卒業し、大きな工場に就職。
ずっとがんばって働いてきたのだが、子どもが産まれてまもなくリーマンショックで工場が倒産。
それでも小さな町工場に転職し、より一層仕事に励む権蔵であった。
しかし妻の涼子は、そういう地道な権蔵とのくらしに不満を抱き、週末には仙台のホストクラブに通い権蔵のお金を使い果たした挙句、若い男と夜逃げしてしまったのだ。

涼子がその後どうなったかは、さすがのわたしでも「さっき見た部屋のほうが新しいけど、収納は少ないよね」「家賃のことなら気にしなくていいんだぞ?」という会話だけではいまいちわからない。
ただ「収納」と言っているので、若い男の名前は修造であることくらいはわかるのだが、射手座なのか天秤座なのかがわからない。

息子の竜也はそんな権蔵を尊敬しており、グレたり反抗することもなく、中学の頃、建築家になりたいという夢を持った。
それは権蔵に、いつか自分が設計した家をプレゼントしてあげたいと思ったからだ。
そこで工業高校の建築科に進学しようと考えたが、権蔵は工業高校への進学を強く反対した。
なぜなら権蔵は工業高校のときに初恋をし、その相手こそが商業高校の涼子だったからだ。
そこで普通高校に入り、この春、東京の大学の建築学部に合格したのであった。

権蔵が席を立ち、トイレに行って戻ってきたとき、わたしの座っている椅子にすこし体を当ててしまい、あわててわたしに「すみませんすみません」とぺこぺこおじぎをしてそのせいで今度は自分のお茶をひっくりかえしてしまう。

わたしは彼に「そんなそんな」と言いながら、立ち上がってすばやくカウンターにあったティッシュでこぼれたお茶を拭き、「だいじょうぶですか?」と衣服にお茶がかかっていないか気遣うと、親子はとても驚いた顔でわたしを見た。

そして「東京にもこんなにやさしい女性がいるんだねえ」と父親は息子を振り返った。
そして「今も東京の地下鉄できれいな女性ばかりで驚いてましたが、心の中まできれいに見える女性は1人もいなかったです」と言うのだった。

いやいや。そんな勘違いをされてしまっては東京の女たちもかわいそうなので、わたしはちゃんと言ったよ。

「東京にもいろんな女性がいるんですよ。でも東京でやさしい女性って、じつはわたし1人なのです」

「そうでしょうねえ。私たちは田舎者なんで、どうも東京の女性は冷たいという思い込みがあるんですが、やっぱりそうなんですね。あなただけなんですね。ただきれいな女性は確かに多い」

いやいや。この誤解も解いておかなければならない。

「東京には芸能人もたくさん住んでいます。モデルさんも女優さんもアイドルも。でもじつはほんとうにきれいな女性は・・」

すると息子のほうがすかさず「おねえさんだけなんですよね!」と口をはさんだ、

そこでわたしが「いやあこれは一本とられましたな。わっはっは」と笑うと、周囲のお客さん達もみんなが「ちげーねーや」と笑うのでした。

食事を終えて立ち上がると、お父さんがわざわざ立ち上がってわたしにおじぎをした。

「これからいろいろたいへんでしょうけどがんばってください。権蔵さん」

「ええ? ど、どうして私の名を・・・」


東京に、また春が来た。
スマホのMAPを片手にきょろきょろしている若い子を見ると、わたしもかつて初めて東京に来た日のことを思い出す。
そのとき胸に抱いていた夢はいつか東京の道路の脇に紙くずと一緒に吹き溜まり、いつかこの青年も父親の「元気でやってるのか?」というLINEを既読スルーで、寒い東京の街をポケットに手を突っ込んで急ぎ足で歩くのだろう。
人に傷つけられ、人を傷つけ、そしてそのどちらにも苦しみながら、いつか新宿の横断歩道を人にぶつからないないよう自分でいやになるくらいじょうずに渡っていく。

ちがうんだよ。
都会の生きかたとか、東京ではこう生きるんだとか、社会ってこうだとか、そいうこと考えたり言ったりしてるヤツこそがもっとも社会や都会に呑み込まれた東京の負け犬なんだ。

わたしは東京に来た頃、あと1人しか乗れなさそうな満員電車に乗ろうとしたときサラリーマンに突き飛ばされて横取りされた。
だからかろうじて電車に乗ったその男の髪の毛つかんで再びホームに引きずり出したんだ。
こういうときわたしは上履きを隠されてしまった少女のようにうつむいて力なく小さく笑ったりはしない。
「おいこらおっさん 何かましてくれてんねん」ときちんと言うのだ。
何しろ東京でたった1人の礼儀正しく心やさしい女なのである。

都会のカルチャーに合わせるな。
もっと自分を信じろ。
東京に、自分のカルチャーを押し込むんだよ。
Posted at 2023/03/27 18:59:48 | コメント(10) | トラックバック(0) | 日記
2022年09月15日 イイね!

