【東京駅──“じゃあね”が響いた朝とCarrera Sの余韻】

土曜日の朝、私は妻を東京駅まで送った。
丸ビルの地下駐車場に愛車N-ONEを停め、改札までの短い時間を並んで歩く。
この都市の玄関口は、毎回同じようで、毎回違う「別れ」を演出する場所だ。

改札を前にして、妻は軽く振り返り、「じゃあね」と言った。
短くて、やさしいその言葉が、なぜか胸に残った。

ふと目を向けると、赤レンガ駅舎の前に停まっていたのは、品川ナンバーの現行型Porsche 911 Carrera S。(電動ガラス　サンルーフ337,000円付き車両本体　22,390,000円）
スーツを纏った若い女性が助手席から降り、ドライバーの男性に小さく手を振る。
その返事もまた、「じゃあね」だった。すると、運転席から20代後半くらいの男性が下りて手を振る。

だが、911のその佇まいが、この何気ないやり取りを特別なものにしていた。

Carrera Sは、ポルシェという名にふさわしい加速と精緻な挙動を持つだけでなく、その存在自体が「社会的ステイタス」を映し出す装置だ。
維持費オプション費用を含め↑の値段は普通の人には垂涎の的だ。

都市の真ん中でさりげなく存在するだけで、通行人や他のドライバーに無言のメッセージを伝える力がある。

しかし、その真価は「余韻」にある。

助手席のドアが閉まる音、そして静かに離れていくリアビュー。
すべてが、あの短い「じゃあね」のひと言を、どこか深く、印象的にしていた。

私もまた、N-ONEに乗り込む。「車両で2000万以上も違うのか・・・けど年収1千万の自分にはこれで十分、身の丈に合っている」と言い聞かせる(笑)。

コンパクトで実用的、そして都市に溶け込むこの車も、私の日々の選択だ。

けれど、Carrera Sが見せた「別れの余韻」と「ステイタスの輪郭」は、どこか心の奥で静かに響いていた。これは自分もあのようになりたかったと思っているからだろう・・・仕方ないな今さら。

東京駅。そこは、ただの交通拠点ではなく、人生の交差点でもあるのかもしれない。