直伝! risaSpec流ブログの書き方講座 <わたしはブログをこう書く!>

自分で書いたブログの解説なんて前代未聞だけど、一回やってみたかった。
わたしはこういうふうに考えて書いてるっていうのを。

なんでもいいけど、前回のブログ「フーテンの理沙ちゃん」を素材に、わたしがどうやって書いたのかを解説したい。

このブログは、もちろん「フーテンの寅さん」をモチーフにして、その全編をセリフだけで構成。
ト書きはいっさい書かない。
この手法は「美魔女」ブログでも使っているけど、そうかんたんに他の人はまねできないだろうという自負がある。
ト書きはくどいし、読むのもだるく、どうしてもそこで読者が失速していってしまうんだ。
最初に出したカウントがritせず、最後まで同じテンポとリズムで流れていくために考えたrisaSpecの手法と言っていいと思う。

セリフだけで構成する場合、ふつうなら、

おばちゃん「ねえ、あんた! 今、表を通り過ぎたの理沙ちゃんじゃないのかい?!」

、、のように誰が喋っているのかを書くべきところだけど、これも意図的に排した。

これがどういうところでその効果を発揮するかというと、たとえばこの部分。

「あ、あの、番頭さん、この理沙ってやつはブラに2枚もパット入れてごまかしてるようなどーしようもねえ女なんですよ?」
「しっ!おまえさんは黙ってなさいよ!」
「ねーねー、パットってなあに?」
「光男!あっち行って遊んでなさい!」
「はあい」

ここで「ねーねー、パットってなあに?」っていうのは、いったい誰が話し出したのか読者にはわからない。
でもここでわかってしまっていると、いまいちおもしろくない。
誰が言ってるのかわからないままに、次の「光男!あっち行って遊んでなさい!」で、よくわからない緊張のあとに、ああ!光男だったか、と納得する緩和で、笑いに落とせると計算した。ここは後出しだから笑える仕組みなんだ。

しかし同時にこのために困ったところもある。
じつはこのブログで一個だけ矛盾したセリフがあるのだ。

「あ、あの、番頭さん、この理沙ってやつはブラに2枚もパット入れてごまかしてるようなどーしようもねえ女なんですよ?」
「しっ!おまえさんは黙ってなさいよ!」

「おまえさんは黙ってなさいよ」と言っているのはおばちゃん。
でもおばちゃんはおいちゃんのことを「おまえさん」とは呼ばない。「あんた」である。
このブログでも出だしはおばちゃんの「ねえ、あんた!」で始まる。
それがここでは「おまえさん」にしている。なぜか。

「あんたは黙ってなさいよ」とするのが正しいのだけれど、こうするといったい誰がしゃべったのかわからないんだ。
もっともおそれたのは、これを理沙ちゃんが言ったと受け取られたなら、全体が陳腐でほんっとにつまらなくなってしまう。
このセリフは外せないが、どうしてもそれはおばちゃんでなければならない。
そこでこの「あんた」を「おまえさんに」にしたのは、、「おまえさん」という表現は必ずその人の女房しかつかわない呼び方だからである。
理沙でもひろしでもさくらでも光男でもでもなく、おいちゃんを「おまえさん」と呼べるとしたら、ほんとはそう呼ばなくっても、それはおばちゃん以外にいないのだ。

いかにも寅さんに出てきそうなセリフで構成していかなければならないが、じつはいっさい映画を参考にしていない。
すべてわたしが頭の中で考えたオリジナルだ。

寅さんの映画からそのままセリフをパクってくれば寅さんそのものにはなるが、それではまったくおもしろくない。
たとえばものまね歌手が完コピしても、それでは芸にならないし、だったら本物聴いてりゃいいじゃんって話だ。
なので、どこかフェイクで、そしてだからこそリアルにするには、わたしがイメージする寅さんの登場人物が「こう言いそう」というのを書くのがいちばんだ。
それはかえってほんものの映画のセリフよりもデフォルメされたぶんほんもの以上のリアリティがあるはず。

そういう中で自分で「うまい!」と笑ったのが、さくらの「おねえちゃん、それがね・・・驚かないでね? ぽんこつどころか、ダイハツフェローMAXなのよ」というセリフ。
寅さんのご機嫌がわるくなりそうなリア充報告だけど、こういうときさくらは「お兄ちゃん、それがね・・・驚かないでね?」というのはほんとに言いそうなのだ。

さて、セリフづくりのもっとも重要な部分。
「ところで理沙、今度はずいぶん長い旅だったじゃねーか。いったいどこへ行ってたんだい」に続く、映画で必ず登場する寅さんの長ゼリフ。

ここは映画でも寅さんらしさを表現するおきまりの重要な部分。
場所は松山と決めていて、なんか尾張の国とか、そういう言い方がないだろうかとネットに探したけどなかった。
かわりに「お四国」という表現があるのを知った。
この「お四国」4文字に「ここは」という3文字を加えたら7文字で七五調ができてくる。

そうして「どこって決まってらーな。ここはお四国、愛媛は松山、瀬戸内海に浮かぶ離れ小島よ。」という口上のような出だしができた。

「きたねえ今にも崩れそうな宿に疲れて帰ってくると、こう、味噌の匂いがぷうんとしてさ、番頭さんがとんとんとんっとネギを刻んでる音がしてるんだ。
あたしは横の階段に座ってさ、うちわでパタパタあおぎながら、おーい今日の晩飯はなんだい?って聞くと〜」まではすらすらできたが、このままふつうの料理が答えられると、寅さんの映画をコピーしてくればいい話になりかねないので、フランス料理のメニューと、高級ワインを当てて、さらにそれを粗末な夕食という表現にしてみた。

「フォワグラレーズンバターサンドとオマール海老ソテーのアメリケーヌソース仕立てっていうじゃねーか。
粗末な夕食だが、そういやガキの頃は白いご飯が食べられず、よくそんなものばっかり食ってたなあって懐かしくなっちまってさ。
貧しい食事が終わると番頭が来ておひとついかが?って、ありゃあ松山のどこか小さな酒蔵でつくった安酒のサントノ・デュ・ミリューを持ってくるんだよ。それをくいーって引っ掛けてると、番頭はもう出かけて行くんだ」

さて、セリフの中にはただのひとつもムダなセリフを入れてはいけない。
一気にスピード感が落ちてしまう。
なぜここでこんなセリフがあるのか?と読者に考えさせては、もうそこでぜんぶが水の泡になる。
しかしじつは2つだけムダなセリフも置いている。

「ごめんください」
「お?おばちゃん。表で誰か謝ってるぞ?」
「こんな夜中にいったい誰かしらねえ」
「おい。ヒロシ、いいか? フェローMAXは発売当初<40馬力のど根性>って謳い文句で登場したんだ。あのスズキのフロンティアをもってしても・・」
「おねえちゃん!たいへん!今四国からその番頭さんがおねえちゃんを訪ねていらっしゃってるわ!」

まず「誰か謝ってるぞ」っていうセリフ。
これははっきりいっておもしろくもなんともない。
あまりにつまらなすぎて失速する。
けれどこういうつまらないことも。ぽろっと寅さんは言いそうなのだ。
これがなくても「ごめんください」「こんな夜中にいったい誰かしらねえ」といっても話はおかしくない。

最後まで書いたあと、この「誰か謝ってるぞ」は削るべきか残すべきかかなり悩んだけど。残すことにした。
このおもしろくない感じが、音楽でいえばリズムの溜めにならないか?
あるいは和声進行でいえば、GのkeyでDの7thになって次のCに落ちる効果が得られないかなと思った。

そして続けて意味のないセリフでもうひとつ溜めたのは、「40馬力のど根性」の下り。
ここはほんとになくてもいい。

「こんな夜中にいったい誰かしらねえ」「おねえちゃん!たいへん!今四国からその番頭さんがおねえちゃんを訪ねていらっしゃってるわ!」で、ほんとはいいのだ。
問題なく繋がる。
しかしそれではあまりにもドラマと、それを読んでる感覚の時間軸と合わない。

ト書きを書けるなら、「表に出るおばちゃんとさくら。なにやら話したあと、さくらが驚いた声をあげる」みたいなのが必要なとこだ。

そこでその時間調整のために、無駄話をさせることにしたんだ。それがこの「40馬力」の話。

ト書きをなくしたためにもっとも難しかったのはどこかというと、寅さんが家を出ていくところ。

(1)「さくら、そろそろあたしはまた旅に出るよ」
(2)「おねえちゃん待って。駅まで送るわ」
(3)「さくら。こうして歩いてると、この街も随分と変わってしまったなあ」

(1)と(2)は家の中で、(3)は外である。
それをト書きなしでつたえるのがとってもむずかしい。
そこで唯一、しらけるけど「こうして歩いてると」という説明っぽいセリフになった。
ト書きをセリフに組み込んだ格好で、ここにわたしの文才のなさが露呈されている。

「人間ってーのは、そういう、ああ生きててよかったなあって、、そんなふうに思える日があるから生きてるんじゃあねえのかい?」

これはどこかであった実際の寅さんのセリフなんだけど、「こんなようなことを言ってた」という記憶だけで、セリフはわたしが考えた。
たしか映画ではさくらに、ではなく、光男へ向けたセリフだったと思う。

最後の「生きてるんじゃあねえのかい?」は、「生きてるんじゃねえのかい?」ではなく「じゃねえのかい?」と「あ」を入れるところにこだわった。

そして「・・・お、おねえちゃん」で終わるんだけど、もう一発ここで最後にだめ押しの笑いがほしかった。

このあと、寅さんは電車に乗る。
さくらはお財布からお金を渡そうとするだろう。
お金がないくせに「いいよいいよ」と寅さんは見栄を張る。
そこには何か映画をパロッたrisaSpec流の表現ができるはずだ。

でもやめた。
もうあまりにくどくなってしまう。
そこで主題歌の替え歌をつくることにして、原曲をYouTubeで聴いた。
まだできてないのに、もううまくいく自信は満々。

おおまかな歌詞を活かして、あるワードだけをピンポイントで変える。
変えるのはどこだ?

「えらい兄貴になりたくて」

ここしかない。
兄貴は姉貴になるが、どんな姉貴を期待されてるだろうか。

ここで「ブラに2枚もパット入れてごまかしてるようなどーしようもねえ女なんですよ?」の伏線回収ができたらおもしろいと思った。

「巨乳の姉貴になりたくて」

そして
「吸引 乳もみ 甲斐もなく」

「揉み込み」と「乳揉み」も迷ったけど、まあここは恥よりインパクトで行こう。

「今日も涙の 今日も肩ヒモずれ落ちる ずれ落ちる」

「肩ヒモ」というワードにこだわった。
原曲は「今日も涙の陽が落ちる」だけど、「陽が落ちる」と「ヒモ落ちる」をなんとか引っ掛けたかったんだ。
でもどうしてもうまく合わない。
せめて最後は「陽が落ちる」なんだから、「ずれ落ちる」ではなく「ヒーモー落ーちいる」にすべきなんだよ。
けれども、ずれ落ちちゃったほうが情けなくて笑える。そしてずれ落ちたほうが悲哀がある。
これはまさに寅さんの世界観だ。
なので正解はわかってるんだけど、敢えて「ずれ落ちる」を選んだ。

こういうことを実際に考えながら書いたんだけど、だからといって途中で止まって考え込んだわけではなく、おそらくみんながこれを読むスピードと同じスピードで書いていってる。
読むスピードと書くスピードは同じでないと、読むスピードや読むリズムの変化に気づくことができない。
同じスピードで書くから、どこで失速し、どこで加速し、どこでリズムがもたついてるのかがわかるんだ。
かなり頭は高速でぶん回してるのだ。

真面目な部分はラクだった。
こういうのはもういつでもすらすら書ける。

そして最後に出てくるのが、、、

アテもないのにあるよな素振り
「それじゃあ行くぜ」と風の中

これは替え歌ではなく原曲だが、レコードにもない幻の5番といわれる、寅さんをこよなく愛する人しか知らない歌詞だ。
書き始めたときから、どうしてもこの幻の5番をどこかに入れたかった。
だって、この5番、かっこいいじゃん!

そして寅さんの口上で、わたし流にしめくくる。

西へ行きましても東へ行きましても。
土地土地のカタギのおあにいさん、おあねえさんにごやっかいになりながら、わたしたちはいつでも胸を張って潔くフーテンの心で行こう。

いちばん最後の「よろしく頼むよ」の言い切りはものすごくだいじだった。
「よろしく頼むよ」か「よろしく頼むぜ」かで悩みに悩んだ。

わたしとしては「頼むぜ」がよかった。
わたしふだん「頼むぜ」ってほんとに言うから。
けれど、幻の5番の「それじゃあ行くぜと風の中」に「頼むぜ」だと被る。
それとブログの読者とすればわたしが「頼むぜ」っていうよりは「頼むよ」のほうがしっくりくるんだろうなっていうのもあって、、

お見苦しき面体お見知りおかれまして、向後万端(きょうこうばんたん)ひきたって、ひとつよろしく頼むよ。

ああ、わたしって、、かっこいい笑

Posted at 2022/09/15 04:24:00 | コメント(8) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「@YASUBEEさま 1オクターブだとあんまり動かせないですね でもCX-5のBOSEシステムはEQすらついてません、、」
何シテル?   08/23 18:22
身長 / 168センチ 体重 / 52kg  スリーサイズ / B:貧乳  W:ふつう  H:ふつう  年齢:そこらへんによくある ごくふつうの年齢
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